ダイヤモンドより硬く輝いて

歌さぶろう

第20話 耀きの英雄達


 クィーンフライマンティスの依頼から2日、僕達はギルドハウスに帰って来ていた。
 シラヌイさんはギルドハウスを見て、「嘘だろ、これがお前らのギルドハウス!?なんつー大層な…」と驚いていたが、師匠やヴァントさん達、英雄達が使っていたことを説明して納得を…

「出来るかぁ!ケント!お前の師匠すげぇ人じゃねぇかよ!しかもあん時の見送り…あれが焔の鍛治師だったなんて…」

 ロゼが焔の鍛治師に反映して叫ぶ。

「はあ!?オッサン見たの!?英雄ヴァントを生で見たのか!?」

「あれがそうなら、見た!いやしかし…普通のオーガン族の爺さんにしか見えなかったが…」

「なんだとオッサン!英雄ヴァントは他の英雄の装備を作り上げ斬れぬモノ無し、貫かれる盾は無しの英雄中の英雄だぞ!普通の爺さんなんて!」

  と、ヒートアップしたロゼがシラヌイさんに掴みかかったり、言い争ったり、あ、シラヌイさんが投げられてゴミ箱にホールインワン……大変である。

「えっと…ロゼ、落ち着いて…今度会いに行こう?ね?」

 するとロゼが興奮しながら

「なら今行こう!すぐ!」

 と、今度は僕の肩をがっしり掴む。
 …火に油を注いだか…

「え、えぇ…それは…」

「さあ!行くぞ!今!すぐ!」

「ちょっ、待って!痛い痛い!」

 ズリズリと引きずられて玄関へ、その時、玄関のドアがコンコンとノックされる。

「あれ?誰だろ…ケント、お客さんだよ」

「…分かってるよ…とりあえず、離して…」

 ロゼから解放され、腕と肩があることを確認してからドアを開く、するとそこには冒険者協会の人がいた。

「えっと、何かご用ですか?」

「はい、まず…先日のフライマンティスの依頼、お見事でございました」

「そ、それは、どうも…」

 協会員の人が頭を下げるので、反射的に僕も頭を下げる。

「それでですね?ギルドの件なんですけれども…」

「は、はい…何か、問題が?」

 すると協会員の人が苦笑いしながら、

「ええ…無いんですよ、その…お宅のギルド名が…」

「へ…ギルド名?」

 それを聞いて後ろでロゼが「あちゃ〜…」と呟く。

「先日の依頼の達成具合から、貴方がたのギルドに協会側から依頼をしたいのですが…いかんせん名前が無いもので…どうにも…」

「わ、分かりました!すぐ考えます!」

「いえいえ!そんなすぐでなくとも…ギルド名はギルドを表す大事な名前…皆さまで話し合われた方がいいかと…」

「あ…はい、分かりました…ロゼ、悪いけどシラヌイさん呼んできてくれる?」

「はいはい、了解っと…おーい、オッサン!ギルド名決めるぞー、出てこーい」

 ロゼが呼びに行っている間、僕は協会員の人から荷物を受け取っていた。

「…これは?」

「えーっと…ケイニックのヴァントさんからの届け物だそうです…あ、ここに受け取りのサインお願いします」

「はい……これでいいですか?」

「大丈夫です、では残りのお荷物も置かせていただきますね」

「え?」

  玄関前に大量の荷物が運ばれる。ちょっとした日用品の追加物資から高級そうな鍋や食器、傷薬や飲み薬などの医薬品、薬草の苗など、様々だ。
 
「う、うわぁ…ヴァントさん…こんなに荷物を…」

「お荷物はこれで…全部です。ギルド名が決まりましたらまた協会の方までお越し下さい、では失礼します」

 協会員の人が帰って、ロゼがシラヌイさんを連れてきた。
 とりあえず各自でこの荷物を倉庫に入れたり、保管場所に保管したり、苗は敷地内の畑に植えたりと忙しかった。
 中には使用用途の分からないガラクタのような物も混じっていたが…貰ったものなので捨てるわけにもいかないので倉庫の奥の方に押し込む。

「…ふう、だいぶ片付いた?」

「ああ…あとはこの箱だな」

 残っていたのは縦1メートル、横50センチ程の木の箱で、気になって中を開けると…

「…?何これ…看板…?」

 古ぼけた看板が一枚入っていた。
 看板には『七耀の英雄達』と刻まれていた。

「…ケ、ケント、これって…これって!」

 ロゼがまたも興奮して看板をつかむ。

「これ!英雄達のギルドの看板だよ!うわぁ…本物だぁ…」

「これが師匠達の…ってことは『七耀の英雄達』がギルド名?」

「うん、7人の英雄達がそれぞれ耀いていたからだって言われてる」

「あー、俺も聞いたことあるなぁ…なんだっけ…『全能の勇者』ノールド・トラヴィスに『焔の鍛治師』ヴァント・キリオス、『水舞う巫女』マーシャ・グラスコと…えーと?」

 中々思い出せないシラヌイさんにやれやれとロゼが首を振って続ける。

「『疾風怒濤の獣女』半獣人族のリリカ・ロイ、『大地の砦』正体不明のバトス、『雷光の騎士』エルナ族のアルバート・スターヴに、『闇黒の魔女』人族のルナ・メトロイ、でしょ?全くオッサンは…」

「オッサン言うな!オジサンと呼べ!…しかし、よく知ってるな」

「そりゃあね!アタシ、英雄に憧れてるんだ…みんなを守る英雄にさ…」

 その時のロゼの顔はキラキラと輝いていて、まるで夢見る乙女のようだった。

「ロゼはなんで英雄に憧れてるの?」

「え?そりゃあカッコいいし強いっていうのもあるけど…さっき言ったようにみんなをどんな状況だったとしても守るからだよ、絶対にね」

「絶対に…」

 ………どんな状況でも…だから師匠は僕を守ったのか…
 僕も、そんな風になれるかな…

「…ねぇ、僕達のギルド名…」

「もしかして『七耀の英雄達』!?」

「いや、流石にそれはダメだろ」

「う、うん…流石に丸々使うのはダメだから…『耀きの英雄達』…ならどうかな?」

「『耀きの英雄達』か…アタシ達も…英雄…!」

「…いいんじゃあないか?俺はそういうの好きだぜ」

「なら…!」

 そこから僕達は協会へギルド名の届け出を出し、看板用の板を貰い、達筆だったシラヌイさんに文字を書いてもらい、ギルドの看板が完成した。

「…出来た、ね」

「ああ、プレッシャーに押されそうになったが、この通りだぜ!」

「…なんかアタシ、すっごいウズウズする…!早く看板掛けに行こうよ!」

「うん!行こう!」


「僕達が!」「アタシ達が!」「俺達が!」


「「「英雄だ!!」」」


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