旦那様と執事な神様

きりんのつばさ

少なからず

久々の投稿になってしまい
申し訳ありません。



月詠さんを襲いかけた日の夜
自室で1人後悔していた。
「俺は……一体何をしているんだよ……」
庭を散歩して気分を紛らわせようとしたものも
彼女の白くて綺麗な肌が頭の中から離れなくて
余計に悶々としていてしまった。
その結果2時間以上庭を散歩してしまい、屋敷に戻ったら
月詠さんに心配されてしまった。
その時の彼女は普通の表情をしていたはずだが
俺は彼女の顔を真っ直ぐに見る事が出来ないでいた。
「明日以降、月詠さんとどうやって接していこう……」
主人とは言えども彼女にどんでもない事を命令してしまい
すんでのところで止まれたが、あの時もしも理性が
本能に負けていたら……なんて思うと更に罪悪感が
心の中から湧き出してくる。
「とりあえず寝るか……寝て明日考えよう……」
ベットに入ったのは良いのだが、月詠さんの半裸が
頭の中から離れず更に悶々とするのであった。



コンコン
「旦那様、朝でございます」
「あぁ……今行く……」
結局月詠さんの事が頭から離れなかった。
なので途中から寝る事を諦め、部屋にある小説、エッセイ
新書を端から端まで読んでいた。
……そのため一睡もしていない。
俺は若干フラフラする身体を動かして扉の方に向かった。
「おはよう……月詠さん……」
「……旦那様、随分大きいクマが出ていますが
どうかされましたか?」
「いや……大丈夫……月詠さん、あとでコーヒー頼める?
今日は砂糖なしで」
「かしこまりました。
旦那様、私の肩かしましょうか?」
「いや、それは大丈夫。普通に歩けるから」
……むしろ今、そんな事されたら色々とまずい。
「わかりました。ですがもしも必要な時はいつでも
お申しつけください」
「うん、ありがとうね」
「いえ、私は旦那様の執事ですから」
「じゃあ行こうか」
「はっ」
俺達は食堂まで歩き始めた。


そして食堂につき、俺は朝食を食べていた。
「この屋敷ともあと6日で別れか……」
昨日退去命令を一方的に通告されてしまい
行くあてもないまま、6日後に出て行く事になった。
この屋敷は俺が生まれる時からずっと見てきたし
生活してきた場所であるため、とても思い入れがある。
だが、俺は正直この屋敷を出ることはそこまで
抵抗があるわけでは無い。
思い入れがあるとは言えども、住む場所はそこまで
こだわりがあるわけでも無いし、第一殆ど無一文である
俺にはこの屋敷は大きすぎる。
ただ……俺には心配事があって、それは
「そうですね……このお屋敷は旦那様との思い出が
沢山ありますしね」
彼女こと、月詠さんの事だ。

俺はこの屋敷を出る時、彼女はどうするのだろうか?

ーー付いてくる?

ーー次に入ってくる“自称”御堂家の本家に仕えるか?

ーーもしくは別の家に行くか?

……正直、一番最初の案がありえそうだ。
昨日の事もあり、彼女ならそうしかねない。
(まぁ、でもこれは俺の憶測だし……
試しに本人に聞いてみようか)
「ねぇ月詠さん」
「はい、なんでしょうか?」
「月詠さんはさ、俺がこの屋敷を出た後どうする?」
「私ですか?」
「うん、月詠さん」
「それは決まっております。勿論旦那様に付いて
行きます。私は旦那様の執事ですから」
「やっぱりか……」
「……?」
「いや月詠さん、俺これからある意味一文無しに
なるんだよ? 給料払えないよ?」
「給料なら結構です。
とりあえず旦那様の就職先がお決まりになるまでは
私の貯金を切り崩して生活しましょう」
「いやいや、それは月詠さんが働いたのだから
自分で使わないとダメだよ」
「……大変申し訳無いのですが。
実は私はお金の使い方がよく分かりません……」
「えっ? お金の使い方が分からない?」
「はい、私はお金をどのように使えばいいのか
いまいち分からないのです」
今、このご時世に生きていてお金の使い方が分からない
って人がいるのだろうか。
少なからず俺は今までその様な人を見た事が無い。
「ちなみに月詠さん」
「はい、なんでしょうか?」
「好きな食べ物は?」
「食べれれば構いません」
「趣味は?」
「特にございませんが……強いて言うなら
旦那様のお世話、ですね」
「楽しみは?」
「旦那様のお世話です」
「……ちなみにスリーサイズは?」
「上からですね……」
「ごめん、それぐらいは拒否してもらえると嬉しいな」
「なんででしょうか?」
「いやいや、君のある意味一番大事な個人情報だよ?
というかそれ言って女性は大丈夫なの?」
「他の皆さんは存じ上げませんが……
私は特に何も思いません」
「……少しは恥じらいを持ってもらえると嬉しいな」
「旦那様に隠し事はよくありません」
「誰も隠し事をするなとは言ってないんだよな……」


その日の夜
「これからどうするか……」
俺は1人部屋で悩んでいた。
それは月詠さんの事だ。
彼女をこれからどうするのか。
少なからず俺についてきては幸せな生活は来ないだろう。
彼女は俺が就職するまでは貯金を崩すと言っていたが
御堂家に睨まれたく無いから“元”本家の俺を雇う
企業は無いだろう。
なると、俺は就職出来る見込みがないと言うことは
月詠さんの貯金を崩し続けてしまう事になる。
彼女が働いて稼いだお金だ、彼女が自分の為に使わないと
いけないだろう。
「というかそこまで俺に義理立てしなくていいのに……」
何故彼女がここまで俺についてくるのか全然分からないが
主人としてここまで付いてきてくれた彼女には
これからは幸せになってほしいと思う。
好きな人が幸せなら俺は構わない。
例え、それが月詠さんを幸せにする人が俺では無くても
彼女が幸せなら俺はそれでいい。
その為に俺は……
「よし、やるか」
と今まで考えていた事を実行に移すのであった。


次の日、その日は連日の晴れ模様から一転して
朝早くから雨だった。
「おはよう月詠さん」
「はい、おはようございます旦那様。
昨日はよく眠られましたか?」
「まぁね。あっ、そう言えば月詠さん」
「はい、なんでしょうか?」
「これあげる」
と俺は一封の封筒を彼女に渡した。
「手紙ですか? 旦那様、これは一体……?」
「月詠さん
ーー今日限りで御堂家の執事から解任する」
「えっ……」
俺の発言を聞いた瞬間、表情が固まる月詠さん。
「だから今日で君は御堂家の執事から解任するよ」
と俺が言うと、彼女は固まっていた表情から
一気に変わり、慌て始め懇願する様に言ってきた。
「ま、待ってください!!私は何か間違えた事
しましたか? だ、旦那様の御気分を害する事を
したのでしたら謝罪しますので、どうか……」
「いや君は何も俺の気分を害する事はしてないよ」
「で、では何故……?」
「それはね、これ以上俺に仕えていても君は
幸せにならないからだよ」
「そんな事はございません!!」
「君がそう思っていても俺が自分を許せない。
俺は既に没落した主人だ。これから満足に給料を
払えるか分からないからね」
「……」
「今、君に渡したのは春翔の家、三条家に対して
君の推薦状だ。最悪、俺の推薦状がいらなければ
捨ててもらっても構わない」
……月詠さんの次の就職先として色々と考えた結果
春翔の家が一番良いと思った。
あいつなら色々と考えた結果、雇ってくれるだろうと
踏んだからだ。
俺の元から去るのは勿論悲しいが、彼女がこれからの
人生で幸せになってくれるのなら俺は我慢しよう。
「だから月詠さん、明日から」
「……やです」
「ん?」
「嫌です!!」
「月詠さん?」
「嫌です!! なんで私は旦那様から離れなきゃ
いけないのですか!? 私は旦那様にとってもう
いらない執事になったのですか!?」
「それは違う!!
俺は君の為を思って……」
「私の為を本当に思うなら……!!」
「月詠さん、まさか泣いているのか……?」
彼女の表情をみると目からは涙が出ていた。
「はっ、これは……!! ッ!!」
「ち、ちょっと月詠さん!?」
バンッ!!
月詠さんは部屋を飛び出していった。
「俺は何か間違えた事をしたか……?
いいや、今はそんな事よりも追いかけるか!!」
と俺は月詠さんのあとを追いかけるのであった。




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