《完結》虐待されてる奴隷少女を救った、異世界最強の龍騎士
第67話「奴隷売買所」
奴隷の売買所に入った。
カウンターテーブルがあり、面長の男がつまらなさそうに、雑誌を読んでいた。
レオーネという世界は――いや、ゼルン王国だけかもしれないが――すくなくとも龍一郎の見てきたかぎりでは、かなり地球の文化と似ているものがある。雑誌や新聞も配られているようだ。
「いらっしゃい、奴隷が入用ですか?」
面長の男はおもむろに雑誌から面をあげた。
どうやらこの男が店の人間らしい。
「この店で売られている奴隷は、表の5人だけですか?」
「いえ。もう1人いますよ。連れてきましょう」
店の奥から少女がひとり引っ張り出されてきた。少年のような面立ちをした少女だった。すこしエムールに雰囲気が似ている。
ただ気品あるエムールの面立ちよりかは、やや野性味を帯びていた。髪は黒く乱暴にくくりつけている。
カラダのあちこちに傷跡が見受けられた。酷い扱いを受けたのだろう。
黒々とした瞳には猛禽のような荒々しさがあった。今にもトびかかってきそうな勢いだ。
首輪をはめられて、リードをつけられている。
「全員で6人ですか?」
「そうですよ」
「なら、全員買い取らせてください」
「は?」
面長の男はキョトンとした顔をしてみせた。
「だから、全員、オレが買い取らせていただきます」
奴隷のほうが助けを求めてるわけではないし、ベルのときのように切迫はしてない。平時ならば無視していたかもしれない。
だが今は、「虐げられている者たちを助けてやってくれ」というフィルリア姫の使命を帯びて来ているのだ。全員、引き取ってやろうと思った。買い取った奴隷は、フィルリア姫に押し付けて置けば良い。
面長の男は嘲るような笑みを見せた。
「奴隷とはいえ人間ですから、相当な血がかかりますよ。特にこの少女――インクは、血質値が8もありますからな。奴隷にしてはなかなかですよ」
この少女はインクというのか、と思った。
たしかにインクをかぶったみたいに黒い髪をしている。
目が合う。
インクはあからさまにソッポを向いたので、龍一郎は苦笑した。
「オレの血で払います」
「お客さんひとりの血で支払えますかね……」
この面長の男の顔には、龍一郎のことをあなどる気持ちがあらわれていた。
「だったら血をはかってみたら良いでしょう」
と、龍一郎は強気にでた。
「それじゃあ、失礼して」
血質計がもちだされる。
針が龍一郎の腕に挿しこまれた。チクリとした感触が走る。
すこし緊張した。
足りなかったらどうしようかと急に不安になったのだ。
血質値200以上だともてはやされている。だが、どうして自分がそんな特別な存在なのか判然としていない。何かの間違いで不意に血質が下がるという可能性もなくはない。
杞憂だった。
「血質計が壊れているようですな」
と、面長の男は血質計をのぞきこんだ。
「いえ。壊れてませんよ」
龍一郎の血質を見ると最初はみんな、壊れている、と言う。針が急に計測器の端まで振り切るので、壊れているように見えてしまうのだ。
カウンターテーブルがあり、面長の男がつまらなさそうに、雑誌を読んでいた。
レオーネという世界は――いや、ゼルン王国だけかもしれないが――すくなくとも龍一郎の見てきたかぎりでは、かなり地球の文化と似ているものがある。雑誌や新聞も配られているようだ。
「いらっしゃい、奴隷が入用ですか?」
面長の男はおもむろに雑誌から面をあげた。
どうやらこの男が店の人間らしい。
「この店で売られている奴隷は、表の5人だけですか?」
「いえ。もう1人いますよ。連れてきましょう」
店の奥から少女がひとり引っ張り出されてきた。少年のような面立ちをした少女だった。すこしエムールに雰囲気が似ている。
ただ気品あるエムールの面立ちよりかは、やや野性味を帯びていた。髪は黒く乱暴にくくりつけている。
カラダのあちこちに傷跡が見受けられた。酷い扱いを受けたのだろう。
黒々とした瞳には猛禽のような荒々しさがあった。今にもトびかかってきそうな勢いだ。
首輪をはめられて、リードをつけられている。
「全員で6人ですか?」
「そうですよ」
「なら、全員買い取らせてください」
「は?」
面長の男はキョトンとした顔をしてみせた。
「だから、全員、オレが買い取らせていただきます」
奴隷のほうが助けを求めてるわけではないし、ベルのときのように切迫はしてない。平時ならば無視していたかもしれない。
だが今は、「虐げられている者たちを助けてやってくれ」というフィルリア姫の使命を帯びて来ているのだ。全員、引き取ってやろうと思った。買い取った奴隷は、フィルリア姫に押し付けて置けば良い。
面長の男は嘲るような笑みを見せた。
「奴隷とはいえ人間ですから、相当な血がかかりますよ。特にこの少女――インクは、血質値が8もありますからな。奴隷にしてはなかなかですよ」
この少女はインクというのか、と思った。
たしかにインクをかぶったみたいに黒い髪をしている。
目が合う。
インクはあからさまにソッポを向いたので、龍一郎は苦笑した。
「オレの血で払います」
「お客さんひとりの血で支払えますかね……」
この面長の男の顔には、龍一郎のことをあなどる気持ちがあらわれていた。
「だったら血をはかってみたら良いでしょう」
と、龍一郎は強気にでた。
「それじゃあ、失礼して」
血質計がもちだされる。
針が龍一郎の腕に挿しこまれた。チクリとした感触が走る。
すこし緊張した。
足りなかったらどうしようかと急に不安になったのだ。
血質値200以上だともてはやされている。だが、どうして自分がそんな特別な存在なのか判然としていない。何かの間違いで不意に血質が下がるという可能性もなくはない。
杞憂だった。
「血質計が壊れているようですな」
と、面長の男は血質計をのぞきこんだ。
「いえ。壊れてませんよ」
龍一郎の血質を見ると最初はみんな、壊れている、と言う。針が急に計測器の端まで振り切るので、壊れているように見えてしまうのだ。
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