《完結》虐待されてる奴隷少女を救った、異世界最強の龍騎士
第87話「エムール・フォン・フレイ Ⅱ」
コンコン――と、けたたましくノックの音が響く。
「何用だ!」
あまりにシツコいので、エムールは怒鳴り声とともにトビラを開けた。
トビラの向こうに立っていたのはケルゥ侯爵と、2人の騎士だった。
ケルゥ侯爵は、いつもは奔放に伸ばしている金髪を、今日はオールバックにナでつけていた。目鼻立ちがハッキリしており、成熟しきった男の雰囲気もあいまって、普段の爽やかさに凛々しさが加味されていた。
「あ、これはケルゥ侯爵でしたか、失礼しました」
ケルゥ侯爵はニカッと笑う。
「いや、けっこう。急き立てて申し訳ない」
「しかしケルゥ侯爵。セリヌイアを空に飛ばすだなんて、急すぎはしませんか? 私はそのような話、一度も耳にしておりませんでしたよ」
ベルのことを尋ねられる前に、エムールのほうから切り出した。
「トウゼンであろう」
「トウゼン?」
「君は黒騎士と名乗り民衆の味方をするような騎士だ。しかも、フィルリア姫とも深いつながりがあるようだしね」
「き、気づいておられたのですか」
「私を侮ってもらっては困るね。ベルを匿っているのも君だろう。君以外にありえないからね」
「いえ。彼女のことは知りません」
あくまでシラを切り通す覚悟だった。しかし、エムールのウソなど即座に看破されてしまった。
「私は普段から、貴族どもと腹の探り合いをしているのだよ。君は、ウソが下手だ。性格が真っ直ぐすぎる」
ケルゥ侯爵がアゴをしゃくった。それを受けて2人の騎士が強引にエムールの部屋に入り込んできた。
ベルが見つかるまで数秒もかからなかった。
「見つけましたよ」
と、騎士たちが、まるで死体でも扱うかのように、ベルの髪をつかみ引きずり出してきた。
「やはり隠していたか」
「彼女はただの奴隷ではありません。あのリュウイチロウさまの奴隷ですよ。勝手に手を出すのは――」
「彼は死んだよ」
「まさか……」
「このセリヌイアを浮上させるだけの血を供給してくれたことには感謝しているがね。あのクロエイの大群から逃げれたとは思えまい」
「彼が死ぬはずないでしょう」
血質値200。
血質値が高いからといって、人並み外れたパワーを得るということはないが、そんな大人物が容易に死ぬなんてことは信じられない。
リュウイチロウが死んだ。
その言葉はエムールよりも、ベルを傷つけたらしかった。
「いやぁぁぁぁッ!」
ベルは金切声をあげると、失神してしまった。
ケルゥ侯爵は、ベルのことを無視して言葉を続けた。
「たしかに彼は特別な存在だ。しかし、生きていようが、死んでいようが、もはや私にはもう関係のないことだ」
「飛んでいるからですか?」
その通りだ、とケルゥ侯爵は大仰にうなずいた。
「セリヌイアはこのままグランドリオンの頭上を突っ切って、湖畔へ向かう。水の供給に関しては地上に下りる必要があるからね。とはいえ当分は大丈夫だろうと思うが」
「グランドリオンの頭上を通るのですか?」
「そうだとも」
「しかし、セリヌイアの下は大きな影になります。そんなことをすれば、グランドリオンにクロエイが……」
ケルゥ侯爵はエムールの言葉を遮った。
「地上の雑事など関係ない。ここは血質値の高い者だけのユートピアなのだッ!」
ケルゥ侯爵はそう言って、両腕を仰々しく広げてみせた。
都市を飛ばすことに成功したことで、ずいぶん浮かれているようだ。
「龍のたたりが下りますよ」
レオーネでよく使われる言葉だ。
悪事を働くと、龍にたたられる、と言う。
「私にも私の正義があるのだよ。それに、私は紳士だ。ベルとエムールにも寛大な処置をとってやるつもりだよ」
「殺すつもりですか」
「いやいや。ベルの低俗な血でユートピアを汚されては困る。ベルはここから突き落とす。ただし日暮れまでは待ってやるとしよう。日が暮れるまでは、クロエイの心配もないしね」
「私は――」
「君のことは殺しても良かったのだが、モッタイナイ。せっかく、そこそこ良い血を持っているのだ。このセリヌイアの動力の一部になってもらうとしよう」
「なるほど」
エムールは脱力して笑った。
地下に収容されていたみたく、全身チューブだらけにされる姿が容易に想像できた。
「ッたく、こんな汚らしい女のどこが良いんだか」
ケルゥ侯爵はそう言うと侮蔑の目を、ベルに送った。
ベルは完全に気を失っている。
ベルの身柄を守るというリュウイチロウとの約束は守れそうにない。
「何用だ!」
あまりにシツコいので、エムールは怒鳴り声とともにトビラを開けた。
トビラの向こうに立っていたのはケルゥ侯爵と、2人の騎士だった。
ケルゥ侯爵は、いつもは奔放に伸ばしている金髪を、今日はオールバックにナでつけていた。目鼻立ちがハッキリしており、成熟しきった男の雰囲気もあいまって、普段の爽やかさに凛々しさが加味されていた。
「あ、これはケルゥ侯爵でしたか、失礼しました」
ケルゥ侯爵はニカッと笑う。
「いや、けっこう。急き立てて申し訳ない」
「しかしケルゥ侯爵。セリヌイアを空に飛ばすだなんて、急すぎはしませんか? 私はそのような話、一度も耳にしておりませんでしたよ」
ベルのことを尋ねられる前に、エムールのほうから切り出した。
「トウゼンであろう」
「トウゼン?」
「君は黒騎士と名乗り民衆の味方をするような騎士だ。しかも、フィルリア姫とも深いつながりがあるようだしね」
「き、気づいておられたのですか」
「私を侮ってもらっては困るね。ベルを匿っているのも君だろう。君以外にありえないからね」
「いえ。彼女のことは知りません」
あくまでシラを切り通す覚悟だった。しかし、エムールのウソなど即座に看破されてしまった。
「私は普段から、貴族どもと腹の探り合いをしているのだよ。君は、ウソが下手だ。性格が真っ直ぐすぎる」
ケルゥ侯爵がアゴをしゃくった。それを受けて2人の騎士が強引にエムールの部屋に入り込んできた。
ベルが見つかるまで数秒もかからなかった。
「見つけましたよ」
と、騎士たちが、まるで死体でも扱うかのように、ベルの髪をつかみ引きずり出してきた。
「やはり隠していたか」
「彼女はただの奴隷ではありません。あのリュウイチロウさまの奴隷ですよ。勝手に手を出すのは――」
「彼は死んだよ」
「まさか……」
「このセリヌイアを浮上させるだけの血を供給してくれたことには感謝しているがね。あのクロエイの大群から逃げれたとは思えまい」
「彼が死ぬはずないでしょう」
血質値200。
血質値が高いからといって、人並み外れたパワーを得るということはないが、そんな大人物が容易に死ぬなんてことは信じられない。
リュウイチロウが死んだ。
その言葉はエムールよりも、ベルを傷つけたらしかった。
「いやぁぁぁぁッ!」
ベルは金切声をあげると、失神してしまった。
ケルゥ侯爵は、ベルのことを無視して言葉を続けた。
「たしかに彼は特別な存在だ。しかし、生きていようが、死んでいようが、もはや私にはもう関係のないことだ」
「飛んでいるからですか?」
その通りだ、とケルゥ侯爵は大仰にうなずいた。
「セリヌイアはこのままグランドリオンの頭上を突っ切って、湖畔へ向かう。水の供給に関しては地上に下りる必要があるからね。とはいえ当分は大丈夫だろうと思うが」
「グランドリオンの頭上を通るのですか?」
「そうだとも」
「しかし、セリヌイアの下は大きな影になります。そんなことをすれば、グランドリオンにクロエイが……」
ケルゥ侯爵はエムールの言葉を遮った。
「地上の雑事など関係ない。ここは血質値の高い者だけのユートピアなのだッ!」
ケルゥ侯爵はそう言って、両腕を仰々しく広げてみせた。
都市を飛ばすことに成功したことで、ずいぶん浮かれているようだ。
「龍のたたりが下りますよ」
レオーネでよく使われる言葉だ。
悪事を働くと、龍にたたられる、と言う。
「私にも私の正義があるのだよ。それに、私は紳士だ。ベルとエムールにも寛大な処置をとってやるつもりだよ」
「殺すつもりですか」
「いやいや。ベルの低俗な血でユートピアを汚されては困る。ベルはここから突き落とす。ただし日暮れまでは待ってやるとしよう。日が暮れるまでは、クロエイの心配もないしね」
「私は――」
「君のことは殺しても良かったのだが、モッタイナイ。せっかく、そこそこ良い血を持っているのだ。このセリヌイアの動力の一部になってもらうとしよう」
「なるほど」
エムールは脱力して笑った。
地下に収容されていたみたく、全身チューブだらけにされる姿が容易に想像できた。
「ッたく、こんな汚らしい女のどこが良いんだか」
ケルゥ侯爵はそう言うと侮蔑の目を、ベルに送った。
ベルは完全に気を失っている。
ベルの身柄を守るというリュウイチロウとの約束は守れそうにない。
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