冥い夜にさす光

冬空星屑

第3話 闇黒と死

あれ? また闇黒の中にいる……。いや。まだ・・闇黒の中にいると言うべきか。どうやら俺は死んだらしい。
 でも。この神聖な気配は……。

『あら。もう死んでしまうなんて、情けないわね。転生して一時間も経ってないわよ』

 それは頭に直接響いてきた。
 聴覚の無いスライムたる俺への配慮なのだろう。
 見えてはいないが、きっと俺の前方には神の椅子に座ったキュスティア様がいるのだろう。
 なるほど。初期地点とは確かにここだな。てっきり最初にスライムとして出現した場所に戻ると思っていたのに。

「死んだら必ずここに戻れるわけではありませんよ」

 あっ。そうなんですか。じゃああれですかね。セーブポイントとかでセーブしないとここに戻ってしまう的な?

「そうですね。半分当たりです。それにしても、心を読まれていることに、なんとも思わないのですか」

 はい。
 家では、こんな感じの会話をするのが毎日ですから。便利ですし、慣れれば言葉では伝えづらいことも的確に伝えられるので。

「そうですか。ではもう半分を説明しましょう」

 そう言ってキュスティア様はなぜ俺がここにいるのか説明してくれた。
 まあ簡単に言えば、俺の妖魔種みたいに人型生物以外に転生したプレイヤーが、あまりにも早く死んでしまった場合の救済措置みたいなものらしい。とあるデメリットと引き換えに、人型生物限定のランダム転生をさせてくれると言うのだ。
 まあデメリットを、ランダム転生すると決めるまで教えてくれないと言うのだから、選ぶ気はしないがな。
 妹に頼まれた以上ゲームを止めるという選択肢は無く、ゲーム内で小一時間、すなわちリアルで十五分も経ってないこの状況でログアウトするのはなんか違う気がするので、このまま続行で。

「わかりました。では最初に出現した場所に転移させますね。以後はそこか別の場所のセーブポイントへとリスポーンします。願わくば、貴方の生がただ一つのものであらんことを」

 最初の言葉とは少し違うけれど、慈愛に満ちた表情で笑っているのだろう、と俺は思った。

 ●

 ふぅ。どうやら最初の場所に戻ってきたみたいだな。まぁ、辺りがどうなっているか分からないから、キュスティア様の言葉を信じるならば、だが。
 とりあえずレベリングだな。次にあの池だか湖だかには近寄らない。良くわからないが、どうせ魚か何かに食われたんだろう。
 そう言えば、モンスターを倒したならドロップアイテムが貰えるはずだ。収納に入ってるかな?

 ━━━━ 
 毒針×6
 ━━━━

 ふ~ん。毒針か。
 ということは、さっきまで飛んでいたのは、蜂型のモンスターのHPバーとMPバーか。
 あれ? 蜂って人を刺すと針が抜けて死ぬって言うけど、俺を刺しまくってた割には水中に沈めるまで一匹も死ななかったな。ってことは、蜂じゃない? いやリアルとゲームの生態が同じとは限らないか。あっ、そんなこと言ったら蜂以外にも、飛びながら毒針で攻撃してくるモンスターがいても可笑しくないか。そもそも……。
 
 閑話休題。

 さて、蜂の生態はどうでも良くはないが、まずは攻撃手段の確立だ。そもそも『溶解』だけでどうやって経験値を稼げと? 誰か教えてくれないかな?
 もちろん人間に転生して、人間の街のギルドとかに行けばいわゆるチュートリアルが受けられるのも知っている。ユウキがアカリの説明に補足していた。
 人間――主に勇者――と魔王が対立しているこのゲームで人間側でも魔王側でもない非人間型生物はチュートリアルが無い、らしい。実際にない。妹達曰く、何に転生してもとりあえずレベリング! らしい。
 そうだ! せっかく蜂? を倒せた実績があるのだから同じ方向でまた倒せば良い。また、あの池だか湖だかに行かなくてはならないが、すぐに水から上がれば平気だろう。
 よし。善は急げ。思い立ったが吉日。レッツラゴ~。って古いか。

 ●

 ――絶賛作業ゲー中

 あれから一時間ほど迷子をすると、いつの間にか蜂? が、わんさかいる状態で湖――面倒なので湖と仮称――に辿り着いた。そのあと、水中に潜る、モンスターを溺死させる、陸に上がる。これらをひたすらに繰り返していた。

≪経験値を1獲得しました≫
≪経験値を1獲得しました≫
≪経験値を1獲得しました…………≫

 ひたすらにこの繰り返し。
 現在、経験値は七十まで貯まっている。
 俺は経験値二十を消費することでレベルアップできることがわかっているが、経験値百を消費すれば、コモンスキルが手に入るんだ。
 そして俺が欲しいスキル。それは…………、あれ? 何か嫌な予感がする。
 湖と陸を行ったり来たりしながらモンスターを殺すことおよそ六十回。湖の底から何か嫌な物がやってくる気がする。

≪一定条件を達成しました。コモンスキル『危険探知Lv.1』を習得しました≫

 おお! ナイスタイミング!
 ええ、なになに。身の危険を探って知ることができる、か。アクティブスキルだな。
 よし。『危険探知』発動!

 すると俺の闇黒の世界はまるで『死』を告げるかのように、さらにどす黒く染まりきった。

≪死亡しました≫
≪経験値を一部消失しました≫
≪所持品を一部紛失しました≫
≪初期出現地点へリスポーンします≫


 あっ、また死んだ!!


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