《完結》虐待されてる奴隷少女を救った、異世界最強の龍騎士

執筆用bot E-021番 

第99話「メイド」

「はぁ……」
 龍一郎はため息を吐き落とした。



 自分に領主が向いているとは思えなかった。



 都市を運営するのもエムールにまかせきりだ。お見合いだと言われても気が乗らない。商業ギルドやら冒険者ギルドから、いろんな書類が届いてサインをしてくれと迫られるのだが、どれにサインすれば良いのかもよくわからない。都市をあずけられた背中では、気ままに旅をすることもできない。



(これだから貴族になるのは厭だったんだけど)



 しかし、都市をあずかったからには、血質値の高い者にとっても、低い者にとっても住み心地の良い都市にしたいとは思う。



 石畳の廊下。
 セリヌイア城の通路だ。



 窓からは都市を眺望することができる。
 灰色の鉄筋コンクリートの建物がたち並んでいるのが見て取れる。むき出しになったコンクリートが、どことなく廃れた雰囲気をかもしだしている。



 なかには木造家屋のものも混じっているのが、こうして上から見下ろすとよくわかる。都市の周囲は城壁が囲んであり、城壁の外は湖になっている。



 この都市の土台は、湖畔の地面に着陸しているのだろうと思われるが、湖の上に浮いているように見えないこともない。その湖のさらに外には緑の平原が広がり、遠くにはグランドリオンが見て取れる。



(クラウス。オレの都市はどうだ? 上手く行ってると思うか?)
 龍一郎はときおり、友のことを思う。



 このレオーネという世界に来てすぐに出会った友人だ。クロエイに影を食われてしまい、クロエイと化してしまった。付き合いは短かったが、鮮明に龍一郎の脳裏に生きていた。



「あれがリュウイチロウさまよ」
「ステキな殿方ね」
 と、女性の声が聞こえた。



 石畳の廊下の曲がり角から、女性2人が顔をのぞかせていた。



 メイドとして雇い入れている者たちだ。血質値の高い者たちは、セリヌイアにはあまり寄りつかない。そのため雇い入れている者たちも、どうしても血質値の低い者たちになる。



「やあ」
 と、気さくに見えるよう挨拶をした。



 龍一郎は女性にたいしてあまり積極的な性質ではない。学校にいたときも、俗に言われるところの「陰キャ」に部類したのではないかと思われる。ただ、異世界に来てからは幾分か臆するところがなくなったように感じていた。



「ど、どうも、城勤めのメイドをやらせていただいております」「雇っていただきありがとうございます」


 2人のメイドが、龍一郎に絡みついてきた。布越しだが、やわらかい乳房が龍一郎の二の腕でやわらかく潰される感触があった。



(貴族というのも悪くないな)



 さきほど貴族は性に合わないという考えは、吹き飛んでいった。あやうく甘い酩酊に引きずり込まれそうになる。おっぱいごときで動揺していては、領主の威厳が保てないだろうと思って、龍一郎は平然をよそおった。



 コホン、と咳払いをした。



「働いていて何か不自由なことはないか?」



「はい。もちろんです。何から何まで良くしていただいております。電気や火もセリヌイアでは自由に使えますし」



 それは良かった。



 ケルゥ侯爵が龍一郎から抜き取った血が、セリヌイアには貯蔵されている。それをセリヌイアの生活エネルギーに回している。おかげで電気、水、火に関しては困ることはない。



「みんな仲良くやっていけてるか?」



 ホントウはベルが上手くやっていけているのか聞き出したかった。顔にヤケド痕があるので、ベルはどこにいても浮いてしまう。個人をヒイキするのも良くないかと思って、あえて迂遠な尋ね方をした。



 そんな龍一郎の気遣いは、アッサリと見破られた。



「リュウイチロウさまは、ベルのことが気になっているのでしょう?」「リュウイチロウさまのお手付きのメイドだと聞いております」



 2人のメイドがわずかに頬を赤らめてそう言った。



「い、いや。手を付けたことは一度もない。……しかし、まぁ、ベルが上手くやっていけてるか気にはなる」



 龍一郎自身も赤面をおぼえた。



 手を付けただなんて、そんなウワサがいったいどこから沸いて出てくるのか。そのウワサがベルの耳に入っていないか。入っているとすれば、どう思っているのか――と雑念がめぐった。



「みんな庶民や奴隷の出身ですから、助け合ってやっていますよ」



 とのことだ。
 それを聞くと安心できた。



「リュウイチロウさまッ。どこへ行かれたのですかッ!」
 エムールの声がした。



「ヤバっ……。そ、それじゃあオレは急用があるので」
 龍一郎はあわててその場を後にした。



 お見合いを押し付けてくるエムールから、龍一郎は逃げているところなのだ。

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