君の嘘は僕を救う
5
  一日はあっという間に過ぎていき、気がつけば夜になっていた。うん。純粋に楽しんでいた気がする。
  彼女もそうだ。朝、遊園地に入ってから今に至るまで、キラキラの笑顔で笑い続けていた。クレープを食べた時なんて、こんなに美味しいものがあるのか!みたいな顔で食べていたし。
  でも、やっぱり、彼女の時々不自然な言動も気になった。
「今日は楽しかったね!司!」
「楽しかったね。それで、何か思い出せた?」
  例えば、これ。
「え?何が?」
「記憶。戻った?」
「あぁ、えっと…残念ながら何も。」
  普通、記憶をなくしていたことを忘れることがあるだろうか。そもそも、今日は記憶を取り戻すために遊園地に来たのに。
「…そんなに険しい顔で見ないでよ。私の顔に何かついてる?」
  僕がしばらく彼女の顔を見て考えていると、彼女は顔を赤らめて目をそらした。
「い、いや…別に、何も」
「なんかさ、2人っきりで歩いてるとさ。カップルに見えない?」
「見えない。兄妹とかに見える可能性だってあるからね」
「もう!堅物なんだから!」
  美乃梨と言うことが似ている。
  遊園地を出てからしばらく歩き、僕がいつも本を読んでいた公園にたどり着いた。
  遊園地から僕の家までの道のりに公園はない。つまり、ここは遠回りなのだが、彼女のためなのなら、仕方がない。
「咲凜ってさ」
「うん?」
「家、どこに住んでるの?」
  僕が純粋に気になったことを尋ねると、彼女は「ふん」と鼻を鳴らし、質問に答えた。
「レディに突然住所を聞くだなんて、嗜みがなってないなぁ〜。チッチ」
  人差し指を立て、なぜか「1」のサインを手で作りながら、それを僕に向けて振ってきた。
「ジェントルマンの至福の読書の時間を邪魔する人が、レディだって?」
「自分でジェントルマンって言うんだね!」
「君も自分のことをレディって言ったじゃないか」
「あはは!まあね!」
  カタカナ単語の発音が無駄に良い気がしたのだが、彼女は英語が得意なのだろうか。
「…ここでいいよ」
  公園のど真ん中で彼女はそう告げた。
  そして静かに笑い、続けて言った。
「住所は、また今度教えてあげる」
  誤魔化されたと思っていたが、彼女はしっかりと答えてくれるようだ。
  腕時計を見て「やばっ」と声を漏らすと、小走りで僕から離れた。
「じゃあね!わざわざ遠回りしてくれてありがとう!今日は楽しかったよ〜!」
  元気に手を振りながら、走り去った。
  僕は自然に手を振って返事をする。
  でも、ひとつだけ気になることがあった。
  …僕の家って、教えたっけ……?
  僕は、教えてないはず。この公園が遠回りの道になることも、この公園が僕の家に近いことも。
  そして僕は、ふとあることに気がついた。
『…クライマックスのところ申し訳ないね…』
  僕に声をかけた直後、彼女はこう言っていた。
  どうして分かったのだろうか。
  いや、彼女はまるで「分かっていた」ような言い方をしていた。
  これに関してはどう考えてもおかしい。説明がつかない。
  彼女の謎はどんどん深まるばかりで。
「司?」
  困り果てたときに、美乃梨は僕の前に現れたのだった。
  彼女もそうだ。朝、遊園地に入ってから今に至るまで、キラキラの笑顔で笑い続けていた。クレープを食べた時なんて、こんなに美味しいものがあるのか!みたいな顔で食べていたし。
  でも、やっぱり、彼女の時々不自然な言動も気になった。
「今日は楽しかったね!司!」
「楽しかったね。それで、何か思い出せた?」
  例えば、これ。
「え?何が?」
「記憶。戻った?」
「あぁ、えっと…残念ながら何も。」
  普通、記憶をなくしていたことを忘れることがあるだろうか。そもそも、今日は記憶を取り戻すために遊園地に来たのに。
「…そんなに険しい顔で見ないでよ。私の顔に何かついてる?」
  僕がしばらく彼女の顔を見て考えていると、彼女は顔を赤らめて目をそらした。
「い、いや…別に、何も」
「なんかさ、2人っきりで歩いてるとさ。カップルに見えない?」
「見えない。兄妹とかに見える可能性だってあるからね」
「もう!堅物なんだから!」
  美乃梨と言うことが似ている。
  遊園地を出てからしばらく歩き、僕がいつも本を読んでいた公園にたどり着いた。
  遊園地から僕の家までの道のりに公園はない。つまり、ここは遠回りなのだが、彼女のためなのなら、仕方がない。
「咲凜ってさ」
「うん?」
「家、どこに住んでるの?」
  僕が純粋に気になったことを尋ねると、彼女は「ふん」と鼻を鳴らし、質問に答えた。
「レディに突然住所を聞くだなんて、嗜みがなってないなぁ〜。チッチ」
  人差し指を立て、なぜか「1」のサインを手で作りながら、それを僕に向けて振ってきた。
「ジェントルマンの至福の読書の時間を邪魔する人が、レディだって?」
「自分でジェントルマンって言うんだね!」
「君も自分のことをレディって言ったじゃないか」
「あはは!まあね!」
  カタカナ単語の発音が無駄に良い気がしたのだが、彼女は英語が得意なのだろうか。
「…ここでいいよ」
  公園のど真ん中で彼女はそう告げた。
  そして静かに笑い、続けて言った。
「住所は、また今度教えてあげる」
  誤魔化されたと思っていたが、彼女はしっかりと答えてくれるようだ。
  腕時計を見て「やばっ」と声を漏らすと、小走りで僕から離れた。
「じゃあね!わざわざ遠回りしてくれてありがとう!今日は楽しかったよ〜!」
  元気に手を振りながら、走り去った。
  僕は自然に手を振って返事をする。
  でも、ひとつだけ気になることがあった。
  …僕の家って、教えたっけ……?
  僕は、教えてないはず。この公園が遠回りの道になることも、この公園が僕の家に近いことも。
  そして僕は、ふとあることに気がついた。
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  僕に声をかけた直後、彼女はこう言っていた。
  どうして分かったのだろうか。
  いや、彼女はまるで「分かっていた」ような言い方をしていた。
  これに関してはどう考えてもおかしい。説明がつかない。
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