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先生! その異世界小説、間違いだらけですやん!

執筆用bot E-021番 

なぜ、勇者は魔王と戦わなければならないのか? 後

「こらー」
 先生の声が響いてきた。



「落ちるんじゃないぞ。ドメくん。這い上がって来い」



「先生……」



「ドメくんは勇者なのだ。こんなところで死ぬのではない」



 先生が魔王の手から跳び下りてくるのが見えた。そんなこと言われても、もう手にチカラが入らない。



 ヤだなぁー。現実に戻りたくないなー。
 このまま異世界人として終わりたいなー。



 ……なんて、オレはオセンチな気分になっていた。



「やはりドメくんには覇気がない。そんなことで勇者がつとまると思っておるのか」



 先生はついに石橋までやって来た。



 オレの腕をつかんでくれる。でも先生のチカラじゃオレは引っ張り上げられないだろう。このままだと一緒に落ちてしまう。



「勇者ってアホとちゃいますかねぇ」
「なに?」



「魔王を倒そうとか思います普通? こんなん勝てるわけないですやん」



 物語の勇者はどうして途中で逃げ出したりしないのか。逃げだしたら物語にならないんだけども。魔王なんて恐怖の象徴に、なにゆえ立ち向かうのか。



「ドメくんよ。勇者とは勇気ある者のことを言うのだ。失敗する可能性が大きくても、挑んでみるから勇者なのだよ」



「負けるかもしれませんやん」



「負けても、挑んだ者は勇者なのだ。勇者は英雄とは違うのだ」



「臭いこと言いますねぇ」



「ドメくんも勇者なのだ。ここで落ちたらいかん」



 先生は何を必死になってるのかと考えた。オレが落ちそうになってるから必死になっているのだと気づいた。もしかしてこの人は、オレが死んだら悲しんでくれるのかもしれない。



 先生がいるなら、もうチョットだけガンバってもいいかな、と思った。みずからチカラを入れて、石橋をのぼりきった。



 先生が抱きついてきた。
 大きな胸が、オレの胸板でやわらかく潰れる感触があった。



「死ぬのではないかと思ったではないか!」



「なに感動物みたいな演出してるんですか。っていうか、オレが死んだら困るなら、死ぬような筋書きにするの止めてくださいよ」



 と、照れ臭いからわざとそっけない態度をとった。



「一難乗り越えてこそ勇者だからな。……物語的に」



「えー。物語的になんですか! 今、ちょっと感動しかけましたやんかッ!」



「さあ、今のドメくんなら、その伝説の剣を抜くことが出来るはずだ」



 と、先生は強引に話を進めた。



「え、抜けるんですか」
 剣の右手を柄にかける。左手で鞘を握った。



 イザ抜くとなると緊張してくる。先生はオレにうなずきかけてきた。抜け、ということだろう。



 思い切っていっきに引き抜いた。
 白銀色に輝く刀身が姿をあらわした。



「さあ行くが良い。勇者よ。魔王をコテンパンにこらしめてやれ」



 生唾を呑み込む。



「よぉし」
 


 魔王との戦いで窮地に陥った瞬間、勇者はエクスカリバーを抜くことに成功し、魔王を圧倒するものだ――と先生は以前に言っていた。これが抜けたということは、すなわちオレに勝機があるということだ。



「せいっ」



 さっきと同じように魔王に切りかかってみた。オレの身長ではせいぜい魔王の足を斬るぐらいのことしか出来ない。けれど、刃は届いた。甲殻も肉も骨も断ち切ることが出来た。筋力などまるで要らなかった。さすがは伝説の剣だ。



「ぐわぁぁぁ」
 と、魔王は叫んで、横倒しになった。



 魔王の巨体が倒れると、すさまじい地揺れがした。オマケに嵐のような砂煙があがる。



 オレの目の前にドラゴンの顔が来るカッコウになった。近くで見ると、紅色に光る目玉が、宝石みたいでキレイだった。



「ようやく剣を抜いたか。これで魔王の役目も終わりやな。いやぁ、ホンマに先生の相手をするんは疲れたで」



「え、えっと……殺してもええんですよね?」



 魔王という肩書にふさわしく、獰猛そうな風貌をしている。けれど、悪い生物には思えなかった。



「勇者は魔王を殺すのが役目や。別に情けをかける必要なんかあらへんで。罪悪感とかも必要ない。ワシは、こうして勇者に殺されるための存在でしかあらへんねやから」



 なんだか虚しい存在だな、と思った。



 どんなフィクションでも、魔王はきっとわかっているのだ。勇者に殺される覚悟をしているのだろう。でも、弱音を吐くことはない。最後まで抗う。そんな強さを持っているからこそ魔王なのかもしれない。



「まぁ、せめて首を落として、さっさと殺してくれや」
「あの……。ありがとうございました」



「なんや。礼なんか言われることしてへんけどな」



「あ、いえ」



 オレは先生やリリさんに引っ張られて、ここまで来た。魔王もまたオレをここまで連れて来てくれた1人だ。何かひとつでも欠けていれば、オレはここまで来ていなかっただろう。



 躊躇するのは失礼かと思った。



 魔王の首に、エクスカリバーを走らせた。凄まじい出血とともに、魔王の首が切断された。



 ついに勇者は、魔王を倒したのだ。
 これがゲームならエンドロールが流れることだろう。



 魔王が倒れた拍子に魔王城は崩れてしまっていた。ガレキの山が出来ていた。まだ砂煙も残っている。魔王を倒した際の演出なのか、たちこめていた暗雲が消えて行く。青空が現れはじめた。



 先生とリリさんはガレキの山の上で、拍手をしていた。



「いやー。お見事。お見事。ドメくんならやってくれると思ったよ」
 と、先生は満面の笑みだ。



「あ、あの。魔王を倒してもうてゴメン」



 と、オレはとりあえずリリさんに謝ることにした。リリさんはモンスターで、魔王の配下という設定だったはずだ。リリさんと親しい存在を殺してしまったことになる。



「別に気にしなくてもいいよ。魔王さまは、こうなることを知ってたし、この物語が無事に完結することを願ってたから」



 そう言ってくれるのはありがたい。魔王も罪悪感を感じる必要はないと言っていた。けれど、他者を殺すというのは、あんまり愉快な気持ではない。先生はガレキをヒョイヒョイと跳びはねて、オレのもとまで来た。



「ドメくん。君はあの巨大なドラゴンを倒したのだ。頭が悪くて、運動もダメで、容姿も微妙で、お金もなければ、美的センスのカケラもない君が!」



「そこまで言わんでもええやないですか!」



 自覚はしてるが、あらためて他人に言われると傷つく。



「ともかく、君は魔王を倒したのだ。これはスゴイことだぞ」



「エクスカリバーのおかげですよ」



「たとえそうであっても、魔王に立ち向かう勇気は持てたではないか。まさかあのドメくんが、ここまでやって来るとは思っていなかった」



「オレのこと巻き込んでおいて、よぉそんなこと言いますね」



 この世界に巻き込んでくれたのは、オレとしては嬉しかったのだが。



「さて、異世界の勇者よ」
 先生は急にマジメくさった顔をした。マジメな顔をしてると、この人はホントウに美人さんだ。



「何なんです。あらたまって」



「異世界の勇者が魔王を倒したとなったら、最後にやることはわかっているな?」



「このまま異世界で暮らしてハッピーエンドやないですか?」



「ちがーうッ! ドメくんは、現実に戻らなければならんのだ」



「はぁ」



 やっぱりそうなるのか。
 気が重い。
 先生がオレの背中をバシバシと叩いてくる。



「案ずることはない。なにせドメくんは、あの巨大なドラゴンを倒したのだ。もはや現実などおそるるに足らん」



「なにを臭いこと言うてるんですか。そんな恥ずかしいセリフ、よく堂々と言えますね」



「私は生まれてこのかた、恥ずかしいなど思ったことはない」



「先生らしいです」



 足元を見た。
 オレの姿が半透明になっていた。



 もう現実に戻ろうとしているのかもしれない。でも、妙なことに気づいた。オレは薄くなってるのに、先生はいっこうに薄くならないのだ。



「ちょ……先生も帰りますよ」



「別に案ずることはない。ドメくんは先に帰っていたまえ、私もすぐに戻る」



「なんかやりますのん?」
「少し所用があるのだ」



 物語の矛盾でも見つけたから、その修正でもするんやろか? 修正と言ってもツギハギだらけの物語だ。修正しなければいけない箇所が多すぎる。



 それとも、自分が創りだした世界だから、もう少し長居するつもりなんやろか。



「ズルいですよ。オレももう少し、異世界にいさせてくださいよ」



 視界が真っ白になるまで、先生は笑っていた。
 リリさんが物寂しそうにオレを見ていた。



 まるで、最後のお別れみたいだな、なんて思った。

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