アルザリア

むでる

第2話 祠

 しばらくすると画面が明るくなり、ギルドの中にいた。
遊星はそのままオンラインのフレンドまたギルドメンバーを確認するため、メニューからフレンドリストを開いた。

 「・・・おっ。何人かもう入ってるな。」と言いつつ、ギルド内にある自室を出て、ホールを目指す。
 廊下を歩いているとギルメンのNPCとすれ違う。(あれ?まだ、ジグザグさんは来てないのか。)
 しばらく歩くとホールに着いた。

 ホールには、皆からギルド長(笑)と言われていじられる『メェーさん』と裏では本当のギルド長と言われて恐れられている『セサミさん』が話していた。

「セサミさん次のギルド会議は、来週辺りでいいですか?」

「・・・そうですねぇ・・・一応メンバー全員に確認してからですねぇ。確認して難しいなら再度、日にちを決めるという事でいいですかぁ?」

「・・・うーん。じゃあ決まりで!!」

 話が終わったらしいので話しかける。
「メェーさん、セサミさんこんばんわー」

「あ!ウラさん!」

「ウラさ~ん。こんばんわ~」

「お2人とも何かあったんですか?」

「次のイベントに向けたギルド会議の日にちをどうするか決めてたんです。」

「そうなんですよぉ~。・・・そうだぁ~!ウラさん、来週に会議する予定なんですけど大丈夫ですかぁ~?」

「そうですね・・・うーん・・・・・まぁ大丈夫ですかね。」

「とりあえず1人はOKですね。」

「他の人にも連絡してみますねぇ~」

「また何か連絡があればお願いします。・・・じゃあ俺は、素材集めとかしてきますね。ではまた。」

「何かあれば呼んでください。僕たち暇なんで。」チラッとセサミさんを見る。

「分かりました。ではまた。」と言い俺は出入り口の扉を開き、ギルドから出た。
 ふっと、後ろを振り向く。そこにはヨーロッパにある様な古く大きな城があった。この城は、俺の所属ギルド『ヴァルシア』のギルドハウスだ。
 このギルドの特徴は、自分を含めて数人がβ版経験者である。他ギルドを見ても、こんな人数がいるギルドは他にないと言われている。

 俺はそんなことを思いつつ向き直すと、歩き出す。少し歩いたところで転移を使って、大きな外壁に囲まれた都市の近くに出る。

 この都市は『ベラルーシア』と言われていて、『アルクレイント王国』の首都だ。この都市を含め、他の街などの街並みは、中世ヨーロッパ風といった感じだ。

 そのまま外壁にある門を潜ると、賑わっている声が聞こえ、それらを聞きながら、冒険者組合の方向へ歩いていく。しばらくして一軒の建物が見えた。その建物は他の建物と比べて大きく、また石を使って建てられたものだ。中に入ると、多数のプレイヤーがクエストボードの前にいるのが見え、自分もそこに行く。

「・・・今日はソロで行こうかな。」
 そう思いながらクエストを見ていると"ズキッ"頭に痛みが走る。(また頭痛だ。・・・というか、ゲーム内でこんな痛みを感じる仕様なのか?・・・・・・まぁそのうち治るだろう。)
 考えても答えが出ないので、痛みについて考えないこととした。

(当初の予定通り、森でも行って武器の素材集めしよ。)と考えながら、都市の近くにある森で素材集めをする
 ため、冒険者組合を出て、外壁の門へ向かった。

 門へ向かうまでにどんな素材が必要か確認して歩き、森の前までやってきた。

「よし。やるぞ。」そう言ってウラーナ・ペルソーナ・ケナスコンデは森へと入っていった。

 森の奥を目指して歩いていくと、オーガの群れを見つけた。

「オークが3体か・・・まあ一人で大丈夫だな。」そう呟くと、《影渡り》を使用し手前にいた1体のオークの下まで近づくと、後ろから首を掻き切って倒す。他2体もそれに気づかないので続けてその2体のオーガも倒す。
 アイテムボックスを開き、入手したアイテムを確認したら再び森の奥を目指す。オーガを倒した後も何体かモンスターがいたので、すべて狩った。

 ——————そして現在、俺は道を外れた場所にある、洞窟の前にいた。
「なんだここ?まだ誰にも見つかっていない場所なのか?」そう言いつつ《気配隠蔽》《気配察知》を使用した。
「・・・どんなものか少し確認するか。」そう言って洞窟に入っていった。

この『アルザリアオンライン』では、こういった隠し要素隠しダンジョンなどがあり、レア度の高い武器や防具といったアイテムを手に入れることができる。しかもそのアイテムはゲーム内において1度しか現れないものである。

 俺の所属しているギルドのルールでは、—場所やアイテムを1人で見つけた場合、発見者の物とする。また、協力者を募った場合、アイテム類は平等に分けるようにする。—定られている。
 そのためか、多くのギルドメンバーはまず1人でそういったところに潜る。もちろんこの俺もだ。

 周囲に警戒しつつ奥へ奥へと進んでいくと、少し開けた所に出た。
「・・・頭痛がしてきたな。でもしかし、ここはなんなんだ・・・」 そう言ってあたりを見回す。

目の前には、草花や木々が生い茂っており、天井にあいた穴から射す光があるものを照らしている。それは一際大きい古大樹である。その古大樹には苔が生えており、根元からは水が噴き出している。その水が行きつく先を確認してみると大きなエメラルドグリーンの湖があり、小説やお伽話に出てくるような幻想的な雰囲気を醸し出していた。

「ほんとにきれいな場所だな。」色々と辺りを見ていると、古大樹へと続く道を見つけた。
 (あそこにアイテムがあるのかな?行ってみるか。)そう言い、古大樹の方へ歩いていく。

「また頭が痛くなってきた・・・しかし、やっぱり近くで見ると本当にでかいな。・・・そういえば何かアイテムはないかな?」
 古大樹の周りを確認するが、宝箱が1つもなかった。(何もないな・・・ならもう帰るか。一応帰ったらギルドに報告しとくか・・・)

 そう思って帰ろうとしたところ・・・・・・・・・ガッコン・・・・・・・・・・
という大きな音がし、振り返ると水が噴き出している場所の近くに下へ行く階段があった。
 それを確認すると急ぎながらも慎重に階段を下りた。階段を下りた先には石のレンガでできた廊下が続き、所々苔が生えていたり木の根によって崩れている箇所があった。俺は階段を下りる時と同様、その廊下を慎重に進んだ。

  長い距離を歩くと開けた場所に出た。よく見るとその部屋の中央に小さな祠がある。

 祠へ向かい、それに触れた。

 瞬間、頭に物凄く強い痛みを感じた。
「な、何・・なんだ・・この祠は・・・頭・・・が割れ・・・る・・」
 
そう言うと段々と意識が遠退き、俺はその場に倒れた。


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