対荒らしの日常は電子世界の中で

織稚影願

対荒らし、帰還

「………助けるって言ったって……」
俺は言う。
「こんな格好で行ったら引かれるだろ!つか、危ねぇだろ!」
俺は少しエロいグリフィンの格好に嘆きながら叫んだ。

時は少し遡って、救出を宣言したあと。
「あ、Gizelはコート脱げよ?最悪囮な?大人しく犯されてこいよ」
そうN君は言い放った。
それはもう………鬼畜の笑顔で。

そして今に至る。
大変恥ずかしくて困ってます。
そして、堂々とした囮発言にツッコムことすら出来なかった。むしろ堂々としすぎていた。
なぁに?私もう諦めて男に体明け渡せばいいの?
って嫌に決まってるだろ抵抗します。
「なぁ、本当に行くの?勝てるの?だってあれでしょ、沢山男の人いるんでしょ?」
今は男の人のほうが怖く感じてくる。
女心が少しわかる気がした。
ちなみに今は敵アジトの前にいる。激ねむ救出の為だ。
「勝てるか、は愚問だろ。一応連盟会長と連盟司令官だぞ、俺たち。」
「ついでに今は女の子だけど連盟総指揮官さんもいるしねー」
俺ついでなの?
「てことで………行くぞー!」

「──……なぁ、気のせいじゃなければだけどさ」
俺は入って早速二人に聞いた。
「人、誰もいなくね?」
そう。誰もいなかった。
姿が見えない、ではない。
気配を全く感じさせないのだ。
失礼だが、あの程度の奴らにそんな気配を消す力があるとは思えない。
それなら………なぜか。
決まっている。本当にいないのだ。
「偽の場所を掴まされた、もしくは、バレたからすぐに移動した………」
しかしそれにしてはおかしい。あの男に嘘をつく余裕があったとも思えないし、バレたから、というのは流石に速すぎる。人がいた形跡すら見当たらない。つまり元からいなかった、が、嘘はついてない。
そこで矛盾が発生する。それならあの情報はなんだったのだろう。まさか、間違えた情報を持っているとも考えづらい。
「しっかし、誰もいねぇな。探索スキルとかでも多分見つかんないんじゃない?」
N君は俺の考えていることがわかったのか、そう言った。なんで探索系使おうと思ってたのバレたの?
「それなら………どうやって激ねむを探すんだよ……」
聞いた場所にいないなら探すことが出来ない。
探そうにも、手がかりがなさすぎる。
「あいつら、どこの団体だ?それで調べれるんじゃないのか?」
N君はそう言ったが、誰も覚えてはいない。
いや、俺は覚えていた。だが、それは団体名ではない。
そう、あいつらは。
「どの団体にも所属してない・・・・・・・・・・・・はずだよ。タグがなかった。」
「………え?じ、じゃあNPC?」
「それもない。タグがないって言ったろ。」
つまり、どういう事か。
この世界にいるのはLINE民とNPC、そしてLINE民に関わりがあるもののみ。
LINE民に関わりがあるもの、も一応タグがある。
それならそんな存在いるはずないじゃないか。それがみんなの限界だろう。
恐らく、N君にも。
「それならあいつらはなんなんだ?わからんな………」
N君はやはり分からないようで、首を傾げていた。スピカにはそもそも期待していなかったが、やはりわかっていない様子。
しかし俺には一つの可能性を知っていた。いや、わかっていたと言うべきだろうか。
「LINE民だよ、あいつらも。」
そう、LINE民である。
そもそも、LINE民というのは荒らしだけのことを指すと思われがちだ。対荒らし、というものはあまり知られていない。
だが、実は違う。荒らし、対荒らし、そして………雑談民のことも指す・・・・・・・・・。確か条件を満たしている雑談民のことをLINE民と最初は言っていたはずだ。
その条件とは。
一日の半分はLINEを弄っていて、友達の7割がネ友(ネット友達のこと)、名前が厨二病臭い、という条件がある。
つまりあいつらは。雑談民ということになる。
廃人共め。
俺はN君にそれを伝えた。
「なっ………そういうことか……ってことは……」
そう、これが分かったところで何も変わらない。むしろ悪化したのだ。
なぜなら。
「何処にいるのか、誰なのかってのが分からねぇじゃねぇか!」
そうなのだ。団長などは、権限があるため、どこにいるのかが分かる。
だが、雑談民にはそのような者はいないため、権限持ちがいない。つまり、どこにいるのかが分からないのだ。
「じゃあ………どうやって………」
そのとき、俺はふと、メニュー画面を開き、フレンドリストのようなものを見つけた。
そこには激ねむの名前もあった。
「これって………」
激ねむの部分をタップすると。
『通話』
その文字があった。
そして、一流のLINE民で、プログラムなどに詳しい人は。
通話逆探知というものを使える。
それは………探知も可能なことを表している。
「これだ!」
俺達はすぐさま実行に移った。
俺は電話をかけ、静かに耳をすませる。
『───はい。もしもし。』
電話に出た。女の声だ。そしてその声に俺は聞き覚えがあった。
「もしもし!激ねむだな!?今どこにいる!」
『今?分かんない。捕まってしまって………今もひそひそ声でしか話せないの。』
つまりあの話は事実だった。いや、疑うことをまずしていなかったから、それはそうなのだろうが。
「じゃあ…──ちょっと待てよ?」
確かもうそろそろ、6時のはずだ。
6時になると、この世界ではチャイムがなる。
つまり………
「今からチャイムがなると思うから、聞こえたら咳を二回してくれ!」
チャイムを鳴らす場所は1箇所にしかない。
つまり、どう足掻いても音の速度差が生じる。
俺は少し待ち、ストップウォッチをセットした。
~~♪~♪~~~~♪
チャイムの音楽が鳴り始めた。
一応、チャイムのすぐ近くだったので速度差は感じない。
『コホッコホッ』
と、咳が聞こえてきた。
ストップウォッチを見ると………
『00:02.54』
約2秒半
となると……たしか1秒に約340m
ということは………ここら辺から850m。
その辺を虱潰しに探せばおそらく見つかるだろう。
これなら逆探も必要ない。
「ってことで、N君!指示出しといてくれ!」
「了解!」
『ところでGizelさん。なんだそんなに声高いの?』
ん?今なんて?
なんでそんなに声高いのかって?
「そんなの今関係ない!後で分かるだろうし!ていうか聞かないでうわーん!」
泣いてないけど泣いた。
「と、とりあえず、今から助けに行くから!待ってて!」
『わ、分かった!待ってる!』
それを聞き、俺は通話を切った。

「Gizel!とりあえず、それっぽい場所はいくつか目星がついたらしい。その中でどこか絞っていかないと………」
数分後、β連合のメンバーを使って、激ねむを探したが、結果としてはまだ見つかっていない状態。
絞らなければならないにも、情報が少なすぎる。
「ふむ…………よし、あと一つ試せることは……」
捜索によって絞れた場所の数は五つ。並んで四つずつの場所と、離れて一つ。
バレたくなければ、離れておいてある一つはまずない。
それならば、四つが怪しいが………。
俺はメニュー画面を開き、激ねむに通話をかけた。
『も、もしもし………』
「もしもし。運ばれてる途中ってどんな感じだった?」
『えっと………とりあえず入口は見えた……かな。』
入口はでかい。なぜならば。
そのうち二つずつに分けて違う色なのだ。
つまり、灰色の入口が二つ、黒色の入口が二つとある。それぞれシャッターが閉まっている。
『入口は確か……白色だったような……』
「…………え!?」
おかしい。四つのうちのどれにも白色はない。
一応確認をとったが、離れている場所の方は、水色だそうだ。
つまり、五つのうちどれでもない、という事だ。
「いや、でも、他にはなかったぞ。他は普通に団体のだった。地下通路の入口とかそんなのは一切………」
「…………待てよ、普通の団体?」
そうか、それは盲点だった。
先ほどLINE民は雑談民、対荒らし、荒らしで別れていると言った。だが実際はもっと細かくあることを、今まで忘れていたのだ。
「拡散団体と加工団体、絵師団体があるじゃねぇか!」
まるっきり忘れていた。
荒らしや対荒らしにも拡散師や加工師などが結構いるから、荒らしとかと同格に見てしまっていた。
しかも、まだ拡散団体などはタグが実装されていないらしい。
「その中で入口が白いものって言うと………!」
「まず、そんな団体が少ない!ヒットしたのは………」
「二つ!白い入口の団体も……あった!」
俺とN君はその線で調べていた。マップのようなもので見れるらしく、便利なものだな、と思った。
ヒットした団体の名前がメニュー画面に書かれていた。
その名前とは。
『HsHs拡散会社』
明らかに変態の団体だ。
俺メッチャ怖くなってきたんですけど!?
「よし、ここに行くぞ!………待ってろよ、激ねむ!」
通話を切り、俺達は走り出した。

そこは廃墟に近かった。
薄汚れた壁。割れたガラス。
さらにはシャッターに穴まで開いている。
「ここか………規模は小さいみたいだな。」
拡散会社と言っても所詮は無名、建物自身は小さかった。
「この中から見つけ出すのも苦労はしなさそうだな。」
「でも、どんな敵がいるかわかんねぇ。注意はしとこうぜ。」
俺達はそう言うと、シャッターを開けて中に入った。

───すると、突然意識を失った。

「………ってぇな………何があったんだ?」
俺は意識を取り戻し、第一声としてその言葉を吐いた。
「賢明な質問だね。ここはどこ、やみんなはどこ、などの質問をするほかのヤツらとは違う。やはり君は素晴らしい思考の持ち主のようだ。」
唐突に声が聞こえてきた。いや、誰かからの解答を期待して声を上げたのだ、予想はしていたのかもしれない。その声は男の声だった。
「君は今、囚われている。我々は、女の子を犯すことに生き甲斐を感じている。確かに、おかしいのかもしれない。だがそんなことは知らない。理性には勝てないのだよ。」
その男は、聞いてもいないことまで言い出した。
「………激ねむはどうした。」
「ん?あの女の子のことか?その子なら多分、まだ必死に抵抗中だよ。その前に君を相手にやろうかと思ってね。」
俺なら抵抗しないと思っているのだろうか。
というより、そもそも俺は男である。そんなやつを犯して何がいいのだろうか。
「抵抗はしない方がいい。したら君と一緒に来ていた男達が死ぬことになる。」
それは………N君のことだろうか。
どうやら全員捕まったようだ。
「…………ふっ………」
俺は思わず声がこぼれた。
「どうした?何を笑っている?」
残念ながらそれは笑みではない。
「──ふざっけんなよ!俺らが大人しくやられると思ってんじゃねぇ!今からその面の皮引き剥がしてやるからこっち来い!」
俺は叫んだ。怒り狂い。憤りながら。
「おや?あまり立場を理解されていない?」
しかし男は平然としていた。
むしろ楽しそうであった。
「私が指示をすれば君の仲間はぼこぼこにされるよ。それでも、粋がるのかい?見栄を張るのかい?意地を張るのかい?」
違う。俺はそんなことをしてはいない。
「俺は、事実を言った迄だ。俺らは大人しくやられはしねぇ。」
俺は一息置いて、その言葉を吐いた。
「──どうせやられんなら一泡吹かせてからやられる。ぶっ潰してからやられる。ただでやられはしねぇ。」
事実、それだけの力があるのだ。
拡散会社のメンバーなど。
俺達にとっては。
恐るるに足らないいわば。
雑魚なのである。
「………ふぅ……いいだろう。」
男は近づき俺の服を掴んだ。
そして、俺の服を破いた。
「ほう?いい体だね。犯したくなる。」
何故だろう。俺は思うことがある。
男は俺の装備に手を当て、そのまま引き剥がした。
俺は全裸状態だ。
「綺麗な体だ。やはりいい。」
俺はこの男の声を聞いて
「肌はすべすべ、胸は控えめ、局部には毛が生えていないと来た。」
ずっと思う。
「これは…………最っ高にいい!」
「──うるせぇ黙れド三流が。」
イライラする。
その姿を、その軽薄な声を、その手を。
見るだけで、聞くだけで、感じるだけで。
イライラする。
しかもさりげに胸触ってきてるし。何気に気持ち悪い。あんま気持ちよくない。
「は?何を言っ………ぐぁ…………はっ……!?」
俺は。憤りながら。力を使った。
能力を使って。手錠を壊し。男を……吹き飛ばした。
「──舐めてんじゃねぇぞ。いい加減にしろや。」
俺は男のそばに行くと、見下ろし、一瞥して外に出た。一瞬局部を触られた感じがしたがきのせいだろう。

俺はあれから15個ぐらいの部屋を探した。
だが、激ねむは一向に見つかる気配がしなかった。
16個目の扉を開けた時だった。
ゾクッ、と、悪寒が走った。
俺は………震えていた。
恐怖であろうか。しかし、この建物の中にはそれほどの奴はいないように見えた。
「あっ、Gizel!大丈夫だったか!?」
突然、聞き覚えのある声が後ろから聞こえた。
N君だ。
「うん。そっちこそ大丈夫だった?」
「こっちは大丈夫だよ。それより、今さっきの二回の悪寒お前か?」
二回?もしや、俺が男に向けた殺意がいったのだろうか。
「一回目は俺だと思うけど、二回目は知らない。」
「やっぱり?じゃあ………あれはやっぱ……」
やっぱ?
「──影楼の仕業か。」
……………え?
「……え、は!?な、何言ってんの!?」
それはない。なぜなら。初代影楼は。
俺自身なのだから。
「俺が二人もいるわけが」
「──残念ながら。初代影楼は………なんのバグか知らないけど、本家Gizelとは別でここに呼ばれてるんだ。」
………なに?つまり……それは……。
「俺が………影楼じゃないってこと……か?」
「そう。知名度下がったかもね」
「それはない。あれは影楼含んでない。」
「あ、そう………。」
しかし、それは厄介なことになりそうだ………。
「とりあえずGizel。本来の目的忘れてないよね?」
もちろんだ。
「激ねむの救出作戦………再開しますか!」

俺達はいくつもの部屋を回った。
隅々まで、体を擦り付けるように。
おかげで俺の体が真っ黒だ。後で風呂はいらないと。
しかし、まだ見つからなかった。
どこの部屋にもいなかったのだ。まだいくつか探していない部屋はあるが………激ねむは現在抵抗中だという。それならば声が聞こえてくるはずだが。
「見つからないねぇ………」
「一応、全部屋確認してみよう。それからだ。」
俺がそう言うと、N君はけだるそうに立ち上がり、部屋を探し始めた。

あれから数時間後。実際にはあまりたっていないらしいが、自分からしたらだいぶ経っていた。
ついに残すところあと一つの部屋のみとなった。何度も見返しても見つかりそうにないならこの部屋しかあるまい。
しかし…………ねぇだろ。
そこに書いてあったのは。
『社長室』
…………
ねぇわ!
「流石に社長室はねぇ………」
と、N君が言った時だった。
『ちょっ!触らないでよ!私に触っていいのはGizelさんだけだよ!』
…………
激ねむの声だ。
………
いや、おい。
「「何やってんの社長!?」」
俺達はそう叫んで社長室に入っていった。

社長室には、男がひとりと、女が1人、裸で向き合っていた。
俺は男を見て吐き気を催した。何故か。なぜだ。
「な、なんだ、お前達、ここが誰の部屋かわかっているのか!?」
分からないなぁ………。
「ここは超有名で世界的に力のある団体の団長の部屋だぞ!」
そうなの?聞いたことないけど?
「HsHs拡散会社は世界有数の拡散会社で」
ごめんね?
「知らないな。ごめん無名くん。五月蝿い」
俺はそう言って、男を蹴った。
「なっ………無礼だろ!貴様ら!」
「残念だけど、知名度的にはこっちのが有名でね。無礼なのはお前の方だ。」
俺達は社長に歩み寄った。
そして………不敵に笑うと。
「てめぇ何してくれてんじゃ!何俺の大切な人サラッとんじゃボケェ!」
「さっきからうぜえんだよ、その自画自賛!うぜえ!イラつくんだわ!」
俺達はそれを言い終わると、足をどけた。
社長は泣きそうな顔になっていた。
「す、すいませんでした!ひ、ひぃー!」
社長は、情けない声を出しながら、逃げていった。
「やったな!救出作戦成功だ!」
「嬉しいな!」
かくして俺達の、激ねむ救出作戦を達成した。

「大丈夫だったか?激ねむ。」
俺は激ねむに心配の言葉をかけた。
それは虚実ではない。真実だ。
「大丈夫だったけど………それより、Gizelさん。」
俺は激ねむに呼びかけられはてなと首を傾げていた。
「なんで裸なの?ていうか、なんで女?」
あっ。忘れてた。
「…………!見るな!N君!見るな!」
とたんに恥ずかしさがこみ上げてきた。
また、女の裸を見てなんとも思わない。
「お、おう………ごめん?」
しかし、早くどうにかせねば。
とりあえず、俺は激ねむに事情を伝えることにした。

「へ、へぇ………なるほど。グリフィンを倒したんだ。すごいね!」
これほど心がこもってない褒め言葉は初めてだった。
そして、その先も事情を話すと、激ねむは。
「うん分かった!キスだよね?」
激ねむはそう言うと、ゆっくり目を閉じた。
俺は…………その唇にキスをした。
熱い、深い口付けを。息の続く限りした。
そして。
俺の体が唐突に光った。
なんだろう、そう思っていると。
はたして、俺の姿がやっと。
元に戻れたのだった。
やっと………長かった。
「やっと…………やっと戻れたぁぁぁぁあ!」
俺はそう叫ぶと、ガッツポーズを作った。

「やったね!Gizel!」
「おかえり、Gizel!」
「お疲れ、Gizel!」
激ねむ、N君、スピカと、三人が三様の労いの言葉を俺に送ると、三人はどこかへ去っていった。俺には何故か取られない、事情聴取らしい。
俺は少し寂しく思ったが、男に戻れた嬉しさで、すぐに気にしなくなった。
その幸せが、いつまで続くかも知らぬまま。
また、楽しい一日を期待して。
俺は、神聖帝要塞に帰ったのだった。


「やっと戻れましたね。初代影楼。」
「………あぁ。いきなり女に変わって何事かと思えば、Gizelのバカめ、なにをやってやがる。」
そこは崖の上だった。
全てを見下ろせるような高いところだった。
そこには男と女が一人ずついた。
影楼と呼ばれた男は、言葉を続けた。
「早く戻れって意思表示の殺気、受け取ってくれてるといいがな。」
しかし男は期待していなかった。戻れはしたが、期待はしていなかった。
男は………常に怒っている雰囲気を出していた。実際には無愛想で達観しており、怖いだけだったが。
「受け取っているでしょうね。あの人たちは。しかし、よろしいので?」
「………?……あぁ。やってもいい。」
男は指示を出した。
その指示の内容は。
「早めに…………見せしめを作ってやれ。」
これだった。
見せしめを作れとは。
つまり。
──人を殺せ、ということだった。
「………はっ!では。失礼致します。」
その指示を受けた女は、どこへ行ったのか、一瞬で姿を消した。
そして男は………ただ、見つめているだけだった。

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