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先生! その異世界小説、間違いだらけですやん!

執筆用bot E-021番 

なぜ、モンスターはお金を持っているのか?

 先生はお酒を飲み終えると、食事を注文していた。



 猫耳の店員が焼き鳥を並べて行く。ヒクヒクと動いているところを見るとホンモノの猫耳なんだろう。



 それを見ていると、小説の中に入り込んでしまった理由なんて、どうでもいいように思えてきた。


 
 転移してきた理由。これが小説の中だと言うのであれば、いずれ解説されるはずだ。最後まで異世界転移してきた理由が謎なんてことはないだろう。



「焼き鳥は存在してるんですね」



 先生の口に運ばれていく、モモ肉を見てそう言った。



「存在してる動物をどうするか、かなり悩んだ。モンスターだけにするのか。地球の動植物も存在してるのか。しかし、地球の動植物が存在していたほうが、書きやすいから、こうしたのだ。つまり、食文化も地球と似ている」



 そうか。



 先生が執筆していた世界なのだ。つまり、存在している物も人も文化も、先生の筆1つにかかってるわけだ。



「オレも1本もらってもええですか?」
 事態が呑み込めて安堵したせいか、急にお腹が空いてきた。



 学校でもそろそろ昼休みの時間だ。



 先生は、ナワバリを守る猫みたいな顔をして見つめてくる。……ダメなんだろう。



 オレの分も注文することにした。王様から50ゴールドもらったところだ。焼き鳥は1本5ゴールドだった。勇者にたいして焼き鳥10本分の費用しか渡さない王様って、どないやねん。



「ひとつ気になることがあるんですけど」



 オレのもとにも焼き鳥が運ばれてくる。小説の中にいるとは思えないぐらいリアルな感覚が伝わってくる。食べてみると味もちゃんと感じることが出来た。



「なんだね?」



「オレって勇者みたいなんですよ。お前勇者やから魔王倒して来いって、王様に言われたんです。ヒノキの棒とか渡されて」



 腰に携えていた木の枝をテーブルに置いた。こうしてあらためて見ると、ホントウにただの木の枝だ。



「と、いうことは、ドメくんは主人公なのだろう」



「マジですか」
「マジなのだよ」



 そんな冷静に言われても。



 王様の理不尽さを思い出すと、ムクムクと怒りが込み上げてきた。



「じゃあ王様のセリフとか言動とかも、先生が書いたんですよね」



「私が書いたことを完璧に再現してるとは思えないが、あらかた同じであろうな」



 モモ肉の串焼きが、先生の口の中に消えてゆく。先生の投げ捨てた竹串が、コロコロとオレのもとまで転がってきた。



「ちょっと理不尽すぎません。あの王様?」
「そうか?」



「だってヒノキの棒と布の服と、50ゴールドですよ。焼き鳥5ゴールドですやん。10本食べたら勇者の財産なくなりますやん」



「まぁ、最初はそんなものであろう」



 先生は淡々と答えた。
 どうやら焼き鳥を食べるのに夢中らしい。



「たしかにRPGのお約束ではありますけど、勇者にされた身としてはたまったもんやありませんよ」



「そうかい?」



「そうですよ。っていうか、ホンマに魔王を倒して欲しいと思ってるんやったら、もっと豪華な武器をくれてもええやないですか」



 ヒノキの棒とか渡されても、最初から諦められているようなものだ。



「最初からいい装備を与えたら、物語が終わってしまうだろう。苦労して最初のモンスターを倒すから面白いのじゃないか」



 ゲームの主人公も、最初からレベルカンストだったら面白くないだろう。



 最近は主人公最強物の小説とかもある。だが、先生はすでにある程度描いてしまってるようだから、いまさら文句を言ってもしょうがない。



「そんなメタい発言とかしちゃうんですね」
「私の小説だからな」



 モグモグと先生は一所懸命に口を動かしている。



「小説やったら、なおさら筋は通したほうがええと思いますけど」



「じゃあ、もうすでに何人も異世界人が転移してきているのだ。王様も、魔王討伐をなかば諦めてるから、ヒノキの棒しか渡してくれないってことで良かろう」



「適当ですね」
「筋が通っていれば良かろう」



「まぁ」
 それなら、渡される装備が貧相なのにも納得がいく。



「オレが勇者だったら、先生はどういう役目なんですか?」
 ふと気になってそう尋ねてみた。



「おそらくこの状況から察するに、私はヒロインだな」
 ヒロインと聞いてドキッとする。



 じゃあ、オレと先生の物語がこの先、紡がれてゆくわけだ。先生はやや変わったところがある。けれど、容姿は美人だ。オレの16年という短い期間で見てきた女性の中で、イチバン美しいと思う。



「たしか、主人公の義姉という設定だったはずだ。勇者とともに異世界に転移してきたのだ」



「ぎ、義理の姉ですか」



 オレには兄弟も姉妹も従妹もいない。だから義姉というのが、どういうものかピンと来なかった。



 きっと複雑な家庭環境の勇者なんだろう。



「私は勇者の仲間になる。魔法使いだな。たしか道中で死ぬ設定だったはずだが」



 アゴに付着していた焼き鳥のタレを拭いながら、先生はそう言った。



「ダメですやん」



「とはいえ、それは私が書いた物語であるからな。別に、私たちが物語通りに動くとも限らないだろう」



 それもそうだ。
 先生は作者だ。



 作者が自分の小説の中で死ぬなんてことはないと思う。……ないよな?



「じゃあ、オレたち、これからどないします?」



「野宿というわけにもいかんからな。とりあえず宿代が要る」



「でもオレ。30ゴールドしか残ってませんよ」



 焼き鳥1本5ゴールドの世界なのだ。30ゴールドで宿泊できるとは思えなかった。



「私もこの食事代でスカンピンになった」
「えぇ……」



 この人は、持ち金全部を酒とツマミに費やしてしまったのか。呆れた人だ。



「問題はない。モンスターを倒せば、お金を落とすから」



「モンスターがお金を持ってるって、変やありませんか?」



「お約束だ」
「ゲームではそうなってますけど」



 先生は食べ終わった焼き鳥のクシを爪楊枝がわりにしていた。プラチナブロンドの美女なのに、言動に品がない。まるでオッサンだ。オレはもう見慣れてしまっているから、いまさら引いたりはしないけど。



「どういう仕組みなんです。モンスターがお金持ってるって」



「そりゃ道行く人間から、強奪したのであろう
 モンスターだからな、と先生は付け加えた。



「モンスターは人間の通貨なんて使わないでしょう。強奪する理由ってありますかね」



 ふむ、と先生は腕組みをした。
 どうやら思案中らしい。



 そこのところを考えずに、物語を描いたんだろうか。



「きっと人間をおびき寄せるために、持っているのであろう」



「なるほど」
 たしかに、それは一理あるかもしれない。



「でもオレ、モンスターとか倒せる自信なんかありません」
 しかも、ヒノキの棒だ。



「案ずるな。この辺りにいるモンスターはスライムぐらいだ。ドメくんでも充分倒せるモンスターだ」



 スライムか。
 RPGではおなじみだが、どれぐらいの強さなのか曖昧としている。



 ゲームの主人公は裸一貫でも難なく倒している程度だ。あわよくば踏みつけるだけでも倒せるかもしれない。そんなに怯えることはないかもしれない。



「さあ、ドメくんよ。グズグズしてないとさっさとモンスターを倒して、お金を稼ぎに行こうではないか」



 先生はテーブルの上に立ち上がって、そう叫んだ。



 周囲の人たちがいったい何事かと疑うようにこっちを見てる。顔から火が出てきそうだ。あわてて先生のことをテーブルから引きずりおろした。

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