元勇者の吸血鬼、教師となる
005
「では、藤原先生は藤堂先生の指示に従って行動してください。同じクラス担当ですし、元同級生と聞いています」
「分かりました。」
教師の指示を聞いて藤堂のほうに歩みを進めていく。さぁ藤堂に質問しまくって困らせてやろうウッヘッヘ、となるのが僕の予定なのだが……なのだが、やけに視線を感じる。一点に集中していることから好奇心と想像出きるが……何故だろう。
僕の瞳の色は赤い。どこぞの詐欺師はルビーの様だとかふざけたことを抜かしていたが、ちょうどそれぐらいの赤さだろう。しかし、その程度のことで興味を惹かれるとはあまり思えない。
仮にもあの糞親父にスカウトされてきたのだから視線をどうこうするぐらいの技能はあるだろう。……いや、そういう殺しに関することはあまり教えられていないのかもしれない。ただの戦闘技術だけを教えられている。というのならば戦闘ではないこの時はしっかり見つめていても大丈夫ということか。
「よっ、久しぶりだな詩季っ」
「うん、ちょうど一年ぶりぐらいだね。」
そんな中で唯一……教頭がいた。教頭を除いて唯一僕の瞳を凝視していないのが藤堂、こいつだ。職務中なのに普通に話すとはなかなかのものである。釣られて普通に話した僕が言えることでは無いが。
懐かしい顔である。一年という極々短い間でも、合わせていなかった顔を合わせるというのは感慨深いものだ。当然、大したことない知り合いと会っても何も感じないが、結構友情のある藤堂と再会するのは嬉しい。まぁ、藤堂が友人と思っているかどうかは僕には分からないので友人と誰かに紹介することはないが。
「相変わらず人を殺してそうな目つきだねぇ。」
「そっちこそ、相変わらず生気を失った目つきしてんなぁ。」
「……いや、僕は元からこんなんだよ?」
「奇遇だな。俺も元からこんなんだよこんちくしょう。」
僕の瞳の生気の無さは吸血鬼特有のものであって、藤堂のように整形すればどうにかなるという代物ではない。ただ目つきが悪いだけと一緒にしてほしくはない。
藤堂は自分の目つきの悪さを嫌っている節がある。理由はなんとなく想像つくが、その程度のことは気にしなければいいのに、と思う。外見で判断するような人間と付き合う必要は無いのだ。……そういう点で、藤堂は僕のいい友人だ。赤い瞳というのに気持ち悪いとか中二病とか言ってきたりしない。
吸血鬼の聴力と読唇術を嘗めないでいただきたい。陰口程度なら寸分狂わず聞き取ることが可能だし、そこから個人を特定することも可能だ。このような部分が危険な奴と思われる所以だろうが気にしない。
「あの~」
「……ん? どうしました?」
「え~と、自己紹介しません?」
……なるほど、確かに友人とのくだらない会話より同僚となる人との自己紹介のほうが大切だ。これからよろしくやっていくのだし、挨拶は大事だ。それに、あちらから話しかけてくれたのだ。悪意も感じられないし、少なくとも表面上はいい人なのだろう。
「あ、そうですね。僕は先ほど言った通り藤原詩季、藤堂先生の同級生です。教師のなんたるかは分かってないのでよろしくお願いします。」
「では私ですね。私は夏目レナ、数学の教師しています。私もまだ二年目なので、一緒に学んでいきましょう。よろしくお願いします。」
「流れ的に俺ですね。俺の名前は--」
「新卒ですか。いいですねぇ。僕は大学に通ってないから羨ましいですよ。学園長に呼び出されてさえ無かったら大学に行けたかもしれないんですけどねぇ。」
新卒、それは僕みたいに裏社会関連の人間には手に入れにくい人生一度きりの称号だ。まぁ、新卒が教師に関係あるのか知らないし、なんとなく大学に行っていたことに羨ましさを感じているだけだ。
尚、藤堂の戯れ言は無視である。必要なき自己紹介をさせるほど僕はお人好しではない。そして、その程度のボケに反応する程度の人生は過ごしていない。
「え? 大学行ってないってことは教員免許持ってないんですか? それって犯罪なんじゃ……大丈夫なんですか?」
「大丈夫なわけ無いじゃ無いですか。学園長が無理やり重傷者の治療をさせるために学園にぶち込んだだけですよ。法律なんて完全無視です。」
「俺は無視なんですか? 反応ぐらいしてくれても--」
「うるさいです藤堂先生。僕の視界に入って迷惑だと思わないんですか? 分かったならさっさと背後に平伏してください。」
「今世紀最大ぐらいの罵倒だよコノヤロウ」
失礼な。僕はご希望通り反応をしてやっただけである。どのような反応かまでは指定を受けていないのでこれで十分だろう。これ以上を求めるのならば異性に応えられないヘタレと煽り続けてやろう。
この二人の会話内容と感情ぐらいとっくに把握しているのだ。目つきの悪さでヘタレさを誤魔化せると思ったら大間違いである。
「藤原先生、学園長ってなんなのでしょうか。」
「それは僕にもわかりません。が、少なくともあれを世に放り出したまんまでは誰かが悲しい目に遭うことは間違いないです。……早く死ねばいいのに。」
「アウトだ藤原先生。聞こえてますよ」
「藤堂先生、敬語なら敬語、タメ口ならタメ口ではっきりとしてください。それでは生徒達に悪影響を与えてしまいますよ?」
「やっぱおまえ色んな意味で理不尽だわ。」
理不尽……ふむ、否定出来ない。吸血鬼という種族は特有の力を扱えるだけではなく、他の種族の力も使うことが出来るようになる。藤堂のように、ヒトからすれば理不尽以外の何者でもないだろう。
という現実逃避はおいておいて、藤堂に理不尽をするのは自業自得でしかない。別に、僕だってただの知り合いにふざけるようなことは無い。藤堂が僕と関わって友人になるのが悪いのだ。
「……それで夏目先生、学園長のことでしたね。僕の知っていることならなんでも話しますよ。あれに人権は必要ありませんから。」
「とりあえず藤原先生が辛辣なのは分かりました。……藤原先生って日本人の肌にしては白いですよね。奥さんが外人さんだって聞いたことがあるんですけど……」
「……奥さん?」
奥さん、外人というワードに一瞬彼女が浮かび上がったが、夏目先生が彼女のことを知っているわけが無いので直ぐに違うと気付いた。
今の僕は安定しているから良かったが、精神復活する前の僕なら多分--
--とりあえず……こいつは後から消すか。僕の知り合いでは無いやつが知っているということは、敵である可能性が非常に高い。……いや、消すのは勿体ない。教頭と話していた通り苦痛を与え続けて情報を吐かせて--
とかなんとか考えて、夏目先生のことを闇討ちでもしようとしていた。
いやぁ、よかったよかった。下手をすれば藤堂に敵対されていたね。こちらとしては仲間だと思っているから敵対はしたくないのだ。
「……すみません、何かおかしなこと言いましたか?」
脳内でふざけていたら黙り込んでしまっていたようだ。
すまない夏目先生、喋ってる途中に脳内で遊んでてすみません。
「なんでもないですよ。少し考えていただけです。……で、母のことですね。日本人ですよ。祖母が外国人なんです。クォーター、って言えば分かります? 僕の肌が白っぽいのはそのためですよ。」
母さんはガチガチの日本人だ。そして祖父さんも日本人で、祖母さんが外国人。言わずとも糞親父がハーフということになり、僕がクォーターだ。糞親父がハーフというのは見れば分かる程度のことなのだが、何故そんなことを聞くのだろう。
「もしかして、学園長って皆さんに姿見せてないんですか?」
「えぇ、そうなんですよ。私も藤堂先生も……というか、この学校にいる教頭先生以外の先生は学園長の見た目が分かりません。教頭先生も教えてくれませんし。」
「あー、あれならそういうこともやりそうですね。」
糞親父のことだ。外見知られてない学園長ってなんか面白くね? みたいな軽いノリでそのスタイルを貫いてそうだ。糞親父の行動原理って基本的に面白そうなことか、あれ自身が本気で動かないとキツいことに遭遇したときぐらいだ。前者は日常的に行われるが、後者は偶にしか無いのでまともにあれが動いているのはあまり見ない。
「そういや、リベリオンのトップとして顔を出すこともありませんでしたね。」
「……まず顔を見たことも無いので分かりません」
「さも当然のようにどこかにウロウロしてたり、なんてこともありますよ。顔が分からない奴の日常なんてそんなもんです。」
これは糞親父だけではなく、僕にも該当することだ。僕は依頼の時には仮面を被っているが、日常生活では素顔で歩き回っている。一般人と大差ない身のこなしで普段を過ごしているため、この長い髪の毛で正体を突き詰められることはない。
DNA鑑定も意味を持たない。そのような証拠は何一つ残さないのが僕だ。髪一本たりとも落としたりはしない。吸血鬼の生命力溢れる毛根から髪の毛が抜け落ちる、なんてことはあり得ないのである。よって、吸血鬼に禿はいない。
「……ま、雑談はこれぐらいにしましょう。藤堂先生、僕のすることを教えて貰っていいですか? 抽象的なことは教頭先生に伝えられているので、何をすればいいのかを教えていただければ結構です。」
「ん? あぁはい。分かりました。それでは、入学式後のことを話すので付いてきて貰っていいですか? 歩きながらのほうが分かりやすい説明になるでしょうから。」
「分かりました。お願いします。」
「任せてください。……ということなので夏目先生、また放課後に。」
「え、あ、はい。頑張ってください。」
特に頑張るようなことは無いと思うのだが……なんだろう。この学校の廊下には危ないモノでも住み着いているのだろうか。妖怪の類なら見つけることが出きるが、幽霊の類なら厄介だ。完全に空気と同化されたら発見は難しい。
藤堂が立ち上がって、歩き出すと同時に僕も後ろに付いていく。どんなことを説明するのかは不明だが、面倒くさがっている様子ではないので大事なことの筈だ。
僕は記憶能力が高いからなんとなくでいけるが、それで駄目ということな歩きながらのほうが断然良いということになる。
「……唐突過ぎて反応し辛い」
あ、そうでしたか。すみません。
「分かりました。」
教師の指示を聞いて藤堂のほうに歩みを進めていく。さぁ藤堂に質問しまくって困らせてやろうウッヘッヘ、となるのが僕の予定なのだが……なのだが、やけに視線を感じる。一点に集中していることから好奇心と想像出きるが……何故だろう。
僕の瞳の色は赤い。どこぞの詐欺師はルビーの様だとかふざけたことを抜かしていたが、ちょうどそれぐらいの赤さだろう。しかし、その程度のことで興味を惹かれるとはあまり思えない。
仮にもあの糞親父にスカウトされてきたのだから視線をどうこうするぐらいの技能はあるだろう。……いや、そういう殺しに関することはあまり教えられていないのかもしれない。ただの戦闘技術だけを教えられている。というのならば戦闘ではないこの時はしっかり見つめていても大丈夫ということか。
「よっ、久しぶりだな詩季っ」
「うん、ちょうど一年ぶりぐらいだね。」
そんな中で唯一……教頭がいた。教頭を除いて唯一僕の瞳を凝視していないのが藤堂、こいつだ。職務中なのに普通に話すとはなかなかのものである。釣られて普通に話した僕が言えることでは無いが。
懐かしい顔である。一年という極々短い間でも、合わせていなかった顔を合わせるというのは感慨深いものだ。当然、大したことない知り合いと会っても何も感じないが、結構友情のある藤堂と再会するのは嬉しい。まぁ、藤堂が友人と思っているかどうかは僕には分からないので友人と誰かに紹介することはないが。
「相変わらず人を殺してそうな目つきだねぇ。」
「そっちこそ、相変わらず生気を失った目つきしてんなぁ。」
「……いや、僕は元からこんなんだよ?」
「奇遇だな。俺も元からこんなんだよこんちくしょう。」
僕の瞳の生気の無さは吸血鬼特有のものであって、藤堂のように整形すればどうにかなるという代物ではない。ただ目つきが悪いだけと一緒にしてほしくはない。
藤堂は自分の目つきの悪さを嫌っている節がある。理由はなんとなく想像つくが、その程度のことは気にしなければいいのに、と思う。外見で判断するような人間と付き合う必要は無いのだ。……そういう点で、藤堂は僕のいい友人だ。赤い瞳というのに気持ち悪いとか中二病とか言ってきたりしない。
吸血鬼の聴力と読唇術を嘗めないでいただきたい。陰口程度なら寸分狂わず聞き取ることが可能だし、そこから個人を特定することも可能だ。このような部分が危険な奴と思われる所以だろうが気にしない。
「あの~」
「……ん? どうしました?」
「え~と、自己紹介しません?」
……なるほど、確かに友人とのくだらない会話より同僚となる人との自己紹介のほうが大切だ。これからよろしくやっていくのだし、挨拶は大事だ。それに、あちらから話しかけてくれたのだ。悪意も感じられないし、少なくとも表面上はいい人なのだろう。
「あ、そうですね。僕は先ほど言った通り藤原詩季、藤堂先生の同級生です。教師のなんたるかは分かってないのでよろしくお願いします。」
「では私ですね。私は夏目レナ、数学の教師しています。私もまだ二年目なので、一緒に学んでいきましょう。よろしくお願いします。」
「流れ的に俺ですね。俺の名前は--」
「新卒ですか。いいですねぇ。僕は大学に通ってないから羨ましいですよ。学園長に呼び出されてさえ無かったら大学に行けたかもしれないんですけどねぇ。」
新卒、それは僕みたいに裏社会関連の人間には手に入れにくい人生一度きりの称号だ。まぁ、新卒が教師に関係あるのか知らないし、なんとなく大学に行っていたことに羨ましさを感じているだけだ。
尚、藤堂の戯れ言は無視である。必要なき自己紹介をさせるほど僕はお人好しではない。そして、その程度のボケに反応する程度の人生は過ごしていない。
「え? 大学行ってないってことは教員免許持ってないんですか? それって犯罪なんじゃ……大丈夫なんですか?」
「大丈夫なわけ無いじゃ無いですか。学園長が無理やり重傷者の治療をさせるために学園にぶち込んだだけですよ。法律なんて完全無視です。」
「俺は無視なんですか? 反応ぐらいしてくれても--」
「うるさいです藤堂先生。僕の視界に入って迷惑だと思わないんですか? 分かったならさっさと背後に平伏してください。」
「今世紀最大ぐらいの罵倒だよコノヤロウ」
失礼な。僕はご希望通り反応をしてやっただけである。どのような反応かまでは指定を受けていないのでこれで十分だろう。これ以上を求めるのならば異性に応えられないヘタレと煽り続けてやろう。
この二人の会話内容と感情ぐらいとっくに把握しているのだ。目つきの悪さでヘタレさを誤魔化せると思ったら大間違いである。
「藤原先生、学園長ってなんなのでしょうか。」
「それは僕にもわかりません。が、少なくともあれを世に放り出したまんまでは誰かが悲しい目に遭うことは間違いないです。……早く死ねばいいのに。」
「アウトだ藤原先生。聞こえてますよ」
「藤堂先生、敬語なら敬語、タメ口ならタメ口ではっきりとしてください。それでは生徒達に悪影響を与えてしまいますよ?」
「やっぱおまえ色んな意味で理不尽だわ。」
理不尽……ふむ、否定出来ない。吸血鬼という種族は特有の力を扱えるだけではなく、他の種族の力も使うことが出来るようになる。藤堂のように、ヒトからすれば理不尽以外の何者でもないだろう。
という現実逃避はおいておいて、藤堂に理不尽をするのは自業自得でしかない。別に、僕だってただの知り合いにふざけるようなことは無い。藤堂が僕と関わって友人になるのが悪いのだ。
「……それで夏目先生、学園長のことでしたね。僕の知っていることならなんでも話しますよ。あれに人権は必要ありませんから。」
「とりあえず藤原先生が辛辣なのは分かりました。……藤原先生って日本人の肌にしては白いですよね。奥さんが外人さんだって聞いたことがあるんですけど……」
「……奥さん?」
奥さん、外人というワードに一瞬彼女が浮かび上がったが、夏目先生が彼女のことを知っているわけが無いので直ぐに違うと気付いた。
今の僕は安定しているから良かったが、精神復活する前の僕なら多分--
--とりあえず……こいつは後から消すか。僕の知り合いでは無いやつが知っているということは、敵である可能性が非常に高い。……いや、消すのは勿体ない。教頭と話していた通り苦痛を与え続けて情報を吐かせて--
とかなんとか考えて、夏目先生のことを闇討ちでもしようとしていた。
いやぁ、よかったよかった。下手をすれば藤堂に敵対されていたね。こちらとしては仲間だと思っているから敵対はしたくないのだ。
「……すみません、何かおかしなこと言いましたか?」
脳内でふざけていたら黙り込んでしまっていたようだ。
すまない夏目先生、喋ってる途中に脳内で遊んでてすみません。
「なんでもないですよ。少し考えていただけです。……で、母のことですね。日本人ですよ。祖母が外国人なんです。クォーター、って言えば分かります? 僕の肌が白っぽいのはそのためですよ。」
母さんはガチガチの日本人だ。そして祖父さんも日本人で、祖母さんが外国人。言わずとも糞親父がハーフということになり、僕がクォーターだ。糞親父がハーフというのは見れば分かる程度のことなのだが、何故そんなことを聞くのだろう。
「もしかして、学園長って皆さんに姿見せてないんですか?」
「えぇ、そうなんですよ。私も藤堂先生も……というか、この学校にいる教頭先生以外の先生は学園長の見た目が分かりません。教頭先生も教えてくれませんし。」
「あー、あれならそういうこともやりそうですね。」
糞親父のことだ。外見知られてない学園長ってなんか面白くね? みたいな軽いノリでそのスタイルを貫いてそうだ。糞親父の行動原理って基本的に面白そうなことか、あれ自身が本気で動かないとキツいことに遭遇したときぐらいだ。前者は日常的に行われるが、後者は偶にしか無いのでまともにあれが動いているのはあまり見ない。
「そういや、リベリオンのトップとして顔を出すこともありませんでしたね。」
「……まず顔を見たことも無いので分かりません」
「さも当然のようにどこかにウロウロしてたり、なんてこともありますよ。顔が分からない奴の日常なんてそんなもんです。」
これは糞親父だけではなく、僕にも該当することだ。僕は依頼の時には仮面を被っているが、日常生活では素顔で歩き回っている。一般人と大差ない身のこなしで普段を過ごしているため、この長い髪の毛で正体を突き詰められることはない。
DNA鑑定も意味を持たない。そのような証拠は何一つ残さないのが僕だ。髪一本たりとも落としたりはしない。吸血鬼の生命力溢れる毛根から髪の毛が抜け落ちる、なんてことはあり得ないのである。よって、吸血鬼に禿はいない。
「……ま、雑談はこれぐらいにしましょう。藤堂先生、僕のすることを教えて貰っていいですか? 抽象的なことは教頭先生に伝えられているので、何をすればいいのかを教えていただければ結構です。」
「ん? あぁはい。分かりました。それでは、入学式後のことを話すので付いてきて貰っていいですか? 歩きながらのほうが分かりやすい説明になるでしょうから。」
「分かりました。お願いします。」
「任せてください。……ということなので夏目先生、また放課後に。」
「え、あ、はい。頑張ってください。」
特に頑張るようなことは無いと思うのだが……なんだろう。この学校の廊下には危ないモノでも住み着いているのだろうか。妖怪の類なら見つけることが出きるが、幽霊の類なら厄介だ。完全に空気と同化されたら発見は難しい。
藤堂が立ち上がって、歩き出すと同時に僕も後ろに付いていく。どんなことを説明するのかは不明だが、面倒くさがっている様子ではないので大事なことの筈だ。
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