元勇者の吸血鬼、教師となる
021
ふと目が覚めると、何か重い夢を見ているような気がした。誰かと感覚の共有でもしたのかもしれない。例えば神みたいな、僕に近い何かを持っているものかもしれない。
……あぁ、何故、こんなことを思っているのだろう。今日は休日、あの世界で出会った愛娘とショッピングモールに行く予定だ。楽しい一日になる筈なのである。
なのに、どうして嫌な予感しかしないのだろう。
「う~ん、考えてても仕方ないし……降りよーかね。」
分からぬことは気にしない。これ不老不死の吸血鬼の鉄則、分からないことでモヤモヤし続けても、それだけで生きるモチベーションになりえるのだ。分かってしまえば興味を失ってしまうかもしれないし、積極的に知ろうとしなくていい。
「おはよ。ちょっと待たせたかな?」
「おはよう。そんなことないよ。むしろ、エマが楽しみ過ぎて寝過ごしてるね。もう中学生なんだから、落ち着きを持ってもらいたいよ。」
「まぁまぁ、そんなこと言わなくてもいいじゃありませんか。エマだって年頃の女の子です。天真爛漫で猪突猛進、中学生らしくていいでしょう? 時間の管理も出来ない馬鹿でも、完璧な人より可愛いですから。あ、兄さんおはようございます」
「あの、一番ボロクソ言ってるのはシャルなんだけど。君だって一応、年頃の女の子の外見はしてるんだからさぁ……外見だけだけどね。ついでにおはよう先生」
「その先生呼びは決定なんかな? 酷いやエレボス、君のことは家族だって思っていたのに……悲しいなぁ。」
「ちなみに、どういうポジション?」
「ペットかな。」
「即答してそれとは……酷い家族もいたもんだ。」
「失礼な。本心からそう思っているんだよ?」
「余計酷い。いくらなんでもペットは泣けるよ。ルディでさえオカンっていう立場なのに、それ以下のペットだなんて……」
仕方ないではないか。シャルは妹、ルディはオカン、エマは娘、普通に考えてペットだろう。戸籍上のエレボスは赤の他人である。いや、実際に血など繋がっていないのだが、一緒に暮らしているから家族のようなものだ。
弟や息子は絶対に違う。よって、エレボスはペットである。うむ、どこにもおかしな点が無い完璧な考えだ。
「で、その肝心なエマちゃんは睡眠中?」
「そうですね。まったく、あの子は人間なんですから睡眠は必要でしょうに。家族の用事なら構いませんが、自分から言い出したのなら管理ぐらいはしてもらいたいですね。ぶん殴ってでも眠らせるべきだったかもしれません。」
「オカン、妹が凶暴になってるんだけど……?」
「やだなぁ兄さん。私が凶暴なわけありませんよ。ルディもそう思います、よね?」
「あーうん、そーだね。お母さんはどっちの味方もしないよ、うん。」
まさかの逃げに走ったこのスライム。普段なら仲裁しようと努力するはずなのに、そこまでシャルが怖いというのだろうか。もしかしなくとも、辛辣且つ容赦の無い言葉責めを受けたくないのだろう。悦ぶのはエレボスぐらいのものだ。
と、思考を一区切り終わらせたところで座っていた席から立ち上がる。
「……さて」
「ん、どうしたの主人」
「なに、寝坊助さんの愛娘を起こしに行こうかと思ってね。偶には親らしいこともしないと怒られちゃうしさ。……友達に」
「なんでそんな後ろめたそうな感じなのですか? あれですか? 思春期を迎えた娘にどう対応していいのか分からない父親ですか? 安定剤いります? 落ち着いたほうが嫌われないと思いますよ」
「怒涛の優しさで兄ちゃん嬉しいよ。シャルちゃん素直にしてたら可愛いのに……まぁ、素直に慣れなくても可愛いけど。」
「よくもまぁ恥ずかしい台詞を掃けますね」
「はっはっは、僕からしたら皆子供だからねぇ。伊達に不老不死やってないさ。年齢の桁が一つ違うからね、うん。」
ちょっとだけ恥ずかしかったのか早口で喋る妹さん可愛い。ぶっちゃけ、年齢に差があり過ぎて肉体に引きずられながらも父性が湧いてくる。
否、これは孫を見てほんわかする爺の気持ちだ。子供には厳しいけど孫にはニコニコして甘えさせちゃう爺ちゃん婆ちゃんの気持ちが分かった気がする。
ん、家の祖父? 人の良さげな顔でいじめ抜いてくる鬼畜ですがなにか? 孫に対してあそこまでボコスカ出来るのはあの人ぐらいのものなのではないだろうか。長期休暇の無人島生活とか懐かしいものである。
まったく、どこぞの農業アイドルではないのだから。
「ってことで、可愛い可愛いお寝坊さんを起こしに行くとしましょう。」
「思春期の女の子なんだから取り扱いには注意してね。」
「エマは物か何かですかい。……ちょっと不安になってきたよ」
二階に上がってやってきましたエマの部屋。保護者とはいっても異性なのでノックは大事だと思う。エロゲーのようなシュチュエーションになるつもりは無い。
ビンタ? そんなものがあるわけなかろう。あるのは蔑んだ目と、二度と関わるなというオーラのみである。ちなみに聞いた話だ。知り合いのマゾなら喜んで受け入れるだろうが、そういうのはちょっと無理だ。
娘から嫌われるとか胃の中の物吐き出して死ぬ自信がある。
「エマー、朝ですよー。買い物はいいのかなー?」
ノックしながら呼び掛けてみたが、エマの部屋から物音がする様子は無い。耳を済ませば呼吸音ぐらい聞こえてくるだろうが、それはそれで自分の行動が気持ち悪いのでしない。
娘の呼吸音聞いてみるとか変態屑野郎としか思えない。……思えば、僕の嫁さんは割と変態っぽかった気がするが、そこまでの変態では無かったと思う。
……さて、どうしたものか。此処で大音量を出すという手段や、部屋に入って揺さぶる等といった手段もある。近所には誰も住んでいないから大音量を出しても大丈夫だろうが、あまり気が乗らない。
かといって部屋の中に入るのもどうだろうか。仮に、エマがパジャマではなく裸体で眠る少女だったとしよう。それを見たとして、僕は毛ほどの興味も湧かないが、見られたエマはどう思うだろうか。
つまり、そういうことである。
「う~む……まぁ、ノックしたからいいや。」
ドアを開け、中に入ると裸で寝転がる一人の少女が……等ということは無かった。少し安心である。しかし、そんなことがどうでもよくなるようなことを見つけてしまった。まぁ、元からどうでもよかったのだが。
なんと、部屋の中が散乱していたのである。
「これはこれは……中学生少女としてどうなんだ?」
マンガ、服、ゲーム機、見るだけで分かる通り様々なものが散らばっていた。ゴミはゴミ箱の中にいれているのか落ちてはないように見えるが、それでも酷い。
そういや友人が言ってたっけ……『女の子だからって綺麗好きとは限らないよ! 現に私の部屋なんてグッチャグチャだからね!』と、ドヤ顔で。
ふむ、あの時は馬鹿が言ってたから気にとめなかったが、変に女子に求めるというのは駄目というのは本当のようだ。
とりあえず、まだ時間もあるし軽く整理しておこう。
我が家のオカンのことだ。思春期とか気にすることなく掃除はするだろう。……つまり、下着類が散らばっている可能性は皆無である。
--《グラビティ》
一旦全ての物を重量操作系の魔法で浮かし、服の種類ごと、漫画、ゲーム機等に分けていく。ちなみに、範囲的に重力を無くしているため、気をつけなければ様々な物がフヨフヨと浮き出してしまう。気をつけるというのは、浮かせたくない物質に重力をかけるという方法だ。魔法中級者ぐらいなら出来る代物だ。
漫画とかの並びにはこだわるタイプなので、一巻から現在ある最終巻まで順番にしておく。開いていた漫画にはしおりを挟んでおくという徹底ぶりである。
その昔、実の子供の本を並べておいたら三日ほど口を聞いてもらえなかった。あの時は嫁さんに泣きついて和解出来たが、今回はそれを防ぎたい。正直なところ、拗ねられても可愛いがそれ以上に悲しい。
「うし、……エマ、朝だよ。寝起きにジャーマンなんとかをくらいたく無かったら目を醒ましなさいな。ジャーマン……」
「ジャーマンスープレックス……すやぁ」
「あ、そうそれ。話半分に聞いてたから覚えて無かったんだよね。」
この子はどんな夢を見ているのだろう。妻の夢に見てしょっちゅう寝起きは泣いてる僕もそうだが、ジャーマンスープレックスが出る夢とはどうなのだろう。
呼吸の自然さから考えて起きているとは思わなかったが……。もしかすると、今世紀最大の謎になるかもしれない。
「観自在菩薩行深般若波羅蜜多時照見五蘊皆空度一切苦厄舎利子色不異空空不異色色即是空空即是色受想行識亦復如是舎利子是諸法空相不生不滅不垢不浄不増不減是故空中無色無受想行識無眼耳鼻舌身意無色声香味触法--」
「ひぃぃぃ! 成仏はいやぁ!」
周りの声とかが夢に影響すると考えた僕は暇つぶしで覚えた般若心経を唱えてみた。すると、夢の中でアンデットになりきったのか知らないが恐怖に怯えた表情でエマが起きた。
あ、僕はアンデットの方の吸血鬼とは違って定義上は悪魔なので問題無いです。というか、宗教関連のことは何一つ効きません。
「お、お父さん? 般若のお面を被った神職用袴の悪魔が……」
「おはよう。なんだか面白い夢を見たようだね。今日は買い物に行くんでしょ? ほら、服とかは纏めておいたから着替えておりてきなさいな。」
「どこかで見た事ある翼があって……」
「ふふふ、まるで吸血鬼みたいだった?」
「んー、どっちかっていうと堕天使みたいな感じ?」
……あ、夢の中に僕出ちゃってるよ。今は人化してるけどそれ解いたときの僕だよ。袴なのは江戸時代ぐらいのときに呼び出されたからだよ、うん。
さぁて、問題無く目を醒ましたようだから降りるとしましょうか。
「--般若みたいな仮面を被った覚えは無いんだけどなぁ。」
まぁ、般若心経だったからとかいうそんなところだろう。
……あぁ、何故、こんなことを思っているのだろう。今日は休日、あの世界で出会った愛娘とショッピングモールに行く予定だ。楽しい一日になる筈なのである。
なのに、どうして嫌な予感しかしないのだろう。
「う~ん、考えてても仕方ないし……降りよーかね。」
分からぬことは気にしない。これ不老不死の吸血鬼の鉄則、分からないことでモヤモヤし続けても、それだけで生きるモチベーションになりえるのだ。分かってしまえば興味を失ってしまうかもしれないし、積極的に知ろうとしなくていい。
「おはよ。ちょっと待たせたかな?」
「おはよう。そんなことないよ。むしろ、エマが楽しみ過ぎて寝過ごしてるね。もう中学生なんだから、落ち着きを持ってもらいたいよ。」
「まぁまぁ、そんなこと言わなくてもいいじゃありませんか。エマだって年頃の女の子です。天真爛漫で猪突猛進、中学生らしくていいでしょう? 時間の管理も出来ない馬鹿でも、完璧な人より可愛いですから。あ、兄さんおはようございます」
「あの、一番ボロクソ言ってるのはシャルなんだけど。君だって一応、年頃の女の子の外見はしてるんだからさぁ……外見だけだけどね。ついでにおはよう先生」
「その先生呼びは決定なんかな? 酷いやエレボス、君のことは家族だって思っていたのに……悲しいなぁ。」
「ちなみに、どういうポジション?」
「ペットかな。」
「即答してそれとは……酷い家族もいたもんだ。」
「失礼な。本心からそう思っているんだよ?」
「余計酷い。いくらなんでもペットは泣けるよ。ルディでさえオカンっていう立場なのに、それ以下のペットだなんて……」
仕方ないではないか。シャルは妹、ルディはオカン、エマは娘、普通に考えてペットだろう。戸籍上のエレボスは赤の他人である。いや、実際に血など繋がっていないのだが、一緒に暮らしているから家族のようなものだ。
弟や息子は絶対に違う。よって、エレボスはペットである。うむ、どこにもおかしな点が無い完璧な考えだ。
「で、その肝心なエマちゃんは睡眠中?」
「そうですね。まったく、あの子は人間なんですから睡眠は必要でしょうに。家族の用事なら構いませんが、自分から言い出したのなら管理ぐらいはしてもらいたいですね。ぶん殴ってでも眠らせるべきだったかもしれません。」
「オカン、妹が凶暴になってるんだけど……?」
「やだなぁ兄さん。私が凶暴なわけありませんよ。ルディもそう思います、よね?」
「あーうん、そーだね。お母さんはどっちの味方もしないよ、うん。」
まさかの逃げに走ったこのスライム。普段なら仲裁しようと努力するはずなのに、そこまでシャルが怖いというのだろうか。もしかしなくとも、辛辣且つ容赦の無い言葉責めを受けたくないのだろう。悦ぶのはエレボスぐらいのものだ。
と、思考を一区切り終わらせたところで座っていた席から立ち上がる。
「……さて」
「ん、どうしたの主人」
「なに、寝坊助さんの愛娘を起こしに行こうかと思ってね。偶には親らしいこともしないと怒られちゃうしさ。……友達に」
「なんでそんな後ろめたそうな感じなのですか? あれですか? 思春期を迎えた娘にどう対応していいのか分からない父親ですか? 安定剤いります? 落ち着いたほうが嫌われないと思いますよ」
「怒涛の優しさで兄ちゃん嬉しいよ。シャルちゃん素直にしてたら可愛いのに……まぁ、素直に慣れなくても可愛いけど。」
「よくもまぁ恥ずかしい台詞を掃けますね」
「はっはっは、僕からしたら皆子供だからねぇ。伊達に不老不死やってないさ。年齢の桁が一つ違うからね、うん。」
ちょっとだけ恥ずかしかったのか早口で喋る妹さん可愛い。ぶっちゃけ、年齢に差があり過ぎて肉体に引きずられながらも父性が湧いてくる。
否、これは孫を見てほんわかする爺の気持ちだ。子供には厳しいけど孫にはニコニコして甘えさせちゃう爺ちゃん婆ちゃんの気持ちが分かった気がする。
ん、家の祖父? 人の良さげな顔でいじめ抜いてくる鬼畜ですがなにか? 孫に対してあそこまでボコスカ出来るのはあの人ぐらいのものなのではないだろうか。長期休暇の無人島生活とか懐かしいものである。
まったく、どこぞの農業アイドルではないのだから。
「ってことで、可愛い可愛いお寝坊さんを起こしに行くとしましょう。」
「思春期の女の子なんだから取り扱いには注意してね。」
「エマは物か何かですかい。……ちょっと不安になってきたよ」
二階に上がってやってきましたエマの部屋。保護者とはいっても異性なのでノックは大事だと思う。エロゲーのようなシュチュエーションになるつもりは無い。
ビンタ? そんなものがあるわけなかろう。あるのは蔑んだ目と、二度と関わるなというオーラのみである。ちなみに聞いた話だ。知り合いのマゾなら喜んで受け入れるだろうが、そういうのはちょっと無理だ。
娘から嫌われるとか胃の中の物吐き出して死ぬ自信がある。
「エマー、朝ですよー。買い物はいいのかなー?」
ノックしながら呼び掛けてみたが、エマの部屋から物音がする様子は無い。耳を済ませば呼吸音ぐらい聞こえてくるだろうが、それはそれで自分の行動が気持ち悪いのでしない。
娘の呼吸音聞いてみるとか変態屑野郎としか思えない。……思えば、僕の嫁さんは割と変態っぽかった気がするが、そこまでの変態では無かったと思う。
……さて、どうしたものか。此処で大音量を出すという手段や、部屋に入って揺さぶる等といった手段もある。近所には誰も住んでいないから大音量を出しても大丈夫だろうが、あまり気が乗らない。
かといって部屋の中に入るのもどうだろうか。仮に、エマがパジャマではなく裸体で眠る少女だったとしよう。それを見たとして、僕は毛ほどの興味も湧かないが、見られたエマはどう思うだろうか。
つまり、そういうことである。
「う~む……まぁ、ノックしたからいいや。」
ドアを開け、中に入ると裸で寝転がる一人の少女が……等ということは無かった。少し安心である。しかし、そんなことがどうでもよくなるようなことを見つけてしまった。まぁ、元からどうでもよかったのだが。
なんと、部屋の中が散乱していたのである。
「これはこれは……中学生少女としてどうなんだ?」
マンガ、服、ゲーム機、見るだけで分かる通り様々なものが散らばっていた。ゴミはゴミ箱の中にいれているのか落ちてはないように見えるが、それでも酷い。
そういや友人が言ってたっけ……『女の子だからって綺麗好きとは限らないよ! 現に私の部屋なんてグッチャグチャだからね!』と、ドヤ顔で。
ふむ、あの時は馬鹿が言ってたから気にとめなかったが、変に女子に求めるというのは駄目というのは本当のようだ。
とりあえず、まだ時間もあるし軽く整理しておこう。
我が家のオカンのことだ。思春期とか気にすることなく掃除はするだろう。……つまり、下着類が散らばっている可能性は皆無である。
--《グラビティ》
一旦全ての物を重量操作系の魔法で浮かし、服の種類ごと、漫画、ゲーム機等に分けていく。ちなみに、範囲的に重力を無くしているため、気をつけなければ様々な物がフヨフヨと浮き出してしまう。気をつけるというのは、浮かせたくない物質に重力をかけるという方法だ。魔法中級者ぐらいなら出来る代物だ。
漫画とかの並びにはこだわるタイプなので、一巻から現在ある最終巻まで順番にしておく。開いていた漫画にはしおりを挟んでおくという徹底ぶりである。
その昔、実の子供の本を並べておいたら三日ほど口を聞いてもらえなかった。あの時は嫁さんに泣きついて和解出来たが、今回はそれを防ぎたい。正直なところ、拗ねられても可愛いがそれ以上に悲しい。
「うし、……エマ、朝だよ。寝起きにジャーマンなんとかをくらいたく無かったら目を醒ましなさいな。ジャーマン……」
「ジャーマンスープレックス……すやぁ」
「あ、そうそれ。話半分に聞いてたから覚えて無かったんだよね。」
この子はどんな夢を見ているのだろう。妻の夢に見てしょっちゅう寝起きは泣いてる僕もそうだが、ジャーマンスープレックスが出る夢とはどうなのだろう。
呼吸の自然さから考えて起きているとは思わなかったが……。もしかすると、今世紀最大の謎になるかもしれない。
「観自在菩薩行深般若波羅蜜多時照見五蘊皆空度一切苦厄舎利子色不異空空不異色色即是空空即是色受想行識亦復如是舎利子是諸法空相不生不滅不垢不浄不増不減是故空中無色無受想行識無眼耳鼻舌身意無色声香味触法--」
「ひぃぃぃ! 成仏はいやぁ!」
周りの声とかが夢に影響すると考えた僕は暇つぶしで覚えた般若心経を唱えてみた。すると、夢の中でアンデットになりきったのか知らないが恐怖に怯えた表情でエマが起きた。
あ、僕はアンデットの方の吸血鬼とは違って定義上は悪魔なので問題無いです。というか、宗教関連のことは何一つ効きません。
「お、お父さん? 般若のお面を被った神職用袴の悪魔が……」
「おはよう。なんだか面白い夢を見たようだね。今日は買い物に行くんでしょ? ほら、服とかは纏めておいたから着替えておりてきなさいな。」
「どこかで見た事ある翼があって……」
「ふふふ、まるで吸血鬼みたいだった?」
「んー、どっちかっていうと堕天使みたいな感じ?」
……あ、夢の中に僕出ちゃってるよ。今は人化してるけどそれ解いたときの僕だよ。袴なのは江戸時代ぐらいのときに呼び出されたからだよ、うん。
さぁて、問題無く目を醒ましたようだから降りるとしましょうか。
「--般若みたいな仮面を被った覚えは無いんだけどなぁ。」
まぁ、般若心経だったからとかいうそんなところだろう。
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