《完結》虐待されてる奴隷少女を救った、異世界最強の龍騎士

執筆用bot E-021番 

第78話「フィルリア姫からの手紙」

 部屋。



 風呂からあがってすぐにベルは、ベッドで倒れ伏した。ノボせていたくせに、ノボせていたと言うタイミングを逃していたらしい。



 宿屋の主人に氷袋を用意してもらって、ベルの頭に乗せた。



 以前、ベルに看病してもらったことがあったことを思い出した。カラダが冷めると、ベルはすぐに寝入った。



「はぁ」
 と、龍一郎は重いため息を落とした。



 安穏と眠っているベルの顔を見つめる。



 まさか告白を断られるとは思ってもいなかった。自信過剰だったかもしれないが、受け入れてくれるはずだと思っていたのだ。



「はぁぁ」
 ため息が止まらない。



 コンコン



 トビラがノックされた。



 ベルを起こさないように、龍一郎はベルから離れた。
 トビラを開ける。



 エムールだった。



「どうしたんだ?」



「夜分遅くに失礼します。……もう寝ていられましたか?」



「いや。風呂から出てきたところだ」



 正直今は、誰とも話したくない。
 何か用事あるならさっさと済ませて欲しい。



「そうですか。おくつろぎのところ申し訳ありません」
 と、エムールは丁寧に頭を下げた。



「気にすることはない。それでオレに何か?」



「はい。フィルリア姫から返信の手紙がありました」



「もう?」
 フィルリア姫からの返答は、2、3日後になるかと思っていた。



「我々〝龍の血派〟のあいだでは、すぐに連絡をとれるように、鳥を使って連絡を取りあっているのです」



 なるほど、と龍一郎はうなずいた。
 伝書鳩みたいなものだろう。



「それで手紙の内容は?」



「地下に奴隷たちを収容している件。フィルリア姫は激怒しておられます。ケルゥ侯爵の悪辣な手段は、決して許されるべきではない――と」



 こちらがその手紙となります、とエムールがさしだしてきた。



 異世界だから羊皮紙かと思ったが、いたって普通の紙切れだった。手紙にはフィルリア姫の怒気をブチまけたかのように、インクがにじみこんでいた。



「あの人らしいと言えば、あの人らしい」



 誠実なフィルリア姫の人柄を思い出した。
 誠実であり、クロエイと素手でやり合う激しさも秘めているのだ。



「ケルゥ侯爵が、都市の地下にそれほど大人数の奴隷を収容していたなんて、私さえ知りませんでした」
 と、エムールは下唇を噛みしめていた。



「隠してたんだろうな」



「フィルリア姫は、すぐにこちらに来るそうです」



「こっちに?」



「1500人のかわりに、私が血を肩代わりすると息巻いております」



 手紙に目を落とす。
 たしかに強烈な筆圧で、そう書かれていた。



「その必要はないと、返答を書いてくれるか」
「それは、どういう?」



「血はオレが出す」



 わざわざフィルリア姫に血を出させていたら、龍一郎の面目が立たない。どちらにせよ血を出すのであれば、フィルリア姫よりも、龍一郎のほうが適任だ。



「良いのですか?」



「わざわざフィルリア姫に出て来られたら、なんのためにオレが来たのかわからないからな」



 ビビって腰が退けていたなんて言ったら、フィルリア姫に幻滅されそうだ。



 それになにより、今は捨て鉢な気分なのだ。
 もうどうにでもなれ――といった感じだ。



「わかりました」



「その代わりに、1500人の奴隷を受け入れる場所が必要だ」



「はい。グランドリオンのほうで受け入れることになるかと思います。グランドリオンの後任の領主は、フィルリア姫の息のかかった者ですから、すぐに承知するでしょう」



「それから、もうひとつ……」



「はい?」



「万が一、オレに何かあったときは、ベルのことをフィルリア姫に看てもらいたい。その約束はしているんだが……」



 エムールはその場にかしずいた。



「リュウイチロウさまにもしものことがあれば、ベルはこの私エムール・フォン・フレイがフィルリア姫のもとまで送り届けます」



「ありがとう」



「しかし、リュウイチロウさまの身に何かあるだなんて、私は思えませんけどね」



「もちろん万が一のことだよ」
 と、龍一郎は笑いをつくって見せた。

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