旦那様と執事な神様

きりんのつばさ

世間では

俺が麗華の取り巻きに囲まれたパーティから数日後……
「とうとうお前が来たか」
「あらやだ。そんな嫌そうな顔をしちゃって
もっと喜びなさいよ」
「訪問してくる相手がお前じゃなければもう少し
笑顔を作るんだけどな、麗華」
そうなのである。
今目の前にいるのは俺の“元”許嫁である白河麗華だ。
今日の昼ぐらいに突如訪問してきた。
「他の子息なら私がいるだけでとても嬉しそうな顔を
するのに、貴方はしないのね」
「俺はそいつらとは違うんだよ。
で、今日は何の用だ?」
「ねぇ知っている? 最近貴方と私が近々婚約をするって
言う噂が流れているのよ?」
「おいおい、流せて命令したのお前だろ」
大方麗華が取り巻き達に噂を流せて命令したのだろう。
そしてそれをイエスマンの如く、パーティやらで
喋り広めたのだろう。
……全く白々しい奴だ。
「私がそんな事命令するはずがないでしょう?
思い違いも大概にして欲しいわ」
「果たして思い違いはどっちなんだろうな。
ーーで、話は終わりか?」
「いいえ、まだ話は終わってないわ。
ねぇ兼続、私達このまま婚約しないかしら?」
「いきなり何を言いだすんだと思っていたら
やっぱりそうなるのか」
最早想像通り過ぎて逆に笑えてくる。
「ほら、貴方と私って社会的にも容姿的にも
釣り合っていると思わない?」
「俺は全然思わないが」
「そう思っているのは貴方だけよ。周りでは私達は
お似合いだって噂が絶えないのよ?」
「噂を広めている奴がよく言うぜ。
あいにく俺はお断りだね」
そもそも俺には月詠さんって言う可愛くて綺麗な彼女が
いるから、彼女以外と結婚するつもりは無い。
だが俺がそう言っても麗華は話すのをやめない。
「貴方と私が婚約すれば御堂家と白河家の更なる発展を
確実のモノに出来るわ。今回の婚約は私達だけではなく
両家の未来の為にもなるのよ?
素晴らしい提案だと思わないかしら?」
「俺は御堂の発展に興味はもう無いんだけど。
そっちが発展したいなら他の家と婚約してくれ。
ーー月詠さん、麗華が帰るみたいだから下まで
送ってもらえるかな?」
「ちょっと兼続!! 貴方さっきから私の話聞いて
いるのかしら!? こんな魅力的な提案を貴方が
拒否する理由が無いと思うのだけど」
「だって俺に何もメリットが無いから」
というかそろそろ俺が麗華との話し合いに対して
嫌になってきた。
さっきから“家の発展”とかしか言わないから
聞いている方も飽きてくる。
「どうして? 貴方の家がこれから更に発展して
いけるのよ? 今回の騒動で勢力が落ちた御堂だけど
白河との付き合いが強くなれば再び……」
「悪いが俺は御堂の発展に興味は無い。
あと改めていっておくが俺には月詠さんと言う彼女が
いるからな」
と言うと麗華は俺の後ろにいる月詠さんを睨み
「ねぇそこの執事」
「月詠でございます」
「うるさい、名前なんて聞いて無いわ。
貴方と私、どっちが兼続に相応しいか分かっている?」
「それをお決めになるのは旦那様でございますから
私にあれこれ言う権利はございません」
とキッパリと言う月詠さん。
「執事なら旦那様の幸せを願って普通自ら身を引く
ものじゃないかしら?」
「おい麗華」
「あら? 私何か間違った事言ったかしら?
ねぇ兼続、今すぐこの無礼な執事をクビにして
くださらないかしら?」
「麗華!! いい加減にしろ!!」
怒っている俺を尻目に麗華は更に人を煽るような
喋り方で挑発してくる。
「あら兼続はそんなにこの執事が大切なのかしら?
貴方も見る目無いわね〜? まぁあの御堂だから
仕方ないといったらそうなのだけどね〜?」
「白河様、 その程度にしていただけませんか?
この月詠、私が馬鹿にされるのは幾らでも我慢しますが
我が主人を侮辱する事は許しません」
表情こそ変わらないが声には怒気が
明らかに含まれていた。
「というか執事のあんたもあんたよ。
普通執事が主人に恋をするっておかしいわよ」
「……ッ!!」
「だってそんなの世間が見たらどう思うのかしらね?
私に教えて欲しいわ?
ーー“どんな風に旦那様をたぶらかしたのか”って!!」
「わ、私は……決してそんな事を……」
「口ではいくらでもそう言えるわね。
でも、そんなのいくら口で言っても世間ではどんどん
自分達が好きな解釈をしていくわよ?」
「私は……」
「貴方のその軽はずみな行動で貴方が好きな旦那様が
世間ではどんな風に思われるのかしらねぇ?
貴方はどう思う“泥棒猫さん”?」
「ど、泥棒猫……? 私が……?」
ストン
突如、月詠さんが身体から力が抜けた様に膝から倒れた。
「月詠さん!? 」
俺が支えては見るものも殆ど彼女の身体に力が
入っていないことが分かった。
どうやら麗華に言われたのが余程ショックなのだろう。
「まぁ今日は帰ってあげるわ。兼続気が変わったら
いつでも連絡してきなさい?
私の方がそこで倒れている執事よりも貴方の隣にいて
相応しいと思うわ」
と言うと麗華は俺の屋敷を去っていった。



「大丈夫、月詠さん?」
俺は腕の中にいる彼女に話かけた。
「申し訳ありません旦那様、お恥ずかしいところを
見せてしまい……何と言えばいいか」
月詠さんは申し訳無さそうに言った。
「俺は良いって。とりあえず今日はもう仕事しないで
ゆっくり休もうか?」
「そ、それはいけません!! 私は執事なのですから
旦那様のお役に立たないと……」
と立とうとするが足に力が入っておらず歩けば
フラフラして見ているこっちがヒヤヒヤする状態だった。
無論そんな状態で執事の仕事をさせられる筈が無く
「とりあえず今日は休もう? ねっ?」
「ですがそれだと執事の存在意義が……」
「そんな状態の月詠さんを見ていると俺が辛いんだ。
だからお願い、今日は休んで」
俺がいつにもなく低姿勢で懇願すると彼女は
一瞬悔しそうな顔をした後、申し訳無さそうに
「誠に申し訳ありません……まさか白河様に言われた
一言でここまでこうなるとは思わなかったので……」
「良いって、今日は休もうよ。
明日から頑張ろうって」
「はい……旦那様には申し訳ありません……」
「良いって、一緒に部屋まで行こうか」
「はい……申し訳ありません……」
「別に月詠さんは悪くないって」
むしろ悪いのは麗華だろう。
「ですが執事として仕事が出来ないのは旦那様に
示しがつかないです……申し訳ありません……」
「今日はゆっくり休んで明日から頑張ってくれれば
俺はいいからさ、気にしないで」
「申し訳ありません……」
と俺が何を言っても謝ってばかりの月詠さんだった。

月詠さんにあんな事をいった麗華には怒りしかないが
愛しの彼女が弱っている時に気の効いた言葉を1つも
言えない自分に何よりも腹が立った。

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