最強家族のまったりライフ
48話 自然が落ち着く
翌朝、俺達は着替えを済ませるとすぐに街を出発した。人がまだ活発に動き始めない早朝なら余計なトラブルにも巻き込まれないだろうというアマリエの判断だ。
そんなわけで俺達は昨日よりも人が少ない朝の街道を歩いている。
「アマリエ、次の街にはどのくらいで着くの?」
ただ歩いているだけでもいいが、アマリエとはもっと仲良くなりたいのでこの機会におしゃべりでもして少しでも打ち解けられればいいなと思いながら俺はアマリエに話しかけた。
「そうですね。この街道沿いに行けば、2時間程で到着すると思いますよ」
この世界の街と街って結構離れてるんだね。それとも周りに森が多いのと関係しているのかな?
「そういえば坊っちゃま、初めての人族の街はどうでしたか?」
俺がこの世界の地理について考え始めようとすると、アマリエが唐突に街の感想を聞いてきた。
「え?うーん、人がいっぱいいるのはやっぱり苦手かな。自然に囲まれている方が落ち着く」
街並みとか市場に並ぶ商品とかを見るのは面白かったけど、人混みは前世と同じで苦手なんだよなあ。それに冒険者ギルドに入ったときのあのジロジロとした無遠慮な視線は嫌だった。絡まれるのはアマリエが未然に防いでくれたけど今後もああいう場面に出くわすかもしれないし、そう考えるとやっぱり俺は森の中でほのぼのと過ごすのが性に合っているんだ。
「そうでしたか…。でしたら、ルートを変更しましょうか」
俺の街の感想を聞いたアマリエは少し考えたあと、思ってもみない提案をしてきた。
「変更?」
「はい。街を経由しながらダンコーツに向かうルートをやめて、少々過酷になってしまいますが、森を抜けながらダンコーツを目指すルートにするのです。これならダンコーツに着くまでは
街に入ることもなくなりますし、森の自然を堪能できると思うのです」
その提案は俺としては嬉しいものだった。森を歩くのが過酷だとしても、一応それなりのステータスはあるとは思うのでそこまで苦ではないはずだ。
「でもいいの?この偵察って俺が外の世界を知るためでもあるんだよね?だったらもっと人と関った方がいいんじゃないの?」
「坊っちゃま、何も人と関わることだけが外の世界を知るというわけではありませんよ。レグサンド家の周り以外の自然を見ることだって外の世界を知ることになるんですから。それに、坊っちゃまが人族の街は嫌だと思ったことも、外の世界に触れて一つ知ったことなんです。それが分かればもう無理に街に入ることもないと思いますよ」
それでは今回の旅の目的の一つを果たせなくなると思い、不安げに尋ねた俺にアマリエはそう優しく諭した。
「それで、いいの?」
「ええ、いいと思いますよ。嫌なことなんて無理にやらないで極力避けた方がいいんです」
アマリエの言葉は俺の不安を払拭するのには十分だった。
「…それじゃあ、森を抜けるルートで行きたいな」
「はい、かしこまりました」
自分の気持ちを口にするとアマリエは笑顔で了承してくれた。
「では、次の分かれ道を右に入りましょう。そうすれば森へと入れますので」
森へ入って1時間が経った。ここの森は少なからず人の手が入っているからかちゃんとした道ができていた。今のところ人とすれ違うこともないので人目を気にせずに思う存分自然を堪能することができている。
「坊っちゃま、先ほどの街道より歩きづらい道ですからお疲れになりましたら遠慮なく言ってくださいね」
森を1時間程歩いても全く音を上げない俺を心配に思ったのか、アマリエが休むように促してくれた。
確かに街道と違って多少デコボコとしていたり、勾配があったりするので普通の3歳児だったら10分も歩けないだろう。だが、姉さん達としたゲームという名の魔物狩りで急激にレベルが上がった俺には、この程度身体強化などしなくても全く苦ではなかった。
「うん、ありがとうアマリエ。でも全然平気だよ」
「本当に大丈夫ですか?無理してません?」
本当に大丈夫なのだが見た目が3歳児だからか、やせ我慢だと思われているようだ。
ねえティオ、最大レベルの隠蔽があれば隠したい情報は絶対に隠せるんだよね?
『はい。鑑定に上位スキルはありませんので確実に隠せますよ』
そっか。じゃあステータスを見せちゃおう。
「大丈夫だよ。そんなに信じられないなら俺のステータスを見てみてよ。ステータス開示」
俺の唱えた言葉によって目の前に俺のステータスが載ったウィンドウが表示された。
クルス・レグサンド :男    3歳
種族:高位森人族
状態:健康
Lv . 89
耐久力   52300/52300
魔力     88314 /88314(746up)
攻撃  42510
防御  29932
俊敏  48005
器用  53444
運     85
《スキル》
【武術系】
・剣術Lv . 1
【魔法系】
・火魔法Lv . 1 
・風魔法Lv . 1
・水魔法Lv . 1 
・土魔法Lv . 2(1up)
・闇魔法Lv . 1 
・光魔法Lv . 1 
・時空魔法Lv . 1 
・深淵魔法Lv . 1 
・神聖魔法Lv . 1 
・精霊魔法Lv . 1
【技能系】
・身体強化Lv . 10超越化Lv . 3
・気配察知Lv.10、超感覚Lv. 6
・気配遮断Lv . 10、隠密Lv . 6
・魔力操作Lv.10、神力操作Lv . 1 
・魔力探知Lv .10、精霊眼Lv. ━
 ・隠蔽Lv. 10
・調教Lv . 2
・加速Lv . 10、瞬速Lv . 4
・痛覚耐性Lv . 2
・成長倍加Lv ―
・鑑定Lv .2(共有)
・武の心得Lv ─(new)
・魔力吸収Lv .1(new)
【ユニーク】
・神の導き手Lv . 3
・スキルクリエイトLv . ―(2126P)
《加護》
主神イリスの加護、魔王の加護、武神リョウセンの加護(new)、魔法神ラセアの加護(new)
《称号》
転生者(隠蔽)、神の加護を受けし者、 
魔王の息子、世界の深淵を知る者、学ぶ者、深淵を覗く者、女の娘(new)
一応母さんとお酒の材料を探して森へ行ったときにゴブリン以外にも低級の魔物を倒したのだがこのレベルになると微々たる経験値にしかならないようでレベルに変化はなかった。だが、しっかりとスキルクリエイトのポイントは増えているのを見て少し嬉しくなった。魔力はいつも魔力操作を使って消費しているからか少しだけ上昇している。
土魔法のレベルが1上がってる。母さんに"黒盾球"を割られてから色々試行錯誤してたからかな?あ、リョウセン様とラセア様から加護もらってる。嬉しいなあ。新しいスキルは身に覚えがないからリョウセン様達の加護かな?
そこまで確認して最後に称号の欄に目を向けると、何やら不穏な称号が追加されているのに気が付いた。
『……ぷふふっ、鑑定しましょうか?』
ティオは俺の気持ちを汲み取ってスキルの鑑定を──いや全く汲み取ってない。あきらかに笑っている。だが確かに気になる称号ではあるし、リョウセン様達の加護の内容も気になるので感情を殺して無言の同意を示した。
・武神リョウセンの加護……武神リョウセンから与えられた加護。
:武の心得Lv ─
追伸※お前のこと気に入ったネ!今度一緒に地球行くネ!
・武の心得……武術系のスキルを習得しやすくなる。
・魔法神ラセアの加護……魔法神ラセアから与えられた加護。
:MP自動回復
:魔力吸収Lv .1
追伸※ノイントちゃんを貸してくれてありがとうね。それとノイントちゃんにお菓子待ってるわって伝えておいてね~。
やはり新しいスキルはリョウセン様の加護の効果だったようだ。ラセア様の加護はノイントがもらった加護と同じ効果だった。それにしても追伸が雑だ。ほとんどメールをする感覚で加護を送ってきている気がする。そこまでの説明を聞いてため息を吐きそうになったが、続いて頭の中に流れてきた先ほどの不穏な称号の説明でその息を止めることとなった。
・女の娘……どこからどう見ても女の子。男の娘よりも女の子。もう女の子でいいんじゃないか?
:キューティクル倍増
何この説明!?確かに自分でも男には見えないけどちゃんとついてるから!というかこの効果は何なの!?神界で自分の顔を改めて見てからなんか髪のツヤが一層増したとは思ってたけど称号の効果だったの!?
俺は不穏な称号の説明が終わると間髪入れずに心の中で叫んだ。決して悪い効果ではないのだ。しかし、称号の説明も相まってどうしても恥ずかしい称号に思えてしまう。幸いなのはキューティクル倍増がステータスの欄に載らなかったことだ。おそらくHP自動回復などと同じくくりなのだろう。
《良かったですね~ご主人様~。髪の質が倍増ですって~》
『女性からしたら喉から手が出るほど欲しい効果ですよ。良かったですね』
絶対二人とも良かったって思ってないでしょ!声が笑ってるよ!
ティオとノイントの追撃を受け、ひとしきり悶え苦しみようやく落ち着いてきたのでアマリエを見てみると、いまだに俺のステータスをまじまじと見つめていた。
「アマリエ、どう?これなら大丈夫そうでしょ?」
「へっ!?ええ、はい…。そうなんですが……このレベルでこのステータスは何なんですか?それに神の加護を三つも……。それとスキルクリエイトって何ですか?私そんなスキル知らないですよ」
アマリエは俺のステータスを見て少々混乱しているようで俺が声をかけるとびくりと肩を跳ねさせたあと、矢継ぎ早に質問をしてきた。俺は転生云々のことは誤魔化してスキルのことなどを大まかに説明した。
「な、なるほど……ってやっぱり納得できませんよ!なんでそんなスキルを持ってるんですか!?」
「お、俺も知らないよ。気づいたらこんなスキルを持ってたんだから」
転生のときにスキルを作ったからなのだが、そんなこと言えるはずもない俺はしらを切った。
「それよりどう?これで本当に疲れてないって信じてもらえた?」
このままではボロが出ると思った俺は急遽話題の転換をはかった。
「ええ、まあ……そうですね。このステータスでしたら疲れないのも納得です。ですが坊っちゃま、肉体的に疲れていなくても精神的には疲れていませんか?」
「うん、それも大丈夫だよ。自然がいっぱいあるから歩くのが楽しいくらいなんだ」
家の周りと同じような景色だが、生えている植物や空気の違いが別の場所だと気づかせる。その違いを見つけるのが楽しいのだ。
「そうですか。でしたらもう2時間ほど歩きましょうか」
「うん!」
そうして2時間程周りの植物を鑑定したりアマリエ達と話したりしながら歩いていき、ちょっとした広場を見つけた俺達はそこで昼食を食べることにした。シートを敷き、そこに二人で座る。ノイントも実体化して俺の隣に座った。
「どうぞ、坊っちゃまのお弁当です」
「ありがとう」
アマリエが"ボックス"から出したお弁当をお礼を言って受け取る。
「ノイントはどうしますか?」
「ボクはご主人様のを少しもらえればいいですよ~」
ノイントは今回は味見程度に済ませるようだ。
「わかりました。ではこちらのフォークを使ってください」
「ありがとうございます~」
「そういえばお弁当っていつ作ってるの?」
昨日なんて俺と同じ時間に寝たはずだからお弁当を作る時間なんてなかったはずだ。ふと気になった俺はアマリエに尋ねた。
「実は、お屋敷にいるときにまとめて作っちゃったんです」
「そっか。"ボックス"の中は時間が止まっているからいつ作っても大丈夫なんだったね」
「はい」
渡されたお弁当はまるで出来立てのようにほかほかの状態でほんのりと湯気が立ち上っている。つくづく魔法は便利だと思う。
「早く食べましょうよ~」
「うん。じゃあ冷めないうちに食べよう」
そんなほのぼのと昼食を食べ始めるクルス達を気配を消して木の上から見つめる4つの影があった。言わずと知れたレレナ達別動隊である。
「う~。やっぱりアマリエが羨ましいー!」
「そうねえ。何とかして一緒に食べられないものかしら」
「奥様、お嬢様、血液パックを飲みながら話さないでください。血が飛び散ります」
レレナ達もクルス達と同様に木の上で昼食をとっていた。昼食といっても、いつでも動けるように片手で食べられるサンドイッチなどの軽めのものだ。レレナとレスティアはヴァンパイアなので血の補給も行っていた。
「坊っちゃまは街を嫌がりましたね」
メイドの叱責を受けて大人しく血液パックを飲み始めたレレナ達を放置して、メイドは先ほどのクルスの発言を思い返しながら執事に話しかけた。
「ええ、やはりハイエルフですから森を好むのでしょうか?」
「それもありますが、坊っちゃまは人の視線を嫌がっているようでもありました」
「……ふむ、そうなるとダンコーツの偵察はあまり時間をかけない方が坊っちゃまのためにもよろしいかもしれませんね」
「偵察なんてクルス君じゃなくて私達がやればいいのよ!」
「そうよ!真面目にお父さんの言うことを聞く必要なんてないわ!」
「だから!血が飛び散るから話さないでくださいって言いましたよね!」
執事はメイドの意見を聞いて予定を変更しようかと考え始めたが、またもしゃべりだしたレレナ達にメイドがキレて収拾がつかなくなったのを見て、この件はまた後で考えようと思ったのだった。
2021/7/27
少しだけ表現を修正しました
そんなわけで俺達は昨日よりも人が少ない朝の街道を歩いている。
「アマリエ、次の街にはどのくらいで着くの?」
ただ歩いているだけでもいいが、アマリエとはもっと仲良くなりたいのでこの機会におしゃべりでもして少しでも打ち解けられればいいなと思いながら俺はアマリエに話しかけた。
「そうですね。この街道沿いに行けば、2時間程で到着すると思いますよ」
この世界の街と街って結構離れてるんだね。それとも周りに森が多いのと関係しているのかな?
「そういえば坊っちゃま、初めての人族の街はどうでしたか?」
俺がこの世界の地理について考え始めようとすると、アマリエが唐突に街の感想を聞いてきた。
「え?うーん、人がいっぱいいるのはやっぱり苦手かな。自然に囲まれている方が落ち着く」
街並みとか市場に並ぶ商品とかを見るのは面白かったけど、人混みは前世と同じで苦手なんだよなあ。それに冒険者ギルドに入ったときのあのジロジロとした無遠慮な視線は嫌だった。絡まれるのはアマリエが未然に防いでくれたけど今後もああいう場面に出くわすかもしれないし、そう考えるとやっぱり俺は森の中でほのぼのと過ごすのが性に合っているんだ。
「そうでしたか…。でしたら、ルートを変更しましょうか」
俺の街の感想を聞いたアマリエは少し考えたあと、思ってもみない提案をしてきた。
「変更?」
「はい。街を経由しながらダンコーツに向かうルートをやめて、少々過酷になってしまいますが、森を抜けながらダンコーツを目指すルートにするのです。これならダンコーツに着くまでは
街に入ることもなくなりますし、森の自然を堪能できると思うのです」
その提案は俺としては嬉しいものだった。森を歩くのが過酷だとしても、一応それなりのステータスはあるとは思うのでそこまで苦ではないはずだ。
「でもいいの?この偵察って俺が外の世界を知るためでもあるんだよね?だったらもっと人と関った方がいいんじゃないの?」
「坊っちゃま、何も人と関わることだけが外の世界を知るというわけではありませんよ。レグサンド家の周り以外の自然を見ることだって外の世界を知ることになるんですから。それに、坊っちゃまが人族の街は嫌だと思ったことも、外の世界に触れて一つ知ったことなんです。それが分かればもう無理に街に入ることもないと思いますよ」
それでは今回の旅の目的の一つを果たせなくなると思い、不安げに尋ねた俺にアマリエはそう優しく諭した。
「それで、いいの?」
「ええ、いいと思いますよ。嫌なことなんて無理にやらないで極力避けた方がいいんです」
アマリエの言葉は俺の不安を払拭するのには十分だった。
「…それじゃあ、森を抜けるルートで行きたいな」
「はい、かしこまりました」
自分の気持ちを口にするとアマリエは笑顔で了承してくれた。
「では、次の分かれ道を右に入りましょう。そうすれば森へと入れますので」
森へ入って1時間が経った。ここの森は少なからず人の手が入っているからかちゃんとした道ができていた。今のところ人とすれ違うこともないので人目を気にせずに思う存分自然を堪能することができている。
「坊っちゃま、先ほどの街道より歩きづらい道ですからお疲れになりましたら遠慮なく言ってくださいね」
森を1時間程歩いても全く音を上げない俺を心配に思ったのか、アマリエが休むように促してくれた。
確かに街道と違って多少デコボコとしていたり、勾配があったりするので普通の3歳児だったら10分も歩けないだろう。だが、姉さん達としたゲームという名の魔物狩りで急激にレベルが上がった俺には、この程度身体強化などしなくても全く苦ではなかった。
「うん、ありがとうアマリエ。でも全然平気だよ」
「本当に大丈夫ですか?無理してません?」
本当に大丈夫なのだが見た目が3歳児だからか、やせ我慢だと思われているようだ。
ねえティオ、最大レベルの隠蔽があれば隠したい情報は絶対に隠せるんだよね?
『はい。鑑定に上位スキルはありませんので確実に隠せますよ』
そっか。じゃあステータスを見せちゃおう。
「大丈夫だよ。そんなに信じられないなら俺のステータスを見てみてよ。ステータス開示」
俺の唱えた言葉によって目の前に俺のステータスが載ったウィンドウが表示された。
クルス・レグサンド :男    3歳
種族:高位森人族
状態:健康
Lv . 89
耐久力   52300/52300
魔力     88314 /88314(746up)
攻撃  42510
防御  29932
俊敏  48005
器用  53444
運     85
《スキル》
【武術系】
・剣術Lv . 1
【魔法系】
・火魔法Lv . 1 
・風魔法Lv . 1
・水魔法Lv . 1 
・土魔法Lv . 2(1up)
・闇魔法Lv . 1 
・光魔法Lv . 1 
・時空魔法Lv . 1 
・深淵魔法Lv . 1 
・神聖魔法Lv . 1 
・精霊魔法Lv . 1
【技能系】
・身体強化Lv . 10超越化Lv . 3
・気配察知Lv.10、超感覚Lv. 6
・気配遮断Lv . 10、隠密Lv . 6
・魔力操作Lv.10、神力操作Lv . 1 
・魔力探知Lv .10、精霊眼Lv. ━
 ・隠蔽Lv. 10
・調教Lv . 2
・加速Lv . 10、瞬速Lv . 4
・痛覚耐性Lv . 2
・成長倍加Lv ―
・鑑定Lv .2(共有)
・武の心得Lv ─(new)
・魔力吸収Lv .1(new)
【ユニーク】
・神の導き手Lv . 3
・スキルクリエイトLv . ―(2126P)
《加護》
主神イリスの加護、魔王の加護、武神リョウセンの加護(new)、魔法神ラセアの加護(new)
《称号》
転生者(隠蔽)、神の加護を受けし者、 
魔王の息子、世界の深淵を知る者、学ぶ者、深淵を覗く者、女の娘(new)
一応母さんとお酒の材料を探して森へ行ったときにゴブリン以外にも低級の魔物を倒したのだがこのレベルになると微々たる経験値にしかならないようでレベルに変化はなかった。だが、しっかりとスキルクリエイトのポイントは増えているのを見て少し嬉しくなった。魔力はいつも魔力操作を使って消費しているからか少しだけ上昇している。
土魔法のレベルが1上がってる。母さんに"黒盾球"を割られてから色々試行錯誤してたからかな?あ、リョウセン様とラセア様から加護もらってる。嬉しいなあ。新しいスキルは身に覚えがないからリョウセン様達の加護かな?
そこまで確認して最後に称号の欄に目を向けると、何やら不穏な称号が追加されているのに気が付いた。
『……ぷふふっ、鑑定しましょうか?』
ティオは俺の気持ちを汲み取ってスキルの鑑定を──いや全く汲み取ってない。あきらかに笑っている。だが確かに気になる称号ではあるし、リョウセン様達の加護の内容も気になるので感情を殺して無言の同意を示した。
・武神リョウセンの加護……武神リョウセンから与えられた加護。
:武の心得Lv ─
追伸※お前のこと気に入ったネ!今度一緒に地球行くネ!
・武の心得……武術系のスキルを習得しやすくなる。
・魔法神ラセアの加護……魔法神ラセアから与えられた加護。
:MP自動回復
:魔力吸収Lv .1
追伸※ノイントちゃんを貸してくれてありがとうね。それとノイントちゃんにお菓子待ってるわって伝えておいてね~。
やはり新しいスキルはリョウセン様の加護の効果だったようだ。ラセア様の加護はノイントがもらった加護と同じ効果だった。それにしても追伸が雑だ。ほとんどメールをする感覚で加護を送ってきている気がする。そこまでの説明を聞いてため息を吐きそうになったが、続いて頭の中に流れてきた先ほどの不穏な称号の説明でその息を止めることとなった。
・女の娘……どこからどう見ても女の子。男の娘よりも女の子。もう女の子でいいんじゃないか?
:キューティクル倍増
何この説明!?確かに自分でも男には見えないけどちゃんとついてるから!というかこの効果は何なの!?神界で自分の顔を改めて見てからなんか髪のツヤが一層増したとは思ってたけど称号の効果だったの!?
俺は不穏な称号の説明が終わると間髪入れずに心の中で叫んだ。決して悪い効果ではないのだ。しかし、称号の説明も相まってどうしても恥ずかしい称号に思えてしまう。幸いなのはキューティクル倍増がステータスの欄に載らなかったことだ。おそらくHP自動回復などと同じくくりなのだろう。
《良かったですね~ご主人様~。髪の質が倍増ですって~》
『女性からしたら喉から手が出るほど欲しい効果ですよ。良かったですね』
絶対二人とも良かったって思ってないでしょ!声が笑ってるよ!
ティオとノイントの追撃を受け、ひとしきり悶え苦しみようやく落ち着いてきたのでアマリエを見てみると、いまだに俺のステータスをまじまじと見つめていた。
「アマリエ、どう?これなら大丈夫そうでしょ?」
「へっ!?ええ、はい…。そうなんですが……このレベルでこのステータスは何なんですか?それに神の加護を三つも……。それとスキルクリエイトって何ですか?私そんなスキル知らないですよ」
アマリエは俺のステータスを見て少々混乱しているようで俺が声をかけるとびくりと肩を跳ねさせたあと、矢継ぎ早に質問をしてきた。俺は転生云々のことは誤魔化してスキルのことなどを大まかに説明した。
「な、なるほど……ってやっぱり納得できませんよ!なんでそんなスキルを持ってるんですか!?」
「お、俺も知らないよ。気づいたらこんなスキルを持ってたんだから」
転生のときにスキルを作ったからなのだが、そんなこと言えるはずもない俺はしらを切った。
「それよりどう?これで本当に疲れてないって信じてもらえた?」
このままではボロが出ると思った俺は急遽話題の転換をはかった。
「ええ、まあ……そうですね。このステータスでしたら疲れないのも納得です。ですが坊っちゃま、肉体的に疲れていなくても精神的には疲れていませんか?」
「うん、それも大丈夫だよ。自然がいっぱいあるから歩くのが楽しいくらいなんだ」
家の周りと同じような景色だが、生えている植物や空気の違いが別の場所だと気づかせる。その違いを見つけるのが楽しいのだ。
「そうですか。でしたらもう2時間ほど歩きましょうか」
「うん!」
そうして2時間程周りの植物を鑑定したりアマリエ達と話したりしながら歩いていき、ちょっとした広場を見つけた俺達はそこで昼食を食べることにした。シートを敷き、そこに二人で座る。ノイントも実体化して俺の隣に座った。
「どうぞ、坊っちゃまのお弁当です」
「ありがとう」
アマリエが"ボックス"から出したお弁当をお礼を言って受け取る。
「ノイントはどうしますか?」
「ボクはご主人様のを少しもらえればいいですよ~」
ノイントは今回は味見程度に済ませるようだ。
「わかりました。ではこちらのフォークを使ってください」
「ありがとうございます~」
「そういえばお弁当っていつ作ってるの?」
昨日なんて俺と同じ時間に寝たはずだからお弁当を作る時間なんてなかったはずだ。ふと気になった俺はアマリエに尋ねた。
「実は、お屋敷にいるときにまとめて作っちゃったんです」
「そっか。"ボックス"の中は時間が止まっているからいつ作っても大丈夫なんだったね」
「はい」
渡されたお弁当はまるで出来立てのようにほかほかの状態でほんのりと湯気が立ち上っている。つくづく魔法は便利だと思う。
「早く食べましょうよ~」
「うん。じゃあ冷めないうちに食べよう」
そんなほのぼのと昼食を食べ始めるクルス達を気配を消して木の上から見つめる4つの影があった。言わずと知れたレレナ達別動隊である。
「う~。やっぱりアマリエが羨ましいー!」
「そうねえ。何とかして一緒に食べられないものかしら」
「奥様、お嬢様、血液パックを飲みながら話さないでください。血が飛び散ります」
レレナ達もクルス達と同様に木の上で昼食をとっていた。昼食といっても、いつでも動けるように片手で食べられるサンドイッチなどの軽めのものだ。レレナとレスティアはヴァンパイアなので血の補給も行っていた。
「坊っちゃまは街を嫌がりましたね」
メイドの叱責を受けて大人しく血液パックを飲み始めたレレナ達を放置して、メイドは先ほどのクルスの発言を思い返しながら執事に話しかけた。
「ええ、やはりハイエルフですから森を好むのでしょうか?」
「それもありますが、坊っちゃまは人の視線を嫌がっているようでもありました」
「……ふむ、そうなるとダンコーツの偵察はあまり時間をかけない方が坊っちゃまのためにもよろしいかもしれませんね」
「偵察なんてクルス君じゃなくて私達がやればいいのよ!」
「そうよ!真面目にお父さんの言うことを聞く必要なんてないわ!」
「だから!血が飛び散るから話さないでくださいって言いましたよね!」
執事はメイドの意見を聞いて予定を変更しようかと考え始めたが、またもしゃべりだしたレレナ達にメイドがキレて収拾がつかなくなったのを見て、この件はまた後で考えようと思ったのだった。
2021/7/27
少しだけ表現を修正しました
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