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一台の車から

Restive Horse

3.疾る貴婦人(ダットサン フェアレディS30Z)

 「L型サウンド!」

2cvの薄い鉄板を通して聞こえてきた。
仕事からの帰宅途中でのことだ。
スムーズな加速をしながら追いついてくる。信号で停車したとき長いノーズをスーっと横に並べた。
白いフェアレディS30Zだ。
信号が青になり、マイナーチェンジ後のツーテールのテールランプを見せつけながら、直列6気筒特有のスムーズな加速をして闇夜に消えていった。




 ダットサン(日産)フェアレディS30Z。
通称貴婦人。
ダットサンが1969年に世に送り込んだ世界的スポーツカーだ。
もとはアメリカでダットサンを販売していた片山豊さんがアメリカで売れる車を作ってほしいと日本にあるダットサン本部に頼んだことが始まりだ。

実際に販売してみると、価格と性能で人気を集めた。
アメリカでこの車のライバルとなったのはポルシェしかいなかったらしい。

ボディはフロントノーズショートデッキという形を世に広めた。
デザイナーはジャグワーEタイプをモデルにしたということだが、いわれなければわからない。

エンジンは二種類準備された。

一つはL型だ。
もとはブルーバードに搭載されていた直列4気筒エンジンに二気筒追加したものだ。
そのため、開発費は安くする事ができ、スカGことスカイラインGT(ハコスカ)やグロリアなど様々な車に搭載された名機である。
排気量は国内向けに2000ccのL20、アメリカ輸出向けに2400ccのL24、2600ccのL26、2800ccのL28が準備された。

もう一つはS20型だ。
S20はプリンス自動車が作った当時のポルシェよりも速いレーシングカーR380のエンジンをほぼそのまま搭載したものだ。
このエンジンは日本グランプリで49連勝したハコスカGT-Rに搭載されているものと全く同じものである。
S20を搭載したグレードは432のエンブレムがついていて、意味は4(フォウ)バルブ、3連(スリー)キャブレター、2(ツイン)カムだ。
当時の高性能車を意味する。
432はフェアレディZの最高級モデルとされたため、非常に高価であった。そのため生産台数が非常に少なく希少車となっている。

また、432のレースモデルとしてナンバーがつかない432Rも作られた。
特徴はオレンジ色のボディに黒いボンネットなのだが、製産されたのは五台ぐらいしかいない。

しかし、1973年の排ガス規制で、レース上がりのS20はこれをクリアできず、432は生産中止となった。

排ガス規制を機にZはマイナーチェンジを行う。
そしてできたのが432に変わる最高級グレード240ZGとZ-Lなマイナーチェンジ版としてZ-Tが発売された。

240ZGの特徴はGノーズと呼ばれるエアロパーツと前後のオーバーフェンダーだ。

Z-Tの大きな特徴はテールランプがツーテルと呼ばれるものに変更されたことだ。
僕が見たものはおそらくZ-Tだと思う。

フェアレディS30Zは1978年にモデルチェンジするまで生産され続けた。
結果、世界で一番売れたスポーツカーとしてギネス世界記録にも記録されている。

モータースポーツでもS30Zは好成績を残している。
サーキットでは「Z乗り」こと柳田春人選手がドライブし、人気をあつめた。
また、サファリラリーでは優勝もしている。

そんなS30Zは公道を中心としたチューニングカーが本当の顔だったと思える。
ハコスカよりも軽いボディにトルクのあるL型エンジンは、ゼロヨン、最高速、首都高、峠、様々なところを走り抜けた。

また、S30Zは湾岸ミッドナイト、よろしくメカドック、サーキットの狼など漫画で取り上げられている。
今挙げた三つの漫画でもS30Zが疾っているのは公道だ。
本当にこの車は公道を走るチューニングカーとして生まれた車なのだと思う。
 



そんなことを考えながら2cvを走らせ、自宅に付き

「直列6気筒、SOHCサウンドはよかったな」

と一声かけて、鍵をしめた。 

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