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先生! その異世界小説、間違いだらけですやん!

執筆用bot E-021番 

なぜ、異世界人は勇者に丸投げなのか?

 コツン。



 後頭部に何か固いものがあった。石ころ。ドラゴンが暴れているから、その破片でも飛んできたのかと思った。違った。都市から逃げてきた人々が、オレに向かって石ころを投げているのだ。




「痛っ。な、なにするんですかッ」
「それはこっちのセリフだ!」
 そうだ、そうだ――と人々が叫ぶ。



「オレが何したって言うんですか。痛っ」



「勇者のくせに、何逃げてきてるんだ。魔王を退治するのが勇者の役目じゃないかッ」



 そうか。
 この世界の人々からしてみれば、そういうふうに見えているわけだ。



 勇者が魔王から逃げ出すというのは、警察官が強盗から逃げ出すみたいなもんなのかもしれない。



 でも――。



「無茶言わないでくださいよ。オレの装備ヒノキの棒ですよ。しかも防具も何もない、ただの学生服ですよ。こんなんでどう戦えって言うんですか」



 理不尽にもほどがある。



 しかもオレはまだ高校生だ。勉強が出来るわけでもなく、運動が出来るわけでもない。美的センスもないし、財力もない。マッタクの無力であるただの五体。



 そんなオレがドラゴンを倒せるなら、誰でも倒せる。むしろオレなんかに丸投げしてる市民どもは、恥ずかしくないのかとさえ思えてくる。



「ほら、行けー!」
「お前のせいだー!」
「戦えー!」



 次から次へと蛮声が飛んでくる。



 困り果ててしまった。石を投げられるし、罵声も浴びせられる。さりとて竜に戦いを挑む勇気もない。そもそも、あんな飛行してる生物にどうやって戦えと言うのか。



「先生。オレ勇者なんですよね? だったら魔王と戦える能力とかないんですか? 炎を出したりとか、空を飛んだりとか」



「ない」
 キッパリ。


「そんな殺生な! 主人公は何か都合のいい能力に目覚めるもんでしょう」



「ないんだな。それが」



 石を投げつけられながらも、オレはただドラゴンが都市を破壊してゆく場面を見ていることしかできなかった。



 先生が気をつかってくれたのか、オレの腕を引っ張って先導してくれた。先生は変な人だけれど、人並に情はあるし、頼りになる。女性を頼りにしているオレもどうかと思うけど、ドラゴンを相手にして泰然としてられるほど神経は図太くない。



 バッシングの嵐から逃げ出した。



 馬車に乗った。都市から都市へと移動するための、馬屋があった。今にも死んでしまいそうな老人が御者だった。天幕の張られた荷台に乗りこんだ。



 狭い空間で、先生と2人きりになった。天幕のおかげで馬車の中は暗かった。



 少し涙が出てきた。あからさまな憎悪を、たくさんの人から向けられたことなんてなかった。巨大な生物に襲われたのもはじめてだった。



 怖かったし、胸が痛かった。



 自分の矮小わいしょうさを思い知らされた。勇者というのも楽じゃない。……っていうか、別に勇者になりたいと思って、なったわけでもないんやけど。



 先生は黙ってオレの背中を撫でてくれた。泣いてるところを見られたのかと思うと、恥ずかしかった。垂れてくる鼻水を、服の袖で拭いた。



「どうだいドメくん。魔王を倒したくなっただろう」



「なりません」



「えー。あれは勇者が戦うヤル気を起きるイベントであるはずなのだなぁ」



「心折れそうです」



 あんなの見せられたら、恐怖で足もすくむというものだ。



 都市の人々はなす術もなく殺されていった。みんな勇者であるオレに期待をかけていたに違いない。オレのことを英雄か何かだと勘違いしていたんだろう。プレッシャー。半端ない。



「今すぐに倒す必要はない。それはダメだ。万が一、ここで魔王を倒してしまったら、物語が終わってしまうからな。そんなことになれば、小説のページ数が足りなくなる」



 先生は事あるごとにメタい発言をする。
 作者だから、かもしれない。




 だがそのおかげで、ささくれだっていた神経の皮がむけてくれた。



「この物語って、終わりまで描いてないんですよね?」



「うむ」



「じゃあ、そこから先はどうなるんでしょうか?」



 物語がある程度進んで行ったら、オレは現実に戻されるんやろうか? 



 それとも、引き続きこの世界が続くんやろうか?



 現実に戻るのはゴメンだ。けれど、勇者だと期待をかけられるこっちの世界も、それはそれで厭だ。魔王とかいうドラゴンを倒さなくちゃいけないのだ。現実か、異世界か……。



「私は続くと思うな」
「どうしてですか?」



 馬車がガタゴトと揺れる。



「私はこの物語を描いている途中で、筆が止まってしまったのだ。悩みに悩んでいたら、この世界に来た」



「ええ」
 それは聞いた。



「つまり、私に物語の続きを見せるために、この転移が行われたと思うのだ。私のスランプを脱するために。そうであるなら、続きを見せてもらわなくては困る」



 どういった現象によって、この転移が行われたのかは定かではない。だが、先生の考察は的外れでないような気がする。物語の中に入り込んで、何か得られる物と言えば、物語の続きぐらいだろう。



 ――ってことは、オレと先生を招いたのは、この物語自身なのかもしれない。



 まぁ、それは良いとしても。



「なんでオレまで、招かれるんですかね」



 続きを必要としてるんやったら、先生だけでええやないかと思う。異世界に付き合わされるのは悪くはないけど。



「それは簡単な問題だな」
「わかるんですか?」



「この物語の主人公を描くときに、ドメくんを想像していたからかな」



 なんでやねーん――と関西人の伝家の宝刀を抜くときか。それとも、本気で言ってるんだろうか? 



 それってつまり、先生にとってオレはわりと大事な人ってことだったり? 考え過ぎか?



「とにかく物語の結末がわからないってことは、オレと先生で創って行くしかないってことですね」



 じゃあ勇者として、いずれは魔王を倒さなくちゃいけないんだろう。



「そういうことだな」
 と、先生は大きく首肯した。

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