先生! その異世界小説、間違いだらけですやん!

執筆用bot E-021番 

なぜ、勇者は魔王討伐に赴くのか?

 先生と同じ部屋で寝るなんて緊張は消し飛んでいた。オレは恥ずかしすぎて、その日は轟沈していた。



 そのまま翌朝を迎えた。



 オレが起きると先生はまだ眠っていた。ローブははだけて、大股を開いて眠っている。この人には恥じらいという感情が備わっていないらしい。



 オレはまだ、トイレ事情を引きずっていた。この世界で生きて行くためには、今後もあのオマル方式を行わなければならない。思春期には辛すぎる所業だ。



 へこたれるな、オレ。きっとゲームや小説の主人公も同じ道を通ってきているのだ。



「何も恥ずかしくなんかない」
 と、口にして自分に言い聞かせた。



 紙があるだけ幸いだと思っておこう。
 泰然自若とした先生を、ほんの少し見習うべきかもしれない。



「先生。朝になりましたよ」
「うむぅ。あと5分」
「何を子供みたいなこと言うてるんですか」



 オレのカラダは5時30分に起きる癖がついている。この世界に時計はないみたいだけれど、たぶん今は5時30分だろう。



 いつもはすぐに朝支度をして、学校に通うのだ。でも、考えてみれば、何もこんなに朝早く起きる必要はない。ここは異世界。学校もないのだ。



 学校に行かなくてもいいのなら、ツボに糞することぐらいなんでもない。先生が起きるまでもう一眠りすることにした。



 いい匂いがして、目が覚めた。
 先生が朝食を取っていた。



「あ、先生。おはようございます」
「ドメくんは寝坊助さんだなぁ」



 先生に言われたくはない。



「何を食べてるんですか?」



「見ての通り。パンだ。ドメくんの分もあるぞ。朝、パン売りが宿まで来ていたから、買っておいたのだ」



「歯ブラシとかってありますかね?」



『朝食後に歯みがきする派』と、『朝食前に歯みがきする派』に別れると思うが、オレは後者だ。



「ブラシはない。布か何かで薬草を歯にすりつけておけば良い。水は水売りから買ってある」



「じゃあ、使わせてもらいます」



 薬草を使った歯みがきを終えた。ホンマに薬草ってのは便利なもんや。



 先生からパンをもらった。都市の外にある村々によって小麦が製粉されて、都市の中に小麦粉として運ばれてくるそうだ。で、都市の中で焼いてパンにする。先生にしてはなかなか工夫された設定だ。



「先生、オレたちはこれからどうすれば、ええんですかね」



 パンは日本で食べるものより、美味しい気がした。
 石釜で焼いているそうだから、そのおかげかもしれない。



「とりあえず、次の都市に行こうではないか」



「もしかして、ホンマに魔王を倒しに行くつもりやないでしょうね。ムリですよ、オレ。知ってると思いますけど、オレは何の特技もない高校生なんですよ。スライムならまだしも、魔王なんか倒せませんから」



「勇者よ。君がやらなくて、誰が魔王を倒すというのだ」



「はぁ」



 こんなときだけ勇者呼ばわりしてくる。



 だいたいフィクションの勇者たちは、どういう意気込みで、魔王討伐の旅路に出るのだろうか。自分がやらなくてはいけないという使命感に燃えてるんだろうか。



 たとえ親族が殺されても、世界が滅びようとも、そんな闘志が沸いて来る気がしない。



「君は主人公なのだ。もっとヤル気を見せてもらわなければ、困るであろうが」


 
「そんなこと言われましても」
 魔王を倒してこい。はい、わかりました――とは、ならない。



「そんなドメくんのヤル気を起こさせるイベントが、そろそろ起きるはずだ」



「イベント?」
「とりあえず、食べたら宿を出ようではないか」
「はい」



 宿を出るさい。部屋にあったツボを割ったことを、宿屋の主人に謝っておいた。主人は怒る様子もなく許してくれた。



 どうやら勇者がツボを割ってもいいとかいう、謎の法律は実在しているようだ。

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