旦那様と執事な神様

きりんのつばさ

俺が彼女のために出来ること







俺が月詠さんを連れ立ってパーティ会場に入ると
周りから様々な声が聞こえてきた。

“なんだ、御堂さんの隣にいる美女は?“
”今まであの人があんな美女を連れてきた記憶
なんて無いぞ?“
”おい、良く見ろ。あれは女執事だ。
いつも兼続さんの後ろに控えている秘書の“
”綺麗……“


「ふっ……」
どうだ? 俺の彼女美人だろ〜?
「どうか致しましたか?」
「いや、何でも無いよ」
ただ俺の彼女、綺麗だろう〜と優越感と自己満足に
浸っているだけですよ。
「それにしても旦那様、何か本日は皆さんからの視線を
強く感じるのですが……」
恥ずかしいのだろうか俺の手をしっかり握っていて
おどおどしている。
……それがまたいつもとは違い可愛いのだが。
「うん、多分それは気のせいじゃ無いと思うよ」
「やはり私のドレスが変だからでしょうか?」
「いやいや似合っているからみんな、月詠さんの事を
見ているんだよ」
「私ですか? ちなみにお聞きしますがだ、旦那様は
今の私をどう思いますか?」
「とっても綺麗だよ、似合っている」
俺がそう言うと彼女は顔を真っ赤にしながら
「……ッ!! あ、ありがとうございます……
旦那様にそう言われて光栄です」
恥ずかしそうに言ってきた。
……見てよ、この可愛い執事!!
もう最高でしょ!!
今すぐパーティを切り上げて屋敷で
俺だけがそのドレスを見ていたい!!
「……たまらん」
心の中でガッツポーズをしていた。
「旦那様……? いきなりどうされましたか?」
「自分の決断を自画自賛していただけかな」
「……決断、ですか?」
「こっちの話だから気にしなくていいよ」
「ーー騒がしいと思ったら貴方だったのね女執事」
「……いちいち来るよな、お前は」
そこには麗華がいた。
彼女のスタイルを前面に出して、その上で更に
引き立てる様な赤いドレスを着ていた。
……色やドレスの特徴として月詠さんとは
全くもって正反対だ。
「白河様、これは」
「ふんっ、そんな格好してそんなに兼続に見初められ
たいのかしら?
ーー泥棒猫さん」
と侮蔑する様に言い放った。
その時一瞬、月詠さんが悲しそうな顔をしたのを
俺は見逃さなかった。
「悪いがドレスを着てと頼んだのは俺だ」
「……貴方は自分が何をしているのか分かっているの?
今この女が世間でどんな風に言われているのか
知らない訳じゃないわよね?」
「あぁ知っているさ。どっかの馬鹿が書けとでも
圧力かけたんだろうけどな」
「あら? 私を疑っているのかしら?
そんな事を私がするはず無いでしょ?」
と明らかに勝ち誇った表情をしていた。
つくづく性格悪いなと思う。
「まぁ一応、見た目はいいからどこかの後妻にでも
入れておくことは出来るかしら」
「麗華!!」
「だって兼続、貴方には私という世間的に認められて
いる婚約者がいるのよ? そんな女はいらないでしょ?
再就職先ぐらいは探してあげるわ」
と言うと去っていった。
「ごめんね月詠さん」
「私は大丈夫ですよ。それよりも旦那様こそ
申し訳ありません……」
「何で君が謝るの?」
麗華が謝るならありえるが。
「いえ私が旦那様に相応しい容姿の彼女でしたら白河様に
変な文句を言われる事は無かったのではと……」
ぎゅっ
俺は月詠さんの手を強く握り返した。
「旦那様……?」
「大丈夫」
「えっ」
「もう終わらせるからさ」
「何をでしょうか?」
「この複雑な関係も今日で終わらせるから月詠さんは
心配しないで、俺に任せて」
「何をするおつもりでしょうか……?」
「大丈夫、もう君を泣かせない様にするから」



そしてパーティが始まりしばらくすると参加者の中で
比較的に有力者による演説が始まった。
「では、御堂兼続様からお言葉をいただきたいと
思います。御堂様、こちらへ」
と司会者が俺をステージに呼んだ。
いつもは断っているのだが今回は引き受けた。
「旦那様がお引き受けするなんて珍しいですね」
「あぁ、まぁ今回はどうしても必要なんだ」
「……?」
「とりあえず行ってくるね。月詠さんも一緒に
来てもらえるかな?」
「では、私もお後ろに控えさせていただきます」
と一緒にステージに登る。
ステージに上がると結構な人が俺を見ていた。
改めて春翔の家というのは名家なのだと思い知らされて
いるのだが、ここで怯んでいてはこれからすることは
絶対成功しないだろう。
「ご紹介に上がりました御堂兼続です。
本日はこの様な素晴らしいパーティに呼んで下さった
三条家の方々には感謝の気持ちしかありません。
三条家のご長男の春翔さんとは幼稚園の頃からーー」
と当たり障りの無い話を続ける。
まずはこの普通の話をして自分の心を
落ち着かせようとした。
「ーーと春翔さんに連れられて山のキャンプでは
危うく遭難しかけて一時は死をも覚悟しました」
所々で観客の笑いを取りながら自分の中で心を
必死に落ち着かせようとした。



そしてしばらく話していると心が自然と落ち着いてきた。
なので本来の計画に移る事にした。
「ーーさてここまで私にあった事をお話ししましたが
私がここまでこれたのはとある人物のお陰があったから
だと私は思っています」
とそこで一度言葉を区切り
「その人物とは今も、私の後ろで私を支えてくれている
橘月詠さんです」
言った後に後ろを少し見たら月詠さんは驚いた顔を
していた。
「彼女は最初、私の家の執事として来ました。
それからは私の専属執事として色々な世話をしてくれて
私の家が没落した時も、社長の頃も私をあらゆる面で
私を支えてくれました」

そうだ。
俺は月詠さんがいたからここまで来れた。
もし彼女がいなかったら今頃俺はどうなっていたのか
予想がつかない。
もしかしたら俺はいなかったかもしれない。

「正直私にはもったいないぐらいの執事です。
ですが最近、報道では彼女を中傷する言葉や記事で
溢れています。それが私には我慢出来ません」

月詠さんは悲しんでいる顔は俺の前ではあまり
出さないが影で泣いているのを俺は偶然見てしまった。
いくら“元”神様であっても連日あんな報道をされたら
心にくるのだと思う。
そんな彼女に俺は何をしてあげられるのだろうか。
最近は連日そんな事ばっかり考えていた。

「報道では彼女が俺をたぶらかしたとか遺産が目的とか
書いてありますが全くの事実無根です。
こんな記事を書いた人も書けと命令した人間も
許せませんが一番許せないのはこれまで何もしなかった
私自身です。私がしっかりと意思を示していたら
彼女はこんなにも悲しませなかったと思います」

俺が月詠さんがなだめるのを無視していれば
彼女がこんなに影で泣く事はなかったのではと思う。
だからこそ俺は……今自分に出来る最大の誠意を
彼女に見せないといけない。

「ちょっと月詠さん、こっちに来て」
と後ろにいた月詠さんを手招きした。
「私ですか……?」
「そう、月詠さんだよ」
「かしこまりました」
と若干不思議そうな表情をしながらこっちに来る。
月詠さんが俺の隣に立つと、俺は彼女の方を向いた。
彼女は驚いた表情をしながらもまっすぐと
こちらを見てきた。
「俺さ、色々と考えたんだ。
俺を支えてくれた君に何をしてあげられるのかって」
「そんな旦那様……私はいつも旦那様から色々な事を
頂いております」
「いや俺は君から沢山の事を毎日もらっているんだ。
だからさ俺は今の俺に出来る最大限の誠意を君に
見せようと思う」
と言うと俺は懐から小包を出して片膝を立てた。
「だ、旦那様……? 」
驚いている彼女を尻目に小包の蓋を開けた。
「ーー橘月詠さん。俺と結婚してくれ」
「えっ……!?」
月詠さんは今まで俺が見た事がないぐらいに
驚いた表情をしていた。
「誠意を見せるって一体なんなんだって
俺なりに必死に考えてみて、とある結論になった。
それは
ーーこれからの俺の人生を以って月詠さん、君を
幸せにする事なんだろうって」
「旦那様……」
「君は俺の一番辛かった頃に俺を見捨てられたのに
見捨てずに最後まで見てくれた。
そんな君を俺はこれからの俺の人生を全て使って
幸せにしていきたいんだ」
「……」
「もし月詠さんさえよければこの指輪を受け取って
もらいたいのだが
ーーさて、どうかな?」
しばらく目を丸くして驚いていたのだが
「旦那様、そんな素晴らしい提案を私が拒否をするはずが
ございませんよ……」
と目に涙を浮かべながらも
「御堂兼続様
ーーはい、こんな私でよろしければ喜んで!!」
笑顔の月詠さんが返事をすると会場から歓声が上がった。




所々で俺達を祝福する声がする中で一際目立ったのは
「兼続ーー!! 良く言ったぁーー!!
俺はお前と親友で光栄に思うぞーー!!」
この会場で俺を兼続と呼び捨てに出来るのは
春翔ぐらいの事だろう。
声のした方を見ると
「うぉぉぉぉーー!! 素晴らしいぞーー!!」
春翔は泣いていた。
「あいつは何をしているんだか……」
「春翔様ですか? あの方はそういうお方なのですよ。
とてもお優しい方ですから」
「まぁ……あいつらしいな」
「ふふっ……旦那様は正直ではありませんね」
「なんだよそれ……ハハッ」
なんて2人で笑いあっている中
「ーーこ、こんなの認めないわ!!
な、なんで私があんな女に負けなきゃいけないのよ!!
おかしいわ!!」
1人、俺達の結婚に異議を示している人物がいた。
「兼続!! 貴方、私を切るのかしら!!
貴方は白河家に喧嘩を売ったのよ!!」
それは麗華だった。
そしてその周りには彼女の取り巻きも一緒にいた。
「あっそう言えばいたわ」
すっかり本来の目的を忘れていた。
「今すぐその結婚を破棄しなさい!!
そうすれば許してあげるわ」
「おいおい麗華、お前は何を言っているんだ?」
「何って貴方の隣に相応しいのは私のはずよ!!
だって私は貴方の婚約者なのよ!!」
「“元”だけどな。
ーーというかお前、今回良くもやってくれたなぁ。
出版社やフリーの記者に金を渡して月詠さんを
貶める様な記事を書かせただろう」
「そんなのどこに証拠があるのよ!!
証拠を見せなさいよ!!」
「お前とお前の家が金を渡した出版社と記者が全て
話してくれたよ」
「……ッ!?」
「まぁとりあえず俺が言いたいのはさ
ーー次、俺の月詠さんを貶めてみろ。
俺はお前を潰すことに何も躊躇いもしないからな」
「お、覚えておきなさい!!
私の家に喧嘩を売ったのだから覚悟なさい!!」
と捨て台詞を吐き捨てる様に言うと取り巻き達と一緒に
会場を出ていった。
「ふぅ……終わったかな。
まぁ明日から考えればいいか」
「ですね。お疲れ様です旦那様」
「ありがとうね月詠さん。
あとさ……」
「はい、なんでしょうか?」
「キスしようか」
「はい
……
……
……は、は、はい〜〜!?」
顔を真っ赤にして驚いている月詠さん。
「いやほら婚約した訳だし外野も……」

“キスーー!! キスーー!!”

「ーーなんて騒いでいるし……
みんなの要望に応えるのもたまにはいいかなって
思っているんだけど……というか俺もキスしたい!!」
「旦那様はご自身が何を言っているかお分りですか!?
ハァ……全く……でもいいでしょう。
では旦那様」
「あぁじゃあするね。あっ、その前に」
「まだ何かおありですか?」
「愛しているよ月詠」
「……ッ!? はい、私も兼続様を愛しております」
と俺達はステージの上でキスをしたのだった。

こんな感じで俺達の関係に主従の関係以外にも
新しく“夫婦”という関係が追加された。

……なお後日談だが、この後しばらくパーティで
プロポーズするのが流行するのであった。








次回で最終話となります!!

どうか最後までお付き合いください!!

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