旦那様と執事な神様

きりんのつばさ

ピューん






俺が社長についてから1年と半年が経った頃
会社の業績はは元の状態に戻り、徐々に右肩上がりと
なっていた。
ここまでに至ったのは月詠さんのフォローと
醍醐さんの能力の高さが大きな割合を占める。
勿論、社員達の頑張りもあるだろうけど俺個人としては
この2人がいてくれたからだと思っている。
「旦那様、どうかされましたか?」
「ん? 何が?」
「いえ、旦那様が不意に笑っていたので何か面白い事でも
思い出されているのかと思いまして」
「いや違うよ。ただ月詠さんと醍醐さんのお陰で
ここまで会社が復活出来たなぁと思っていたんだ」
「確かに醍醐様の能力には感服しました。
流石大旦那様が一番信頼されていた人物であると
今回改めて実感させていただきました」
「うん醍醐さんって凄いよね……って月詠さん
君もだよ君も?」
「わ、私ですか?」
と驚いた表情をする俺の彼女兼執事。
「ってなんでそんな驚いた表情をしているの?」
「い、いえ……私は旦那様に褒められる事を
一切しておりませんので申し訳なくて」
「何言っているの。月詠さんがいなかったら俺は
過労で倒れてい……」
「大丈夫ですか!?  過労だなんて……
あぁ私とした事が旦那様の体調も把握出来ないんなんて
執事失格です……」
と俺が言い終わらないうちに俺の“過労”という言葉に
反応して1人で慌てて、1人で落ち込んでいた。
「いや、ねっ? 俺の話を聞いてもらえると」
「かくなる上は私の命を持って詫びなくては……!!」
と短刀を持つと服をはだけて白くて綺麗な肌が見えた。
肌の白さに若干エロいと思ってしまった俺だった。
そこに短刀を向けようとして……
「ちょっと待ったぁーー!?
死なないでね!? というかどこからその短刀
だしてきたんだ!?」
「短刀など主人を守るために護身用として
いつも持ち歩くのも執事のマナーですから」
「へぇそうなんだ……じゃなくて今すぐその短刀
しまってよ!?」
「ですがこうでもしないと私の気が収まらないです……
あぁ天国の大旦那様と大奥様にどの様にお詫びを
入れたらいいのでしょうか……」
「いやいや親父達の元に行く前に俺の隣で
まだしばらくいてよ……」
「旦那様はお優しいのですね。こんな出来損ないの執事に
そこまで言ってくださるなんて……」
「とりあえずその短刀は没収するからね」
と言うと月詠さんが握っていた短刀を取り上げた。
「あぁ私の短刀が……」
何故か名残惜しそうに呟く月詠さん。
「改めて言わせてもらうと俺は過労に
なっていないからね? 月詠さん、君のお陰で」
「私のお陰ですか……?」
「そう。君が俺が倒れない様にスケジュール組んだり
食事とかに気を配ってくれたお陰で俺は何とか
この1年を乗り越える事が出来たんだ」
彼女の献身的な支えがあったこそ俺はここまで
頑張る事が出来たし、会社の業績を戻す事が出来た。
本当に彼女には頭が上がらない。
「い、いえ私は執事として当たり前の事をしたまでで」
「それでも凄いよ月詠さんは。いつもありがとうね」
「は、はっ、ありがたきお言葉でございます……」
彼女は照れながらもそう答えた。
「そんな月詠さんに何かしてあげたいんだけどさ。
何かして欲しい事あるかな?」
「だ、旦那様に何かしていただけるなんて畏れ多くて
申し上げあげられません!!」
「別に何でもいいんだよ?
 軽自動車を高級外車に変えたいとか
燕尾服を新しい物を10着欲しいとでも
ーーほら俺って今お金は結構あるからさ」
そうだ。
俺は社長になり会社が業績を戻していくにつれ
自分の給料を貰っていったのだがいかんせん使い道が
分からず溜まっていく一方であった。
「い、いえ私は物が欲しい訳ではありません。
で、でも強いて言えば……」
というと口を濁す月詠さん。
「ん? 何かな言ってごらん?」
「……ス」
小さくボソッと言ったせいか聞こえ無かった。
「ごめん声が小さくて聞こえないかな……」
「キス、していただけないでしょうか」
「……キスだって?」
「はい、旦那様とのキスはとても心が温まる行為でして
もしよろしければ私にしていただけないでしょうか?」
「そんな事いつでもしてあげるどころか俺だって
したかったよ。
ーーじゃあ、こっちに来てもらえる?」
「は、はい……」
と床に正座していた月詠さんは立ち上がり
俺の方に向かってきた。
そして向き合う形になった俺達。
徐々に2人の顔が近づいていき……

「失礼します。兼続様、ご相談したい事が……」
「「ひゃぁ!?」
俺達は同時に飛び上がった。
なんか数ヶ月前にも同じ事があった気がするぞ?
「これは……この醍醐、空気を読めずに
申し訳ありません」
「い、いやいいんだ醍醐さん。
で、相談事ってなんだ?」
「と、申し上げたいのですが……
お2人はお取り込み中では無かったでしょうか?」
「はい?」
「いえ、申し上げにくいのですが橘殿の服装が……」
「月詠さんの服装……?」
と改めて月詠さんの姿を見てみると先程腹を切ろうとして
服をはだけた為に下着とかが見えており
更に飛び上がった反動でこちら側に寄りかかっている。
……うん、これは普通誰だって勘違いするよな。
自分がどんな服装をしていたのか理解したのだろう
月詠さんは徐々に顔が赤くなっていき……
「こ、こ、こ、こ、こ、こ、こ、これは!?
と、と、と、とても深い理由がご、ご、ございまして!!
そ、それはですね!! その……えっと……
失礼しましたーー!!」
ピューん
と乱れていた服装を整えると月詠さんは走って
社長室から出て行った。
「行っちゃった……」
「兼続様。追いかけなくてもいいのですか?」
「いや今はやめておくよ……」
だってそんな事今したら社内鬼ごっこになりそうだし。

その後途中に月詠さんは恥ずかしそうに帰ってきて
何事も無かったの様に振舞っていたのが
とても可愛かった。







次回で会社立て直しの話は終わります。

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