唯一の現実逃避がVRMMOでした。
第六話『彼女の居場所を守るため』
「わたし……現実世界の身体………寿命が残り一か月もないんだ……」
頭が真っ白になった。
ヒナの現実世界の寿命が残り一か月もないだって…………?
ウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだ。
だってこんなにも元気じゃないか。
夜遅くまでクエストのウルフを倒して……指定数の二倍も倒したんだぞ……。
全然具合悪そうになんか見えない。
「はっ………!」
そこで俺は、あることに気付く。
「ヒナ……もしかして、この世界に来てから、その………病気の苦しさとかって、ない……?」
「うん。全くないよ」
「そうか……」
となると、一つ疑問が生まれる。
このゲームに『痛覚』という概念が存在しないからヒナは現状苦しくないのか。
逆にこの世界に『痛覚』という概念があったとしたら、ヒナはこの世界でも現実世界と同様苦しいのか。
なんか引っかかるが、この世界に『痛覚』はないと決まっているので、そんなこと考えても意味はないのだが……やはりなんか引っかかる……。
「わたし、現実世界で動かない体を動かして、誰もいない遠いところでログインしたんだ」
「それでね……」と、ヒナが一旦言葉を止め、空を見て呟いた。
「わたしの現実世界の息が途絶えるまで、このゲームでやれるだけやろうって」
その顔からは本当の意思が伝わってきた。現実世界で死ぬまで思いっきり遊ぼうって。
だが……。
「それじゃあ、世界一の冒険者になんかなれないじゃん!!」
俺は、怒っているのだろうか。
ヒナは嘘をついた。そう思っているのだろうか。
だって、残り一か月もない寿命で、世界一の冒険者になんかなれるわけがない。
そんなもの、何年、何十年と時間をかけて、努力をして、掴み取るもの。
ましてや、なれるかもわからない。
なのに、自分の身体の事を一番わかっているのに、それでもヒナは『世界一の冒険者になる』と言うのだろうか。
俺には、わからない。
わかりたくもない。
だが、仲間になった以上、ヒナを支えるのは俺の役目だ。
こんなとこでくよくよしていても仕方がない。
一か月後にはヒナと会えなくなってしまうかもしれない。
だが、今そんなことを考えてもヒナを苦しめるだけだ。
今、ヒナといる時間を大切にしよう。
さっきの俺の怒り口調の発言に、悲しい顔で俯いてしまっている。
悪いことをした。
「ごめん……ついカッとなっちゃった。でも、わかったよ俺、これから一か月後くらいにヒナがどうなるかわからないけど、その……それまで、ずっと一緒にいよ……。な?」
それが今俺ができる最大の事。
学校なんてどうでもいい。
親の顔なんかどうでもいい。
目の前で寂しそうな顔をしている女の子を見て見ぬふりなんかできない。ましてや俺の仲間だ。
だから俺は、ヒナを全力で支えると決意した。
「ありがとう……トウ……。わたしね、怖かったんだ。いつ死ぬんだろう。死んだらどうなるんだろうって、ずっと考えてたんだ。でも、このゲームをやってるとね、自然とその恐怖感も薄れていって、あっ、ここが私の居場所なんだって、思ったんだ」
最初は涙を流すまいと我慢していたヒナだが、とうとう目から涙が流れてきてしまった。
俺は、ヒナの方に寄って、優しく背中をさすってあげる。
まるで、赤子の世話をするように、優しく。
此処がヒナの居場所。
なんとしても絶対に守り抜いてみせる。
「トウ………大好き………」
「ん?なんか言った?」
「なんでもない」
そうして、涙が治まってきたときにヒナが何か言ってたが、声が小さくて聞こえなかった。
_____
そして、ヒナが完全に泣き止んでから、『あっ!そういえばクエストの報告に行かなきゃ』と脳に電気が走ったかのように唐突に思い出したヒナと、例の乗物にさっきと同じように二人は乗っている。
「そういえば、時間はまだ大丈夫なの?」
「ギルドは10時に完全閉鎖になってるから……」
そこで一旦言葉が止まり、一瞬視線を、例の乗物のハンドルとハンドルの間にある画面を見て再び視線は真っすぐを見る。
「今は9時前だから、街の最南端にある冒険者ギルドまでは、ここから15分くらいだから全然余裕だね!」
ならよかった。と内心で思っていた俺だが、二回目だからってこの状況に慣れたわけではない。
女の子特有の甘い香り……。
今回はあまり意識しないで平常を装っているが、このゼロ距離だと『嗅ぐな!』って言われても鼻呼吸をしている以上不可能に近い。
『なら口で呼吸をしろ!』って言われても緊張して心臓がバクバクなので、こっちを振り向かれた瞬間、口を開いて息を荒げてる顔を見られたら、『きもちわるっ……』って鳥の糞でも見るような目で睨まれる危険があるので、強制的に鼻呼吸じゃなきゃダメなのだ。(今も少し鼻息が荒いが、何とか気付かれてない模様)
そんなこんなで天国のような、地獄のような15分が経って、冒険者ギルドの近くまで来れた。
「はぁ……はぁ……」
「どうしたの?そんなに疲れているような顔して」
膝に手をつき、肩で呼吸をしている俺を片目に、駐輪所から戻ってきたヒナがそう俺に聞いてきた。
無理もない。一回目より余計なことを考えてしまって……このありさまだ。
「ああ……うん。えーと……ちょっとね」
「えへへ~」と頬を掻き、苦笑いでヒナの問いを返すが、人を疑うように目を細め、体を前のめりにして腕を組み、少しずつ俺の方に歩み寄ってくる。
「んん~。なんか怪しい……。わたしに何か隠し事でもしているでしょ?」
「めっそうもない」
目の前までヒナが来たところで視線が合う。
頬を膨らませてるヒナと何秒か視線がぶつかっていっるが、ようやくプイっとそっぽを向いた。
「まあいいや。それより早くいこっか!」
そう促され、俺はヒナの後ろを歩いてく。
やはりもう9時を回ってるので、ギルド周辺の人は少なく静まり返っている。
そして、視線の先には冒険者ギルドと思わしきそれが、堂々とそびえ建っていた。
「やっぱり、こんなにでかいんだなぁ……」
「うん!中は色々な物が揃っててすごいんだよ!」
独り言のつもりが、隣を歩いているヒナがぴょんぴょんしながら冒険者ギルドの方を指さし俺に向かって答えてくれた。
公式サイトで見た時も大きさに驚いたが、実際見てみると何倍もの迫力に自然とそんなことを呟いていた。
俺が、ボーっと立ち尽くしてた様子を見て、ヒナが腕を掴んで急かしてくる。
「なにボーっとしてるの!早くいこ」
その言葉と同時に俺の腕を引っ張り走り出した。
すぐに一歩目が出なかったため、前のめりに「おっとっと」となってしまったが、何とか踏ん張って体制を立て直す。
「ふぅ、ついた。中はいろ!」
「ああ」
未だに掴んだ腕を離さずに、ひっぱて中に進む。
中に入ると、正面に心配そうな顔をした受付員らしき女性がいた。
「ヒナさん!おかえりなさいませ。ご無事だったでしょうか……」
よほど心配したのか、受付カウンターから出てきて、俺たちの方に向かってる。
「へーきへーき!それよりね!夢中になって指定数の2倍くらいウルフ倒したんだ!」
「それは立派なことですが___」
そこで言葉が止まり、再びヒナの方を真剣な眼差しで向ける。
「ほどほどにしてくださいよ。夜は色々危険ですので……」
本気で心配する受付員は、今すぐにでも泣きそうな顔でヒナの顔を見つめている。
「心配してくれてありがとっ!でもね、ヒナはもっと強くならなきゃいけないから、たまには無理だってするよ」
自分の夢を叶えるためには無理だって何だってする。
そうすれば自分はいつか世界一の冒険者になれる。
そうヒナは思ってるはずだ。
それは、俺だってすごくいいことだと思う。
しかし___
「ヒナ、夢のために努力をするのはいいことだけど、世界一の冒険者は人に心配をかけないことも大事だと思うよ」
本心からの想いをそのまま告げた。
人に心配をかけててはそれはまだ半人前。
それが伝わったならいいけど……。
「そうだね……トウの言う通りかも……」
わかってくれたようで、再びヒナは受付員の女性に視線を戻して___
「心配してくれたのにごめんなさい。世界一の冒険者はもう迷惑をかけません!」
深々と頭を下げて、受付員がその顔を上げる。
ヒナは、ギュッと目を瞑っていたが、顔を上げられて不思議に思って目を開けると、目の前には、笑顔の受付員がいた。
そして、受付員が一言。
「うん。わかればいいんだよ」
二人が笑顔で見つめあった。
そして、受付員の視線が俺の方を向いて、「そういえば」人差し指を唇のあたりにあてて、首を傾げ___
「そちらの方はどなたでしょう。初めて見る顔ですが」
「それがね!」と意気揚々な様子の彼女が、薄い胸を張って答えた。
「わたしの、初めての仲間なんだ!」
そう、幼い子供のような声音で受付員に言い、俺の方を向いて相槌を打った。
「あ、はじめまして。数時間か前に初ログインしてきたトウと申します」
しっかり受付員の方を礼儀正しく頭を下げた。
「こちらこそ、はじめまして。わたしの名前はルイナと申します」
ルイナは、髪の毛は茶色で後ろに結び、年齢は二十代と言ったところか、さっきのヒナの心配てた様子を見てわかる通り、母親的な存在をしている。
胸は、ヒナにはいいにくく大きい……。
___
そんなこんなで、ヒナが討伐の報告に行ってるので、俺は近くの椅子に腰を下ろす。
中を見て回りたいとも思ったのだが、ヒナに「中は私が案内するから、報告が終わるまで少し待ってて!」って言われてしまったので、ここで座ってるしかない。
改めて思い返してみると、色々あったな。
チュートリアルの美少女ことアシュリとフレンドになれたし。
しかもアシュリから誘ってきたときは実に驚いた。
そして、とある深い理由を抱えた夢見る少女ヒナとも出会って、仲間になったし。
一目惚れもしてしまったし……。
早く【完全移転モード】実装されないかな~。
と思っていたら、受付を終えたヒナが小走りで俺の方に向かってくる。
「報告終わったから、時間もあまりないし早速見て回ろっ!」
そう言い、また俺の腕を掴んでぐいぐい引っ張るヒナに、俺は無意識にその手を片方の手で一旦外し、今度は手と手を繋いでしまった……。
恋人繋ぎに……。
「ええっ!?」
ヒナは、驚いた表情を俺に向ける。
頭が真っ白になった。
ヒナの現実世界の寿命が残り一か月もないだって…………?
ウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだ。
だってこんなにも元気じゃないか。
夜遅くまでクエストのウルフを倒して……指定数の二倍も倒したんだぞ……。
全然具合悪そうになんか見えない。
「はっ………!」
そこで俺は、あることに気付く。
「ヒナ……もしかして、この世界に来てから、その………病気の苦しさとかって、ない……?」
「うん。全くないよ」
「そうか……」
となると、一つ疑問が生まれる。
このゲームに『痛覚』という概念が存在しないからヒナは現状苦しくないのか。
逆にこの世界に『痛覚』という概念があったとしたら、ヒナはこの世界でも現実世界と同様苦しいのか。
なんか引っかかるが、この世界に『痛覚』はないと決まっているので、そんなこと考えても意味はないのだが……やはりなんか引っかかる……。
「わたし、現実世界で動かない体を動かして、誰もいない遠いところでログインしたんだ」
「それでね……」と、ヒナが一旦言葉を止め、空を見て呟いた。
「わたしの現実世界の息が途絶えるまで、このゲームでやれるだけやろうって」
その顔からは本当の意思が伝わってきた。現実世界で死ぬまで思いっきり遊ぼうって。
だが……。
「それじゃあ、世界一の冒険者になんかなれないじゃん!!」
俺は、怒っているのだろうか。
ヒナは嘘をついた。そう思っているのだろうか。
だって、残り一か月もない寿命で、世界一の冒険者になんかなれるわけがない。
そんなもの、何年、何十年と時間をかけて、努力をして、掴み取るもの。
ましてや、なれるかもわからない。
なのに、自分の身体の事を一番わかっているのに、それでもヒナは『世界一の冒険者になる』と言うのだろうか。
俺には、わからない。
わかりたくもない。
だが、仲間になった以上、ヒナを支えるのは俺の役目だ。
こんなとこでくよくよしていても仕方がない。
一か月後にはヒナと会えなくなってしまうかもしれない。
だが、今そんなことを考えてもヒナを苦しめるだけだ。
今、ヒナといる時間を大切にしよう。
さっきの俺の怒り口調の発言に、悲しい顔で俯いてしまっている。
悪いことをした。
「ごめん……ついカッとなっちゃった。でも、わかったよ俺、これから一か月後くらいにヒナがどうなるかわからないけど、その……それまで、ずっと一緒にいよ……。な?」
それが今俺ができる最大の事。
学校なんてどうでもいい。
親の顔なんかどうでもいい。
目の前で寂しそうな顔をしている女の子を見て見ぬふりなんかできない。ましてや俺の仲間だ。
だから俺は、ヒナを全力で支えると決意した。
「ありがとう……トウ……。わたしね、怖かったんだ。いつ死ぬんだろう。死んだらどうなるんだろうって、ずっと考えてたんだ。でも、このゲームをやってるとね、自然とその恐怖感も薄れていって、あっ、ここが私の居場所なんだって、思ったんだ」
最初は涙を流すまいと我慢していたヒナだが、とうとう目から涙が流れてきてしまった。
俺は、ヒナの方に寄って、優しく背中をさすってあげる。
まるで、赤子の世話をするように、優しく。
此処がヒナの居場所。
なんとしても絶対に守り抜いてみせる。
「トウ………大好き………」
「ん?なんか言った?」
「なんでもない」
そうして、涙が治まってきたときにヒナが何か言ってたが、声が小さくて聞こえなかった。
_____
そして、ヒナが完全に泣き止んでから、『あっ!そういえばクエストの報告に行かなきゃ』と脳に電気が走ったかのように唐突に思い出したヒナと、例の乗物にさっきと同じように二人は乗っている。
「そういえば、時間はまだ大丈夫なの?」
「ギルドは10時に完全閉鎖になってるから……」
そこで一旦言葉が止まり、一瞬視線を、例の乗物のハンドルとハンドルの間にある画面を見て再び視線は真っすぐを見る。
「今は9時前だから、街の最南端にある冒険者ギルドまでは、ここから15分くらいだから全然余裕だね!」
ならよかった。と内心で思っていた俺だが、二回目だからってこの状況に慣れたわけではない。
女の子特有の甘い香り……。
今回はあまり意識しないで平常を装っているが、このゼロ距離だと『嗅ぐな!』って言われても鼻呼吸をしている以上不可能に近い。
『なら口で呼吸をしろ!』って言われても緊張して心臓がバクバクなので、こっちを振り向かれた瞬間、口を開いて息を荒げてる顔を見られたら、『きもちわるっ……』って鳥の糞でも見るような目で睨まれる危険があるので、強制的に鼻呼吸じゃなきゃダメなのだ。(今も少し鼻息が荒いが、何とか気付かれてない模様)
そんなこんなで天国のような、地獄のような15分が経って、冒険者ギルドの近くまで来れた。
「はぁ……はぁ……」
「どうしたの?そんなに疲れているような顔して」
膝に手をつき、肩で呼吸をしている俺を片目に、駐輪所から戻ってきたヒナがそう俺に聞いてきた。
無理もない。一回目より余計なことを考えてしまって……このありさまだ。
「ああ……うん。えーと……ちょっとね」
「えへへ~」と頬を掻き、苦笑いでヒナの問いを返すが、人を疑うように目を細め、体を前のめりにして腕を組み、少しずつ俺の方に歩み寄ってくる。
「んん~。なんか怪しい……。わたしに何か隠し事でもしているでしょ?」
「めっそうもない」
目の前までヒナが来たところで視線が合う。
頬を膨らませてるヒナと何秒か視線がぶつかっていっるが、ようやくプイっとそっぽを向いた。
「まあいいや。それより早くいこっか!」
そう促され、俺はヒナの後ろを歩いてく。
やはりもう9時を回ってるので、ギルド周辺の人は少なく静まり返っている。
そして、視線の先には冒険者ギルドと思わしきそれが、堂々とそびえ建っていた。
「やっぱり、こんなにでかいんだなぁ……」
「うん!中は色々な物が揃っててすごいんだよ!」
独り言のつもりが、隣を歩いているヒナがぴょんぴょんしながら冒険者ギルドの方を指さし俺に向かって答えてくれた。
公式サイトで見た時も大きさに驚いたが、実際見てみると何倍もの迫力に自然とそんなことを呟いていた。
俺が、ボーっと立ち尽くしてた様子を見て、ヒナが腕を掴んで急かしてくる。
「なにボーっとしてるの!早くいこ」
その言葉と同時に俺の腕を引っ張り走り出した。
すぐに一歩目が出なかったため、前のめりに「おっとっと」となってしまったが、何とか踏ん張って体制を立て直す。
「ふぅ、ついた。中はいろ!」
「ああ」
未だに掴んだ腕を離さずに、ひっぱて中に進む。
中に入ると、正面に心配そうな顔をした受付員らしき女性がいた。
「ヒナさん!おかえりなさいませ。ご無事だったでしょうか……」
よほど心配したのか、受付カウンターから出てきて、俺たちの方に向かってる。
「へーきへーき!それよりね!夢中になって指定数の2倍くらいウルフ倒したんだ!」
「それは立派なことですが___」
そこで言葉が止まり、再びヒナの方を真剣な眼差しで向ける。
「ほどほどにしてくださいよ。夜は色々危険ですので……」
本気で心配する受付員は、今すぐにでも泣きそうな顔でヒナの顔を見つめている。
「心配してくれてありがとっ!でもね、ヒナはもっと強くならなきゃいけないから、たまには無理だってするよ」
自分の夢を叶えるためには無理だって何だってする。
そうすれば自分はいつか世界一の冒険者になれる。
そうヒナは思ってるはずだ。
それは、俺だってすごくいいことだと思う。
しかし___
「ヒナ、夢のために努力をするのはいいことだけど、世界一の冒険者は人に心配をかけないことも大事だと思うよ」
本心からの想いをそのまま告げた。
人に心配をかけててはそれはまだ半人前。
それが伝わったならいいけど……。
「そうだね……トウの言う通りかも……」
わかってくれたようで、再びヒナは受付員の女性に視線を戻して___
「心配してくれたのにごめんなさい。世界一の冒険者はもう迷惑をかけません!」
深々と頭を下げて、受付員がその顔を上げる。
ヒナは、ギュッと目を瞑っていたが、顔を上げられて不思議に思って目を開けると、目の前には、笑顔の受付員がいた。
そして、受付員が一言。
「うん。わかればいいんだよ」
二人が笑顔で見つめあった。
そして、受付員の視線が俺の方を向いて、「そういえば」人差し指を唇のあたりにあてて、首を傾げ___
「そちらの方はどなたでしょう。初めて見る顔ですが」
「それがね!」と意気揚々な様子の彼女が、薄い胸を張って答えた。
「わたしの、初めての仲間なんだ!」
そう、幼い子供のような声音で受付員に言い、俺の方を向いて相槌を打った。
「あ、はじめまして。数時間か前に初ログインしてきたトウと申します」
しっかり受付員の方を礼儀正しく頭を下げた。
「こちらこそ、はじめまして。わたしの名前はルイナと申します」
ルイナは、髪の毛は茶色で後ろに結び、年齢は二十代と言ったところか、さっきのヒナの心配てた様子を見てわかる通り、母親的な存在をしている。
胸は、ヒナにはいいにくく大きい……。
___
そんなこんなで、ヒナが討伐の報告に行ってるので、俺は近くの椅子に腰を下ろす。
中を見て回りたいとも思ったのだが、ヒナに「中は私が案内するから、報告が終わるまで少し待ってて!」って言われてしまったので、ここで座ってるしかない。
改めて思い返してみると、色々あったな。
チュートリアルの美少女ことアシュリとフレンドになれたし。
しかもアシュリから誘ってきたときは実に驚いた。
そして、とある深い理由を抱えた夢見る少女ヒナとも出会って、仲間になったし。
一目惚れもしてしまったし……。
早く【完全移転モード】実装されないかな~。
と思っていたら、受付を終えたヒナが小走りで俺の方に向かってくる。
「報告終わったから、時間もあまりないし早速見て回ろっ!」
そう言い、また俺の腕を掴んでぐいぐい引っ張るヒナに、俺は無意識にその手を片方の手で一旦外し、今度は手と手を繋いでしまった……。
恋人繋ぎに……。
「ええっ!?」
ヒナは、驚いた表情を俺に向ける。
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