話題のラノベや投稿小説を無料で読むならノベルバ

先生! その異世界小説、間違いだらけですやん!

執筆用bot E-021番 

なぜ、勇者はダンジョンに行かねばならないのか?

 そう言えばーー。



 ひとつ不穏なことを思い出した。たしか、先生は道中で死ぬとか言ってなかったか?



 そのことを尋ねようと思った。でも、尋ねるのが怖くもあった。



 先生に死なれたら困る。この世界の人たちが死ぬのとはわけが違う。



 尋ねることを躊躇してる間に、邪魔が入った。馬車が急停止したのだ。オレは馬車から転がり落ちそうになった。先生が受け止めてくれる。オレの頭が先生の大きな乳房でバウンドした。



「何かあったんでしょうか?」



 モンスターか何かが襲撃してきたのかと思った。



「別に心配することはない。次の都市へ行く山道で土砂崩れが起きているだけだから」



 ヤッパリそれも先生の筋書きなんだろう。



「それって心配することやないですか? ちゃんと行けるんですか?」



 先生は平然と首を左右に振る。
 プラチナブロンドの長いモミアゲが揺れる。



「残念ながら、このままでは通れない」
「知ってるんなら出発する前に教えてくださいよ」



「これは大事なイベントなのだ。次の都市へ行くためには、勇者はこの土砂を片付けるアイテムを獲得しなければならないのだ」



「何を言うてるんですか。兵隊とか何かが、片付けてくれはるでしょ」



「片付けない」
 即答された。



「オレがやらなあきませんか?」
「ああ」



「えぇー。チョット勇者のこと頼り過ぎとちゃいます? 土方とちゃいますやん」



 いったい勇者を何だと思っているのか。



「こういうイベントは定番だろう。道具を手に入れて、次の都市へ行くことが出来るなんて、ありがちじゃないか」



 先生はオレのことを諭すように言ってくる。オレが間違えたことを言ってるみたいな顔をしてる。



 フィクションではたしかに、ありがちだ。でも、ぜんぜん現実的じゃない。



 勇者が直さなかったら、土砂崩れが起きたままってどうなん? 率先して土砂崩れを直してやろうって人はいないのか。……おらんねやろうなぁ。



「そんなメンドウなこと、やりたくないですよ」



「そうは言うが、新しいアイテムを手に入れる機会じゃないか。欲しいであろう」



「欲しいですけど。どうせダンジョンとか行かなあかんのでしょ」



 先生はキレイな二重まぶたの瞳を、大きく開いた。



「よくわかっているではないか」
「もう予想つきますって」



 そのダンジョンにスライムしかいないならいいけど、それより強いモンスターがいたら困る。



 ゲームならモンスターを倒すたびに、経験値がもらえる。レベルが上がる。でも、これは小説だ。さすがに、そこまで非現実的なシステムは導入されていないらしい。つまり、スライム何匹倒しても、オレはオレのままってこと。



「せめてレベルが上がって、自分が強くなればダンジョンに行ってもええですけど」



「君は勘違いをしている」
 先生は人差し指でオレの額を小突いてくる。



「何がです?」



「ゲームのキャラクターたちのレベルが上がってるのは、別にそういうシステムが導入されているからではないのだよ」



「そうなんですか?」



「あれはモンスターを倒すたびに、コツをつかんで、筋力が上がって、精神的にも強くなっているということを視覚化しているに過ぎない」



「先生らしくない、マトモなことを言いますね」
「だから、ドメくんもガンバりたまえ」



 と、背中を叩いてきた。
 結局、そうなるのだ。



 オレはもう少ししぶとく粘ってみることにした。



「意外と通れるかもしれませんよ。ゲームとかで見る通行できない道って、いや、そこ通れるやん――みたいなの多いでしょ」



「うむ。ならば、見てみるか」



 馬車から出た。



 オレたちはガケの上にいた。すぐ横は断崖絶壁だ。下を覗きこんでみると森になっているようだ。



 ずっと馬車の中にいたから、まさかこんな危険な場所にいるなんて気づかなかった。そして、眼前では土砂が道をふさいでいる。たしかにこれは通れそうにない。



「っていうか、なんでこんな道を通ってるんですか。危なすぎますよ」



「そう怒るな。隣の都市へ行くには、この道しかないのだよ」



「どんな世界なんですかッ。通行の便が悪すぎるでしょッ。こんなんやったら、1日に1人はガケから落ちてしまいますよッ。勇者に土砂崩れ任せる前に、新しい道を作ろうとか思わんへんのですかッ!」



 先生に言ったつもりなのだが、御者の御老人が、



「すみません」
 と、謝ってきた。
 別にあんたには怒ってない。



「はぁ」



 隣の都市へ行くには、どう足掻いてもダンジョンに行かねばならないのだろう。先生がそう描いてるんなら、それしかないのだ。



 オレとしても、この付近にはとどまりたくない。魔王から逃げ出した勇者としては、居たたまれないのだ。

「先生! その異世界小説、間違いだらけですやん!」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く