君の嘘は僕を救う
2
「私たちはまだ、やらないといけないことがあるの」
  話がひと段落した所で、彼女は言った。
「やらなきゃいけないこと…もしかして、僕が住んでいる時間のこと?」
「そう。たった今、地震があったわけでしょ?私のこの時計のエネルギーが戻り次第、ビルが倒れてきた直後の時間に戻るんだけどね…」
「私達で、美乃梨ちゃんを助けないといけないの」
  美乃梨を…?
  美乃梨がどうかしたのだろうか。
「今、美乃梨ちゃんはね。…祭りの準備をしていて、浴衣に着替えてたの。そしたら地震が来ちゃってね」
  少し口ごもる咲凜を見て、嫌な予感がした。
「家が…倒壊してる。美乃梨ちゃんは今、瓦礫の下にいるの」
  一番聞きたくなかった言葉が、彼女の口から発せられた。
「そんな…早く行かなきゃ!」
「落ち着いて、司。私は君の未来も、彼女の未来も知ってる。私の言う通りに動けば大丈夫だから!」
  それなら、どうして───
「じゃあ、なんで…手、震えてるの」
「…っ」
  核心をついた感覚。彼女が黙り込むのを見た僕は、焦りと緊張で手が震えた。
「時計のエネルギーが回復したら、地震が発生した直後の時間に移動する。だから、今私たちが過ごしてる時間は、美乃梨ちゃん達がいる世界には影響しないの」
  彼女が何を言いたいのかは、すぐに分かった。
「だから、信じて。………ね?」
  ベンチから身を離した彼女は、振り返り。
  笑顔で僕に手を差し伸べた。
「私達で、やり遂げよう」
  その一言が、僕の背中を押した。
  決意、覚悟、意気込み。そういうものが僕を勇気付けていく。
「…そうだね」
  彼女が差し出す手に、僕は───
「やり遂げよう。必ず…!」
  手を、重ね合わせた。
「お兄さん達、こいびと?」
  気がつくと、僕の隣に7歳の咲凜がいた。
「え、え!?」
  突然の質問だったので、僕はあたふたする。
  きっと、握手しているその姿が「手を繋いでいる→恋人」と発展したのだろう 。
「私達はね、恋人じゃないよ。でも……」
「……?」
「もっと身近な関係に、これからなる、かもね」
  時計のエネルギーが満タンになり、遂に美乃梨を救いにいく時間がやって来た。
  本当はもっと未来の世界を堪能しておきたかったが、どうせ16年後に見られるんだ。今は美乃梨の命が最優先である。
「私ね、君の住む世界には長くはいられないの」
  時計をいじりながら、彼女は突然話を持ちかけた。
「自分が本来いるべき時間以外の世界に長居すると、空気や空間、時間とかの流れが不規則になって、最悪死に至るんだって」
  死に…至る?
「目安が、2週間。もう、1週間滞在してるから、そろそろやばいかもね」
  最近具合が悪そうだったのは、そういうことだったのか。
「…咲凜はさ」
「ん?」
「どうして…僕のためにそこまでするの?」
「んー…」
  時計の操作を一度やめ、ニコッと笑ってみせた。
「ほら。行くよ!君には美乃梨ちゃんを助けてもらわないと困るんだから!」
  質問に対し、答えは返ってこなかった。
「こういう話をするのは、みんなで助かってからにしよ?」
  それもそうだと我に帰り、決意を固める。
  固めたはずなのに。
「どうしたの?」
  何かが怖い。
  緊張しているのか、はたまた自信がないのか、原因は分からないが、心臓の鼓動が早まり、冷や汗が流れていた。
「……僕にできるのかな。こんなにも、大きな事が。」
  目をキョロっと開いた彼女は、ふふっと笑って僕の両肩に手を乗せ、言った。
「君なら出来るよ。司君…司、絶対にできる。私を助けてくれた時のようにさ!美乃梨ちゃんを救おうよ!」
  彼女は僕のために、影でこんなにも頑張っていてくれた。
  次は僕だ。今度は、僕が美乃梨を助けるんだ。
「…ありがとう」
  視界が歪み始める。時間を移動し始めたようだ。
「そうだ。これだけは言っておくよ」
  歪んだ世界の中、隣にいた彼女はもう一度、ニコッと笑った。
「さっきの質問の答えね」
「司君のことが、好きだから。かな」
  話がひと段落した所で、彼女は言った。
「やらなきゃいけないこと…もしかして、僕が住んでいる時間のこと?」
「そう。たった今、地震があったわけでしょ?私のこの時計のエネルギーが戻り次第、ビルが倒れてきた直後の時間に戻るんだけどね…」
「私達で、美乃梨ちゃんを助けないといけないの」
  美乃梨を…?
  美乃梨がどうかしたのだろうか。
「今、美乃梨ちゃんはね。…祭りの準備をしていて、浴衣に着替えてたの。そしたら地震が来ちゃってね」
  少し口ごもる咲凜を見て、嫌な予感がした。
「家が…倒壊してる。美乃梨ちゃんは今、瓦礫の下にいるの」
  一番聞きたくなかった言葉が、彼女の口から発せられた。
「そんな…早く行かなきゃ!」
「落ち着いて、司。私は君の未来も、彼女の未来も知ってる。私の言う通りに動けば大丈夫だから!」
  それなら、どうして───
「じゃあ、なんで…手、震えてるの」
「…っ」
  核心をついた感覚。彼女が黙り込むのを見た僕は、焦りと緊張で手が震えた。
「時計のエネルギーが回復したら、地震が発生した直後の時間に移動する。だから、今私たちが過ごしてる時間は、美乃梨ちゃん達がいる世界には影響しないの」
  彼女が何を言いたいのかは、すぐに分かった。
「だから、信じて。………ね?」
  ベンチから身を離した彼女は、振り返り。
  笑顔で僕に手を差し伸べた。
「私達で、やり遂げよう」
  その一言が、僕の背中を押した。
  決意、覚悟、意気込み。そういうものが僕を勇気付けていく。
「…そうだね」
  彼女が差し出す手に、僕は───
「やり遂げよう。必ず…!」
  手を、重ね合わせた。
「お兄さん達、こいびと?」
  気がつくと、僕の隣に7歳の咲凜がいた。
「え、え!?」
  突然の質問だったので、僕はあたふたする。
  きっと、握手しているその姿が「手を繋いでいる→恋人」と発展したのだろう 。
「私達はね、恋人じゃないよ。でも……」
「……?」
「もっと身近な関係に、これからなる、かもね」
  時計のエネルギーが満タンになり、遂に美乃梨を救いにいく時間がやって来た。
  本当はもっと未来の世界を堪能しておきたかったが、どうせ16年後に見られるんだ。今は美乃梨の命が最優先である。
「私ね、君の住む世界には長くはいられないの」
  時計をいじりながら、彼女は突然話を持ちかけた。
「自分が本来いるべき時間以外の世界に長居すると、空気や空間、時間とかの流れが不規則になって、最悪死に至るんだって」
  死に…至る?
「目安が、2週間。もう、1週間滞在してるから、そろそろやばいかもね」
  最近具合が悪そうだったのは、そういうことだったのか。
「…咲凜はさ」
「ん?」
「どうして…僕のためにそこまでするの?」
「んー…」
  時計の操作を一度やめ、ニコッと笑ってみせた。
「ほら。行くよ!君には美乃梨ちゃんを助けてもらわないと困るんだから!」
  質問に対し、答えは返ってこなかった。
「こういう話をするのは、みんなで助かってからにしよ?」
  それもそうだと我に帰り、決意を固める。
  固めたはずなのに。
「どうしたの?」
  何かが怖い。
  緊張しているのか、はたまた自信がないのか、原因は分からないが、心臓の鼓動が早まり、冷や汗が流れていた。
「……僕にできるのかな。こんなにも、大きな事が。」
  目をキョロっと開いた彼女は、ふふっと笑って僕の両肩に手を乗せ、言った。
「君なら出来るよ。司君…司、絶対にできる。私を助けてくれた時のようにさ!美乃梨ちゃんを救おうよ!」
  彼女は僕のために、影でこんなにも頑張っていてくれた。
  次は僕だ。今度は、僕が美乃梨を助けるんだ。
「…ありがとう」
  視界が歪み始める。時間を移動し始めたようだ。
「そうだ。これだけは言っておくよ」
  歪んだ世界の中、隣にいた彼女はもう一度、ニコッと笑った。
「さっきの質問の答えね」
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