摩訶不思議な奇々怪々

シフォンケーキ

夕陽が沈む頃、僕は君のところへ。

俺は死んだ。
あれは、ちょうど高校の卒業式が終わった後のことだった。
俺は当時付き合っていた女の子がいた。
背が低く、髪型はポニーテール、手が小さく、声も可愛かった。
彼女は、同級生で同じ学校ではなかったが俺の卒業式をわざわざ見に来てくれていた。
彼女は俺を呼びだしていた。
卒業式の後、話しがあると…。
卒業式が終わって皆が泣きながら別れの挨拶とか、写真を撮る中、俺は一人学校の裏の方に足を運んだ。
彼女は、待っていた。この俺を。

俺「話しって何?」

彼女「大好きだよ!愛斗まなと!」

愛斗「お、おう。ありがとう。俺も好きだよ」

彼女「私はあなたに救ってもらった。たくさん救ってもらった」

愛斗「…」

彼女「だから今度はあなたを救いたいの」

愛斗「それは一体どうゆう?」
それを言った時にはもう俺は考えることが出来なかった。
立っていることが難しかった。
息をするのが困難だった。
彼女を見ているのが精一杯だった。
俺はやがて、地面にゆっくり倒れた。
彼女は倒れた俺を抱えながらゆっくり膝まづいた。

そして彼女は最後に言った。
『また、会うその時まで…
愛斗と会うその時まで、私は、待ち続けるの』

それ以上の記憶はなかった。
そこで記憶は終わっていた。

俺は死んだ。死んだ今、俺は俺の今居る場所が分からなかった。
目が覚めると最初に見えたものは、笑っている月。言葉通り笑っている月。
次に見えたのは、怒ったり、笑ったり、悲しそうにしているかぼちゃ。
いろんな表情をしているかぼちゃが目に映った。
俺は自分の目を疑った。
そして俺は思わず呟いた。
「なんだこれ?!これは一体どうなってるんだ?俺はおかしくなったのか!?ついに、頭がどうかしちまったのか…」
数分後、俺はなんとか冷静さを取り戻し、腰が抜けていた状態から立って、周りを歩くことにした。
見れば見るほど、不思議な世界だと思い知らされた。
地面の上で浮いている星。
触るとバネみたいに跳ねて、輝く。
咲いている植物は、人喰い花のようなでっかい口がある花。
空は笑う月と、絵で描くような☆がたくさんみえる。
俺の顔辺りの高さを飛び回る街頭の鳥。
歩いているとかぼちゃに笑われる俺。
不気味だ。
こんなとこ早く出たい。
誰か、助けて。
そう思って歩き続けると俺はある屋敷を見つけた。黒くそびえ立つ館。
雲を貫くような先のとんがった屋根。
周りは茨の柵に囲まれている。
屋敷の前は綺麗な薔薇の庭。
そう見とれていると、左から変なうめき声が聞こえた。
恐怖もありつつ横を見ると、黒いオーラをまとった男性がいた。
俺はすぐに悟った。普通の男性じゃない。
逃げないと!俺は心のそこから感じた。
そう思った瞬間、男性の様子が一変した。
少し離れているからちゃんと見えないけど、彼の身体はどんどん大きくなり、身体から毛が生えてきて長い尻尾が…
「あれは…まさ、か…オオカミ!?」

アオーーン!
オオカミと思われる男性は、遠吠えをあげこっちを見る。

俺は逃げた。そのタイミングと同時にオオカミは俺の方に向かって走り出した。

「ヤバい、ヤバい。殺される。逃げなきゃ、殺される!」

俺は考える暇もなく館を目指してただ走った。薔薇の庭を駆け抜けて屋敷の扉に俺はたどり着いた。しかし、後ろには追いかけてくるオオカミ。あんまりうかうかしていられない。俺は扉を開けようと、必死に開けたが扉は鍵がかかっており開かなかった。俺はなんとか開けようと必死だった。もうオオカミは薔薇の庭を駆け抜けていてすぐ目の前まで来ていた。
(ヤバい、ヤバい、死ぬ…死ぬ…)
その瞬間俺は、ある記憶を思い出した。
俺が愛していた彼女が、学校裏でしたことを。あの時は、こんな恐怖は抱かなかった。殺されたとわかったあとだって、死ぬことは怖くなかった。
なんで、あの時俺、は…。

そんなことを考えていると、オオカミはもう俺の目の前に立っていた。
(もう、ダメだ。終わりだ。死ぬ)
オオカミは俺を睨みながらゆっくりと近づく。
「だ、誰か…誰か」声が出ない。
苦しい。怖い。死にたくない。
そんなことばかり考えて、なにも出てこない。
「誰か…く。」
頭が回らないまま、最後に声を振り絞って叫んだ!「誰か!助けてくれーー!」

その瞬間オオカミは、俺を食べようと口を大きく開けて襲った。
俺は、食べられる覚悟をした刹那。
横から水の大剣がオオカミの身体の半分にした。
(水の大剣…た、助かった?!)
そう思った時にはオオカミは半分になって倒れていた。オオカミからは、血が出ていなく、人形が半分にされたように落ちているようにも見えた。
でも、一体誰が?この水の大剣は一体?
そう思ったつかぬ間、横から声が聞こえた。

「オオカミが出るなんて、最近は物騒なものね。まぁ、この館に紛れ込んだオオカミも運がないわ。哀れね。まぁ、哀れなのはオオカミだけじゃないんだけど」

(お、女の子。この女の子がオオカミを)

気づいた瞬間女の子は俺の後ろにいた。
そして、彼女は俺の頭に手を置き言った。
女の子「私は、あなたのこと見たことあるわ。あなたは覚えてる?」
愛斗「え、えーと。覚えてない、です」

女の子「そう。ならいいわ」
その言葉を最後に、俺は気を失った。


女の子「丁度いい晩餐ができた。今日は、これを食べましょうか…お姉様…」


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