旦那様と執事な神様

きりんのつばさ

強襲






会社に行くまでの道中、俺はパソコンで様々な書類や
これから自分がする事を確認していた。
「ここでは、こうして……この場合はこうして……」
「旦那様、大丈夫ですか?」
「まぁ大丈夫とは言い切れないけどとりあえず
頑張っている感じかな……」
何せ今から会社に強襲をかけに行くのだから
色々と考えて緊張していまう。
「旦那様、そこまで深く考えずとも一気に
こちらに情勢を引き寄せる方法があります」
「ん? 何それ? 初耳なんだけど」
「はい、実は隠しておりました」
「なんだよ〜あるなら先に言ってよ〜」
「申し訳ありません。その方法ですが……」
一体どんな方法が月詠さんの口から出てくるのか
と楽しみにしていると……
「その方法とはただ今会議という名の茶会をしている
役員どもがいる部屋に弾丸を撃ち込みます」
「……はい?」
「そうすれば役員どもが一斉に退任になります」
「……まさかだと思うけどそんな弾丸をこの車に
積み込んでないよね?」
「……」
(あっ、これって凄く嫌な予感する……)
月詠さんが無言の時は大体何か隠している時だ。
まぁでもまさか月詠さんであってもそんなものを
積み込んでいる訳ないだろう。
まぁ試しに言って見ることにした。
「ロケットランチャー構え」
「はっ」
と言いながらどこからかそれを出してくる。
「どこから出したそれ!?」
「運転席の下からです」
いつもの口調で当たり前のように話す月詠さん。
「よく入っていたな!?」
「旦那様のご要望にお応えするのが執事ですから」
彼女お決まりの口癖をいつも通りの口調で
何事も無い様に話す。
「いやいやしないよ!?」
この執事はいきなり何をしだすんだ!?
「しないのですか……」
「……何故そこで残念そうに言うんだ月詠さん」
なんて言う事もあってかさっきまでの緊張は
一気に吹き飛んだ。





そして遂に会社の地下駐車場に車が着いた。
「到着致しました。旦那様」
「あぁ、分かっている。遂にやる時が来たって」
「ーー兼続様、よくぞご無事で」
声がした方を見るとそこには50代ぐらいの男性がいた。
「醍醐さん、そっちも無事に来れたんだね」
「兼続様のご命令とあればどんな無茶でも乗り越えるのが
この醍醐、貴方様のお父上から頂いたご恩を返す事で
あります故に」

この男性は醍醐だいご正義まさよし
親父がまだ生きていた頃の親父の右腕であり
俺が本来社会人になり新事業を任された際に配属される
はずであった人物であった。
親父が死んだ後、会社を退社して故郷で隠居生活を
していたのを俺が呼びに行った。
俺が会いに行った時なんて俺の姿を見てとてつもなく
驚いていた。

「これはこれは兼続様でございますか!?
よくぞご無事で……!! 
今までどちらにおられたのですか?」
「まぁ色々とね。醍醐さん、いきなりで悪いんだけど
力を貸してくれないか」
「はっ、かしこまりました」
俺が尋ねて返答が返ってくるまでコンマ1秒も無かった
気がするのは俺だけだろうか?
「早っ!? 俺まだ何も言って無いよ!?」
「兼続様が行われる事でしたら悪事では無いと
この醍醐、よく分かっております故。
私の力、貴方様のお貸ししましょう」
「旦那様、言ったではありませんか醍醐様は旦那様に
必ずお力を貸してくださると」
「いやまさかここまで早いとは思わなくて……」
「何を仰いますか、貴方様のお父上から頂いたご恩に
報いるためならこの醍醐、全力を尽くしましょう」
醍醐さんは親父にとても恩を感じているらしく
親父が死んだ後、恩を返すのが俺になったらしい。

「お久しぶりです醍醐様」
「これはこれは橘殿、3日ぶりですな」
「ちなみに醍醐様、下準備は?」
「こちらは既に手を打っておきました。
そちらは……と、お聞きするまでも無さそうですね」
「はい、こちらもそれ相応の手を打っておきました。
あとはこちらが攻めたら完了です」
「流石、兼続様の執事でありますな。
ーーでは参られますか?」
自分の中で呼吸を整えて自分が何をすべきなのかを
しっかりもう一度考えた。
「よしっ、行こうか」
「「はっ」」
と俺達は会社内部に入って行くのであった。




元々この会社の建物の内部構造には熟知していたため
どうしたら気づかれずに済む道は分かっていた。
……“元”社長の息子舐めんな、とでも言いたい。
そうして遂に社長を始めとする役員達が会議をしている
会議室の前に着いた。
「さてここまで来たし……
ーー派手に入るか」
「旦那様、露払いは私が引き受けます」
と言うと月詠さんは会議室の大きなドアの前に立つと
思いっきりドアを蹴飛ばした。
パァーン!!
蹴られたドアは勢いよく開いた。
「さぁ、旦那様。こちらへどうぞ」
「あぁありがとう」
と俺は会議室の中に入っていった。

「誰だ貴様!! ここをどこだと思っている!!」
俺が入った瞬間、久し振りに聞いた声がした。
「誰だって? この顔忘れてたのか?」
「お、お前!? ま、ま、ま、ま、まさか御堂兼続!?
生きていたのか!?」
俺の姿を見た瞬間、その場の雰囲気が一気に冷えた。
無論、その中には先日俺を訪ねてきた深草の姿もあった。
「あぁ御堂本家、御堂兼続だ」
「き、貴様……!! 今までどこにおった!!」
「そんなん言ったら間違えなく刺客こっちに
向けてくるでしょ? 言わねぇよ」
「兼続、お前誰に口をきいているんだ!!
御堂の面汚しが本家の主人に対して!!」
と役員の1人が俺にそう言ってきた。
「面汚しね……果たしてどっちがかな?
第一俺は御堂と関係無いから誰にどんな口きいたって
別にいいだろ?」
この名字もあくまでも便宜的に名乗っているだけだ。
もうそこまで愛着もない。
「まぁとりあえずさっさとやる事するか。
ーーこの瞬間から御堂グループは俺のものになる」
「はっ……ハハハッ!! 一体何を言いだすと思えば
“俺のものにする”だと笑わせるな!!
地位も金も無い若造のお前に何が出来る!!」
と社長が言うと他の役員も一斉に笑い出した。
「はいはい笑いたければ笑ってくれ。
ーーまぁいつまで笑っていられるかな」
「なんだと……?」
「今さっきこの会社の株を30パーセントを買い取った。
そして今臨時で株主総会を開催した」
「ふ、ふん!! たかが30パーセント程度で何を
するつもりだ。その程度では……」
「あっ、言い忘れていた。昨日既に会社が持っていた株を
9割買っていたんだ。合わせたら全体の8割強ぐらいかな」

昨日までに今まで株で儲けた金をかなり使い
御堂グループの株を気付かれないように買っていた。
そして今日、車内で一気に残りの株を購入した。

「7割だと……!? 貴様どこにそんな資産があった!!
おい、深草!! あの時、徹底的に絞りとれとあれほど
言ったのに貴様は何をしていた!?」
逆上した社長は深草を怒鳴りつけた。
深草は怒鳴り声にビビりながらも話し始めた。
「わ、私は徹底的に絞り取ったはずです!!
わざわざ資産凍結に元使用人を使って色々と盗んだ
はずなのに……」
「月詠さん、今の発言覚えた?」
「はい、確かに覚えさせていただきました。
資産凍結と窃盗は深草様のせい、と」
「ちなみに醍醐さん、総会はどんな感じ?」
俺は隣の醍醐さんに聞いてみた。
すると彼は微笑みながら
「はい、順調です。ただ今役員の解任決議に入っており
人事、営業、監査役までが解任されました」
まぁ決議と言ってもほぼ票は俺が握っているから
俺の意見が殆ど通ってしまうのだが。
……我ながら凄い出来レースをしていると思う。
「何をしているあいつらを捕まえろ!!」
「無駄だ、社長さん。いや“元”社長さん」
「元だと……? まさか!!」
「そう、今さっき一気に社長まで解任決議を取ったよ。
そうしたら解任だとさ」
「き、貴様……!! 若造が舐めた真似をしおって!!
わしを誰だと思っている!!
この国を支えている御堂本家の当主だぞ!!」
「黙れ分家、いや御堂の面汚しが」
「面汚しは貴様の方だろう!!
面汚しがわしに刃向かうのか!!」
「そりゃな、刃向かうさ。だって俺あんた嫌いだし」
「舐めた真似をしおって!!
おい誰か警察呼べ!! こいつらを捕まえさせろ!!」
と怒鳴り声を上げて叫ぶものも誰も賛同しない。
「おい!! わしの命令は聞こえないのか!!」
「あっ、もう一つ忘れていた事があった。
ーーお前ら役員全員の資産凍結させておいた」
「「はっ!?」」
「ちょっと警察にね、色々とリークしてさ
裏工作をして、俺の時と同じように資産を凍結したよ」
「どうせハッタリだろ!!」
「では、どうぞご確認を」
と俺が言うと役員どもは一斉に自分のスマホなどを使い
自分達の資産がどうなっているかを調べ始めた。
だが……
「う、嘘だろ!? 本当に凍結されている!!」
「最早見れないだと……!!」
と各地から悲鳴や怒号が聞こえ出した。
「う、嘘だ……あ、ありえん!!
このわしがこんな若造に負けるとは……!!
ありえん!! ありえん!!」
俺は特にうろたえている“元”社長のところに向かった。
「どうだい? 俺と同じ立場になる気分は?」
「貴様……!! こんな事してタダで済むなどと……」
俺は勢いよく元社長の襟を掴みこちらに引き寄せた。
「おい御堂の面汚し、よく聞け。
言葉の使い方に気を気をつけろ」
「き、貴様いきなり何を……!!」
「いいか。お前らには俺が受けた以上の事を
受けてもらおう。資産を凍結され全財産没収され
付き合いがあった家々から絶縁状を出されて
御堂を名乗らせ無いようにして屋敷を追い出してやる。
ーーそれで終わるなんて思わない事だ。
まかこれからの人生、考える時間は増えそうだし。
ゆっくり考えなよ
と言うと俺は襟を離した。
元社長はそのままその場に倒れこんでしまった。





そうして俺の復讐というか強襲は無事に成功した。
後のこの社長を含む役員一斉解任は“兼続の変”として
会社の歴史に刻まれるのであった。
……俺個人は大変不本意なんだが。





次回から会社を立て直す回に入って 
いきますがそこまで深くは書かない
つもりですのでご了承ください・・・

「旦那様と執事な神様」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「恋愛」の人気作品

コメント

コメントを書く