《完結》虐待されてる奴隷少女を救った、異世界最強の龍騎士
120話「ヒューリマン・サディ Ⅱ」
竜騎士軍に動きがあった。
ついにこのサディ城に突っ込んでくるかと思われた。この日食の暗闇のもとでは、野にいる竜騎士軍は早期決着を望むはずだった。
(来るなら来い)
竜騎士軍もろとも、憎きヴァルフィも殺してくれてやる――と思った。
「ヒューリマンさまッ」
と、騎士のひとりが玉座の間にあわただしく駆けつけてきた。
「どうした? 竜騎士軍が攻めてきたか?」
「いえ。そ、空から」
「なんだ? ハッキリ言え」
「空から龍が」
「龍だと?」
言われてすぐに思い当った。
竜騎士軍はその名の通り、竜騎士の軍隊だ。リュウイチロウという名の男が、セリヌイアの拝領と同時に竜騎士の爵位を貰い受けたと聞いている。
その竜騎士は、龍を従えているのだ。
ヴァルフィが竜騎士軍を味方につけたと聞いて、まっさきに怖れたのがその龍の存在だった。サディ城を囲んだ竜騎士軍の中に、龍はいないようだと安堵していたのだ。
ドォン
すさまじい轟音が起こった。
『スフィラの樹』で組み上げられた壁が崩壊していた。けぶる砂塵の中からあらわれたのは、あまりにも鮮烈な赤だった。
真っ赤な巨岩かと思った。しかしその巨岩には獰猛に輝く双眸があった。そして簡単に人を粉砕できそうなノコギリのようなキバが生えていた。そのキバの奥には地獄の入口のような赤黒いノド奥が見えた。龍の顔がヒューリマンの眼前にあったのだ。
「ひ、ひェ」
とヒューリマンは腰を抜かした。
「荒っぽい訪問で失礼します。ですが時間がないので、単刀直入に本題に入らせていただきます」
城に突っ込んできた龍の背中に、青年がひとり立っていた。これといった武装はしていない。ただ、腰に剣があった。背中に銃身の長い《血影銃》を背負っているのが見て取れた。
「な、なんだ貴様は」
「セリヌイアの領主をしています。白神龍一郎と申します」
「ぐっ」
言葉につまった。
(この男が例の龍騎士か……)
想像していたよりも、ずっと若い。しかし、なんという強引な登場か。
「外の状況を見ていただけるとご理解していただけると思うのですが、すでに日食がはじまっております。この状況から脱するため、ヴァルフィさまの占いが必要です。それにともない、必要な器があると聞いたのですが……」
その言葉を受けてヒューリマンは、足元に転がっていた金の杯を手繰り寄せた。
「あぁッ。その器が、占いに必要なものなんですね」
リュウイチロウが龍の背中からおりてくる。
「く、来るなッ」
誰か迎え撃てッ――とヒューリマンは叫ぶ。
しかし、騎士はみんなボウゼンと突っ立っているだけだ。龍の威圧にのみこまれてしまっていた。
気が付くとリュウイチロウが、ヒューリマンの目の前にいた。
「くそッ、くそッ、龍神族ってヤツはみんな、このオレを愚弄しやがる!」
追い詰められたヒューリマンは、決死の覚悟で剣を抜いた。そしてリュウイチロウに跳びかかった。
しかしヒューリマンの決死の一撃は、リュウイチロウに軽くいなされてしまった。
「この杯はいただきます。それから、政権はヴァルフィさまに譲ってやってください」
「そ、そんな指図を受けるものかッ」
「闇からクロエイが生まれはじめている。今は人間同士で争っている場合ではない。そんなことぐらいわかるでしょう」
グラァァァァッ――龍が吠えた。
あまりに圧倒的な存在を前に、ヒューリマンの戦意は完全に喪失してしまった。気が付くと生温かい液体がヒューリマンのズボンを濡らしていた。
ついにこのサディ城に突っ込んでくるかと思われた。この日食の暗闇のもとでは、野にいる竜騎士軍は早期決着を望むはずだった。
(来るなら来い)
竜騎士軍もろとも、憎きヴァルフィも殺してくれてやる――と思った。
「ヒューリマンさまッ」
と、騎士のひとりが玉座の間にあわただしく駆けつけてきた。
「どうした? 竜騎士軍が攻めてきたか?」
「いえ。そ、空から」
「なんだ? ハッキリ言え」
「空から龍が」
「龍だと?」
言われてすぐに思い当った。
竜騎士軍はその名の通り、竜騎士の軍隊だ。リュウイチロウという名の男が、セリヌイアの拝領と同時に竜騎士の爵位を貰い受けたと聞いている。
その竜騎士は、龍を従えているのだ。
ヴァルフィが竜騎士軍を味方につけたと聞いて、まっさきに怖れたのがその龍の存在だった。サディ城を囲んだ竜騎士軍の中に、龍はいないようだと安堵していたのだ。
ドォン
すさまじい轟音が起こった。
『スフィラの樹』で組み上げられた壁が崩壊していた。けぶる砂塵の中からあらわれたのは、あまりにも鮮烈な赤だった。
真っ赤な巨岩かと思った。しかしその巨岩には獰猛に輝く双眸があった。そして簡単に人を粉砕できそうなノコギリのようなキバが生えていた。そのキバの奥には地獄の入口のような赤黒いノド奥が見えた。龍の顔がヒューリマンの眼前にあったのだ。
「ひ、ひェ」
とヒューリマンは腰を抜かした。
「荒っぽい訪問で失礼します。ですが時間がないので、単刀直入に本題に入らせていただきます」
城に突っ込んできた龍の背中に、青年がひとり立っていた。これといった武装はしていない。ただ、腰に剣があった。背中に銃身の長い《血影銃》を背負っているのが見て取れた。
「な、なんだ貴様は」
「セリヌイアの領主をしています。白神龍一郎と申します」
「ぐっ」
言葉につまった。
(この男が例の龍騎士か……)
想像していたよりも、ずっと若い。しかし、なんという強引な登場か。
「外の状況を見ていただけるとご理解していただけると思うのですが、すでに日食がはじまっております。この状況から脱するため、ヴァルフィさまの占いが必要です。それにともない、必要な器があると聞いたのですが……」
その言葉を受けてヒューリマンは、足元に転がっていた金の杯を手繰り寄せた。
「あぁッ。その器が、占いに必要なものなんですね」
リュウイチロウが龍の背中からおりてくる。
「く、来るなッ」
誰か迎え撃てッ――とヒューリマンは叫ぶ。
しかし、騎士はみんなボウゼンと突っ立っているだけだ。龍の威圧にのみこまれてしまっていた。
気が付くとリュウイチロウが、ヒューリマンの目の前にいた。
「くそッ、くそッ、龍神族ってヤツはみんな、このオレを愚弄しやがる!」
追い詰められたヒューリマンは、決死の覚悟で剣を抜いた。そしてリュウイチロウに跳びかかった。
しかしヒューリマンの決死の一撃は、リュウイチロウに軽くいなされてしまった。
「この杯はいただきます。それから、政権はヴァルフィさまに譲ってやってください」
「そ、そんな指図を受けるものかッ」
「闇からクロエイが生まれはじめている。今は人間同士で争っている場合ではない。そんなことぐらいわかるでしょう」
グラァァァァッ――龍が吠えた。
あまりに圧倒的な存在を前に、ヒューリマンの戦意は完全に喪失してしまった。気が付くと生温かい液体がヒューリマンのズボンを濡らしていた。
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