《完結》虐待されてる奴隷少女を救った、異世界最強の龍騎士

執筆用bot E-021番 

第94話「ケルゥ・スプライア侯爵 Ⅲ」

「ケルゥ侯爵。お久しぶりですね。オレのベルをずいぶんと可愛がってくれたようじゃないですか」
 リュウイチロウはそう言った。



 あきらかに怒っている。
 その背後には夕日を受けて燃え立つような赤を光らせている龍が、キバをむき出しにしていた。



 ゴクリ。
 ケルゥは生唾を飲む。



「す、すまない。申し訳ないことをした。しかし、君ならわかるはずだ。そんな血質値の低いものを、ここに置いておくわけにはいかんのだ。クロエイを招くキッカケになるかもしれん」



「理屈はわかりますよ」



 リュウイチロウはまだ大人とも言い難いが、少年とも言い難い年頃の青年だ。しかし、それにしては並の青年よりかは物分りが良いし、頭も良い。理解力もある青年だとケルゥは評価していた。



「良かった。君ならわかってくれると思っていた」



「ケルゥ侯爵には侯爵の正義があったんだと思います。でも、一発は殴らしてもらいますよ」



 そう言うやいなや、リュウイチロウはケルゥの顔面にコブシを叩きこんでいた。



「く、くうっ」
 この無礼者がッ――と騎士たちが駆けつけてきたが、あわててケルゥは止めた。



 この一発で抑えてくれるのであれば、まだ良いほうだ。リュウイチロウの背後には龍がいるのだ。下手に刺激すると大変なことになる。



「それからこの都市は地上に下りてもらいます
「なに? それは困る」



「オレは別にどっちでも良いんですけど、この老赤龍がそれは強引にでも引きずり下ろすと言っていて」



「し、しかし……」



「空に飛んで安全を得ようとするのは、考えたものだな人間」
 と、龍は切り出した。



 そのあまりの威圧に思わず、国王を前にするかのように頭を下げてしまう。ケルゥが頭を下げるとそれにつられて、周囲の騎士たちもかしずいた。


 まるでリュウイチロウにたいして頭を下げるような構図になる。



「しかし人間よ。空に浮かぶと地上にクロエイがわくであろうが」



「そ、そのため湖畔へ行こうとしておったのです。湖畔であれば、クロエイが沸いても人間に迷惑はかかりませんでしょう」



「すでにグランドリオンに迷惑をかけておるわ」



「そ、それは進行の軌道にあったもので……」



 タジタジになる。



「我は、我ら龍が犯した過ちを悔いておる。生んでしまった格差や悲劇をなるべくなくそうと考えておる」



「はッ」



「だいたいこの都市は、リュウイチロウの血を吸い過ぎだ。それだけのエネルギーがあればレオーネはムリでも、ゼルン王国に明かりを行き渡せるぐらいのエネルギーはあろうに」



「あ……う……」
 ケルゥは胃が痛くなった。



 リュウイチロウの血は、異常に高品質だった。1500人分の肩代わりをしろと迫ったのだけれど、実際は1万人分ぐらいの血を吸い上げた。



 欲張ったのだ。



「そういうわけだ。血は王国に引き渡せ。それで多少はゼルン王国の暮らしもマシになろう」



「は、はぁ」



 浮上都市は、ケルゥの抱いてきた夢だ。
 説得された程度で諦めがつくわけがない。が、そう説得しにかかっているのが龍となれば別だ。


(まさか、ウワサの老赤龍が実在していたとは……)


 ウワサだと侮っていた。
 実在しているなら、しらみつぶしにでも探しておけばよかった……とケルゥは後悔した。



「何か不服か?」
 龍がグイッと顔をケルゥに近づけてきた。血の臭いがした。



「こ、降下いたします」
 ケルゥは観念した。

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