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先生! その異世界小説、間違いだらけですやん!

執筆用bot E-021番 

なぜ、はじまりの町は宿代が安いのか?

 大きな塔があった。その塔が都市の出入り口となってるらしかった。クロスアーマーと言うのだろうか。布の鎧を着た兵士たちが門番をしていた。外に行きたいと言えば、「お気をつけて行ってらっしゃいませ」と丁寧に頭を下げてくれた。



「なんかヤケに、門兵の物腰が低いですね」
 通行手形とか必要なのかと思っていた。



「トウゼンであろう。ドメくんは勇者なのだ。この物語の主人公なのだからな。有名なのだよ」



 自分の姿を見る。学生服姿で木の棒をぶら下げているだけだ。えらく貧相な勇者もいたものだ。



「自分が有名だって思うと、なんか照れ臭いですね」



 考えてみれば都市の中にいるときも、人々の視線が集中していた。学生服だから注目されていたのかと思っていた。勇者だから憧憬しょうけいのマナザシで見つめられていたのかもしれない。そう思うと照れ臭い。



「良かったではないか。毎日、パッとしない生活を送っていたのであろう。私の世界の主人公になれたことを光栄に思うが良い」



 先生は大きな胸を張ってそう言った。黒いローブの内側で乳房が揺れるのがわかった。



 この世界ってブラジャーとかあるんやろか。考えただけで、顔が熱くなってくる。下腹部に熱がこもってきたから、これ以上変なことを考えるのはやめた。



「たいていの人はパッとしない人生送ってますよ。人生はクソゲーやって、それイチバン言われてるんですから」



「そうだ。人生とかいうクソゲーをつくった神様に、もっと文句を言ってやれ。作品の文句を言われるのが、作者としてはイチバン傷つくのだからな」



 わははは、と先生は笑う。
 この人はどこの世界に言っても、悩みなんてなさそうだ。



 両親が心配してないかが、多少気がかりだ。オレの父も母も中小企業で働いている。父は紳士服の工場で、母はネジをつくる会社だと聞いたことがある。


 
 2人とも忙しいから、あまり家にはいない。オレが寝ている頃に帰ってきて、朝起きたときにはもう出勤している。



 オレが帰らなくても、あまり心配しないかもしれない。先生のことはオレの両親も知っている。先生とどこかで遊んでいるのだろうと思ってくれていれば良い。



 っていうか、異世界転移をしてる小説の主人公って、両親のこととか気にならんのやろうか――と、関係のないことを思った。



「おっ。ドメくん。正面を見たまえ」



 緑の海とも言える平原が広がっている。そこに石畳によって舗装された通路が伸びている。通路の左右には木造の柵が設えられている。柵に青い粘液がへばりついていた。



「もしかして、あれがスライムですか」
「どう見てもそうだろう」



「モンスターって、ダンジョンとかじゃなくて。こういう平原に普通にいるんですね」



 民衆もふつうに行き交っている。



 兵士と思われる人たちが、スライムのことを槍で突いていた。いちおう、モンスターを倒すことには積極的なようだ。



「うむ。だから商人なんかは、兵隊を連れて都市を行き交うという設定にしたはずだ」



 あれなら、オレでも倒せそうだ。



「ヒノキの棒で突いてみましょうか」
「そうしたまえ」



 木の柵にへばりついてるスライムに、ヒノキの棒の先端を当ててみる。スライムは怯えたようにカラダを縮こまらせた。



「なんか、カワイイんですけど」
 こんなのを倒すんだろうか。



 ゲームや小説の主人公は、平気でスライムを蹂躙していく。



 いったいどんな神経をしてるんやろうか。生物を殺すことに罪悪感はないんか。



 もしも、これが地球なら動物愛護団体によって、たちまちスライムは保護されるに決まってる。勇者がスライムを倒してるなんて知られたらツイッター炎上間違いなしだ。



「モンスターっていうからには、もう少し獰猛そうなのにしたほうがええんとちゃいます?」



 これだったらただの動物虐待だ。



「じゃあドメくん、最初から急に10メートルぐらいある一つ目の巨人なんかが出てきたら、戦えるのかね」



「スライムで良かったです」
 そうであろう、と先生は満足気にうなずいた。



「さあ、抹殺してゴールドをいただこうではないか」



「はぁ」



 南無阿弥陀仏。
 いや。
 中世ヨーロッパを意識してるらしいから、アーメンのほうがええか。



 ヒノキの棒でスライムを貫いた。スライムは大きく痙攣すると、木の柵から落ちていった。液体となり地面に溶け込んでいった。あとには、金貨が2枚残されていた。



「宿代って、どんなもんなんですかね」
「たしか最初の町の宿泊費は5ゴールドだったはずだ」



「安ッ」
 思わずひっくり返ってしまった。



 焼き鳥1本と、同じ料金で部屋を提供してくれることになる。



「トウゼンであろう。最初の町は宿泊費が安いものだ」



「何でもっと早くに言ってくれへんかったんですかッ。わざわざスライム倒しに来なくても良かったやないですか!」



 ヒノキの棒を振り回して訴えた。



「まぁ、落ちつきたまえ。装備とか薬草とか食費もかかるだろう。宿泊費が5ゴールドでも、モロモロのものにお金がかかるではないか」



「だいたいなんなんですか。5ゴールドの宿って。そんな宿を経営してる主人は儲かってるんですか。お客さん泊めて、焼き鳥1本分の収入しかありませんやんッ。ゼッタイ赤字ですやん。経営破綻ですやん」



「こらッ。ドメくん」
 叱責されて、オレは委縮した。



「はい」



「君も融通がきかないなぁ。こういうのはお決まりではないか。最初の宿代は安いものだ。実家から離れるたびに、宿代というのは高くなるものなのだ」



「どういう理屈なんです」



「それは、最初は敵が弱くモンスターが落とすお金が少ないであろう。宿代を稼ぐとなると大変だから、最初を安くしておいてやろうという、主人公への配慮ではないか」



 そんなことは聞いていない。



「それはゲームの話でしょう。これって先生が描いた小説の世界なんでしょう」



「いかにも」



「せやったら、そんなゲームテイストにせんでもええですやん。最初の町の宿代が安いとか意味わかりませんって」



 先生は泣きそうな顔になってしまった。眉を「八」の字にして、唇をすぼませた。



「意味。わからんであろうか?」



「そんな顔せんといてくださいよ。冷静になって日本で考えてみてくださいよ。どこの宿もだいたい同じような値段でしょう。そりゃ高級なところとかは、別格ですけど」



「ふむ。たしかにな。これはリアルに戻ることがあれば、原稿を書きなおしておく必要があるか」



 いや、普通はもっと早く気づくだろう。これ以上、突っ込むのは止めておいてあげよう。もう少しでホントウに泣きだしてしまいそうだ。それに、宿代が安いのは実際に助かる。

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コメント

  • 執筆用bot E-021番 

    ありがとうございます。公募の新人賞に応募したものなので、最後まで書き上げています。推敲しつつ投稿してゆきます。m(_ _)m

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  • アッキー

    おもろいです。頑張ってください。

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