冥い夜にさす光

冬空星屑

第9話 目指す姿


 第9話 目指す姿プレイスタイル


 ステータスを開いて見て、そして改めて驚いたことは経験値の多さだ。
 確かにあの巨大な何かは強かったが、六万もの経験値を貰えたことには驚いたのだ。

《ドジなマスターのせいで経験値一%が消失しましたので、現在は五九七二五です》

 あぁ、はいはい。わかった。わかった。
 それでだ。教導者よ。俺は決めたぞ!

《何をでしょうか。大抵のことなら教え導ききってみせましょう!》

 お、おう。
 ヤバい。めっちゃ頼もしい。教導者はあれだな。頼られるとやる気が出るタイプだな。どんどん頼らさせて貰おう。

《恐らくですが、マスターは褒めると調子にのるタイプですので今まで通りに対応しますね》

 …………。
 それでだ。あの巨大な何かは恐らくユニークスキル持ちのプレイヤーだろうと言っていたな? だから俺は、PKを積極的にやっていこうと思う。どうだ?

《なるほど。マスターでは、『待ちぼうけ』のようにたまたま倒した巨人ウサギに味をしめて、無意味な一生を過ごして笑い者にされるのが落ちですね。まぁ、積極的なのは良いことですよ。少なくとも今のままでは不可能ですが、時間をかければできるのでは?》

 よし、大丈夫みたいだな。
 正直、言葉一つ一つに怒っていたらきりがないからスルーだ。
 俺にも取りたいスキルとかがあるし、『教導者』の意見を聞きたいのだ、今すぐに。

《ちなみにどのようなスキルが欲しいのですか?》

 触手だ!
 スライムと言えばなんと言っても触手!
 これだけは欠かせない。これがなければスライムではない!
 そして二つ目は溶解液(ただし繊維のみ)!
 これもスライムには必須スキルだ!
 むしろ、これらさえあればスライムだと言っても過言ではない!

《コモンスキル『触手』はまぁ、良いでしょう。ただし溶解液(ただし繊維のみ)は却下です。戦闘に使い道がありません。普通にコモンスキル『溶解液生成』を獲得して下さい》

 くっ。
 スキルにはオトコのロマンが分からないのか!?

《はい。私はスキルつまりは『Artificial intelligence』ですが、あえて性別を言うなら女です。異性のロマンなど微塵も分かりませんし、分かりたくもありません》

 ……え? お前、性別あったの!?

《反応するのはそこですか? もっと別の、例えばセクハラに対する謝罪とかは無いのですか?》

 ふっ。スライムに下げる頭は無い!

 さて、ふざけるのはここまでにして真面目に考えよう。
 とりあえずコモンスキル『触手』『溶解液』は確定だな。固有スキル『溶解』だけだと体内あるいは触れた部分しか溶かせないからな。
 『溶解液』と言えば、あれだな。水鉄砲みたいな感じでピュシャーととんでいくだろう。

《マスター、『溶解液』なんてスキルは獲得できません。あるのは『溶解液生成』です。また『溶解液生成』にそんな効果はありません。
 マスターには固有スキル『毒生成』もありますので、お望みでしたらコモンスキル『射出』を推奨します。状態に関わらずある程度の大きさの物を射出できます》

 じゃあ、その三つで行こう。
 あとは……、筋力上昇とかないの?

《スライムは筋肉が存在しないため、そのようなスキルは獲得できないと推測します》

 あれ? 推測なんだ。何か理由があるのか?

《私はあくまでも一スキルですので既存の知識を教えているに過ぎません。これらの知識はこのスキルの基礎知識として埋め込まれた物とマスターに関わる物しかありません。
 例えばスキルの内容ですが、これらはマスターの獲得可能スキル一覧からの知識です。
 逆に言えばマスターが知りえた情報しか提供できません。
 これ以上の物を欲するのでしたら情報収集をするべきでしょう。ですが、マスターは五感の内四つが欠如しているので、情報収集能力に問題が発生していると忠告します。
 ただし周辺状況と既知の場所のマップ状況を教えることは可能です》

 なるほど。言外に記憶力が無いと言われた気がするが、そこは置いておこう。
 つまり俺が目指すべきなのは、プレイヤーを殺しつつ、情報収集のできる存在。
 すなわち、“NINJA”だ!
 俺は“NINJA”を目指す。

《スライムに近接戦闘ができる身体能力はないので、隠密行動と暗殺に特化した通常の忍者を目指してください。ネタに付き合うのは嫌です》

 あっ、はい……。

 こうして俺は忍者を目指すことになった。
 まあ、このゲームにジョブシステムなんて無いけどな!

 ●

 さて、次は情報収集に役立つスキルだな。
 とりあえずは視覚と聴覚が欲しいところだ。『教導者』?

《不可能です。出来たら『触手』の前に取らせています》

 そうか。やはり無理か。じゃあ、どうすれば良いんだ?

《エクストラスキル『魔子探知』の獲得を推奨します。膨大なMPを消費しますが、無いよりはましかと》

 ふ~ん。魔子ってな~に?

《……簡単に言えば、この世界を構成する物質の基本単位たちの総称です》

 へぇ。クォークとかか?

《くお……、あっ! なるほど。マスターの前世では元素を構成するさらに小さな粒子が存在するのですね。ですが、この世界では全ての物質は魔子と総称される9つの物質で構成されています。この魔子を探知するスキルがエクストラスキル『魔子探知』です》

 あぁ、物理法則は似てるだけで、細かいところでは違うんだ?

《はい。そうなります。お望みでしたら、この世界の誕生神話、創世記からお話ししましょうか?》

 結構です!
 俺は『教導者』の誘いを断るとステータス画面より、獲得可能スキル一覧に移動し、検索し、エクストラスキル『魔子探知』を見つけ……って、高っ!!
 一万経験値ってアホか!? コモンスキル百個分だと!?

《当然です。エクストラスキルはマスターたちプレイヤーのような特別な存在、要するに神の庇護下にある者にしか経験値で獲得することは出来ませんので。とても希少なのですよ?》

 そうですか。……獲得っと。
 経験値を消費すると、システムアナウンスが流れ、スキルの獲得を知らせてくれた。
 よし、さっそく発動!
 うお、おぉ…………おぇぇーー。
 ……き、気持ち悪……。『教導者』~~、ウプッ。

《はぁ。こちらで管理しますね》

 『教導者』がそう言ったとたんに、先程までの酔った感覚は消えて無くなった。さすがだな。
 改めて、辺りを確認してみると、闇黒の世界が色とりどりの……そう! カラフルな世界に変化していた。
 辺りには緑や青、褐色が多いように見える。
 う~ん。腸内フローラみたいな光景だな。

《マスター、それが魔子です。緑が“風素フッソ”。青が“水素スイソ”。褐色が“土素チッソ”ですね。他にも“熱素ネッソ”、“光素”、“闇素”、“力素”、“無素”、“元素”があります。特に元素を除いた八つを『魔素』と呼ぶ場合もあります》

 ……へ、へぇ。
 フッソってなんだよ、フッソって。フウソじゃないの?
 そんなことを考えていると急に視界が闇黒に染まった。

《MPが切れたようですね。マスター、MP量を増やすことを推奨します》

 ああ、MP切れか。まあ、良い。とりあえず他のスキルを試すとしよう。

 まずは『触手』。って使えない。これはMPを消費するのか。
 では次に『毒生成』と『溶解液生成』を……って、これも使えない。
 おい。使える新スキルが無いじゃないか!

《ですから、MP量を増やすことを推奨しています》

 ……あっ、はい。どうやって増やすんですか?

《MPは基本的に、保有魔法系統スキルの量とレベルに応じて増えていきます。あるいはコモンスキル『MP上昇』などで増やすことも出来ます。もちろん、レベルが上がれば勝手に増えます。ただし、種族的にスライムのMPは低いでしょう》

 なるほど。いわゆるステータス上昇系スキルだな。俺が目指すのは忍者。ならば……

≪経験値を100消費しました。コモンスキル『MP上昇Lv.1』を獲得しました≫
≪経験値を100消費しました。コモンスキル『速度上昇Lv.1』を獲得しました≫

 これでよし! 速度特化の一撃必殺! これこそが男のロマンよ!
 ……って、良いの見っけ。これも獲得しよう。

≪経験値を100消費しました。コモンスキル『再生Lv.1』を獲得しました≫

 よし、これでHP回復手段は手に入れた。
 後はMPだけだが……。
 『教導者』、MPってどうやって回復するんだ? MP回復系のスキルが見つからないんだが?

《周辺環境にもよりますが、この辺りの魔素濃度ならば、およそ1日で自然回復するでしょう》

 へぇ。それで、今すぐに回復させるには?

《……生物は世界を構成する魔子の一部である魔素を吸収し、体内で生命力や魔力に変換するということを無意識下で行っています。この生命力と魔力に当たるのがHPとMPです。ここで生命や魔力と言わないのには、これらにも質と量があるからですが、これは置いておきましょう。
 マスターの質問の答えとしては、魔素を体内に吸収し、魔力に変換する。これを高速で行えればできる、と言えます》

 つまり、俺には出来ない、っと。
 吸収はワンチャンあるが、魔力に変換するのは無理だな。
 さて、後は……。『教導者』、何かある?

《特には無いでしょう。
 ただし、南方より人型生物が近づいてきています。魔子の様子から魔法アタッカー、ヒーラー、バッファーがそれぞれ一匹ずつ。物理攻撃系が二匹、恐らくタンクと物理アタッカー。最後に魔法戦士が一匹。合計六匹の敵です。
 能力は実践で鍛えるべきですので、ちょうど良いかと》

 オッケー。六匹ってことはモンスター?

《人間である可能性もあります。とりあえずは人型生物です。
 私が把握できる周辺状況の範囲に入れば、見た目だけは分かります》

 よし。それじゃ人かモンスターかを確認したら、殺しに行きますか。
 さっきの巨大生物を倒した能力ももう一回試したいしな。

《了解しました。誘導を開始します》

 ……戦闘、いや暗殺を始めよう。





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