アルザリア

むでる

第8話 袋の中身

 前回  
 ホームに向けて歩いていた途中、謎の集団がおり女性を助けるため集団を倒す。旅の付き添いを許可し、夜営をしたのであった。

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 集団のすぐそばの草むらまで移動したので聞き耳立てて会話を聞いてみた。

「・・・・よし、あとは魔物たちがくれば偽装は完璧だな。」

「・・・・」

「うん!早いとこあの方に目標の確保ができたと報告しないとね。」

「それにしてもよ~これが儀し・・「おい、さっさと報告しに戻るぞ・・・」」

「ああ。(うん、そうだね!)(・・・わかった。)」

 外套を着た集団の内の1人が脇にある荷物を担ぐ。それを見ていたウラ遊星はどうしたものかと思っていると、集団がどこかへと移動し始める。そのためウラ遊星は草むらから飛び出しての前へと出た。

「すみませーん、少し道をお聞き・・「ちっ!!」」

 声を掛けると舌打ちをした人物が、暗器を飛ばしてきた。おっと、と言ってウラ遊星がそれを避ける。

「今のを当たっていれば良いものを」

「・・・じゃあ僕がいくよ~!!」

「・・・<火球ファイヤーボール>」

 暗器を投げた人物が苛立ちながら言っていると、小柄な人物が切りかかってきた。それを先程と同じように避けると、タイミングよく避けた先に炎が飛んできた。さすがに当たるなと思ったので<影渡り>を発動して、集団の後ろに逃げた。

「いやー危なかった。道を聞いただけなのに・・・なんでだろう。」

「これは失礼。私たちを見た者は殺すよう言われているので。」

「それは物騒なことで。それよりもそこに入ってるのは何かな?」

「いやこれはあなたには関係ないものですので。」

「ねーねー早く殺そうよ!」

「そうだ、早く帰りたいしな」

「・・・」

 集団のリーダーと思われる人物は袋の中身について答えてはくれず、他の3人はウラ遊星を殺したいのかそんな会話をしつつ、こちらの様子を伺っていた。そこでウラ遊星は想像魔法を使用して、自分以外の時間を止める想像をした。

「やっと静かになったよ・・・さて、中身はなにかな~」

 そんなことを言いつつ袋へと向かう。実のところ中身は何か予想がついている。袋を担ぐと元の場所へ戻り、袋の口を開ける。中を確認すると予想通り、女性が入っていた。女性の外見は、整った顔立ちに髪は黒髪に少し白髪が混ざり腰ほどまである。服装は予想とは違い、黒と白と黄を基調としたドレスを着ている。さらに詳しく状態を確認するため、<鑑定>を使用する。

【ステータ】
【名前】なし【年齢】100歳【性別】女【状態】奴隷  昏睡
【体力】1,205/15,0000
【魔力】40,0000/40,0000
【魔法】雷魔法Lv.10  闇魔法Lv.10 
【スキル】人化  威圧Lv.10  無詠唱Lv.10  気配察知Lv.10  気配隠蔽Lv.10  自然回復体力、魔力)
【加護】創造神の加護 
【称号】麒麟の娘  

「・・・これまた凄いな」

 何と霊獣の娘だった。霊獣はゲームで出てくるモンスターであるが、実際に見たことがあるプレイヤーはいなかった。そのため、プレイヤーの中では嘘じゃないのかと噂になっていた。設定として、大陸の東西南北と中央に霊獣がおり、大陸を守るような役目があるとされている。因みに麒麟は大陸の中央付近にいるとされていた。

 そんな設定あったっけ、と思いつつ時間停止を止める。すると再び時間が流れ始めた。

「なっ!!」

「一瞬で移動したのか!」

「何が起こったの?!」

「・・・!?」

 それぞれが驚いた反応をする。

「まあ、何も話さなそうだし倒すか」

 ここで想像魔法を使用して再び時間を止める。そのあとに<#雷爪__らいそう__#>を使い、先程の集団をまとめて切り裂いて倒した。

「やっぱり時間止めると戦った感じしないな」

 時間停止を止めて少女に<最上級回復エクストラヒール>と想像魔法で奴隷解除をした。しかし、目は醒めなかったので<鑑定>を使って見ると体力は回復しており、昏睡状態も無くなっていた。少ししたら目を醒ますだろうと思い、放っておくのも億劫なため、横に移動して目が醒めるまで待つことにした。

 しばらく横に座って待っていると、女性が目を醒まし辺りを見回した。そしてウラ遊星を見て驚く。

「貴方は・・・?」

「あぁ、俺はウラーナ・ペルソーナ・ケナスコンデって言います。長いのでウラと呼んで下さい。」

「・・・ウラ様ですか・・・ところで私は何故ここに?」

 ウラ遊星はこの女性の名前がないことは知っているので聞くことはせず、自分の名前を名乗った。そして女性は昏睡していて記憶が無いのか、何故ここにいるか分からないようだ。

「うーん、どこまで記憶があります?」

「ええっと、ある人を探しに1人で出かけて・・・仲良くなった人間と行動して・・いきなり攻撃されて・・んー・・・それから・・目が醒めた感じです。」

「そうですか。じゃあ、家の場所って分かります?」

「何となくは分かるんですが・・・ハッキリとは覚えてないようです。」

 ルーチェはそう言っているが、ウラ遊星は大体予測がついていた。なので家まで送るか提案してみると、ルーチェは、え?、というような驚いた顔をした。

「あのー・・・ウラ様について行ってもいいでしょうか?」

「それは・・・」

 いきなり過ぎて戸惑う。種族的には凄く魅力だが、後々何か起きそうな気がしてならない。それに自分には従者が待っているためどうしようかと思った。

「親切に助けて頂きましたし!もしかしたらウラ様が私の探していた・・・」

 そう言っており、もしかしてあの謎の神がやったのかなど思っていると、その女性が続けて言う。

「とりあえず、確定なので嫌でも付いて行きます!」

 えっへん、と胸を張りながらそう言う。

「いや・・で「もう決定事項です」も・・」

 もう一度断ろうと言おうとしたところで、決定事項と言われた。

「でも、それ「もう決定事項です」は・・・」

 もう何度言ってもダメだろうと思い諦め何も言わずに、天を仰いだのだった。

 そして回想前へと戻る。

「ところで貴方の事はなんて呼べば?」

「そうですね・・・特に個別名はないです。・・・そうだ!ウラ様が名前付けてください!」

 「あ、うん・・・わかった。うーん・・・じゃあ、ルーチェで!」

「ルーチェ・・・うん!気に入りました!ありがとうございます!」

 簡単に付けたけど意外と気に入ってくれたようだ。名前を付けた後、<鑑定>をして見ると【名前】の部分に『ルーチェ』と載っていた。
 まぁ気に入ってるからいいか、と思いこれからの行動予定をルーチェに言う。

「じゃあ今後の予定を言うぞ。と言っても今から家に帰るみたいなもんなんだ。」

「そうなんですか。お家はどの辺りにあるんですか?」

「アルクレイント王国の首都近くにあるはずなんだ。」
 
「アルクレイント王国ですか?」

 ルーチェは王国を知らないようで、首を傾げながらそう言った。ウラ遊星は、彼女がどこに住んでいたかなどは詳しく分からないが、今いる世界がゲームに近い世界であるなら大陸中央の方に住んでいた可能性はある。それに霊獣の娘であるならば、ひっそりと暮らしていたと思われる。

「まあ、ここから遠い所だと思ってくれれば大丈夫だ。」

「わかりました!まあ、私はウラ様に付いていくだけです!」

「あ、うん。わかった。」

 ルーチェの勢いに、若干引きつつ再び歩き出した。

 ——————「じゃあ、今日はこの辺で夜営するか。」

 しばらく進んでいるとウラ遊星がそう言う。周りを見てみると、日が落ちてきて暗くなり始めている。ルーチェも同じように辺りを見回し、同意する。

「ウラ様。あちらに川があるそうです。そちらの近くで夜営するのはどうでしょうか?」

「うん、そうだね。それでいいと思う。じゃあ行こうか。」

 ルーチェの案に賛成して川の方へと行く。川辺に行くと、普段から使われているのかどうかは分からないが、焚き火をした跡があった。そのため今日は焚き火跡の辺りで泊まることとした。

「じゃあ、ルーチェは焚き火用の薪を拾ってきてくれ。」

「わかりました。では行ってまいります。」

 ルーチェはそう言うと離れていった。ウラ遊星は、ヴォータルクで買ったテントを設営する。設営し終えると次に夕食の準備をするため<無限収納インベントリ>からニードルラビットの肉と数種類の野菜と果物類を出す。
 そこでルーチェが戻ってくる。

「ウラ様~。このくらいでよろしいですか?」

「大丈夫だよ。じゃあそっちで火をつけておいて下さい。」

 焚き火跡の近くに拾ってきた薪を拾い、先に火をつけておく。火をつけ終えると先程出した食材を調理する。まずニードルラビットの肉を一口大に切る。続けてじゃが芋、レタス、トマトといった野菜なども切った。まず切り終えた野菜を皿に盛り、サラダを作った。次に切った肉をフライパンに乗せて焼く。途中、切った野菜も加えて一緒に炒める。スープを作るために炒め終えた肉を少し取り出し、鍋へと移す。そこに水とじゃが芋を加えて煮る。少ししたところで更に塩を加える。
 それぞれ皿に移し、妄想魔法で作ったテーブルにおく。

「すみません、ウラ様・・・今後は作れる様に努力していきます・・・」

 「気にしなくていいよ。それよりも食べよう。——いただきます。」
 
 「?・・・いただきます?」

  ルーチェが気になったようなので『いただきます』と言う意味を教えた。ついでに『ご馳走さま』の意味も教えた。

「そんな意味があったのですね!私もこれから行っていこうと思います!」

 そんなことを言いつつ食事を続ける。食事を終え、寝巻きに着替える。サイズは合わないがルーチェにも替えの服を渡し着替えさせた。
 最後にテントを中心として少し広めに魔法の障壁を想像して眠りにつくのであった。


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 もう少しで国境を越えそうです。
 相変わらず不定期更新ですがよろしくお願いします。では。

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