旦那様と執事な神様

きりんのつばさ

パーティでの話

そんな感じに月詠さんと出会って数年が経った。
俺は大学の単位を全て獲得して、あとは卒業を
迎えるだけとなった。
就職先は無論父の会社で、いきなり新規事業の担当に
なってしまった。

父曰く
「俺の手伝いをしてきたなら大丈夫だろう。
出来ないとは言わせない。
ーーやれ」
だという事らしい。

まぁ確かに今まで父の手伝いで普通じゃありえない
レベルの仕事を押しつけ
……やらせてもらっているがおかしくないか?
まぁ父もそれを分かっているのか月詠さんと
仕事の部下として父が一番信頼している人を
配属してくれた。


そして今日は付き合いのある家で開催される
パーティに参加していた。
幼い頃からパーティには参加させられているためか
この場の雰囲気には慣れているが、あまり好きではない。
パーティの喧騒から少し離れ、外のテラスに
手をかけて休んでいると
「旦那様、お顔がすぐれませんが……如何しました?」
月詠さんが声を掛けてきた。
「あぁ、月詠さんか。 いや大丈夫だよ。
ただこの場は好きになれないだけ」
この頃になると月詠さんは俺の事を
"坊ちゃん"から"旦那様"に変わっていた。
なお父は大旦那様と呼んでいる。
……父も何故かその呼び名を承認している。
「ですが沢山のご子息やご令嬢の方が旦那様を
お探しになられていますが……」
「どうせごますりだろ。面倒だから
しばらく休んでると伝えてくれ」
「はっ、かしこまりました」
俺の家はかなりの名家であるため様々な利権を得ようと
して色んな人達が来る。パーティなんてそのごますりが
行われる最たるイベントだ。
「……まぁどうせ来るやつは」
来るだろうと言おうとした瞬間
「よっ、兼続!! どうだ元気か!?」
随分大きな声で俺の名が呼ばれた。
振り向くと身長はゆうに180を超えているだろうか
かなりガッチリした体格をした男性がいた。
「……来やがったし。どうした春翔」
「いやなっ、お前の姿が見えないんでな!!
心配して探してたんだ、ガハハッ!!」
「声出すな、周りにバレる」
「おっと、すまんすまん」

身体がデカく声の大きさもそれに比例してデカい
この男は名を三条さんじょう春翔はるとという。
この男の家である三条家もかなり大きい家で
俺の家がやや経済界に秀でているのに対して
こっちは政界に秀でている。
そしてこの春翔は俺と幼小中高大全て同じである
……もしかしたら親の顔の次ぐらいに見ている
顔では無いかと思っている。

「春翔様、お久しぶりです」
月詠さんが礼儀正しく頭を下げていると
「おっ、橘さんも同じか!!
久しぶりだな!!」
春翔も手を上げて挨拶をしていた。
「てかなんだよ春翔」
「いや〜いつも絡む相手がいないとな
俺もつまらんのだ!! だから頼む
ーー構ってくれ」
「知らん、他を当たれ」
「おいおい親友にその仕打ちは酷くないか!?
お前も俺以外と絡む奴いないくせに……」
「ーー月詠さん、少し移動しようか。
このバカが見えない場所まで」
「かしこまりました」
「ちょっと〜!? 今の発言取り消すから
俺を1人にしないでくれ!!」
と俺の腕を掴みながら情けない声を出す春翔。
「分かった分かったから手を離せ」
「おぉーー流石我が親友!! 我がソウルメイト!!
お前と親友で良かったぜ!!」
さっきまでの情けない姿はどこに行ったのやら
一気に元気になる。
「旦那様と春翔様は大変仲がよろしいですね」
なんて月詠さんが言うと
「誰がこんな奴と」
「橘さんもそう思うか!? だろ〜!!」
俺らそれぞれの答え方だった。

「というか春翔が面倒じゃなくても俺は
この場所から移動したかったんだよなぁ……」
「それってどういう意味
ーーあぁそりゃお前ならそう思うよな」
「ーー見つけたわ、兼続」
後ろから今正直聞きたくなかった声が聞こえてきた。
「だから移動したかったんだよ……
ーーなんだよ、麗華」
そこにいたのは白河しらかわ麗華れいか
ある意味春翔の次ぐらいに顔を見飽きている奴であり
ーー俺の半ば許婚みたいな女性だ。
「よっ白河!!」
「三条は黙ってもらえるかしら」
「……随分、辛辣だな
ーーなぁ兼続、俺ってそんなくう」
「バリバリ出している」
「まだ言い切ってねぇ!?」
「白河様、お久しぶりです」
「フンッ、まだいたのね執事の分際で。
ねぇ兼続、貴方はここで何をしているのかしら?」
……やべぇ、すんげぇこいつ殴りたい。
月詠さんを無下にした挙句、あの態度はなんだ。
「それは見ればわかるだろ?
休んでんだよ。月詠さんとこのバカで」
「貴方ね、私達は許婚なのよ?
私達の関係を周りの連中に知らしめるのに
こんな良い機会ないでしょ?」
「そもそも俺達は正式な許婚じゃないだろ?
そんな事したって俺に何も利益ないんだが」
「何言っているの。それを確実にする為に
人前に出る必要があるじゃないの。
ーー貴方は御堂家の次期当主で私の夫となるのだから
少しは自覚を持ちなさい」
「麗華に言われなくても分かっているよ」

この女性、白河麗華の実家、白河家は元は
御堂家の傍流だったのだが独立し
経済界や政界に幅を利かせている。
そして麗華自身の見た目はとても綺麗でモデルといっても
充分通じる。
だが俺は麗華の性格がどうも好きになれなかった。
平気で人を見下すし、何よりも月詠さんを明らかに
敵意のこもった目で見ているのが気に入らなかった。

「そもそも兼続、貴方は私という許婚がいながら
この女執事と一緒に行動するなんて何考えているの?」
「それぐらい俺の勝手だろ?
麗華がいちいち口を出すことじゃないだろ」
「ねぇ貴方」
「はい、なんでしょうか白河様」
「貴方の主人の為を思うなら今すぐ側から離れなさい」
「はっ?」
「……」
「いい貴方みたいな女執事がいると私と兼続の印象が
下がるの、分かる?
本当に主人の為を思うなら自分から辞めなさい
ーーまぁ再就職先ぐらいは用意してやって」
「……っ!!いい加減にしろ麗華!!」
俺は自分の好きな人が貶されるのが我慢出来ず
つい大声を出してしまった。
「な、何よ兼続……」
「だ、旦那様……?」
月詠さんまでも驚いている。
「麗華、お前は何様のつもりだ?
許婚だとしても限度があるんじゃないのか」
「な、何よ!! 私は貴方の為を思って……」
「……だ、旦那様、私は構いませんから。
大丈夫ですから……」
「俺が良くない!! 」
「ーーまぁまぁ落ち着けって2人とも。
ほら肉食うか? 酒呑むか?」
といい加減見かねた春翔が間に入った。
「三条、貴方は引っ込んでなさい!!」
「俺が引っ込むのは構わないが……
周りがなんて言うかは考えたらどうだ?」
と言われて周りを見るとパーティの参加者達が
驚いた様子で俺達を見ていた。
「……っ!! 兼続、私は間違ってないわ。
そしてそこの女執事、主人の事を良く考えて
自分の身の振り方を考えるのね」
と捨てゼリフをはいてその場から去っていった。



「……助かった春翔」
「何々良いってことよ!!
いや〜あいつのキツイ性格は面倒だな〜!!」
時々だがコイツのこのカラッとした性格は
助かる事もある。
「……春翔様、我が主人を助けて下さり
本当にありがとうございます」
「橘さんまで良いって。
俺は珍しいモノ見れたから大丈夫だ!!」
「……珍しい物ですか?」
月詠さんが不思議そうに頭を傾けた。
「そうそう。だってこいつが怒るなんて滅多に無いしさ
しかも橘さんのためって……」
「ゴラァ!!」
俺は力一杯のパンチを春翔の腹に叩き込んだ。
「グハァ!!」
それをもろにくらい倒れる春翔。
「は、春翔様?」
「ちょっと春翔、お前はこっちにこい
ーー月詠さんは少しその場にいてね」
「か、かしこまりました……
と僕は春翔を引きづり月詠さんに声が聞こえない場所まで
連れてきた。





「春翔ぉ……? お前の口は親友の秘密まで
バラすのぁ〜?」
「おっ、俺を親友だと認めたか!!
俺達相思相愛だな!!」
「……もう一発入れてやろうか?」
「流石に2発目は応えるから勘弁だな!!
ーーにしてもお前は自分の気持ちを伝えなくて
いいのか? 兼続は好きなんだろ橘さんのこと」
「……うるせぇな、俺にも順序というのがあってだな」
春翔は俺が月詠さんの事を好きなのを知っている唯一の
人物である。
「まぁいいけどよ、俺個人の意見としては
白河よりも橘さんの方がいいと思うがなぁ」
「……あんな性格悪い女と月詠さんを比べるなんて
月詠さんに失礼だろ」
「ガハハッ!! お前らしい!!
だがそれを俺は見ていて誇らしい!!
実に気分が良い!! 流石我が親友!!」
「……一応、この春休みに決める予定だ」

丁度、今は大学の授業も終わり時間は沢山あり
そして4月からは新生活が始まる。
それまでに自分の思いにケリをつけたい。

「おっ、遂に数年の思いにケリをつけるか!!
いいな青春だ!! なんなら俺の家の力使って
高級ホテル予約するか!!」
「いいって、なんなら俺の家の方がいい場所
抑えられるだろうし」
「だな!! やっぱりお前が言うと違うな!!
では、頑張れよ親友!!」
と俺の背中を力一杯叩くと春翔はその場から去った。


そしてパーティが終わり
俺は月詠さんはパーティ会場から車に乗っていた。
……なお運転手は月詠さんだ。
「お1つよろしいでしょうか旦那様」
「ん? 何かな?」
「……私がいる事で旦那様の重しになっていますか?」
「いきなり何を言いだすの?」
「すみません、今の発言は忘れていただけませんか?
私の失言です……」
「ーー月詠さんの主人は俺だ。
月詠さんが重しになっているなんて決めるのは
麗華や周りの人じゃない、俺が決める事だ。
だからこれからも俺を支えてくれ」
「……かしこまりました。
これからも旦那様を支えていきます」
「うん、それでいい」

さてこれから俺はどうやってこの人に自分の思いを
告げようかなんて考えながら家に帰るのであった。


だが現実はそう簡単には進まなかったのであった。

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