ハルハリコ

ウミネコ

鈴虫の音色

望遠鏡、簡易テーブル、お湯の入った大きめの水筒とコップ二つ…
折りたたみのリクライニングチェアーと毛布…それぞれ車に積んで
ハルさんのお店の駐車スペースに車を止めてお店に入る。

カフェは夜はカフェ&ダイニングバーなってるのは知ってた。
初めてその雰囲気がガラリと変わっておしゃれな感じで賑わっていた。

少し仄暗い明るさの照明と間接照明で海の音に合わせて青い光が天井を揺らがせてる。
割と船の警笛などは聞こえる。それが運がいい時の演出なのかさえ思わせるお店だった。なんせ
断崖絶壁といえる垂直に海にそびえる崖上にあるから潮の香りと風が吹き込む夏は涼しい場所で潮の音は絶えず聞こえるのだった。
お店のBGMはかなり控えめに…テーブル席はいくつか片付けられててハンモックの席がある。

お客さんはといえば…若い男女といったところだろうか…しかも恋人同士で来るような人が多い。
一人で来る人もなかなかいる。

玻璃色のステンドグラスは照明に照らされきらめいてて…
海一望できるテラス側の窓は開けっぱなし。

これほど…ゆったりとしてて、さらに海を感じるお店はこの町にはそうない。

隠れた名店なりえそうな店である。

ちなみにここで寝てしまう人も多く予約制。
予約からの時間が一定以上過ぎてしまうとハンモックの網がそっと滑車が動き低くなる仕組みだ。寝返り時の転落ケガ防止のためらしいが
その前に動き始めたら大抵人は降りて、めいめい好きな席に座って楽しく過ごしてる様子。


お店をぼんやり眺めてると後ろから肩叩かれ、振り返ると
黒いズボンにふんわりとしてそうなおおきな白い胸が押し込まれたかのような総レースの黒いノースリーブで上に薄手の青い肩かけを羽織った女性がいた。

「ゆうさん。」その人が…ハルさんだとわかるのに数秒要した。
「ハルさん…見違えましたね。」
「そうですか?」
「ええ、なんというか…前にお会いした時よりも可愛らしいですよ。」
「そうかな?ありがとう。」微笑んでくれた。
「ハルさん行きましょう。」
「そうね。じゃあ行ってきます!」
お店の人に声かけて手を振った。
相手は微笑んで頷いただけだった。

彼女をいつも夜空眺める場所へと連れて行く。
「素敵ね…」
彼女は望遠鏡ものぞかず夜空を眺め数秒見とれていた。

それだけじゃない。
蛍が近くの川で飛んでるのが遠くで見えて…
星が増えて消えたりと点滅してるかのようだった。

「…俺にとってとびっきりのところなんだ。蚊は多いけど…」
「そうね。血を吸われちゃって朝腫れちゃいそうね」
「…蚊が羨ましいな笑笑」冗談めいていうと彼女はちょうど腕に止まった蚊を叩いた。
「ゆうが蚊でも遠慮なく叩いちゃうけどね?」
「けちー」と言いつつ二人で笑った。
「車行きますか、今日は蚊が多い気がします。」彼女を助手席に誘い俺は運転席に入って街に戻った。

「あの…他に行きたいところあるんですか?」
「ありますよ。駅です。」
「え?」
「僕車停めるんでコンビニで何か飲み物お願いします。僕トイレ行きたくて…」
「わかりました。」
彼女を下ろし車を少し離れた場所に車を置く。
コンビニをみたらすでに彼女の姿がない。

すっと目隠しをされた。
直前に女性の手が見えたのだった。
「ハルさん?」
「だれよそれ、あ、さっき車一緒乗ってたヒト?ウケる!帰ってもらったよ」
元カノだった、怒りが湧き出てくる。
「なんだよ…」
「え、うーん付き合って?」もじもじとしつつストレートにいう彼女。
「断る」男は携帯のストラップかよ、んなの嫌だ。

俺は辺りを見るが彼女はいない。
元カノはケラケラ笑っていたのが腹立つ、
「お前に構ってる暇ねぇ!」と一言言って駅の中探すべく走ったが人混みの中だった。
悲しくて疲れて…連絡通路のど真ん中にある柱に寄りかかり頭抱えた。

「大丈夫ですか?」いつしかのように優しい声が聞こえた。
顔を見たらハルさんだった。
「お怪我ありませんか?連絡したんですが…繋がらなかったようで…待ってたんです。元カノさんが話があるから帰れババアとしつこく言われてさらに男性がそばに控えて脅しにかかってきたので…ここならくるかなと。」
心配そうににっこり微笑んでるのだけど…ハルさんの背中の方に青い至極高温そうな怒りの炎が見えた気がして寒気がしたのだった。
「何もないよ。元カノとかも何もなかった。相手するだけ無駄だから」
「そうですか。」安心したかのような表情に俺はホッとした。
「そっちこそ大丈夫?」
「男に胸ぐら掴まれるくらいはされましたけど、私は優しく微笑んで一言諭しただけですっと道を譲ってくれましたよ。」
「ハルさん…逞しいですね。」
「ありがとう。はいお水。」
いつしかのようにちょっとしたお菓子とミネラルウォーターをくれた

「あのお山の鈴虫を1匹、2匹の鳴声を聞いていたにすぎませんよ」
彼女はそう涼やかに微笑みながら一人つぶやくような事を言っていて…どこか…寒気がした気がした。

彼女は何を言ったのだろうか…

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