アルザリア

むでる

第5話 助太刀

 前回
 村から街へ行く護衛依頼を受け、ルーノと共にヴォータルクに向かう。待ちに入る身分証を持っていないウラは冒険者組合に行き、組合カードを作り依頼を受けるのであった。

*******************

「すみません。コランさん、これお願いします。」 そう言いながら依頼書を渡す。

「こちらの依頼ですね。では依頼内容を確認させていただきますね。今回の依頼はヒール草を5束の納品。1束、ヒール草を10本束ねたものになります。報酬は銀貨3枚です。何か質問はありますか?」

「そのヒール草はどんなものか見せていただけないですか?」
 (ゲームのヒール草と違うかもしれないしな。)

 ゴソゴソとコランが受付の下から分厚い本を1冊を取り出す。「ヒール・・・ヒール草・・・」そう言いながらページを捲っていき、見つけたヒール草の絵を見せてきた。

「これがヒール草です。近場ですと街の近くにある森の中に生えています。」

「(ゲームと同じ草だな)はい、ありがとうございます。ではいってきますね。」

「行ってらっしゃいませ」

  依頼内容の確認が終わったので組合から出る。そこで泊まる場所がないことに気がつく。

「あ!そういえば宿とかとらないとな・・・また組合で聞きに戻るのもあれだし・・・」
 ぶつぶつ言いながら歩いていると突然声を掛けられた。

 「ねえねえそこのお兄さん!宿探さないとって言ってるのが聞こえたけど本当?」
 
 声の方に顔を向けるとそこには獣人の少女がおり、「あ、ああ。本当だよ。」と言うといきなり手を掴まれてた。 

「じゃあ私の宿に泊まっていって!!」そう言うと同時に強引に案内を始めた。

 しばらく案内されたところ、猫の顔にフォークとナイフが描かれている看板がある建物の前に着いた。そこで猫獣人の少女が手を離し中に入っていった。

「お母さーん!お客さん連れてきたよーー!!」そんな声が中から聞こえたため自分も中に入った。

「なんだい、騒がしい子だね。おっと、あなたがラスカの言っていたお客さんかい?」

「あはは、はいその通りです。」苦笑いしながら言う。

「えへへ~お母さん、私偉い~?」ラスカがニコニコしながら母親にそう言うと、「強引に連れてきたくせに何言ってるの!」少し怒りながら母親が言うとラスカは「水汲み行ってきまーす」と言ってすごい勢いで宿の奥へ行ってしまった。

 ふぅっとため息をつきこちらを向き直すと、「お客さん、私は女将のラシルといいます。先程は申し訳ありません。」

「いえいえ気にしないでください。宿を探していたのは本当のことですし。」

「そうかい、悪いねえ。では・・・ようこそ猫の陽だまり亭へ。何泊する予定だい?」

「では1泊でお願いします。」

「それなら銀貨2枚だね。食事は朝無料だよ。時間は朝1番の鐘から次の鐘まで。昼と夜は銅貨5枚かかるよ。因みに夜の食事は夜最後の鐘までになってるから忘れないようにね。」

 補足になるが、この世界の時間は一定の間隔で鐘を鳴らしている。朝の始まりは6時から鐘から始まり、その後3時間毎に鐘がなる、そして最後に24時に鐘が鳴り1日が終わる。因みにこの世界は1週間で365日と、現実世界と同じ時間経過する。

 あのーすみません、そう言って手持ちが銀貨1枚だけのことを伝える。
「申し訳ないのですが部屋って取っておくことできますか?今から依頼を受けに行くのでその後ならお支払できるんですけど・・・」

「んー・・・そうだねぇ・・・まぁうちの子が迷惑掛けたし大丈夫だよ!また戻ってきたときに声を掛けておくれ。」

「分かりました、ありがとうございます。では依頼やって来ます!」と言ってから外に出る。そしてそのまま街の外まで向かった。

 外壁の門が目で確認できる距離になったとき、老いた衛兵に言われたことを思い出した。そうだ、仮の証明書を返さないといけないんだった。そう思いながら門の方へと歩いていく。門に着くと警備中の衛兵がいたので老兵に言われて仮の証明書を返しに来たことをいった。

「こちらになります。」といって証明書を渡す。

「確かに受け取った、では行っていいぞ。」そう言って証明書を手に取り詰め所の方へ行った。これで衛兵に用事はなくなったのでさっさと門を潜り外に出る。ヒール草がある森は、街に来るときに抜けてきた森のことであったため、そちらの方向へ歩いていく。

  少し歩いたところで道を外れると<影渡り>を使用し、一気に森へ向かう。歩いて30分ほどかかる距離がほんの数分で着いてしまった。森中に入り少し進んだところで依頼品を探すために<探索サーチ>を使用した。すると、木々の下にある草が光る。確認をするとヒール草であった。

「結構たくさんあるんだな・・・」見渡してみると運が良かったのか今いる場所にかなりの数のヒール草があったのだった。

 収集中は<威圧>をずっと使用しており、魔物には遭遇することはなく、見かけてもかなり距離をとられていた。邪魔される心配がないため無心になって収集してるとかなりの数が集まっていた。

「取りすぎたな・・・ノルマはとっくに過ぎてるから帰ろ・・・」そう思い街に向けて行だす。因みにヒール草の束は20束あった。

 しばらく歩いて森を抜けるところまで来たところで、なにかと戦っているのか怒鳴り声や金属がぶつかる音が聞こえてきた。不思議に思ったため少し急いでその方へ向かうと、一台の馬車が魔物に襲われていた。馬車の周りには兵士がおり、オークやゴブリンといった魔物と戦っていた。兵士の方はすでに何人かは倒されており、魔物が多すぎて抑えられない様子であった。一目で危険な状態だと感じたため、戦いに加わることとした。

「助太刀します!!」そう言いながら、<雷爪らいそう>を使用する。すると、両方それぞれの指先から紐のような雷の糸が伸びてきた。

「助太刀感謝する!!」そんな声が聞こえ、全体を確認して魔物を抑えきれていない兵士を優先的に助けるため腕を振るい雷の糸を操る。それと同時に<炎槍ファイヤーランス>を使用した。

 ——————「ぐわっ!!・・・抑え・・切れないっ」彼はオークが棍棒で攻撃してきたところを防いだが吹き飛ばされたところだった。そこにすかさずゴブリンが止めを刺しに来ていた。

「おい!大丈夫か!!」他の兵士がそれをさせまいとゴブリン達を牽制する。しかし量が多いため1人で抑えられるりょうではなかったため、助けに来た兵士も殺されそうになる。もうだめだと覚悟したとき、周りのオークやゴブリン達が何かで切り裂かれていたり、黒焦げになって倒れていたのであった。

 周囲を確認すると鎧を着ていない男がおり、その男が紐のようなものを操りながら、自身の見も周りにも炎の槍が何本も現れていた。それを見たとき、彼が自分達を救ってくれたと確信した。何人かの同僚は死んでしまったが、その後も彼のお陰で全ての魔物を倒したのだった。

 魔物を全て倒した後、俺は負傷している兵士達を一ヶ所に集めるよう頼んだ。一ヶ所に集まったところで<広域回復エリアヒール>を使用し、兵士達を回復させた。そこで馬車の中から1人の若い男性が降りてきた。

「戦闘から回復まで何とお礼をすればいいか。助かったありがとう。」その男性がそう言うと兵士も含め全員が頭を下げた。

「頭を上げて下さい。当然の事をしたまでですよ!」

「そう言っていただくと助かる。名乗るのが遅れたが私はブーケ・セルジュ伯爵という。命の恩人だ、畏まらずに接してくれて構わない。」

「伯爵様でしたか。私はウラーナ・ペルソーナ・ケナスコンデというものです。ウラとお呼びください。今は冒険者をしてます。」

「ほう、冒険者なのか。先程の戦闘からして高ランクなのか?」

「いえ、Fランクです。」

「あれほどの強さでFランクか・・・これは組合に言った方が・・・」
  何か言っているが声が小さくて聞き取ることはできなかった。
「それで、今からどこに向かうつもりだ?」

「今薬草収集の依頼が終わったのでヴォータルクに戻るところです。」

「そうか!なら馬車に乗っていくといい!」

「でもしかし悪いの「いや遠慮しなくていい。恩人を無下むげにはできない!」では・・・」

「は、はぁ・・・わかりましたお願いします。」前にも同じことがあったよなと思いつつ馬車に乗る。

 馬車にブーケも乗ったところで御者に声を掛け、街に向けて走り出した。

「・・・いっ・・」馬車が走る衝撃がもろに伝わってきてお尻が痛んでいた。

「馬車に慣れない内はそんなもんだから気にすることはないぞ。ところで今回の件なんだが少ないがこれを受け取ってくれ」

 そう言いながら貨幣が入っているであろう革袋を渡される。袋を開け中を確認すると中身は金貨であった。金貨は10枚入っていた。

「これは・・・」

「先程も言った通り今回助けてもらったお礼だ。今回、大事な予定があって危うく参加出来ないところだった。改めてありがとう。」

「本当に気にしないで下さい。頭上げて下さい・・・」

 そんな会話をしていると、街の中に入っていた。遅れたが先程の戦闘で死んでしまった兵士の死体は、本人確認ができる物を取り焼却している。これは腐敗者アンデッドになるのを防ぐためである。

「では冒険者組合に行く用があるので私はこの辺りで十分です。」

「そうか。馬車を止めろ!」その掛け声と共に馬車が停止する。馬車からおり乗せてもらったお礼を述べる。

「こちらこそ今回の件助かった。感謝する。我が領地に来た際は是非歓迎させてくれ。では失礼する。」そう言うと馬車に戻っていった。その後に、護衛の兵士からも感謝の言葉を述べられ、ブーケ達一行 が走り去っていった。その後、領地がどこにあるか聞けばよかったと思いつつ冒険者組合へと向かった。

 冒険者組合に着いたため中に入り、 いくつかの受付から空いている場所を見つけてそこへ行き、受付嬢に声を掛けた。

「すみませーん。コランさん、依頼のヒール草の納品お願いします。」 声を掛けた受付嬢はコランであった。

「はい!あれ、ウラーナさんじゃないですか。もう終わったんですね。コランが少し驚きつつそう言う。

「長いのでウラでいいですよ。それよりもそんなに早かったですかね?まぁこれお願いします。」

  依頼品であるヒール草5束を机の上に出す。

「はい、わかりました!では確認させていただきますね。・・・・ちょうどですね。ではこちら報酬の銀貨3枚になります。ご確認ください。」

  銀貨を受けとりちょうどあることを黙視で確認した。
「ありがとうございます。ところでアルクレイント王国との国境近くに向かう護衛の依頼などありますか?」

「少々お待ちください・・・すみません、ウラさん・・・こちらの依頼は最低Dランクからとなっています。」

「そうですか・・・わかりました。他の依頼を当たってみますね。」

「申し訳ありません。こちらでも国境付近へ行くような依頼を確認してみます。」

「わざわざありがとうございます!では、 今日のところは帰ります。では。」

「ありがとうございましたー!」

  組合を出て、猫の陽だまり亭へと向かった。
 

*******************

 今回も長めになっています。
 書き溜めがあるので次話は月曜日の12時に更新する予定です。

 仮の更新日が決まったので月曜に報告します。
 Twitterには載せてあるのでそちらからも確認して下さい。では。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品