《完結》虐待されてる奴隷少女を救った、異世界最強の龍騎士
第77話「ベルとのお風呂~後編」
岩を敷き詰めた浴槽に、湯が張られている。ベルは牡丹雪みたいに白い足を、慎重に湯につけていた。
そのまま溶けてしまうんじゃないかと思う程、ベルの肌は白い。
「熱くないか?」
「はい」
「傷に染みたりとかは?」
「大丈夫だと思います」
「そうか、そうか」
湯にベルが浸かる。水力でカラダを隠しているバスタオルが浮き上がろうとする。ベルは必死にそれを隠していた。直視すると申し訳ないと思いつつも、その白い肌に目が吸い寄せられる。
ベルのカラダは傷だらけだ。
どこもかしこもアザだらけだ。
そのさまざまな傷が、ベルの儚い美しさを際立たせているようにも見える。
温泉にタオルをつけて入るのはマナー違反だが、2人しかいないのだし、別にかまわないだろう。
「なんでオレ、龍神族なんだろうなぁ」
と、つぶやいた。
「それはどういう意味ですか?」
「いや、もしもふつうの血質値だったらなぁ、って思ってさ」
もしも普通の血質値ならば、周囲から頼られることもなかっただろう。1500人の血を肩代わりしろ――なんて話にもならなかったはずだし、そもそもフィルリア姫の指示でセリヌイアに来させられることもなかったはずだ。
「ふつうの血質値が良かったのですか?」
「でも、オレがふつうの血質値だったら、ベルを幸せにするチカラもないわけだしなぁ」
「わ、私は、主さまの血質値がどうであれ幸せです」
ベルはそう言うと、ブクブクと口元まで湯をつけていた。その言葉は龍一郎に充分に幸福をあたえた。
「あ、あのさ……」
ずっと言えなかったセリフを、今ここで言うしかない。
2人で風呂に入っているという特殊な状況が、龍一郎に勇気を芽吹かせていた。意を決して切り出すことにした。
「なんでしょうか?」
「オレはベルにたいして、好意を抱いてる。その……恋愛感情という意味において」
「……」
ベルはジッと、龍一郎の顔を見ていた。
もうもうと吹き上がる白い湯気をはさんで、見つめ合った。
「もし良ければ、オレと付き合って欲しいんだ」
「付き合うというのは、男女の関係という意味でしょうか?」
「う、うん」
緊張の一瞬だった。
どういう返答があるか――龍一郎はベルの口元に集中していた。
「申し訳ありません」
「ダメか?」
「私は主さまの奴隷として置いてもらえるだけで、それだけで満足です」
「そ、そうか」
やんわりと断られた。
手ごたえを感じていただけに、断られたのがショックだった。泣きそうになって、あわててお湯で顔を洗った。
「このまま主人と奴隷という関係でありましょう。きっとそれがお互いのためです」
「そうだな」
ベルのことを何でも知っていたかのような感覚になっていた。断られてはじめて、ベルが龍一郎の得体のしれない、女、という生き物になった気がした。
意気消沈どころの騒ぎではない。
意気轟沈だ。
そのまま溶けてしまうんじゃないかと思う程、ベルの肌は白い。
「熱くないか?」
「はい」
「傷に染みたりとかは?」
「大丈夫だと思います」
「そうか、そうか」
湯にベルが浸かる。水力でカラダを隠しているバスタオルが浮き上がろうとする。ベルは必死にそれを隠していた。直視すると申し訳ないと思いつつも、その白い肌に目が吸い寄せられる。
ベルのカラダは傷だらけだ。
どこもかしこもアザだらけだ。
そのさまざまな傷が、ベルの儚い美しさを際立たせているようにも見える。
温泉にタオルをつけて入るのはマナー違反だが、2人しかいないのだし、別にかまわないだろう。
「なんでオレ、龍神族なんだろうなぁ」
と、つぶやいた。
「それはどういう意味ですか?」
「いや、もしもふつうの血質値だったらなぁ、って思ってさ」
もしも普通の血質値ならば、周囲から頼られることもなかっただろう。1500人の血を肩代わりしろ――なんて話にもならなかったはずだし、そもそもフィルリア姫の指示でセリヌイアに来させられることもなかったはずだ。
「ふつうの血質値が良かったのですか?」
「でも、オレがふつうの血質値だったら、ベルを幸せにするチカラもないわけだしなぁ」
「わ、私は、主さまの血質値がどうであれ幸せです」
ベルはそう言うと、ブクブクと口元まで湯をつけていた。その言葉は龍一郎に充分に幸福をあたえた。
「あ、あのさ……」
ずっと言えなかったセリフを、今ここで言うしかない。
2人で風呂に入っているという特殊な状況が、龍一郎に勇気を芽吹かせていた。意を決して切り出すことにした。
「なんでしょうか?」
「オレはベルにたいして、好意を抱いてる。その……恋愛感情という意味において」
「……」
ベルはジッと、龍一郎の顔を見ていた。
もうもうと吹き上がる白い湯気をはさんで、見つめ合った。
「もし良ければ、オレと付き合って欲しいんだ」
「付き合うというのは、男女の関係という意味でしょうか?」
「う、うん」
緊張の一瞬だった。
どういう返答があるか――龍一郎はベルの口元に集中していた。
「申し訳ありません」
「ダメか?」
「私は主さまの奴隷として置いてもらえるだけで、それだけで満足です」
「そ、そうか」
やんわりと断られた。
手ごたえを感じていただけに、断られたのがショックだった。泣きそうになって、あわててお湯で顔を洗った。
「このまま主人と奴隷という関係でありましょう。きっとそれがお互いのためです」
「そうだな」
ベルのことを何でも知っていたかのような感覚になっていた。断られてはじめて、ベルが龍一郎の得体のしれない、女、という生き物になった気がした。
意気消沈どころの騒ぎではない。
意気轟沈だ。
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