先生! その異世界小説、間違いだらけですやん!
なぜ、主人公はラッキースケベに出会うのか?
先生は、ベッドにもぐりこむなりドラゴンの咆哮のようなイビキをかきはじめた。わざとやってるんじゃないかと思うぐらい品がない。
先生に惚れる男は星の数ほどいるだろう。でも、先生に愛想を尽かす男も同じ数だけいるだろう。
男って生き物は、女性にたいしてある種の幻想を抱いていると思う。極端なことを言えば、アイドルはウンコしないとか、そういうこと。オレもそういうところがあると思う。でも、先生はそういう幻想を徹底的に潰してくる。
あんまりにもウルサイから、先生の顔にまくらを乗せておいた。窒息とかしないだろうかと心配だった。まぁ、先生のことだ。大丈夫だろう。
オレもベッドに入った。
その時だ。
ガタゴト。
外から物音がした。
窓を見る。月明かりに照らされて、人影が映っていた。ここは2階だ。相手は屋根にのぼって来ているということだ。
モンスターか?
しかし都市の周囲には城壁が張り巡らされている。不審者ということか。心臓が警戒心で動悸していた。護身用に銅の剣をたぐりよせた。とりあえず眠ったフリをしておこう。眠っていれば危害をくわえてくることはないだろう。金目の物は持ち合わせていない。何もせずに引き返してくれることを願おう。
薄く目を開けて不審者の様子を確認する。不審者は器用に窓を外から開けて、室内に入ってきた。こんなのはじめての経験だ。
こういうの強盗と言うんやろか。それともドロボウと言うんやろか。
不審者は部屋の中を見回しているようだ。そして、あろうことか、オレのほうに近づいてきた。
なんや? 何をするつもりや?
待てよ。いちおうオレは勇者ということになってる。もしかして魔王が送りつけてきた暗殺者とか? そうだとしたら寝たフリなんかしてる場合じゃない。
手元にある銅の剣で突き刺してやろうかと思った。躊躇した。近づいてくる人影をよく見ると、やや小柄なのだ。
もしかして女の子なんか? その女子はいよいよオレの顔を覗き込んできた。
今だ!
オレはその女子を抱え込んだ。そのままベッドに押し倒した。
「うぎゃっ」
と、いう叫び声はホントウに女の子のものだったから、オレは警戒心をゆるめた。
「いったい何の用事や?」
「ごめんなさい。別に悪気はなかったの」
オレはガムシャラに女の子をベッドに押し倒したわけだが、オレの手が女の子のちょうど胸に触れているのがわかった。わしづかみだ。やわらかい。あわてて離した。
「ご、ごめん」
なんでオレが謝ってるんだか。
これは主人公特有のラッキースケベというヤツだ。どうやらオレも主人公の風格が出てきたらしい。
「とりあえず明かりをつけるね」
ベッドの脇にあったロウソクに、少女は火を灯した。指先から火を出したようだ。魔法だろう。
明かりのおかげで少女の顔がハッキリと見えた。ビックリした。思いのほかカワイイ。髪は紅色のロングボブだった。あどけないドングリ眼に、鼻梁の通った鼻。桜色の唇をしていた。
「う、うわっ」
あんまりにも可愛らしいものだから、オレはベッドから転げ落ちてしまった。後頭部を床に打ち付けた。
ラノベとかアニメとかでは、メインヒロインの髪の毛は紅色であることが多々ある。他のキャラクターも青かったり緑だったりする。そんなカラフルな髪の毛ってどうやねんと思っていた。顔が可愛ければ、髪の色が何であろうと可愛いことを知った。
「大丈夫?」
「あ、うん」
ベッドに這い上がる。
こんなに騒いでも先生は熟睡している。相変わらず激しいイビキをたてている。
「別に驚かせるつもりじゃなかったの。あなたたちのことを見守りに来たのよ」
「オレたちを見守る?」
少女はベッドの上で正座していた。オレも向かい合うように正座した。
「私はサキュバスのリリ。魔王さまに言われて来たの」
「ほんなら敵やん」
しかし、敵意はまるで感じない。
「まぁ、いちおう勇者の敵ってことにはなるんだけど、でも戦いに来たわけじゃないの」
この世界はいろいろとお粗末なところがある。たとえば都市によって宿の値段が違っていたり、ダンジョンには宝箱が置いていたり。そういったお粗末さを直すために、魔王は先生とオレのことを、この世界に召喚したらしい。
「じゃあ、オレたちのことを異世界召喚したのは、魔王なんか?」
「そうよ」
ここでひとつヤヤコシイ問題が起きる。
オレと先生は魔王によって召喚された。しかし、実際のこの物語の主人公はそうではない――ということだ。
オレと先生はあくまでキャラクターに成り代わっているに過ぎない。そのキャラクターは王様によって召喚されたという設定だ。魔王が呼んだのは、このオレと先生の方だ。
「しかしまぁ、自分の作品の魔王に、物語がお粗末やと思われる作者って、どうなんやろか」
オレは思わず苦笑した。
ご本人は大イビキで眠りこけている。
「で、見守りに来たっていうのは?」
「あなたたちを召喚したは良いけど、先生はホントウにこの世界を変革するチカラがあるわけ。それは見たでしょ?」
「うん」
「いい方向に変えてくれるなら良いんだけど、変な方向に世界を変革されたら困るの。だから、ちょっと見守って来い――ってことで、魔王さまに遣わされてきたのよ」
魔王って、あのドラゴンなんだよな。
ドラゴンのくせに、そんな悩みを抱えているのかと思うと、チョット面白い。ドラゴンも先生に振り回されてるわけだ。
「それはまぁ、なんて言うか、お疲れさまやな」
「そういうわけだから、これからよろしくね」
見守るってことは、ずっと付いて来るのだろう。こんなカワイイ少女なら、オレとしても大歓迎だ。
先生に頼んだハーレムが期せずして出来てしまうかもしれない。こんなカワイイ女子と話ができる時点で奇跡に近い。ヤッパリ異世界は最高だ。
「うん。まぁ、言いたいことはわかったんやけど、別に窓から入ってくる必要はなかったんとちゃうかなぁ」
「だって私モンスターなんだもの。普通にお邪魔しますって入ってきたら変でしょ?」
「そういうもんやろか」
見た目は完全に人間だ。普通に入ってきても怪しまれることはなかっただろう。実際、怪しまれなかったから、城門棟を抜けて都市に入れたんだろうし。
もしかしてこの少女もボケ要因とちゃうやろうか。不安になってくる。
「じゃあ夜も遅いし、一緒に寝てもいい?」
「えッ。ここで寝るん?」
「ダメ?」
首をかしげて見てくる。
真っ赤なロングボブの髪が揺れる。
「あかんやろ。一緒のベッドで寝るのはいろいろと問題があるというか、なんというか……」
もしかしてリリさんも、性別気にしない系女子なんだろうか。それとも、モンスターだから人間なんてあまり気にならないのだろうか。
「あ、そっか。男性って女性と一緒にいると、ペニスをヴァギナにぶち込んでやりたくなるんだっけ」
カワイイ顔をして、トンデモナイことを言う。
これは先生以上のツワモノかもしれない。オレの顔は赤くなったり、青くなったりしているに違いなかった。
「そ、それはチョット語弊があるんだけど」
「どうしてもしたいなら、突っ込んでくれてもいいけど? 勇者に犯されるモンスターの構図ってけっこう興奮するし」
「えぇ……」
こっちがドキッとするような艶めかしい目をやってくる。
待てよ。たしかこの少女はサキュバスと言っていた。
それって淫魔だよな? あらゆるフィクションに登場して男性の精液を絞りつくしてらっしゃるモンスターだ。
「でも、今日は疲れてるから、する気がないんなら寝かせてもらうね。おやすみー」
リリさんはロウソクの火を消すと、ベッドにもぐりこんだ。
目の前で無防備に横たわる美少女。暗闇でもわかる白いウナジ。漂ってくる柑橘類の香り。手を出してもいい――みたいなこと言っていた。やってもいいのか?
心臓が激しく鼓動しはじめた。
「あのー」
返事はない。
もう眠ってしまったようだ。してもいいとか言っておいて、先に寝るとはいったいどういう了見なのか。
感度のいい爆弾を扱うように、慎重にオレもベッドにもぐりこんだ。で、オレはどうすればええんやろか?
リリさんは眠ってるのに、手を出してもええんやろか。ゴムとか持ってないんだけど、ええんやろか。っていうか、やってもいいってのは、何かの冗談やないのか?
疲れているとか言ってた。寝てる人を起こすのも申し訳ない。食わぬ据え膳。御椀のフタは閉ざされたまま。開ける勇気が沸いて来ない。まだまだオレは勇者ではない。
隣には先生もいる。知り合ったばかりの女性に手を出すというのも、どうかと思う。今日はオレも疲れているし眠ってしまおう。
しかし、寝れない。
女性のカラダの感触。吐息。香り。それから先生のイビキによって、安眠はさまたげられた。あんまりにも眠れないので、オレはベッドから出た。
先生が暴力的な寝相によって跳ね飛ばしてしまっている掛布団を拝借した。
床で寝た。
先生に惚れる男は星の数ほどいるだろう。でも、先生に愛想を尽かす男も同じ数だけいるだろう。
男って生き物は、女性にたいしてある種の幻想を抱いていると思う。極端なことを言えば、アイドルはウンコしないとか、そういうこと。オレもそういうところがあると思う。でも、先生はそういう幻想を徹底的に潰してくる。
あんまりにもウルサイから、先生の顔にまくらを乗せておいた。窒息とかしないだろうかと心配だった。まぁ、先生のことだ。大丈夫だろう。
オレもベッドに入った。
その時だ。
ガタゴト。
外から物音がした。
窓を見る。月明かりに照らされて、人影が映っていた。ここは2階だ。相手は屋根にのぼって来ているということだ。
モンスターか?
しかし都市の周囲には城壁が張り巡らされている。不審者ということか。心臓が警戒心で動悸していた。護身用に銅の剣をたぐりよせた。とりあえず眠ったフリをしておこう。眠っていれば危害をくわえてくることはないだろう。金目の物は持ち合わせていない。何もせずに引き返してくれることを願おう。
薄く目を開けて不審者の様子を確認する。不審者は器用に窓を外から開けて、室内に入ってきた。こんなのはじめての経験だ。
こういうの強盗と言うんやろか。それともドロボウと言うんやろか。
不審者は部屋の中を見回しているようだ。そして、あろうことか、オレのほうに近づいてきた。
なんや? 何をするつもりや?
待てよ。いちおうオレは勇者ということになってる。もしかして魔王が送りつけてきた暗殺者とか? そうだとしたら寝たフリなんかしてる場合じゃない。
手元にある銅の剣で突き刺してやろうかと思った。躊躇した。近づいてくる人影をよく見ると、やや小柄なのだ。
もしかして女の子なんか? その女子はいよいよオレの顔を覗き込んできた。
今だ!
オレはその女子を抱え込んだ。そのままベッドに押し倒した。
「うぎゃっ」
と、いう叫び声はホントウに女の子のものだったから、オレは警戒心をゆるめた。
「いったい何の用事や?」
「ごめんなさい。別に悪気はなかったの」
オレはガムシャラに女の子をベッドに押し倒したわけだが、オレの手が女の子のちょうど胸に触れているのがわかった。わしづかみだ。やわらかい。あわてて離した。
「ご、ごめん」
なんでオレが謝ってるんだか。
これは主人公特有のラッキースケベというヤツだ。どうやらオレも主人公の風格が出てきたらしい。
「とりあえず明かりをつけるね」
ベッドの脇にあったロウソクに、少女は火を灯した。指先から火を出したようだ。魔法だろう。
明かりのおかげで少女の顔がハッキリと見えた。ビックリした。思いのほかカワイイ。髪は紅色のロングボブだった。あどけないドングリ眼に、鼻梁の通った鼻。桜色の唇をしていた。
「う、うわっ」
あんまりにも可愛らしいものだから、オレはベッドから転げ落ちてしまった。後頭部を床に打ち付けた。
ラノベとかアニメとかでは、メインヒロインの髪の毛は紅色であることが多々ある。他のキャラクターも青かったり緑だったりする。そんなカラフルな髪の毛ってどうやねんと思っていた。顔が可愛ければ、髪の色が何であろうと可愛いことを知った。
「大丈夫?」
「あ、うん」
ベッドに這い上がる。
こんなに騒いでも先生は熟睡している。相変わらず激しいイビキをたてている。
「別に驚かせるつもりじゃなかったの。あなたたちのことを見守りに来たのよ」
「オレたちを見守る?」
少女はベッドの上で正座していた。オレも向かい合うように正座した。
「私はサキュバスのリリ。魔王さまに言われて来たの」
「ほんなら敵やん」
しかし、敵意はまるで感じない。
「まぁ、いちおう勇者の敵ってことにはなるんだけど、でも戦いに来たわけじゃないの」
この世界はいろいろとお粗末なところがある。たとえば都市によって宿の値段が違っていたり、ダンジョンには宝箱が置いていたり。そういったお粗末さを直すために、魔王は先生とオレのことを、この世界に召喚したらしい。
「じゃあ、オレたちのことを異世界召喚したのは、魔王なんか?」
「そうよ」
ここでひとつヤヤコシイ問題が起きる。
オレと先生は魔王によって召喚された。しかし、実際のこの物語の主人公はそうではない――ということだ。
オレと先生はあくまでキャラクターに成り代わっているに過ぎない。そのキャラクターは王様によって召喚されたという設定だ。魔王が呼んだのは、このオレと先生の方だ。
「しかしまぁ、自分の作品の魔王に、物語がお粗末やと思われる作者って、どうなんやろか」
オレは思わず苦笑した。
ご本人は大イビキで眠りこけている。
「で、見守りに来たっていうのは?」
「あなたたちを召喚したは良いけど、先生はホントウにこの世界を変革するチカラがあるわけ。それは見たでしょ?」
「うん」
「いい方向に変えてくれるなら良いんだけど、変な方向に世界を変革されたら困るの。だから、ちょっと見守って来い――ってことで、魔王さまに遣わされてきたのよ」
魔王って、あのドラゴンなんだよな。
ドラゴンのくせに、そんな悩みを抱えているのかと思うと、チョット面白い。ドラゴンも先生に振り回されてるわけだ。
「それはまぁ、なんて言うか、お疲れさまやな」
「そういうわけだから、これからよろしくね」
見守るってことは、ずっと付いて来るのだろう。こんなカワイイ少女なら、オレとしても大歓迎だ。
先生に頼んだハーレムが期せずして出来てしまうかもしれない。こんなカワイイ女子と話ができる時点で奇跡に近い。ヤッパリ異世界は最高だ。
「うん。まぁ、言いたいことはわかったんやけど、別に窓から入ってくる必要はなかったんとちゃうかなぁ」
「だって私モンスターなんだもの。普通にお邪魔しますって入ってきたら変でしょ?」
「そういうもんやろか」
見た目は完全に人間だ。普通に入ってきても怪しまれることはなかっただろう。実際、怪しまれなかったから、城門棟を抜けて都市に入れたんだろうし。
もしかしてこの少女もボケ要因とちゃうやろうか。不安になってくる。
「じゃあ夜も遅いし、一緒に寝てもいい?」
「えッ。ここで寝るん?」
「ダメ?」
首をかしげて見てくる。
真っ赤なロングボブの髪が揺れる。
「あかんやろ。一緒のベッドで寝るのはいろいろと問題があるというか、なんというか……」
もしかしてリリさんも、性別気にしない系女子なんだろうか。それとも、モンスターだから人間なんてあまり気にならないのだろうか。
「あ、そっか。男性って女性と一緒にいると、ペニスをヴァギナにぶち込んでやりたくなるんだっけ」
カワイイ顔をして、トンデモナイことを言う。
これは先生以上のツワモノかもしれない。オレの顔は赤くなったり、青くなったりしているに違いなかった。
「そ、それはチョット語弊があるんだけど」
「どうしてもしたいなら、突っ込んでくれてもいいけど? 勇者に犯されるモンスターの構図ってけっこう興奮するし」
「えぇ……」
こっちがドキッとするような艶めかしい目をやってくる。
待てよ。たしかこの少女はサキュバスと言っていた。
それって淫魔だよな? あらゆるフィクションに登場して男性の精液を絞りつくしてらっしゃるモンスターだ。
「でも、今日は疲れてるから、する気がないんなら寝かせてもらうね。おやすみー」
リリさんはロウソクの火を消すと、ベッドにもぐりこんだ。
目の前で無防備に横たわる美少女。暗闇でもわかる白いウナジ。漂ってくる柑橘類の香り。手を出してもいい――みたいなこと言っていた。やってもいいのか?
心臓が激しく鼓動しはじめた。
「あのー」
返事はない。
もう眠ってしまったようだ。してもいいとか言っておいて、先に寝るとはいったいどういう了見なのか。
感度のいい爆弾を扱うように、慎重にオレもベッドにもぐりこんだ。で、オレはどうすればええんやろか?
リリさんは眠ってるのに、手を出してもええんやろか。ゴムとか持ってないんだけど、ええんやろか。っていうか、やってもいいってのは、何かの冗談やないのか?
疲れているとか言ってた。寝てる人を起こすのも申し訳ない。食わぬ据え膳。御椀のフタは閉ざされたまま。開ける勇気が沸いて来ない。まだまだオレは勇者ではない。
隣には先生もいる。知り合ったばかりの女性に手を出すというのも、どうかと思う。今日はオレも疲れているし眠ってしまおう。
しかし、寝れない。
女性のカラダの感触。吐息。香り。それから先生のイビキによって、安眠はさまたげられた。あんまりにも眠れないので、オレはベッドから出た。
先生が暴力的な寝相によって跳ね飛ばしてしまっている掛布団を拝借した。
床で寝た。
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