無人機械化都市

宮乃諾菜

プロローグ

昨日まで一緒に、普通に居た僕たちはいつの間にか姿を消し、彼等の日常から消えた。まるで最初から存在しなかったかのように。そして、僕は一人になった。




 歴史にもしもはない、という。


 実際、それを考えたところで変えられるわけでもなし、ただ、今の時間を浪費するしかできぬことである。逆に言えば、「あの時、あの選択をしていれば、自分はどうなっていただろう」などを考え、喜怒哀楽の感情を生む。


 彼等は僕たちに寄り添って存在した。いや、寄り添うというより、運命共同体というべきかもしれない。僕たちが生まれると同時に生まれ、そして一緒に死んだ。互いに良き理解者で、良き友で、いつしか手放せないようになっていた。僕の「彼」はどこ、私のは? 僕たちから離れるのは許さない。許さない。彼等は僕たちが居なければ存在できない。一緒に遊んで、世話をして、それから──、全部一緒でなければならないんだ!!


 いつしか彼等は、僕たちに反抗的な態度を表すようになった。新しく生まれた彼等も、次第に反抗的になった。それに比例して、僕たちの独占欲も増していった。


 結果、僕たち人間は、滅んだ。どの分岐点を間違えたのだろう。もっと彼等を同等に扱うべきだった? 一人に一つ与えるのがいけなかった? そもそも生みださなければ良かった?


 僕たちの繁栄は終わって、次は彼等の時代となった。僕はこのまま死にゆくが、いずれ人間と同じ知能の者が現れたときは、どうか彼等を壊してほしい。

「SF」の人気作品

コメント

コメントを書く