《完結》虐待されてる奴隷少女を救った、異世界最強の龍騎士

執筆用bot E-021番 

第69話「ケルゥ侯爵の領主館~前編」

 ケルゥ侯爵は龍一郎を見つけると、非常に愛想良く挨拶をしてきた。領主館に来ると良いと執拗にさそった。



 龍一郎は誘われるがまま、ケルゥ侯爵の領主館に行った。庭園があり、石畳の通路が敷かれていた。



 領主館の中に入るとメイド姿の女性たちが、「お帰りなませ、侯爵さま」と出迎えた。すぐにお茶とお菓子の用意をしろ――とケルゥ侯爵がメイドを急き立てた。



 龍一郎とベルは応接間に通された。学校の教室ぐらいの大きさだった。床には真っ赤な絨毯が敷かれており、ソファが置かれていた。龍の刺繍の入ったクッションが置かれていた。テーブルの縁にも龍の装飾がほどこされていた。



「さあ、腰かけたまえ。しかし、エムールくんと知り合いだったとは、驚きだよ」



「知り合いというか、たまたま知り合ったというか……」



 黒騎士として活動していることは、ナイショにしてくれと言われている。その点は、曖昧にしておいた。



「フィルリア姫お墨付きの龍神族をこの私の領主館に招くことができたのは、非常に幸運だ。縁起も良い」



 その言葉に裏は感じられなかった。



「どうも、こちらこそ招待していただき光栄です」



「そう硬くなる必要はない。ユッタリとくつろいでくれたまえ」



 ケルゥ侯爵は青いシャツを着ていた。胸元を大きく開いている。率先してくつろぐかのようにソファの上によこたわっていた。



「この部屋、明かりはどうやって点いてるんです?」



 マチス侯爵はガラス張りの箱のようなものに奴隷を閉じ込めて、血力を供給していた。しかしこの部屋にはどこにも、チューブにつながれた人が見当たらない。



「気になるか?」
 と、ケルゥ侯爵は微笑んでいた。よくぞ訊いてくれたという顔をしている。



「ええ」



「この都市の地下に、大量の奴隷を収容している。そこから血力を吸い上げてエネルギーにしているのだ」



「地下に?」
「ものすごいアイデアだろ」



「……」



 龍一郎は不快感を隠しきれなかった。大量の人間が地下に閉じ込められているところを想像してしまったのだ。



 おっと――と、ケルゥ侯爵は笑みを崩さず上体を起こした。



「そう言えば君は、フィルリア姫のところから遣わされてきたのだった。つまり、〝龍の血派〟というわけだ」



「なんです、それ?」



「血力の高いものが、低い者を支えて、平等な世界を築いていこうと考えている貴族の派閥だ。その派閥の頂点に立っているのは、あの見目うるわしきフィルリア姫というわけだ」



「別に貴族の派閥に入ったつもりはないですし、思想というほど、確たる考えを持ってるわけでもないです。けど、考え方としてはフィルリア姫の派閥かもしれません」



「フィルリア姫は非常に強力なカードを手に入れたな。血質値200の龍神族。ゼルン王国の貴族たちの派閥に、波乱を起こさせるぞ」



 ケルゥ侯爵はそう言うと微笑み、紅茶をすすった。龍一郎もつられて紅茶に口をつけた。唇が熱くなる。

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