《完結》虐待されてる奴隷少女を救った、異世界最強の龍騎士
112話「サディ国の村」
「うっ、これは酷い……」
エムールが言った。
セリオットは《血動車》を止めた。
街道を走っていると、開けた場所に出た。木造家屋が何軒か建っているから村だろうと思われる。
その村の中央広場で、多くの男や女が火あぶりにされていたのだ。木造の胸当てや肩当てをしている連中がいた。ゼルン王国の装備ではない。木造武装の連中は、女子供たちを縛り上げている。
「おい、貴様らッ。なにをしている!」
セリオットはいきなり剣を抜きはらった。
自身が庶民の出身であるために、同じ庶民がいたぶられている場面を見て、激昂をおぼえたのだろう。
「そっちこそ、何者だ」
と、木造武装の男がひとり出てきた。
茶褐色の肌。彫りの深い目元。高い鼻。分厚い唇。そして頬には紅色の戦化粧がほどこされていた。
精悍な肉体をしており、禿げあがった頭には仮面をつけていた。これがサディ国の男かという印象をエムールは受けた。
「我らはゼルン王国セリヌイアが領主ーーリュウイチロウ龍騎士旗下の部隊だ」
「竜騎士――。ほぉ、ウワサに聞く、奴隷解放都市のところの」
木造武装の男はエムールたちを軽んじるかのように笑った。笑われたのは癪だが、奴隷解放令のウワサがこの辺りにまで広がっているのは、喜ばしいことだった。
「そちらは?」
と、セリオットが怒鳴る。
「我らはサディ国、現国王のヒューリマン・サディさまの騎士」
すると、そのヒューリマン・サディという人物が、国王殺しの第一王子だろう。すなわち敵軍だ。
このまま交戦に入っても良いが、その前に情報を引き出してやろうとエムールは思った。
「何をしていたのだ」
と、問うた。
「来るべき絶望の日にそなえて、サディ国王は血質値の低いものを処刑することを決定した。よって、ここで処刑を行っていたのだ」
村の者たちを集めて、火あぶりにかける。
処刑というよりも、これでは虐殺だ。
広間中央の燃え立つ十字架からは、焦げた人肉の臭いが放たれていた。燃える炎のなかで嘆くシャレコウベに目を向けたくはなかった。
「絶望の日とはなんだ?」
「じきに月が太陽を覆いつくし、レオーネ全土は闇に包まれるのだ」
なるほど。
日食のことだ。
「我ら龍騎士軍は、サディ王国第一王女ヴァルフィさまの救援要請を受けてやって来たのだ」
エムールはそう言い放った。
「なにッ?」
「彼女も同行しておられる」
ヴァルフィは別の《血動車》に乗っている。戦いに加わるわけではないが、この戦においてヴァルフィという存在そのものが大義となる。
実際にヒューリマンの部隊に動揺が走るのが見受けられた。
「サディ国国王を殺した逆賊どもに、制裁を与える。大義は我らにあり!」
それが交戦の合図だった。
竜騎士軍がいっきにヒューリマン部隊に襲いかかった。こちらは1500人にたいして、相手はただの小隊だった。
制圧するのに時間はかからなかった。
ヒューリマンの部隊を制圧して、まだ生き残っていた村の者たちを解放した。村の者たちは竜騎士軍に協力的だった。奴隷解放令のリュウイチロウの評判が良かった。
のみならず。
「ヴァルフィさまのために、我らも戦うぞ」
と、村の者たちは竜騎士軍に加わってくれた。
サディ国の住民にとっては、前国王は非常に人気の高い人だった。その国王を暗殺したヒューリマン・サディという人物は、「悪」なのだ。ならば民の心はどこに向いているかと言うと、第一王女ヴァルフィのほうにあるようだった。
「風は我らに味方している」
エムールはそうつぶやいた。
エムールが言った。
セリオットは《血動車》を止めた。
街道を走っていると、開けた場所に出た。木造家屋が何軒か建っているから村だろうと思われる。
その村の中央広場で、多くの男や女が火あぶりにされていたのだ。木造の胸当てや肩当てをしている連中がいた。ゼルン王国の装備ではない。木造武装の連中は、女子供たちを縛り上げている。
「おい、貴様らッ。なにをしている!」
セリオットはいきなり剣を抜きはらった。
自身が庶民の出身であるために、同じ庶民がいたぶられている場面を見て、激昂をおぼえたのだろう。
「そっちこそ、何者だ」
と、木造武装の男がひとり出てきた。
茶褐色の肌。彫りの深い目元。高い鼻。分厚い唇。そして頬には紅色の戦化粧がほどこされていた。
精悍な肉体をしており、禿げあがった頭には仮面をつけていた。これがサディ国の男かという印象をエムールは受けた。
「我らはゼルン王国セリヌイアが領主ーーリュウイチロウ龍騎士旗下の部隊だ」
「竜騎士――。ほぉ、ウワサに聞く、奴隷解放都市のところの」
木造武装の男はエムールたちを軽んじるかのように笑った。笑われたのは癪だが、奴隷解放令のウワサがこの辺りにまで広がっているのは、喜ばしいことだった。
「そちらは?」
と、セリオットが怒鳴る。
「我らはサディ国、現国王のヒューリマン・サディさまの騎士」
すると、そのヒューリマン・サディという人物が、国王殺しの第一王子だろう。すなわち敵軍だ。
このまま交戦に入っても良いが、その前に情報を引き出してやろうとエムールは思った。
「何をしていたのだ」
と、問うた。
「来るべき絶望の日にそなえて、サディ国王は血質値の低いものを処刑することを決定した。よって、ここで処刑を行っていたのだ」
村の者たちを集めて、火あぶりにかける。
処刑というよりも、これでは虐殺だ。
広間中央の燃え立つ十字架からは、焦げた人肉の臭いが放たれていた。燃える炎のなかで嘆くシャレコウベに目を向けたくはなかった。
「絶望の日とはなんだ?」
「じきに月が太陽を覆いつくし、レオーネ全土は闇に包まれるのだ」
なるほど。
日食のことだ。
「我ら龍騎士軍は、サディ王国第一王女ヴァルフィさまの救援要請を受けてやって来たのだ」
エムールはそう言い放った。
「なにッ?」
「彼女も同行しておられる」
ヴァルフィは別の《血動車》に乗っている。戦いに加わるわけではないが、この戦においてヴァルフィという存在そのものが大義となる。
実際にヒューリマンの部隊に動揺が走るのが見受けられた。
「サディ国国王を殺した逆賊どもに、制裁を与える。大義は我らにあり!」
それが交戦の合図だった。
竜騎士軍がいっきにヒューリマン部隊に襲いかかった。こちらは1500人にたいして、相手はただの小隊だった。
制圧するのに時間はかからなかった。
ヒューリマンの部隊を制圧して、まだ生き残っていた村の者たちを解放した。村の者たちは竜騎士軍に協力的だった。奴隷解放令のリュウイチロウの評判が良かった。
のみならず。
「ヴァルフィさまのために、我らも戦うぞ」
と、村の者たちは竜騎士軍に加わってくれた。
サディ国の住民にとっては、前国王は非常に人気の高い人だった。その国王を暗殺したヒューリマン・サディという人物は、「悪」なのだ。ならば民の心はどこに向いているかと言うと、第一王女ヴァルフィのほうにあるようだった。
「風は我らに味方している」
エムールはそうつぶやいた。
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