話題のラノベや投稿小説を無料で読むならノベルバ

一台の車から

Restive Horse

10.二馬力ドライブ#1(シトロエン 2cv)

今日は日曜日、仕事は休みだ。
梅雨の間に晴れた休日を利用して、僕は江ノ島から海岸沿いを走ろうとドライブにでかけた。
混んでるなかを走りたくなかったので、早めに家をでた。
オイルを点検し、エンジンをかけ、暖気している間にボディを拭いた。

今日は幌を全開にしようと思った。
フックを開け、ポールから幌を取り外し、クルクルとまく。
2cvの幌の巻き方は表面が見えるようにする都会巻きと裏面が見えるようにする田舎巻きというのがある。
どっちにしようか迷ったが裏面を日焼けしたくないので都会巻きにして、家をでた。




いつも曲がる角をいつも違いスムーズに曲がっていった。
しばらく走ると横浜みなとみらいに出て、鎌倉街道を走り大船駅方面へと向かった。
車はまばらで三速で気持ちよく走る。
しばらくして大船駅が見えてきた。




事前に湘南モノレールの下は空いていると調べていたので湘南モノレールの下を走ろうと右へ曲がった。
少し走って信号で止まり、幌全開の頭上を見上げたら、湘南モノレールが追い越していった。
シルバーに赤い線が入ったモノレールはどんどん小さくなっていく。
信号が青になり、走っていくと駅に止まっている湘南モノレールをみつけた。
が、追いついたと思ったらちょうど出発していった。




しばらく走るとモノレールは消え、坂にさしかかった。
唸るフラットツイン。

しかし、運が悪いことに、坂の途中の信号が赤で止まってしまった。
僕はサイドブレーキを引いて信号が変わるのを待ち構えた。
信号が青になり、一速にいれクラッチの左足とアクセルの右足とサイドブレーキの右手に全神経を集中しながら坂道発信をした。
ゆっくりだったが坂道発信は成功し、上り始めた。




坂の頂上につくとまたモノレールが現れた。そのまま2cvは下っていく。
エンジンブレーキを利かせながらゆっくりと下っていった。




下り終わり、信号で止まるとそこには路面電車の線路があった。
信号が青になり左に曲がって少ししたところで止まり、路面電車をまった。
しばらくすると、緑色をした路面電車が走ってきた。
江ノ電だ。
この区間だけ、路面を走るのだ。
僕はタイミングを見計らい2cvをスタートさせ、江ノ電の横を走ることに成功した。
少し走ると江ノ電は左に折れ、駅へと滑り込んでいった。
2cvはまっすぐいき海岸沿いへと出る道にでた。




信号を一番前で待っていると、目の前を一台の2cvが通っていった。
2cvドーリーだ。
ドーリーがいった後すぐに青になったので僕は追いかけてドーリーの後ろについた。

ドーリーは2cvの数台限定のモデルだ。
中は他の2cvと何も変わらないがカラーリングだけが異なる。
もともとチャールストンも限定モデルだったが人気があったため、レギュラーモデルになった。

ドーリーの後ろを走っているとフラットツインが重なり合う。
一緒に走っていると江ノ島が見えてきた。
そのまま左へ曲がり橋を渡り江ノ島にいく。気持ちのよい海風が窓から吹き込んでくる。ドーリーはその後駐車場にはいっていった。僕は一瞬ホーンを鳴らし通り過ぎた。
その奥にあるところでUターンをし、江ノ島をでていった。
2cvは西の方へと走っていった。




しばらく走って昼時になったので昼ご飯を探すことにした。
2cvを転がしているとドライブスルーができるハンバーガー屋を見つけた。
左ハンドルに小さな窓の2cvでドライブスルーをしてみることにした。
完全に遊び心だ。

ドライブスルーに入り注文をきかれる。
大きな声で答えたので注文は成功した。

次に受け取りだ。
ぐるりと店を周り受け取り口についた。
サイドブレーキを引き、待っていると若い人が紙袋を持ってきた。
僕はシートベルトを外し、何も突起物がないフロアを伝って助手席側へよった。
紙袋を渡されるが窓の大きさギリギリだ。
面倒になったのでドアを開けて受け取り、金を払った。
ドアをしめ、ドライビングシートへと戻り、シートベルトをしめ、サイドブレーキを解除し、ハンバーガー屋を後にした。

正直疲れた。
2cvはドライブスルーには向かないな、なんて思いながら今度は食べるところを探すことにした。




しばらく走るとちょうどよい公園があった。僕は駐車場に2cvを止め、幌を元に戻し、ドライビングシートを取り外した。
ピンを外し前にスライドさせるだけで2cvのハンモックシートは取り外し可能だ。
それとトランクからレジャーシートを取り出した。
自販機でペットボトルを買って小さな木陰にレジャーシートを敷き、ハンモックシートを置いた。
僕は腰をかけてハンバーガーを食べた。

食べ終わり、朝から走り続けていたからか昼寝をしてしまった。
ハンモックシートが僕の体を優しく包み込んだ。

目が覚めたら3時ぐらいになっていた。
僕はレジャーシートを片付け、ハンモックシートを2cvに戻しエンジンをかけた。




暖気してからもう少し走ることにした。
帰りは高速で帰ろうと考えていたため、幌は開けていなかった。

そろそろ帰ろうと思い16時ぐらいに高速にのった。
しばらく走っていると前の車がハザードをつ  け減速し始めた。
渋滞だ。
後でわかったことだが、事故があったらしい。
仕方ないと思いながら渋滞のなかに居続けた。




しばらくして、シフトノブがブルブルと振動し始め回転数が落ちそうになった。
慌てて僕はアクセルを踏んで回転数を保った。
2cvのシフトはエンジンとほぼ直結しているためエンジンの振動がシフトノブを通じて伝わってくる。

一瞬は戻ったがまたすぐに回転数が落ちてしまった。
またアクセルを踏んだが間に合わず完全にエンジンが止まってしまった。
ギアをニュートラルにしサイドブレーキを引きセルモーターを回したがかかる気配なし。完全にパニックになったが、すぐに落ち着き状況を把握した。

僕は急いで2cvを降り、三角版を持ち出そうとしときパーキングエリアまで100mの看板が見えた。
100mなら押せるかと思い、トランクの中で三角版をたて、右足でブレーキを踏みながら右手でサイドブレーキを解除し路肩をゆっくりと押し出した。
車両重量700kg代のボディは簡単に前に進む。

そのとき後ろの白いバンから二人のおじさんが降りてきた。

「故障かい?」
「はい。
そこのパーキングエリアまで押そうと思って。」
「俺たちも押すの手伝うよ。」

と言って押すのを手伝ってくれた。
三人で押せばそれなりに楽になる。
無事にパーキングエリアに2cvを止めることができた。
おじさんたちに礼を言うと

「久しぶりにこの車をみれたからよかった。」
「昔はこういうのが当たり前だったのに今の車はないからつまらないよ。」

とか言ってくれて、白いバンに乗り込んでいった。



僕は保険所に電話し状態を説明レッカーを呼んだ。
その間にボンネットを開けて、点火コイルを触ってみた。
とても熱くなっていた。
噂には聞いていたが、点火コイルが熱を持つと点火する事ができなくなるらしい。
渋滞で走行風がなくなり、空冷の2cvは熱をこもらせてしまった。

失敗したなぁと思いつつ、2cvをどこで修理してもらうかをスマホで探すことにした。
そしたら家に2cvをみてもらえる所が一軒見つかった。
現在17時、電話が繋がらないかもかもしれないと思いながら電話をしたが、つながった。それから現在の状態を話し、2cvを持っていってもいいかと聞くと、今一台分あいているから持ってきても大丈夫だと言ってくれた。
その後、また保険所に電話をし2cvを持っていけるところが見つかったことを話した。




しばらくして、一台のローダーがきた。
現在の状態をきかれ、

「冷えてきているからおそらくかかる。」

と答えると保険所の人は鍵を預かりエンジンをかけた。
さすがにプロなだけあって、非力な2cvを簡単にローダーにのせた。
保険所の人が降りようとしたとき、内側からドアの開け方がわからないみたいな素振りを見せて、窓から手をだし外からあけた。
降りてきて、こっちをみて、

「窓を閉めてもらえませんか?」

ときかれ、僕はいつも通り、ドアについてるフックを外しバタンと窓を閉めた。
保険所の人はエッて顔をしていたが我に返り、

「ありがとうございます。」

といって作業を続けた。
作業が終わり、僕もローダーに乗って2cvの修理工事へと向かった。
 



ついたのが18時30分。
60代ぐらいのおじさんが待っていてくれた。ローダーから2cvを下ろし、ボンネットを開け、おじさんがエンジンをかけるとセルモーターを短く回して一発でエンジンをかけた。しばらくしてなるほどといって降りてきた。

「明日は忙しいから明後日みて、明明後日連絡する。」

といってくれた。
僕はよろしくお願いします、といって電車で帰った。




家に帰ってきて、駐車場に2cvがいないことを寂しく思った。

「一台の車から」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「文学」の人気作品

コメント

コメントを書く