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先生! その異世界小説、間違いだらけですやん!

執筆用bot E-021番 

なぜ、勇者は魔王と戦わなければならないのか? 前

 城門が眼前にあった。高さは10メートルぐらいある。灰色の石造りで、ドラゴンの彫刻が彫られている。だから、これは誰が彫ってんと思う。わざわざ魔王が彫刻家を雇ったんやろうか。



 その城門に吊るされている人がいた。
 先生だ。



「ドメくん。私を救いに来てくれたのだな。待っていたぞー」



 簀巻きにされて吊るされてる先生は、ブラブラと左右に揺れていた。まるで蓑虫だ。



「先生。捕まってるんやったら、もう少し焦ってる感じにしてくださいよォ。なんでそんなに嬉しそうなんですかァ」



 先生は高い位置に吊るされているために、大声で叫ばなければいけなかった。



「ドメくんこそ、もう少し感動したまえ。セッカクの再会ではないか。私はメインヒロインなのだぞ」



「エルフに変な伝言残してたでしょ。魔王も先生に頭が上がらない様子だったって、聞きましたよ」



 そんなメインヒロインがどこにいるのか。もしかしてピーチ姫も、毎回クッパに誘拐するように指示しているのだろうか。



「演技でも感動したまえ」
「わー。先生ー。シンパイシマシター」
「もっと心を込めて、叫びたまえ」



 いったいオレは何をやらされてるのか。



「とりあえず、助けますから、そこで待っててください」



 城門の柱から上へとのぼれそうだった。柱は石造りで、凹凸が激しい。木登りが出来なくとも何とかなりそうだ。



 しかし、柱にしがみついたとき、地面が大きく揺れた。オレはシリモチをついた。



 城門が崩れ落ちた。あやうくガレキに潰されそうになった。先生は無事やろうか? この時はホントウに心配した。



 何も問題なかった。魔王がシッカリと先生のことを握っていた。



 巨大な頭には甲殻のようなウロコがびっしりと生えている。口元にはキバが揃い、目は赤く光っている。その風貌だけはかなりの威厳がある。



「やっと来たんか。勇者」
 ひとたび口を開けば、威厳のカケラもない。



「えらいもん誘拐していきはって、先生のメンドウご苦労さまです」



 魔王に迷惑をかけたと思って、いちおう頭を下げておいた。



「ホンマやで。ああしろこうしろと指示が多いんや。だいたい先生のこと簀巻きにするの、ごっつ大変やったわ」



 先生のことを簀巻きにしたのは、このドラゴンだったのか。先生に「簀巻きにしたほうが、雰囲気が出る」とか言われたのだろう。その大きな手で、よくやってくれた。



「あのー。魔王さんに尋ねたかったんですけど」
「なんや」



「なんで都市を襲ったりしたんです? もしかして世界征服とか企んでたりするんですか?」



「まぁ、そんなところや」



「魔王が世界征服とかってよく聞きますけど、いったいどういうつもりなんです? 世界とか征服する意味あります?」



 これは昔から常々思っていた。魔王はすぐに世界征服をしたがる。けれど、征服したところで、どうするというのか。



「それはほら、人間主体の世界を、モンスター主体の世界に変えるとか。そういうことや」



「話し合って共存したほうが、ええんとちゃいます?」



「うむ。どうなんですかねぇ」
 と、魔王は先生に教えを乞うていた。



 しかも、言葉づかいが丁寧だ。主従関係がハッキリと見える。



「相変わらずだな。ドメくんは。イチャモンばっかりつけてッ」
 先生の激怒が落ちてくる。



「イチャモンとちゃいますやん。単純な疑問ですやん」



「だったらモンスターは人間を食らうことにすれば良い。魔王は世界征服して、人間を家畜として飼育したいのだ」



「うわぁ。えげつないこと思いつきますね」



「それならスライムなどの弱小モンスターを倒す大義名分も出来るというものだ。どうだ。これで文句はなかろう」



 さすが先生ですな――なんて魔王は言ってる。それで良く魔王をやってられるものだ。



「おしゃべりは、そこまでだ」
 と、ケィケィさんが一歩前に出た。



「あ、やめてくださいよ。殺されますって」
「案ずることはない。私も無駄死にはしない」



「何か勝算でもあるんですか?」



 口を開けば威厳のカケラもない魔王だ。が、風貌は巨大なドラゴンだ。しかも皮膚は甲殻のようなウロコのようなもので覆われている。伝説の剣があるとはいえ、どうやって倒せばいいのかわからない。



「勝算はない」
「えー」



「だが、私とてこの物語のキャラクターの1人。この物語を紡ぎあげるためには、死ぬことすら怖れてはいまい」



 参る、とケィケィさんは剣を抜いた。



 魔王が大きな指でデコピンをした。魔王の人差し指に弾かれて、ケィケィさんは奈落の底へと落ちて行った。瞬殺だ。



「あー」



 ギャグみたいに瞬殺された。人が死ぬのは悲しいことだが、あまりの早さに感動が置いてきぼりだった。



「こらー、ドメくん」
「なんですの先生」



「これは典型的なパターンではないか。仲間を殺されて、主人公が激怒する場面ではないか。もっとヤル気を出したまえ」



「そんなこと言われたかて、ケィケィさんとはさっき会ったばかりやし」



「ほら、魔王を倒すのだ」
「そんなこと言われましても……」



 先生は魔王の手に握りこまれている。こうして先生と話しているだけでも、首が痛くなるほど見上げなければいけない。それだけ巨大なドラゴンなのだ。これにどうやって立ち向かえというのか。



 敵だと思うと恐怖があったし、臆する気持もあった。しかし、先生やリリさんに臆病だと思われたくなかった。オレにだっていちおう面目というものはある。



「えいっ」



 相変わらず抜けない刀で魔王の足を叩いてみた。カキンと金属音をあげて、跳ね返された。



「やっぱりムリですって、こんなんどうやって倒せって言うんですか。っていうか、先生は魔法を使えましたやんか。それでパパッと倒してくださいよ」



「魔王は勇者が倒すと決まっているのだ」
「なんか倒すコツとかありませんの?」



 そんなことを言っていたら、魔王の手によってオレもデコピンされた。人差し指で弾かれただけなのに、オレは吹っ飛ばされた。



 カラダが宙に舞ってるあいだ、スローモーションみたいになっていた。



 空をつかむようにして手を伸ばした。オレの手が石橋に引っかかった。



 足元を見る。



 どうやらオレも、ケィケィさんが落ちて行った奈落に吸い込まれようとしているようだ。



 死ぬ? 



 この物語の中で死んだらどうなるんだろうか? ホンマに死んでまうんやろうか?



 いつまでもこの異世界は続かない。



 ここは歴とした異世界ではない。先生のつくりだしたフィクションの中に過ぎない。オレはいつか……近いうちに現実に戻らなくちゃいけない。



 戻らなあかんねやったら、いっそこのまま落ちたろかなーなんて思った。

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