最強家族のまったりライフ
55話 ダンジョン見学
「森に着いたね」
ノイントとアマリエが寝てしまったので……いやアマリエは寝てないか。とにかくカリスの背中が静かになったので、一人で気持ちの良い風を感じながら景色を眺めていたのだが、ものの10分もしないうちに目的地の森に着いてしまった。
「ねえカリス」
『む?なんだ?』
「体を動かしたいって言っていたけど、今回は狩りはするの?」
『手頃な獲物がいればするつもりだが、いないならいないでも構わないな』
「手頃な獲物っていうとある程度大きな魔物とか?」
『大きさは別に関係ないな。それなりに強ければそれでいい』
「強さか……」
そういう基準なんだ。あ、そういえば神界でリョウセン様と観戦してた蛇と竜の魔物も歴戦の猛者って感じだったね。あの魔物達をカリスが仕留めたのも強かったからなのかな。
「強い魔物を狩るのはやっぱりレベル上げのため?」
『まあ概ねそうだな。あとは戦いの勘が鈍らないようにというのも理由だな』
確かに弱い魔物ばかり狙ってたら経験値の効率も悪いし、自分と同等の相手だと負けちゃうなんてことにもなるもんね。
『クルスも狩りを日課にした方がいいのではないか?』
3歳児になんてこと要求するのこの鳥は…………いや、でもカリスの言う通りかもしれない。シェーラ達がいるから安全だけど、ずっと守ってもらってたらいざという時に足手まといになっちゃうよね。それに……家の人に限ってあるわけないんだけど、大切なみんなを目の前で失うなんてことには絶対になりたくない!
……魔法の練習はしているけど動けないとどうしようもないし、何より実戦で使えなきゃ意味がないか……。
「うん、帰ったら始めてみるよ」
『そうか、良いことだな』
さすがにカリスと同じようにとはいかないけれど挑戦だけはしてみよう。
『クルス、一旦近くの木にとまるぞ』
「え?うん」
そう言うとカリスは真下にあったカリスの何倍もの大きさがある木のてっぺんに着地した。
「どうしたの?」
『飛んで探すのもいいのだが、そうすると地面の下の獲物を見逃しやすいのでな。一度とまって地面の下を探知するのだ』
「地面の下にいる魔物も狩りの対象なんだね……」
ミミズとかと戦うのかな?
『ああ、色々な経験があった方が戦うときに有利だからな。それに地下深くに地竜などの竜種が眠っていることもあるから探知しておいて損はないぞ』
「そうなんだ」
『ちなみにこの世界のミミズの多くは進化していくと地竜を飲み込む巨大なワームになります』
うそん……。
『まあ、そうは言っても人間の国が近くにあるくらいだからここにはいないだろうがな…………うむ、やはり獲物となりそうな者はいないな』
あ、もう探知したんだ。
『待たせたな、飛んで探し始めるぞ』
「うん」
それからしばらくカリスと一緒に探したりティオに探してもらったりしたが獲物になりそうな魔物を見つけることはできなかった。
「坊っちゃま、そろそろ勇者たちがダンジョンに到達するので私達も向かいましょう」
森全域を一通り探し終えたところで時間になったようでアマリエが話しかけてきた。先ほどまでカリスの背中に寝そべりながら頬ずりをしていたはずだが衣服も髪も全く乱れていない。そして当然のように勇者たちの動向を把握しているが俺はもう驚かない……はず。
「うん、わかった。じゃあカリス、ここまでだね」
『そうだな、獲物はいなかったが一緒に探すのは楽しかったぞ』
「本当?俺も楽しかったから一緒の気持ちでよかったよ」
「……はっ!呑気に寝てたらご主人様とカリスがさらに仲良くなってます~!?」
あ、ノイントやっと起きたんだ。
「ではカリス、あちらの方角に向かってもらえますか?」
『うむ、承知した』
アマリエの指し示す方向に飛ぶこと5分、ダンコーツの城壁が見える辺りまで戻ってきた。
「ここですね」
眼下には甲冑に身を包んだ騎士に囲まれながら談笑に勤しむ様子を見せる勇者達の姿と、不自然にアーチ状の草で幾重にも覆われた、いかにも何かありますよとアピールしている入り口らしきものがあった。
「あの入り口がダンジョン?」
「ええ、あれで間違いないでしょう」
何ともまあ分かりやすい……。
『ダンジョンというものは生物から漏れ出る生命力を糧にして成長していくので食糧となる生物を呼び込む目的であのように分かりやすくしているのです』
せ、生命力!?それって入ったら不味いんじゃないの!?
『生命力といっても体から溢れ出すオーラのようなものですよ。そうですね、例えるなら植物の光合成が近いでしょう。植物も生物が排出した二酸化炭素などを糧に成長しますが二酸化炭素を排出した生物の生命維持に影響はありません。ダンジョンもこれと同じような生態なのです』
な、なるほど……。
『もっと簡単に言えば生物の排泄ぶ────』
わーーっ!もう十分わかったから!
『なら良かったです』
なんでいきなりその例えを出すの……いや分かりやすいけど……。
『ちなみにダンジョンは生物から漏れ出る生命力が糧になると言いましたが、死体に限り生物自体を吸収することも可能です。というよりその方が得られる生命力も大きいです』
あ、やっぱり殺す方が効率いいんだ。
『はい、そのためダンジョンは眷属となる魔物を召喚して侵入した生物を襲わせたり罠を仕掛けたりして殺した生物を吸収するのです』
そうなんだ……でも入ってきた生物全員を襲ってたら誰も来なくなっちゃうんじゃないの?
『そうならないようにダンジョンは侵入者に利益を用意します。人間でしたら貴重なアイテムで誘き寄せ、魔物でしたら良質な魔石を持つ魔物やダンジョンの本体であるダンジョンコアの魔力で誘き寄せるのです。余談ですが、ダンジョンコアを殺すと大量の経験値が手に入ります』
旨味のある食虫植物って感じなんだね。
『なぜ植物で……って私が例えたんでしたね』
俺がティオと話している間、勇者達は先頭の騎士から何か説明を受けていた。上空でカリスが滞空しているにも関わらず誰も気が付く気配がない。勇者達の服装は先ほどの制服とは異なり、所々に金属を使った耐久性と機動性を兼ね備えたような鎧を着ていた。またそれぞれ武器を携帯しており、例の勇者君に至っては豪華な装飾の付いた宝物庫に眠っていそうな剣を帯剣している。
しばらくすると数名の騎士が少し離れたところで野営の準備をし始め、他の騎士は勇者達を連れてダンジョンへとぞろぞろ入っていった。
「私達も入りましょう。カリス、降りてください」
『うむ』
カリスは音もなく地面に着地すると羽を片方広げて俺達が降りるところを作ってくれた。
「ありがとうねカリス、乗せてくれたことも。すごい楽しかったよ」
「ありがとう~カリス~。おかげでスッキリしたよ~」
「ありがとうございます。……その、良い羽毛を持ってますね……」
『別にこの程度大したことじゃないから気にするな……まあ、悪い気はしないがな』
俺は口々にお礼を言われて少し照れくさそうにしているカリスの可愛さに頬を緩ませながら地面に降りた。降りてみて気が付いたが、この辺りは背の高い木々に囲まれている影響で昼間だというのに夕暮れのように薄暗い。
でもこの暗さも案外悪くないね。日差しがなくて涼しいから昼寝とかするのによさそう。
そんなことを考えているうちに小さくなったカリスが俺の肩にとまってきた。
「坊っちゃま」
「ん?」
「階段があるかもしれないので転ばないように手を繋ぎましょう」
「ぅあ、うん……」
ただの善意で言ってくれたのだろうが先ほどの地下での恥ずかしい記憶を思い出してしまい少し顔が熱くなってしまった。手はちゃんと繋いだ。
「入り口って結構大きいんですね~」
ダンジョンの入り口まで近づいてみたがノイントの言うように俺達が並んでも余裕で入れるくらいには大きかった。アマリエと一緒に足を踏み入れて少し進むと下に続く階段があった。
この辺りは人間を想定した造りにしてるのかな。
「ここを降りるとダンジョンが始まります。魔物はいますが私達には気が付かないでしょう」
いよいよダンジョンか……どんなところなんだろう。
昂る気持ちを抑えつつ階段を降っていくと開けた場所に出た。
「あれ?意外と明るい?」
地下ということで暗いのかと思っていたがダンジョン内は照明でも点けたかのように明るかった。
『暗いと入りが悪いですから』
あ、なるほど。
明るいことで辺りを見渡すことができたのだが……こちらは予想通りというか、土壁しか視界に映らなかった。
まあ地下だしね。ダンジョンってこういうものでしょ。
「勇者達は既に戦闘を開始しているようですね。こちらです」
「前衛は後退しろ!魔法隊撃てーっ!」
「───"火球"!」
「───"疾風"!」
「───"炎弾"!」
「───"土杭"!」
「「「グギャァァァァァ!」」」
一人の騎士の指揮のもとに戦う勇者達はとても統率されており、前衛の勇者が魔物を引き付け、後衛の勇者が魔法を一斉に放つという戦法は襲い来る獣やゴブリンなどの魔物の群れを危なげなく倒していた。
「よし、全て倒したな。ドロップアイテムを回収したらすぐ進むぞ」
勇者達は騎士の指示をちゃんと聞いているようで面倒くさそうな顔をしながらも回収に向かっている。
うーん……なんというか、その……。
『完全に腑抜けているな』
そうなんだよ。安全に倒せているからか全く緊張感がないんだよ。さっきの戦闘中も近くの友達と話すような人が出ていたし、前衛に至っては魔物をおちょくるような行動をとっていたからね。ううん……もっと少人数のパーティで戦うとばかり思ってた。
《そういえばダンジョンの魔物って死ぬと消えるんですね~》
あ、確かに。
ノイントの言葉の通り魔物の死体があった場所には体の一部だったり持っていた武器などが落ちていた。今のノイントは実体化を解いているので念話だ。
あの騎士がドロップアイテムって言ってたけど、これもダンジョンの仕業?
『はい、分かりやすい成果があれば人間は危険を顧みずに嬉々として飛び込んできますから』
言い方……。
《魔物が倒した場合も落ちるの~?》
『落ちますが大抵無視されるのでコスト削減のためにダンジョンが回収しています』
ダンジョンもやりくりしているんだね。
ノイントとアマリエが寝てしまったので……いやアマリエは寝てないか。とにかくカリスの背中が静かになったので、一人で気持ちの良い風を感じながら景色を眺めていたのだが、ものの10分もしないうちに目的地の森に着いてしまった。
「ねえカリス」
『む?なんだ?』
「体を動かしたいって言っていたけど、今回は狩りはするの?」
『手頃な獲物がいればするつもりだが、いないならいないでも構わないな』
「手頃な獲物っていうとある程度大きな魔物とか?」
『大きさは別に関係ないな。それなりに強ければそれでいい』
「強さか……」
そういう基準なんだ。あ、そういえば神界でリョウセン様と観戦してた蛇と竜の魔物も歴戦の猛者って感じだったね。あの魔物達をカリスが仕留めたのも強かったからなのかな。
「強い魔物を狩るのはやっぱりレベル上げのため?」
『まあ概ねそうだな。あとは戦いの勘が鈍らないようにというのも理由だな』
確かに弱い魔物ばかり狙ってたら経験値の効率も悪いし、自分と同等の相手だと負けちゃうなんてことにもなるもんね。
『クルスも狩りを日課にした方がいいのではないか?』
3歳児になんてこと要求するのこの鳥は…………いや、でもカリスの言う通りかもしれない。シェーラ達がいるから安全だけど、ずっと守ってもらってたらいざという時に足手まといになっちゃうよね。それに……家の人に限ってあるわけないんだけど、大切なみんなを目の前で失うなんてことには絶対になりたくない!
……魔法の練習はしているけど動けないとどうしようもないし、何より実戦で使えなきゃ意味がないか……。
「うん、帰ったら始めてみるよ」
『そうか、良いことだな』
さすがにカリスと同じようにとはいかないけれど挑戦だけはしてみよう。
『クルス、一旦近くの木にとまるぞ』
「え?うん」
そう言うとカリスは真下にあったカリスの何倍もの大きさがある木のてっぺんに着地した。
「どうしたの?」
『飛んで探すのもいいのだが、そうすると地面の下の獲物を見逃しやすいのでな。一度とまって地面の下を探知するのだ』
「地面の下にいる魔物も狩りの対象なんだね……」
ミミズとかと戦うのかな?
『ああ、色々な経験があった方が戦うときに有利だからな。それに地下深くに地竜などの竜種が眠っていることもあるから探知しておいて損はないぞ』
「そうなんだ」
『ちなみにこの世界のミミズの多くは進化していくと地竜を飲み込む巨大なワームになります』
うそん……。
『まあ、そうは言っても人間の国が近くにあるくらいだからここにはいないだろうがな…………うむ、やはり獲物となりそうな者はいないな』
あ、もう探知したんだ。
『待たせたな、飛んで探し始めるぞ』
「うん」
それからしばらくカリスと一緒に探したりティオに探してもらったりしたが獲物になりそうな魔物を見つけることはできなかった。
「坊っちゃま、そろそろ勇者たちがダンジョンに到達するので私達も向かいましょう」
森全域を一通り探し終えたところで時間になったようでアマリエが話しかけてきた。先ほどまでカリスの背中に寝そべりながら頬ずりをしていたはずだが衣服も髪も全く乱れていない。そして当然のように勇者たちの動向を把握しているが俺はもう驚かない……はず。
「うん、わかった。じゃあカリス、ここまでだね」
『そうだな、獲物はいなかったが一緒に探すのは楽しかったぞ』
「本当?俺も楽しかったから一緒の気持ちでよかったよ」
「……はっ!呑気に寝てたらご主人様とカリスがさらに仲良くなってます~!?」
あ、ノイントやっと起きたんだ。
「ではカリス、あちらの方角に向かってもらえますか?」
『うむ、承知した』
アマリエの指し示す方向に飛ぶこと5分、ダンコーツの城壁が見える辺りまで戻ってきた。
「ここですね」
眼下には甲冑に身を包んだ騎士に囲まれながら談笑に勤しむ様子を見せる勇者達の姿と、不自然にアーチ状の草で幾重にも覆われた、いかにも何かありますよとアピールしている入り口らしきものがあった。
「あの入り口がダンジョン?」
「ええ、あれで間違いないでしょう」
何ともまあ分かりやすい……。
『ダンジョンというものは生物から漏れ出る生命力を糧にして成長していくので食糧となる生物を呼び込む目的であのように分かりやすくしているのです』
せ、生命力!?それって入ったら不味いんじゃないの!?
『生命力といっても体から溢れ出すオーラのようなものですよ。そうですね、例えるなら植物の光合成が近いでしょう。植物も生物が排出した二酸化炭素などを糧に成長しますが二酸化炭素を排出した生物の生命維持に影響はありません。ダンジョンもこれと同じような生態なのです』
な、なるほど……。
『もっと簡単に言えば生物の排泄ぶ────』
わーーっ!もう十分わかったから!
『なら良かったです』
なんでいきなりその例えを出すの……いや分かりやすいけど……。
『ちなみにダンジョンは生物から漏れ出る生命力が糧になると言いましたが、死体に限り生物自体を吸収することも可能です。というよりその方が得られる生命力も大きいです』
あ、やっぱり殺す方が効率いいんだ。
『はい、そのためダンジョンは眷属となる魔物を召喚して侵入した生物を襲わせたり罠を仕掛けたりして殺した生物を吸収するのです』
そうなんだ……でも入ってきた生物全員を襲ってたら誰も来なくなっちゃうんじゃないの?
『そうならないようにダンジョンは侵入者に利益を用意します。人間でしたら貴重なアイテムで誘き寄せ、魔物でしたら良質な魔石を持つ魔物やダンジョンの本体であるダンジョンコアの魔力で誘き寄せるのです。余談ですが、ダンジョンコアを殺すと大量の経験値が手に入ります』
旨味のある食虫植物って感じなんだね。
『なぜ植物で……って私が例えたんでしたね』
俺がティオと話している間、勇者達は先頭の騎士から何か説明を受けていた。上空でカリスが滞空しているにも関わらず誰も気が付く気配がない。勇者達の服装は先ほどの制服とは異なり、所々に金属を使った耐久性と機動性を兼ね備えたような鎧を着ていた。またそれぞれ武器を携帯しており、例の勇者君に至っては豪華な装飾の付いた宝物庫に眠っていそうな剣を帯剣している。
しばらくすると数名の騎士が少し離れたところで野営の準備をし始め、他の騎士は勇者達を連れてダンジョンへとぞろぞろ入っていった。
「私達も入りましょう。カリス、降りてください」
『うむ』
カリスは音もなく地面に着地すると羽を片方広げて俺達が降りるところを作ってくれた。
「ありがとうねカリス、乗せてくれたことも。すごい楽しかったよ」
「ありがとう~カリス~。おかげでスッキリしたよ~」
「ありがとうございます。……その、良い羽毛を持ってますね……」
『別にこの程度大したことじゃないから気にするな……まあ、悪い気はしないがな』
俺は口々にお礼を言われて少し照れくさそうにしているカリスの可愛さに頬を緩ませながら地面に降りた。降りてみて気が付いたが、この辺りは背の高い木々に囲まれている影響で昼間だというのに夕暮れのように薄暗い。
でもこの暗さも案外悪くないね。日差しがなくて涼しいから昼寝とかするのによさそう。
そんなことを考えているうちに小さくなったカリスが俺の肩にとまってきた。
「坊っちゃま」
「ん?」
「階段があるかもしれないので転ばないように手を繋ぎましょう」
「ぅあ、うん……」
ただの善意で言ってくれたのだろうが先ほどの地下での恥ずかしい記憶を思い出してしまい少し顔が熱くなってしまった。手はちゃんと繋いだ。
「入り口って結構大きいんですね~」
ダンジョンの入り口まで近づいてみたがノイントの言うように俺達が並んでも余裕で入れるくらいには大きかった。アマリエと一緒に足を踏み入れて少し進むと下に続く階段があった。
この辺りは人間を想定した造りにしてるのかな。
「ここを降りるとダンジョンが始まります。魔物はいますが私達には気が付かないでしょう」
いよいよダンジョンか……どんなところなんだろう。
昂る気持ちを抑えつつ階段を降っていくと開けた場所に出た。
「あれ?意外と明るい?」
地下ということで暗いのかと思っていたがダンジョン内は照明でも点けたかのように明るかった。
『暗いと入りが悪いですから』
あ、なるほど。
明るいことで辺りを見渡すことができたのだが……こちらは予想通りというか、土壁しか視界に映らなかった。
まあ地下だしね。ダンジョンってこういうものでしょ。
「勇者達は既に戦闘を開始しているようですね。こちらです」
「前衛は後退しろ!魔法隊撃てーっ!」
「───"火球"!」
「───"疾風"!」
「───"炎弾"!」
「───"土杭"!」
「「「グギャァァァァァ!」」」
一人の騎士の指揮のもとに戦う勇者達はとても統率されており、前衛の勇者が魔物を引き付け、後衛の勇者が魔法を一斉に放つという戦法は襲い来る獣やゴブリンなどの魔物の群れを危なげなく倒していた。
「よし、全て倒したな。ドロップアイテムを回収したらすぐ進むぞ」
勇者達は騎士の指示をちゃんと聞いているようで面倒くさそうな顔をしながらも回収に向かっている。
うーん……なんというか、その……。
『完全に腑抜けているな』
そうなんだよ。安全に倒せているからか全く緊張感がないんだよ。さっきの戦闘中も近くの友達と話すような人が出ていたし、前衛に至っては魔物をおちょくるような行動をとっていたからね。ううん……もっと少人数のパーティで戦うとばかり思ってた。
《そういえばダンジョンの魔物って死ぬと消えるんですね~》
あ、確かに。
ノイントの言葉の通り魔物の死体があった場所には体の一部だったり持っていた武器などが落ちていた。今のノイントは実体化を解いているので念話だ。
あの騎士がドロップアイテムって言ってたけど、これもダンジョンの仕業?
『はい、分かりやすい成果があれば人間は危険を顧みずに嬉々として飛び込んできますから』
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