旦那様と執事な神様

きりんのつばさ

意外とヤキモチ焼き

久し振りの更新となります。
お待たせしてしまい申し訳ありません……


俺が社長を辞任してからしばらくして
今日は春翔が俺の屋敷に来ていた。
「よぉ兼続じゃますんぜ〜」
「チッ、来たか……」
俺は春翔に向けて舌打ちをした。
「いきなり舌打ちか!?
というか古くからの親友にその態度は酷いーー」
「お前を親友だなんて思って無いぞ?」
「まさかの前提条件から否定か!?」
「春翔様、いらっしゃいませ」
「おぉ、橘さんか、遊びに来たぜ〜。
ほい、お土産だな」
「貴重なお土産ありがとうございます。
すぐにお茶とお菓子をお持ちしますね」
と春翔からのお土産を受け取ると厨房の方に
向かっていった。
「どうだ? 若くしての隠居生活は?」
そう言えば俺が社長を辞任してから
春翔が遊びに来るのは初であった。
「社長時代の忙しさに比べたら平和なんだが
ちょくちょく変な奴らが屋敷に来るから
対応が面倒ぐらいだな嫌な事は」
なんて事をぼやきながら言うと春翔は
「まぁ誰だって権力者の権威を使いたいもんだからな。
俺も似たようなもんだぜ」
そうだった。
こいつもこんな性格をしているが国内で何人もの
大臣や総理大臣を輩出している政治界一家の長男だ。
俺と似たような境遇であった事を思い出した。
「……お互い大変だな」
「ハハッ〜!! 慣れたら楽だ!!」
「ごく稀にお前のその性格が羨ましいよ」
「そうだろう? 俺のこのポジティブ」
「ーーその能天気さがな」
「そこかいーー!!」
「旦那様、春翔様、お茶とお菓子ををお持ちしました。
本日はスコーンをお作りしました。
お2人のお口に合えばいいのですが……」
と言いながら俺たちの目の前に
美味しそうなスコーンが置かれた。
「月詠さんの料理なら何でも大丈夫」
「兼続ならそうだな!! 例え毒薬もられても……」
「ーー月詠さん、この家にある一番強い毒薬って
何かな? 試したい事がある」
「ここに王水があります」
「それって何でも溶かす液体だよな!?
俺化学の授業で先生が雑談の中で話していた液体だ!!
というは何故それがあるんだ!?」
「執事たるもの主人の全ての要望に応えるのが
当たり前ですから」
「月詠さん絶対使い方間違っているからな!?」



そんな感じで雑談月詠さんを含めた3人で雑談してると
「まぁお前と月詠さんが仲よさそうで良かった」
「まぁなお陰様で、と言うのだろうかな。
世間の人々は俺に彼女がいるなんて知らないのかね?」
「ハハン〜その口調だと未だに来るのか
ーーお見合いやら縁談やらの話が」
「察しが早くて助かる」
「相変わらず大変だな社長も」
「一応“元”なんだけどな」
俺の屋敷に最近来る目的で増えてきたのは
お見合いや縁談関係だ。
早い話、俺と血の繋がりがあれば色々と便利なのだと
持ってくる側は踏んだのだろう。
前から一応、月詠さんが彼女だと公表はしているが
そんな俺の細やかな断りは無視されている。
まぁこれらの事は無視すればいいのだが実は無視
出来ない理由が俺にはあって……
「そうですね近頃は旦那様は大層モテていますからね。
執事として大変嬉しい事でございます。
ーー嬉しいのは“執事”としてですが」
俺が縁談系の話が来る度に困っている原因と
なっているのは月詠さんだ。
彼女は縁談やお見合いの話が来る度に不機嫌になる。
しかも最近分かった事なのだが、月詠さんは意外と
ヤキモチ焼きであり、それを仕事の最中に出さないが
後にかなり言葉責めを食らうので正直勘弁して欲しい。
「あと春翔には済まないがお前のお父さんが企画する
パーティに呼ばないでもらえるか?
ーー理由は察してくれ」
「何が察してなのでしょうか旦那様。
私に隠し事を出来るとお思いですか?(ニコッ)」
と笑顔で言われる。
(怖い!! その満面の笑みが逆に怖い!!)
「わ、分かった……俺の親父にも言っておく……」
と若干引きつった顔で頷く春翔。
「……頼む」
「私からもお願い致しますね(ニコッ)」
「お、おう……月詠さんから頼まれたらしょうがないな。
全力で親父に提言しておく」
俺は未だかつて春翔のこんな真面目な表情と声のトーンを
聞いたこと見たことない。
……それほど今の月詠さんは怖いのだろう。
「ありがとうございますね春翔様」
「あっ、そういえば今日遊びに来た理由思い出した」
「ーー月詠さんが作るお菓子を食べる以外の理由が
お前にあったんだな」
「今さっきの騒動で思い出したんだよ。
お前、麗華覚えているか……って忘れる訳ないな」
「あんな面倒な奴忘れる筈がないだろうが」
春翔に言われて久し振りに聞いた名だった。

ーー白河麗華

名門白河家の令嬢であり、“元”俺の許嫁だ。
見た目は良いのだが性格が悪く、自分より下だと思う
人間にはとことん強く出るという典型的な人間だった。
正直あいつにいい思い出は全くない。
というか月詠さんをバカにした時点で俺の中での評価は
最低ランクだ。

「あいつがどうした?」
「あぁそれがな……なんかまたあいつがお前の婚約者だと
周りに言いふらしているらしい」
「はぁ!?」
まさかの行動に思わず立ち上がった。
「丁度、お前が社長を辞任したぐらいからだろうか
色々なパーティでそんな感じで言いふらしているぞ」
「あいつは……!!」
「あの方は恥というものを知らないのでしょうか?」
月詠さんに至っては吐き捨てる様にそう言った。
「一応、俺も直接聞いたし、色んな奴からの証言も
あるから、本当の事だ」
「……ちなみにどんな事を言っていたんだ?」
「俺が覚えている範囲で言うとだな……

“困っていた兼続を支えたのは私”

“あいつが社長になれたのも私のおかげなの。
それであいつは私に告白してきたから付き合っているわ”

“だからこれ以上、私と兼続の間に入ってこないで
もらえるかしら?”

って感じだな……」
「旦那様」
「ん? どうしたの?」
「ーー抹殺しましょう、あのクズ女を」
「やめようか月詠さん」
「ですがあの女は旦那様を真っ先に見捨てたのですよ。
それを旦那様が有名になったら我が物顔で言いふらす
なんて私には我慢出来ません!!」
「落ち着いてって」
「旦那様はお怒りではないのですか!!」
「別に今更、麗華に何にも感情は無いよ。
俺には月詠さん、君がいてくれたらそれでいい」
「旦那様……」
「お熱いね〜お二人さん」
「うるせぇ……別にいいだろが」
「まぁな。とりあえず麗華の話には俺がパーティの件と
一緒に出来る限り対処しておくな」
「あぁ頼む」
「お願い致します」
「ハハッ、任せろ!!」

この時はそれで終わると思っていたのだがこの後
かなりややこしい事になっていくとは
この時は分からなかった。

次回から最終章に入っていきます。


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