《完結》虐待されてる奴隷少女を救った、異世界最強の龍騎士

執筆用bot E-021番 

第79話「血を出す決意」

 眠っているベルのことを、エムールに見ていてもらうことにした。



 龍一郎はヤケクソの心境で、ケルゥ侯爵の邸宅に行くことにした。ベルが起きていれば、龍一郎のことを止めるはずだ。だから、ベルが眠っているあいだに血を差し出すことにした。



 すでに夜中だが、こうこうと輝く明かりのせいで夜という感じがしない。



 ケルゥ侯爵の邸宅にも、明かりが灯っていた。邸宅の入口には見張りの騎士がいた。「こんな時間に何用だ?」と止められた。「白神龍一郎が血を差し出しに来たと伝えてください」と返した。



 騎士たちがケルゥ侯爵を呼びに行く。ケルゥ侯爵はすぐに出てきた。



「こんな夜にどうかしたかね?」
 あいかわらず愛想の良い笑みを浮かべていた。



「1500人。奴隷の血。オレが肩代わりしますよ」



「本気かね?」



「ええ。その代わりに1500……何人だか覚えてませんが、全員解放してもらいますよ」



 言うと、ケルゥ侯爵はのけぞって笑った。



「ははははッ。これは面白い。ここまで来れば善意を越えて、もはや聖人だな」



「そんなんじゃないですよ」



 もし成人していたなら、酒でも飲みたいような気分だ。いや。レオーネではもしかすると未成年でもお酒を飲めるかもしれない。チラリとそう思った。



「ずいぶんと不機嫌そうじゃないか」
「フられたんですよ」



「女にフられて、捨て鉢というわけか。まぁ良い、そっちがその気になってくれるなら、私としては有りがたいのだ」



「有りがたい?」
 ケルゥ侯爵の笑みが深くなった。瞳の輝きが強くなった。



「ふっふっふっ。ふははははッ。血質値200。あるいはそれ以上、老赤龍に匹敵するその血。ぜひ、この私の手におさめたい」



 さあ、こっちだ――とケルゥ侯爵は龍一郎の腕をつかんで、邸宅の中に引っ張り込んだ。



 地下に連れて来られた。



 今日の昼に見たときと景色に変わりはない。1500人の拘束されたドームが広がっている。



 ケルゥ侯爵が指をパチンと鳴らす。すると、拘束具がいっきに外れた。掃除機のコードでも吸い取るかのように、チューブが乱暴に引き抜かれていく。壁に張り付けられていた人たちが、いっきに床に倒れた。



「良いんですか。先に解放しても? オレが、血を出さずに逃げるかもしれませんよ」



「私は紳士だからね。君から強引に奪おうとするなら、すでにそうしていたよ」



 たしかにその通りだ。
 ここはケルゥ侯爵の都市であり、この男の手中なのだ。

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