《完結》虐待されてる奴隷少女を救った、異世界最強の龍騎士

執筆用bot E-021番 

第91話「空に昇る」

 リュウイチロウは空へとあがる。龍が巨大な両翼を1振り2振りするたびに上へ上へと向かう。



「あのさ」
 と、リュウイチロウは切り出した。



「なんだ、コゾウ」
 と、老赤龍がこたえる。



「龍のせいで巨大種が出るって聞いてたんだけど、セリヌイアに巨大種のクロエイが出るのは、あんたのせいだったのか?」



 相手が人ではないので、「あんた」と呼ぶべきか「君」と呼ぶべきか迷った。老赤龍は特に気にしなかったようだ。



「我のせいでもあり、我のせいではない」
「なんだそれ?」



「クロエイはかつての我の同胞であり、仇敵たちの怨念だ」



「らしいな」



「怨念たちは、まだ肉体のある我に誘われておるのだろう」



「クロエイってのは忙しいな。血質値の低いヤツに惹かれたり、龍に誘われたりして」



「クロエイってのは、龍の残滓であるからな。あれはバケモノに見えるかもしれんが、龍なのだ」



「あれが?」



「弱き者から襲おうとするのは、動物の本能であろう」
 言われてみれば、そうかもしれない。



「で、あんたはずっと地下で眠ってたのか?」



「ただ、眠っていたわけではない。龍神族というこの世界に安寧をもたらす13人を招いたであろうが、特にコゾウ」



「オレ?」



「コゾウにはかなりチカラを注いで疲れたのだ。それで地下で眠っていたところに、コゾウが落ちてきたのだ」



「そりゃまた、偶然だな」



 ふん、と老赤龍は鼻で笑った。
「我がいるということを知って、あの土地をうろついていたのは、コゾウのほうだろうに」



「会おうと思って、ウロついてたわけじゃないけどな」



「お互いの血によって、引き寄せられたのやもしれんな」



「オレはセリヌイアに行ってベルを連れ戻すつもりだ。ベルさえ連れ戻せばどうでも良いんだが、あんたはどうなんだ?」



「都市を浮かしたままにしておけるか。突き落としてやる」
 ずいぶん過激なことを言う。



「落としたら上に乗ってる人も、下にいる人も大変なことになるぜ」



「この都市が向かう先には湖畔がある」
「それで?」



「セリヌイアは湖畔に落とす。乗ってる者たちには被害が出ないように努力するつもりだ」



「わかった」
「速度をあげるぞ、ちゃんと捕まっていろ」



「ああ」



 リュウイチロウは紅蓮の甲殻に腕を回す。身を低くして風の抵抗をなるべく受けないようにした。龍のカラダは温かくて、空の冷たさが気にならなくなった。



 放たれる矢になったかのように、老赤龍は天めがけて突進した。

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