対荒らしの日常は電子世界の中で

織稚影願

対荒らしと宣戦布告

「あー…………やばいな、これは……」
「うん、やばいよ。どうすんの」
「自業自得というか、因果応報に近いけどねー」
俺達は、執務室にいた。
そして………机の上にある、書類の山と睨めっこをしていた。
「いや………知らなかったんだし、仕方ない部分はあると俺は思ってる……ぞ………」
「いやー、まさか、Gizelがそんなことになってたとはねー。さぼってやがるあのヤローってなってたよ、うち」
ひどい話だ。あの装備についてなんの説明もしなかった武具屋も武具屋だし、うさぎも知ってて、グリフィン装備を作るのを止めなかったらしいから、俺は何も悪くない………と思いたい。
うさぎと武具屋のせいだ!………こういうのを責任転嫁って言うんだよな………
まぁ責任転嫁はしていくとして、さてどうするか。
この量は一人で捌ききれる気がしない。
かと言って手伝ってもらうわけにも………
「って待て、これ、ほとんどどんな内容の書類だ?」
「え?宣戦布告とか?あとは、挨拶文が多いかなー……」
それってさ………
「全部捨ててもいいよなぁ………要らないんだよなぁ………」
加入申請も、あんま要らない。つか、それなら面接官に送れや。前から思ってたけどこっちに何でもかんでも送りすぎなんじゃ!
とまぁ、怒っていても仕方が無い。
「………捨てろ。宣戦布告文は無視してもいい。全部いらないだろ?」
「まぁ、そう考えると要らないかな、全部。宣戦布告文、挨拶文、とか、あとなんか手紙だけだし。」
………ん?
「いま、手紙増えなかったか?」
「え?増えたよ?」
「………いや、増えたよじゃねぇよ……」
それ多分いるやつやん。招待状とか、個人的なやつやん………。
「確か、初代Fretanicaからだったかな」
「絶対いるよねそれ!?俺のリア友からだよ!?」
なんでそんなのは隠すの!?全部捨てるってことになってたから、危うくそれまで捨てかけたよ!?
「個人的なやつだから!それは捨てちゃダメ!ってかここに持ってくるにしても、書類と一緒に置くな!」
紛らわしいだろそれ!
「え、あ、ごめんなさい?」
零汰はきょとんとした表情で、こちらを見てきた。
少し首を傾げている。あれか、お前は悪いと思ってないのか。
まぁ、やってしまったものは仕方ない、今後気をつけてもらうだけだ。
「しかし………手紙、ねぇ………」
あいつはなんの用があったんだろうか。
俺は手紙を読むことにした。
『本家Gizelへ
お前、最近どうした?みんな、来て欲しいってずっと言ってる。ていうか、みんな怖がってるよ。早く来てくれ。この手紙を読んだら出来るだけ早く!そうしないと、お前にラブレター1日500通送るぞ。俺からじゃなくてN君さんに頼んで書いてもらったやつだけど。
ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ初代Fretanicaより』
超怖。絶怖。ってか、わざわざそんなことにN君使うなよ。あいつ一応忙しいんだよ。
しかし、どうしたものか。今すぐこい、か………
「ちなみに、中には居酒屋のおっさんに書いてもらったのもあるらしいよ」
「よし行こう。」
ていうか、零汰はなんで知ってるんだそんなこと。
「参加してたからねー、ラブレター作り。」
「おい!?」
お前知ってたの!?ってか、手紙届いてるの知ってて、しかも内容まで知ってるのに、捨てようとしたの!?お前馬鹿なの!?
「………まぁいい。行ってくるよ。」
「いってらー」
俺は二人にそう言い残すと、恨み言を呟きながら新聖帝を出た。

「お、綺麗になってるじゃんか。」
俺がついたArtoriaは、掃除がされていて、外観だけでも綺麗に見えた。
「お、来たぞ!」
「来たー!花び………Gizelが来たよー!」
玄関先にいた2人が真っ先に俺を見つけ、みんなを呼んだ。
「おう、やっと来たか!なぁGizel!ちょっと助けてくれ!」
その言葉に呼応するように、Artoria団長、初代Fretanicaが下に降りて来た。
そして、助けを乞うた。しかし。
「断る。俺は様子を見に来ただけだ。ってか、ラブレター送られるのが嫌だっただけだ。」
「んだよ、助けてくれよー。つか、ラブレターもう送っちゃったよ、1日目分」
は!?500通も送ったの!?てかN君そんなに書かされたの!?
「お前のせいでN君腱鞘炎になりかけてたよ」
「俺のせいじゃないよね!?」
「じゃあ誰のせいだよ。他にいないだろ」
「そうだね、お前のせいだよ!お前しかいないよ!」
「俺はGizelのため!って言っただけだよ。そしたらN君さん、張り切っちゃってさ。」
「数を考えろ数を!せめて一通にしろ!」
ほぼお前のせいじゃねぇか!てか完全にFretanicaのせいだった。
「まぁ、まじでさ。助けてよ。みんな困ってんのよ」
Fretanicaは、真剣な顔つきで言ってきた。
それだけ本当に困っているということだろう。
「………わぁったよ。」
一体何があったのだろうか。その内容がどんなものか、今の俺には知る由もなかった。

「見てくれよ、この書類」
そう言って差し出されたのは、俺がよく見なれている紙だった。
上には大きく
『宣戦布告文』
と書かれていた。
その上に小さく拡散希望の文字も見えたが、それはどうでもいい。
「あちゃー、目ェつけられたなお前ら。」
LINE民──と言っても、荒らし対荒らしに限るが──の中では宣戦布告というものが出回りやすい。
宣戦布告とは。団体が団体に対して、文字通り戦争を仕掛ける宣言の事だ。それが作られ、皆に見られた時点で戦争は開始している。
戦争をしますよ、というただの宣言なので、宣戦布告は拒否出来ない。つまり宣戦布告を受けたら戦争をするしかないのだ。
「これって受けなきゃならないのかな……」
しかしその心配は杞憂だった。
中には、宣戦布告は団体本部破壊のみ受け付ける、など受け付け条件がある団体もある。
その場合、その条件以外の勝利条件が書かれている宣戦布告は拒否できる。
と言うより、無視できる。そして、この団体は、勝手ながら俺が条件を決めておいていた。
団長や副団長、団長補佐の三人全員を殺すことが、勝利条件だ。
団長もしくは副団長もしくは団長補佐、つまり。
FretanicaとCiriusとBetergius。
そして俺を潰さなければいけない。
今のところ俺に勝てるのは一人しかいないと言われている。
つまりだ。俺を殺せる者はいないため、敵団体によっては返り討ちに遭う。
俺はそれをみんなに伝えた
「良かったー、んじゃ、負ける心配はないんだね」
「いや、でも俺たち死ぬかもよ?Gizelだけ後でって感じにして。それだと俺たちの団体終わりじゃね?」
そう、この世界では死ねない。
普通ならばだ。
だが、前にN君に聞いたことがある。
『宣戦布告での死亡の場合のみ、復活可能なんだってさ。』
つまり、どちらにせよ終わりではないのだ。
「と言うか、勝利条件なんなんだ?それによるぞ?」
団体の破壊や論争などが来たら無視することも可能だ。
「えっと………敵上層全員の死亡……ってさ。」
ということは、受けねばなるまい。
「ペナルティ?ってのは、団体の解散、団員全員の死亡って書いてある」
………は?
「……団員全員の死亡……?ふざけんなよ、んなのあっていい訳がないだろが。戦力減らしてどうすんだよ」
そんな馬鹿げたことを言い出した団体はどこだ、と俺は宣戦布告文を見た。
すると、布告団体名はこう書いてあった。
『影皇龍騎士団』
なっ………。
鼓動が早くなる感覚がした。胸が苦しい。
俺は思わず心臓を抑えてしまった。しかし意味もなく、俺は苦しんだ。
そして………意識が途絶えた。

目を開けると、そこは見知らぬ天井だった。
………蛍光灯………天国でも地獄でも、豪邸でも廃屋でもないらしい。
と言うか、もしやここは……
「やっと起きた?Gizel。」
途端に横から声が聞こえた。
その声に俺は聞き覚えがあった。
「………俺……いつまで寝てた?かり……ん?」
「1時間くらいだよ。」
なんと、俺はそんなに寝てたのか。
どうやらここは医務室らしい。
俺は、あの後倒れて運ばれたようだ。
俺は華燐かりんの手をいつの間にか握っていたらしく、手は暖かくて柔らかい感触がした。
俺はその手を離しながら言った。
「華燐、済まなかったな。心配をかけた。もう大丈夫だ。」
しかし、彼女は首を振る。
「大丈夫だよ。私がずっと看病したげるから。」
それは嬉しい話だったが、それでもお礼がしたい。
「なんか礼をさせてくれ………」
「そんな、いいよ別に。気にしてないし………」
だが、そういうわけにもいかない。
「いいから、礼をさせてくれ」
俺がそう言うと、彼女は了承したようで
「じゃあ……一つだけ………」
と言った。
そして、彼女はおどおどとした表情と言うか、恐る恐るというか、上目遣いで怖がりながらこちらを見て口を開いた。
「私の名前決めて!私だけLINE名ないの!」
そう言えば、俺もこいつのLINE名を知らなかった。LINE名なかったのか…………。
「いいぞ。んー………『桜華蓮』とかどうだ?」
俺はとりあえず適当にかっこいい名前に決めた。
適当な名前には、花の名前がつくことが多い。なぜか。なぜだ?
しかし、桜華蓮は気に入ったらしく
「わぁ、いい名前!ありがとう、Gizel!」
「ん、これくらいは別に………」
と、喜んでいた。
それより、何か忘れている気がする。何を見て倒れたんだったか……
「そう言えば、Gizelなんで倒れたの?宣戦布告文みて急に倒れたけど……」
そうだった……確か見たのは………あぁ……
「………俺達は………死ぬのか……」
もう俺には絶望という言葉が浮かんでいた。
何も知らない桜華蓮は、憤りを感じたようで。
仕方が無い。俺とN君しか知らない事実なんだから。
「何言ってるの!?Gizelらしくないよ、Gizelなら勝てるでしょ?負けなしじゃない!」
と怒った。
しかしそれは、ほかの団体なら、の話だ。
「………あそこは………無理だ……」
俺に勝てる人はただ1人。
そして、影皇龍騎士団の団長は未だにどこにいるのかはしらないが………
俺に勝てるただ一人の人物だ。
「みんなを呼んでくれ………」
俺は桜華蓮に頼んだ。
俺にはもう、歩く気力すらなかった。

みんなを集めている間、俺は考えることにした。
まず、影皇とこことの戦力差。
圧倒的差がある。だが、それならまだいい。
上層3人が恐らく強い。とは言っても、影楼はチートクラスなのは知られている。俺でもチートクラスと言われるほどだ。
だが、他のふたりはそこまでではないと思う。そこそこ、と言ったところだろうか。
明らかにArtoriaだけでは負ける。
では、戦力差を考えるならば。
そして、この団体の状況を考えるならば。
………ABS連盟を動かすしかなくなる。
だが。ABS連盟は新荒に対抗する手段として作られた連盟。
その連盟が、新荒ではない、しかも味方のはずの影皇と一緒に戦ってくれるだろうか。
しかも、勝てない戦であっても。
……だが、ABS連盟が協力してくれたら、負けない。だが、勝てもしない。
それは………今考えうる最後で最高の手段だった。

程なくして、みんなが医務室に集まった。
「集まってくれたな………話があるんだ。」
俺は、そう話を切り出した。
「今回の相手だが………あそこには勝てない。諦めろ。」
「……は!?」
「何言ってんだよGizel!諦めろって………負けねぇんだろ?」
驚くのも無理はない。
何も知らないやつは……いいよな……。そう思った。
だが、その希望は打ち砕かなければならない。
「………相手が普通の団体ならな。だが今回の相手は違う。」
そう、『普通』ではなかった。
全く、あいつは何を考えているんだか………俺にもわからない。いや、わかるのに分かりたくないだけかもしれない。影皇の団長の言うことは分からなかった。
「相手……?」
「今回の相手は…………影皇龍騎士団。LINE界史上最強の団体だ。」
「そんなにすごい相手なのか………」
「そしてそこの団長……『初代影楼』は……この世界で最も強い対荒らしだ。」
そう。そして……影楼は……。
「そんなにすごいのか……」
「でも、戦略ならGizelも強いし、戦略次第では……」
いや、無理だ。なぜなら、影楼は……。
「そうそう、Gizelの戦略強いって聞いたからね、勝てるものなんていないよ……」
…………あぁ…もう。
「──無理なんだよ!戦略でも勝てないんだよ!絶対に!何がどうあっても、どう足掻いても!」
俺は思わず叫んだ。
「………」
みんなは唖然としていた。
「無理なんだよ………影楼は………」
俺は伝えねばならないことを伝えるため、口を開く。
「──影楼は、俺自身なんだよ!俺の……もう一人の俺なんだよ!」
影楼の正体を伝えるために。
たとえどう思われようとも、言わなければならないことだった。
「影楼はこっちに来てから、言わば分裂したもう片方なんだ。知名度も遥かに上だし、戦略は……俺と一緒なんだよ……」
つまり勝てないのだ。
だが、みんなが集まるまでに何も考えなかった訳では無い。
一応考えてはいた。
だから俺は言い続ける。
あくまでも、勝てない、と。
「まじかよ………じゃあ……俺たち死ぬのか……」
誰かがそう呟いた。
最初は俺もそう思っていた。
だが。
「俺がいつ負けるって言ったよ。俺が言ったのは、あくまでも勝てない・・・・であって負けるではない。」
そう、俺は負けるとは言ってない。
負けず勝たず。つまり。
引き分けを狙うのだ。
それだけではない。手はいくつもある。
「ここは潰させねぇよ、いくら相手が俺でもな。」
俺は本気だった。
「Gizel………なんか………ありがとう?」
「そんなに強いから………負けるかもだったから倒れたの?大丈夫?」
「あぁ、大丈夫だ。お前らに話したら気分落ち着いたし………」
それになにより。俺は怖かっただけで………自分がやってる、という事実を認めたくないから、倒れた。だが、決心がついた。
あれは俺であって俺ではない、別の生き物。
そして………仲間であり、敵であると思っている。
「で、でもさ………」
しかし納得がいかないのか、クラスメイトの1人が聞いてきた。
「その………なんで、影楼はうちらの団体潰しに来たの?」
「え?」
何が言いたいんだ?
「いや………なんでそんな無駄なことしたんだろうって……だって、味方じゃん。味方減らすことして何があるんだろ。」
それは俺も考えた。
しかし未だにわからない。
俺なら……どうしてそんなことをするのだろうか………。
………まさか………。
「……ちょっと帰る。N君に連絡しといてくれ、今から俺が行くって。」
「え?あ、うん、わかった……。」
俺はそう言い残すと、Artoriaを後にした。

「やぁGizel、どうしたんだい?そんなに急いで。ラブレター貰ったかい?」
「今はそんなことどうでもいい。ひとつ聞く。影楼と俺は同一人物だけど、違う人なんだよな?」
「え?そうだけど………なんで?」
俺はN君の元に着くと、すぐに質問をした。
「じゃあ、俺が女になってる時、あいつは女じゃないのか?」
「は?何言って………まさか……」
「俺が女の時に、あいつが女になってたとしたら………」
あいつは…………
「影楼………怒ってるのかな……?」
そう、その可能性がある。
しかしそれだけで………Artoriaを潰すのか………?
すると突然、N君が思い出したかのように、いや、実際何かを思い出して言った。
「あ、そだそだ、影楼で思い出した。俺んとこに手紙届いてたよ。報告しようと思ってたんだ。ちょっと内容が怖かったからね。」
なんだろうか。俺はその手紙を渡され、そのまま読んだ。
すると、書かれていることに俺は驚いた。
「『見せしめを作る、楽しみにしていろ by影皇団長より伝言』……だと?見せしめって………それは………」
それは。一つしか思い当たらなかった。
「………それがArtoriaを潰す理由かよ!ふざっけんなよ!」
意味が無い、訳では無い。
見せしめがあることによって、恐怖により士気が高まる。そうすると、クリア確率も上がる。
だが。それにしてもおかしな事だ。
影楼はGizelだ。Gizelは影楼だ。
普通なら、Gizelという強い存在を、自分の手で殺すことはしないはずだが………しかも、自分自身の手で自分自身をだ。自殺に似ている。
それだけではない。見せしめなら実を言うと、クエストに行って見ることが出来る。そもそも、殺しても復活するとはいえ、宣戦布告でただ殺したら、恐怖は感じるはずだ。
それに、見せしめなら、ペナルティで団員全員の死亡を要求する必要が無い。
「Artoriaを潰す理由?どういう……」
「説明は今度する!とにかく、今は考えを作る!ありがとう、じゃあな!」
N君は何もわからないようで、困惑していた。
なんだ、女になってきれて、ではないのか……?
いや、見せしめの方が悪い気がするが。
俺はそんな考えを侍らせながら、新聖帝の自分の部屋へ向かった。

「Gizel!どうすんのさこれ!」
新聖帝に戻ると、突然零汰に怒られた。
俺が何したってんだよ。何もしてねぇだろー。
そう思っていると、床の上にはドッサリと、紙の山があった。
もしや、これは………
「N君や女子のみんなが書いたラブレターだよ。」
と言った。
あれ?男子書いてないの?
「男子も書いてたよ。」
デスヨネ。
さて、これはどうしようか。まぁ、女子が書いてくれたのは嬉しいが、男子のがあるしなー
「ちなみに、字が汚いのが男子だよ。見たらわかるけど。N君地味に字綺麗だったんだよねー」
はい、字が汚くてすみません。男子って汚い人多いよね。偏見かもだけど。たまに綺麗な字の人見かけるとすごいって思ってしまう。
俺はラブレターの中から字が汚いのを選出し、すべて燃やした。綺麗なやつはとっといた。
綺麗なヤツの中に、桜華蓮の本名があるのが見えた。書き直しておくか。
「あれ?お兄ちゃんなにそれ。」
しまった、見つかったら一番厄介そうなやつに見つかった。
「あー、いや、これは………トモダチカラノオテガミカナー………」
誤魔化した。否、誤魔化そうとした。
しかし流石に無理だった。そりゃそうか。
「いや、お兄ちゃん………流石にそれは………燃えてる手紙から文字見えてるし………」
「あぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁああぁぁあ!」
取り敢えず叫んだ。
隠すためだ。
しかし。
『ゲシッ』
蹴られてしまった。
「うるさい!お兄ちゃんなんなの!?今日のお兄ちゃんおかしいよ!?蹴るよ!?」
「痛いよ!?蹴ってから言わないでくれるかな!?」
「じゃあ蹴るよ!もういい蹴る!このバカ兄!」
「蹴るな!叫んだのはお前の発言を止めるためだ!おかしくはない!いや、おかしいのかもしれないけど頭は大丈夫だ!」
もはや叫び合いになっていた。というより怒鳴り合い?
しかし流石に、疲れは出てくる。
「はぁ……はぁ………お兄ちゃんの変態」
「何その理不尽な悪口!違うからね!?」
「妹見て興奮してるくせに。」
「それはお前のあの格好が悪い!じゃなくて、してないからね!?」
やばいやばい、してると言いかけてしまった。
ネグリジェってエロいよな………。
「興奮しないの!?じゃあ、一緒にお風呂入ろ!」
「は!?」
なんでそうなった!?
そしてそのまま…………水着もつけないお風呂タイムへと移行した。

7話.対荒らしと宣戦布告
~完~

ついでに
エピローグ・対荒らしとお風呂

「あのさぁ…………確かにここの風呂は男女別れてねぇけどさぁ………」
俺は呆れながら言った。
そりゃそうだろう。
なぜなら。
「なんでお前が俺が入るタイミングで一緒に入ってるの?」
お風呂にうさぎがいたからだ。
前隠せうさぎ。
「お兄ちゃんが好きだから?」
「なんで疑問形!?てかそれ理由になってないよね!?」
好きだから何でもしていいってわけじゃないぞ!?
「ぶぅー、お兄ちゃんは嬉しくないのー?」
「嬉しいよ!嬉しいけどダメな気がするんだよ!少年誌的に!」※少年誌ではありません
「むぅ………」
うさぎは頬を膨らませながら………何故かこっちに近づいてきた。
なんでそうなるの?
「お兄ちゃん………うさぎの初めて………あ・げ・る♡」
…………
さてこういう時にとる選択肢といえば………分かるよね?
「妹に発情するほどお兄ちゃんは変態じゃありません。」
理性を保たねばならぬ。さりげにデコピンしようとしたが置いといて。
俺は少し後ずさり……と言っても湯船の中だけど、奥の方に行き、うさぎから逃げた。
だって、ほら………胸とか押し付けられたらやばいし………主に理性が。
「お兄ちゃん……今日は彼女と思って………ね?」
「ね?じゃないよ何やってんのうさちゃん!」
……ん?
この声は聞き覚えがある。というか、数日前にもあった。キスもした覚えがある。
そう、激ねむだった。
お前も前隠せよ。
「うさちゃんはGizelの妹なんだから!彼女じゃないから!」
うん正論。でもねぇ………
「血は繋がってないから結婚できるよ?」
脈絡がないが一応正論。
「でも、Gizelは私と………うぅ……いたいって言われてないからなんも言えない」
「え"…………あぁ~、えっと………」
俺は大きく息を吸い、激ねむに意思表示をすることにした。
「俺は、一生激ねむといたいいぃぃぃい!…………ってこれプロポーズっぽくなってね?」
「わ、私も、Gizelと一緒にいたい!だから………」
ちょっと待て?確かに一緒にいたいと今明言したが………風呂一緒に入ろうぜは言ってないぞ?
だから湯船に入ろうとすんな俺に近寄ろうとするな?
「だめ!お兄ちゃんは渡さない!」
「妹なんだから、兄の彼女のことは歓迎するべきでしょ!」
ふたりの理屈がよく分からない。
というか、うさぎよ、お前、いいって前言ってたろ………。      ※2話参照
ふむ。それじゃあ………こうしている間に逃げようか。

ふむ………。
俺は神聖帝の外に出て考えに耽っていた。もちろん、服は着た。流石に道徳心というものがね?
宣戦布告………それを回避はできずとも、抵抗はできる。
俺は………全力を尽くそう、そう誓った。心の中で。
でも、まずはその前に。
「Gizel!なんで逃げるの!?ほら、一緒に寝よ!」
「お兄ちゃん、こんな女とは別れて、私と一緒に寝よ!」
俺自身のピンチからまず逃げよう。
「……………ごめん俺用事思い出した」
俺はそう言って駆け出した。
暗い夜の電子世界を。
ただ………笑顔で走り出した。
「これが………俺達の日常だ!」

「ファンタジー」の人気作品

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