旦那様と執事な神様

きりんのつばさ

二度あることは






とりあえずその日は正面から記者達は殆ど動かなかった。
そして次の日、俺はニュースで驚愕の場面を見た。
「旦那様!! たいへ……」
「あぁ分かってる。
今その場面をしっかりとこの目で見ているよ……!!」
そこには父の会社で副社長を務めている人物が
記者会見をしていた。
この人物は御堂の本筋では無いものも、2番目に
勢力がある家の出身だった。
その会見で言っていた事は……

・今回疑惑になっている問題は全て前社長である
俺の父の命令

・自分達、他の経営陣は止めたが父は独断で決めた

・父は気に入らない人物は容赦なく切り捨てた

「こいつら……自分達も絶対良い思いしてた癖に!!
死人に口無しかよ!!」
「旦那様、落ち着いてください。
ここで慌てても何も変わりません」
月詠さんは冷静な口調で俺を止めるが
「そんな事分かっている!!
分かっている……分かっているけど……!!」
どうしても我慢できなかった。
自分の父が死後、ここまで貶められるのが
我慢できなかった。
……そしてそれに対して何も出来ない俺自身に
一番苛立っていた。
そんな感じでイライラしていると不意に電話が鳴った。
「私が出ます」
月詠さんはそう言うと電話の近くに行き
受話器を取った。
「はい、御堂です。
ーー少々お待ち下さい」
と言うと彼女は俺の方を向き
「旦那様、白河様です」
「麗華が……?」
「どうされますか?」
「いや、出るよ。受話器を貸してもらえる?」
「はっ、こちらをどうぞ」
と受話器を渡され、それを受け取った。


「もしもし麗華か、どうした」
「兼続、貴方報道を見たかしら?」
「あぁ、見たよ、何ならリアルタイムで
見ている最中だよ」
「そう、見ているなら話しが早いわ
ーーこの電話を持って私達白河家は貴方の御堂家とは
縁を切らせてもらうわ」
「はっ!? いきなりなんだよそれって!!」
俺は麗華の発言に驚き、声を大きくしていた。
……俺の家と縁を切るだって?
そんな事があるのか?
なんて俺が混乱していると
「あら、意味が分からないかしら?
そのままの意味よ。今後貴方の血筋の方の御堂家とは
縁を切らせてもらうわ。
勿論婚約の話も無かった事にするわね?」
「まさかお前も俺の親父があんな事をしたなんて
思っているのか!?」
「馬鹿なの貴方は?
貴方の父親がやっていようがやってなかろうと関係無い。
ーー今の貴方の家と付き合いがあるだけで私の印象は
落ちてしまうのよ? まして婚約者なんて更に私の
印象がだだ下がりじゃない」
「テメェ……!!」
「まぁ元々貴方なんて好きでも無かったし
ただ御堂という家柄と財力に惹かれていただけよ。
これからは他の御堂と付き合っていくわ。
ーーせいぜい頑張りなさい、では御機嫌よう」
と一方的に電話を切られた。
「だ、旦那様……?」
月詠さんが心配そうな目で俺を見てくる。
「あの野郎……遂に本性表したな」
「白河様がどうかされましたか?」
「白河家は今後俺の血筋の御堂家とは縁を切るって」
「えっ……」
「元々、俺自身に興味は無くてさ。興味があったのは
御堂という名とその財力だったそうだ」
「あの方はどうしてその様な事を平気で……!!」
珍しく月詠さんが怒りの表情になっていた。
この人はあまり感情の起伏が無い。
そのためここまで感情を露わにするのは珍しい。
「月詠さん、落ち着いて」
何故かさっきと立場が逆転している俺達。
「これは……旦那様の前ではしたない真似を
お許しください」
「良いって、だって俺の為に怒ってくれているんだから
それを責める事は出来ないって」
まぁ元々麗華自身は好きになれなかったが
今回の事で嫌いになった。
……まぁもう二度と会う事もないだろうが。

よく“二度ある事は三度ある”というものだが
麗華の電話をキッカケに他の付き合いのあった家々から
続々と俗に言う“絶縁状”が来た。
この僅か1日2日で100を超える家から
続々と絶縁状が来るとある意味爽快な気分になった。
所詮、彼らは俺の父の人間的な面に惹かれて
付き合いがあったのでは無くただ“御堂”という看板に
すがり甘い汁を吸いたかっただけだったんだろう。
……そして3日目には春翔の家である三条家からも
絶縁状が届いた。
その手紙を見た瞬間、俺には改めて友達という人物は
1人もいなかった事に気付いた。
俺が今まで友達だと思っていた人物は全員同じ様に
“御堂の息子”だからという事で付き合いが
あったのあろう。
「だ、旦那様……大丈夫ですか……?」
「俺か……? まぁ大丈夫かな」
本当は全然大丈夫ではなく、今すぐ弱音を吐きたいのだが
俺を心配そうに見ている月詠さんの前ではそんな事を
言えるはずも無かった。

そして数日後……
「大変です旦那様!!」
「今度は何……?」
ここ最近の日常となり始めた月詠さんのドアにノック
しないで入ってくる音で目が覚めた。
「や、屋敷の物が……持ち逃げされました!!」
「なんだって!?」
俺はそれを聞き、飛び起き、彼女の後についていった。
そして俺の目に入ってきたのは部屋の金目のものが
全て無くなった部屋だった。
「こ、これは一体……」
「申し訳ありません。私が旦那様の部屋にて
旦那様の安全を見張っていたのを逆手に取られました」
最近、月詠さんは俺が寝るときは俺の部屋にいる。
理由としては俺の安全を確保するから、らしい。
「月詠さんは悪くないって」
「ですがしかし……」
「ちなみに犯人は分かる?」
「大変申し上げにくいのですが……
“元”旦那様の使用人達です」
「えっ……!? あの人達が……?」
「はい、残念ながら。先程屋敷から逃げていく
彼らを確認しました。何も取られていない部屋は
旦那様の部屋のみとなっています……」
「おいおい……ここまでって……」
俺は足から急に力が抜け、その場に崩れた。
「旦那様!? 」
「俺はなんかしたか……? 俺は悪いことしたのか?
何もしてねぇだろ? なのになんだよこの仕打ち……」
「旦那様は何も悪くございません!!
それはこの私が証明致します!!」
月詠さんが俺を支えながら何か言っているが
俺の耳には一切入ってこない。
「ふざけんな……ふざけんなよ……!!
クソがぁぁぁぁ!!」
俺の叫び声は何もかも無くなった屋敷にこだました。
……その後、俺の家の貯金も全てデータの差し替え等に
よって全て盗られていた事が判明した。


父と母が亡くなってから僅か数日で俺は
今まであったもの全てを失った。




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