元最強騎士の"詠唱破壊《スペルブレイク》"

双城ユウリ

プロローグ

百年程前、世界は七種族、人間、獣人、竜人、妖精、神、精霊(聖霊)のうち魔物によって壊滅的被害を受け六つの連合国が生まれた。
そして、各国は魔族に対抗するため女性だけが持つとされている"聖炎プラーナ"を行使する者を"魔皇騎士"と呼び、それを育成するために六つの学院を創設した。


三百年前、突然現れた魔王によってラヴィシア王国が転覆し、世界情勢が一気に変わり戦争が勃発し始めた。
「はぁ、俺は何でも屋じゃないんだけどな。あいつは俺をなんだと思ってんだよ」
俺はクライズ=アルベルト。
魔皇騎士の育成を行う学校へ第二王女護衛として赴任を命じられて、旧知の仲でもある学園の理事長へ会いに行くところだ。
「やめなさい、この外道」
少女の声が聞こえてくる。
「ぁぁ?ガキの分際で俺たちに意見してんじゃねぇよ」
数人の男が幼い少女の腕を掴み、それを止めようとしている銀髪の少女が睨み合っている。
「誰がガキですかっ!、、。数多なる闇を掻き消しなさい」
少女が詠唱を始めると周りが光に包まれた。
「ちっ、これは使いたくなかったが、仕方ねぇ。"詠唱破壊スペルブレイク"っ!」
「なっ!」
「い、今の内だっ。ずらかるぞてめぇらっ ︎」
「逃がすか、決して外すことは許されず、感情を持つことを許されず、神の裁きを与えんっ、"不可避の魔弾フライクーゲル"/付加エンチャント第三階梯魔法、血呪ノ鎖ブラッディーチェインっ!」
放たれた銃弾が爆発し、出てきた鎖で男達が拘束された。
「こんなことしてる場合じゃねぇのに俺はなにしてんだ、、」
「ちょ、ちょっと待ってくださいっ」
面倒ごとを避けるためにその場を立ち去ろうとしたら、少女に呼び止められた。
「ん?なんだよ」
「私は、シフィーナ・アレイシアです」 
「俺はクライズ=アルベルト。」
「先程は助けてくれてありがとうございます、アルベルトさん」
「気にすんな」
「どうやって私の魔法を消したのですか?」
「内緒だ。てか、お前、 その制服、、ソフィーの学園の生徒だろ?」
「理事長を知ってるんですか?」
「まぁちょっと昔色々あって世話になったんだ」
「あっ、クライズっ!遅いと思ったらここでなにしてるのっ!」
「お前の書いた地図が下手すぎるんだよっ、ソフィー」
落書きのように書かれた地図を渡す。
「うっ、、。それよりアレイシアさん、なんでここに?」
「私は学園に行くところでクライズさんに助けていただいたんです」
「ならちょうどいいわ」
「おい、ソフィー。あの話こんな学生ガキに聞かせる気か?」
「私はガキじゃありませんっ!」
「俺からしたらガキ同然だ」
「?見た目からして私とクライズさんはそこまで歳離れてませんよね?」
「クライズって、、」
「どんだけてめぇは口が軽いんだ」
ソフィーの頭を思い切り殴る。
「いたぁいっ、女の子を殴るなんて最低っ」
ソフィーが子供のように涙目で睨む。
「見た目より何倍も生きてるババアがなに言ってやがる」
「むっ、女の子にババアって言うのは失礼っ!」
「はいはい、わるしゅうござんした」
「クライズさんと理事長は本当に仲が良いんですね」
「まぁ良いか悪いかで言うなら良い方なんだろうな」
二人の言っている学院へ着くと外からは外観が見えないように壁で囲まれている。
「クライズがこの学院に来るのは久し振りだっけ?」
「ああ、俺の時とは随分変わったな」
「そうなんですか?」
「俺の時は王都の方にあってな。壁もこんな高くはなかった」
「最近魔物達が活発化し始めて頑丈に創ろうと思ったらつい、張り切っちゃって、、てへぺろ」
「次それやったら殴るからな」
「えー」
「お前ただでさえムカつくのにそれやられるともはや殺意を抱くレベル」
「ひどぉい」
周りの生徒からは不思議そうな目と冷たい眼差しを浴びせられる。
「入っていいわよ。二人とも」
理事長室と書かれた部屋へ入ると豪華な装飾がされていた。
「お前なんで自分のとこだけ豪華なんだよ」
「そ、そんなことよりも本題に移ろう。生徒会長であるアレイシアさんには事前に言っておいたよね。彼が、、クライズ=アルベルトが今日から新しくDクラスを担当する教師よ」
「改めましてクラヴィス学院生徒会長、シフィーナ・アレイシアです。生徒を代表して貴方を当学院は歓迎します、よろしくお願いしますね」
「分からないことがあったら彼女に聞いて彼女は貴方が担当するクラスの子だから」
「私は授業がありますのでそろそろ退席しますね」
とシフィーアが出ていった。
「で、俺をこの学院に呼んだ理由はなんだよ?」
「最近、少し王国で不穏な空気があるの。そのせいで生徒に危険が及ぶかもって思ってクライズを呼んだの」
「はぁ、俺に頼むくらいなら宮廷魔道士団に頼めよ」
「あの組織は、目的のためならなんだってするじゃない。私は生徒だけは危険な目に遭わせたくない」
「わーったよ。けど、俺は魔術に興味なんてない。俺の教えがあいつらのためになるかは知らねぇからな」
「もしかしてまだあのこと引きずってるの?」
「・・・、さぁな」

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