癒しの花園を君に
4.反乱のあしおと①
(逃げろって。クーデターって。さようならって……)
さようならって――。
リアネはよろよろした足取りで、やっとの思いで西棟の最上階までたどりついた。
使用人棟にもまたたく間に「反乱軍が宮殿に向かっている」という知らせが広がったようで、大荷物を抱えたメイドや下男や各種職人たちが、廊下をばたばた行き交っている。
リアネはアトリエのドアを開ける気力も起きず、廊下の床板にぺたんと膝をついた。
「ちょっとリアネ! なにこんなとこで座りこんでるのよ! あんたもきいたでしょ? 逃げなきゃまずいわよ。巻き添えくらって死ぬわよ!」
向かいの部屋のドアから、メイドをやっている友人のゾエが、巨大な布包みを引っ張り出していた。
「急いで。持てるもん持って。ほら立ってってば!」
ゾエはリアネに駆け寄って、両手を引いて立たせようとした。
「……ちょっとリアネ、熱いわよ。こんなときに発熱?」
「熱……? どおりでなんかよく転ぶと思った」
「ストーブの薪をケチるから風邪ひくのよ! しょうがないわね、あたしが荷物まとめてあげるわ。最小限いるものは何か、教えてちょうだい」
リアネはゾエに引きずられて、アトリエに入った。
「持っていきたいものは何?」
「画帳……表紙が若草色の」
「ほかは? 服とかは?」
「いやべつに」
「うっそ! ありえないでしょ! かばんか袋かなんかないかしら……きゃっ! 痛っっ!」
がらがっしゃーん!と大きな音を立てて、ゾエはなにかに蹴躓いた。
金色の鳥籠が、絵の具の染みついた床に転がる。中のオウムも籠と一緒に、モノのように転がった。暴れもせずに。
「やだ。死んでる」
気味悪そうに、ゾエが言った。
さようならって――。
リアネはよろよろした足取りで、やっとの思いで西棟の最上階までたどりついた。
使用人棟にもまたたく間に「反乱軍が宮殿に向かっている」という知らせが広がったようで、大荷物を抱えたメイドや下男や各種職人たちが、廊下をばたばた行き交っている。
リアネはアトリエのドアを開ける気力も起きず、廊下の床板にぺたんと膝をついた。
「ちょっとリアネ! なにこんなとこで座りこんでるのよ! あんたもきいたでしょ? 逃げなきゃまずいわよ。巻き添えくらって死ぬわよ!」
向かいの部屋のドアから、メイドをやっている友人のゾエが、巨大な布包みを引っ張り出していた。
「急いで。持てるもん持って。ほら立ってってば!」
ゾエはリアネに駆け寄って、両手を引いて立たせようとした。
「……ちょっとリアネ、熱いわよ。こんなときに発熱?」
「熱……? どおりでなんかよく転ぶと思った」
「ストーブの薪をケチるから風邪ひくのよ! しょうがないわね、あたしが荷物まとめてあげるわ。最小限いるものは何か、教えてちょうだい」
リアネはゾエに引きずられて、アトリエに入った。
「持っていきたいものは何?」
「画帳……表紙が若草色の」
「ほかは? 服とかは?」
「いやべつに」
「うっそ! ありえないでしょ! かばんか袋かなんかないかしら……きゃっ! 痛っっ!」
がらがっしゃーん!と大きな音を立てて、ゾエはなにかに蹴躓いた。
金色の鳥籠が、絵の具の染みついた床に転がる。中のオウムも籠と一緒に、モノのように転がった。暴れもせずに。
「やだ。死んでる」
気味悪そうに、ゾエが言った。
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