《完結》虐待されてる奴隷少女を救った、異世界最強の龍騎士
第62話「巨大種迎撃~前編」
エムールと龍一郎は夜回りをしていた。ロッツェオも一緒だ。龍一郎の手には《血影銃―タイプ0》が握られている。マチス侯爵から拝借してきたものだ。
「巨大種が出ても大丈夫なように、万全の準備はしております」
とロッツェオが自信満々に言う。
「準備というのは?」
と、エムールが問う。
「あれをご覧ください」
と、ロッツェオが村の中にあるひときわ高い塔を指差した。
木造家屋が多い中、ひとつだけ鉄筋コンクリートで組上げられた塔があった。塔のテッペンには巨大なライトがついていた。
「大きなライトですね」
と、エムールが感心している。
たしかに大きなライトだった。サーチライトでも言うのか、グランドリオンでもあんな大きなライトは見たことがない。
「巨大種が出ても追い払えるように、大きな光源を用意したんです。これでも村番貴族ですからな。巨大種が来たら私の血で、あのライトを点灯させます。倒すことは難しいかもしれませんが、一歩も近寄らせませんよ」
今のところ巨大種が出る様子はなかった。
村周りはこうこうと輝いているが、先に見える平原は漆黒にそまっていた。
烏夜の闇深く、不吉に感じるほどくろぐろと黒ずんでいる。目を凝らしても、形あるものは何も見えなかった。
ただ風が吹くと平原の草や低木が、ゆるりとうねった。そのうねりが、海の波のように見えた。ゆるり……ゆるり……うごめいているのは、草や木々だけではなかった。
「闇が……」
闇がヌメリを帯びて、うごめいていた。
「クロエイです。群れているんです」
エムールも同じものを見ているようだった。
夜がうねるたびに、龍一郎の心もあわ立った。
「クロエイの群れ?」
「明かりを嫌うクロエイは闇へ闇へと移動して、群れをなす。言うなれば夜の群れといったところでしょうか」
夜の群れ。たしかに的を射ているように思えた。龍の怨念! まさしく怨念と言われるだけある不気味な実体だった。
「あれが攻めてくると思うと、ゾッとしますね」
「明かりがある以上は、大丈夫のはずです」
「ええ」
夜は容赦なく更けていった。
闇はさらに濃度を増して行く。不穏な空気がただよいはじめた。ひときわ大きな闇のうねりを見つけた。
「来た」
と、エムールはつぶやいた。
あれが巨大種と言われるものだとわかった。
真っ直ぐこちらに向かっているように思えた。クロエイは明かりを嫌うが、品質の低い血に誘われる。ここには村人やベルがいる。それに誘われてもオカシクはなかった。
「サーチライトを照らして来ましょう」
と、ロッツェオが塔の上にのぼった。
すぐにサーチライトの明かりが灯った。
闇を貫く明かりが巨大種めがけて差し込まれた。明かりに照らされて、巨大種の姿をハッキリ見て取ることができた。黒々とした人の姿で、頭部は大きな口になっている。姿そのものは、ふつうのクロエイと変わりない。
それにしても――。
「で、でかい……」
山と見まがうほどの大きさだった。
何もかもの呑み込んでしまうかのような黒だ。
「巨大種ですね」
エムールが言った。
「まっすぐこっちに歩いてきますよ」
巨大種はノソリノソリとにじり寄ってきた。
サーチライトの明かりに怯みもしない。周囲のクロエイもそれにつられたかして、一緒に移動していた。闇の津波が押し寄せてきているように見えた。
「明かりだ」「明かりをもっと強くしろ」「血をつなげろ」……村人たちが外灯やカンテラなどに明かりをつけていた。
「エムールさん。ベルのことよろしくお願いします」
エムールにベルをあずけて、龍一郎は村の入口に駆けた。
いま外に出るのは危ないから止せ――と村人たちから止められたが、強引に突破した。オレは大丈夫だと説明している暇はない。
村の入口に立つ。
正面からは、血なまぐさい闇の風が吹きつけてきた。
《血影銃―タイプ0》のチューブをカラダにつないだ。チクリとした痛み。もう慣れたものだ。銃口を正面に向けた。トリガーをひきしぼった。火薬を使った銃ではないので、たいして反動はない。緋色の弾丸が無数に射出される。
闇をかいくぐり、鮮血はクロエイにとどいた。血に触れたクロエイたちが溶けていった。
押し寄せる闇に穴が開いたかのように見えた。
「ふぅ」
安堵の息を吐いた。
ショットガンのようなものだと思っていたから、射程に自信がなかったのだ。マチス侯爵はちゃんと遠距離戦もできるように開発してくれていたようだ。
第二射。
第三射。
撃ちつけた。
減らない血液という龍神族の特殊能力にありがたみをおぼえた。
押し寄せてくるクロエイの数が減っていく。それに応じて村のほうから歓声があがっていた。
「巨大種が出ても大丈夫なように、万全の準備はしております」
とロッツェオが自信満々に言う。
「準備というのは?」
と、エムールが問う。
「あれをご覧ください」
と、ロッツェオが村の中にあるひときわ高い塔を指差した。
木造家屋が多い中、ひとつだけ鉄筋コンクリートで組上げられた塔があった。塔のテッペンには巨大なライトがついていた。
「大きなライトですね」
と、エムールが感心している。
たしかに大きなライトだった。サーチライトでも言うのか、グランドリオンでもあんな大きなライトは見たことがない。
「巨大種が出ても追い払えるように、大きな光源を用意したんです。これでも村番貴族ですからな。巨大種が来たら私の血で、あのライトを点灯させます。倒すことは難しいかもしれませんが、一歩も近寄らせませんよ」
今のところ巨大種が出る様子はなかった。
村周りはこうこうと輝いているが、先に見える平原は漆黒にそまっていた。
烏夜の闇深く、不吉に感じるほどくろぐろと黒ずんでいる。目を凝らしても、形あるものは何も見えなかった。
ただ風が吹くと平原の草や低木が、ゆるりとうねった。そのうねりが、海の波のように見えた。ゆるり……ゆるり……うごめいているのは、草や木々だけではなかった。
「闇が……」
闇がヌメリを帯びて、うごめいていた。
「クロエイです。群れているんです」
エムールも同じものを見ているようだった。
夜がうねるたびに、龍一郎の心もあわ立った。
「クロエイの群れ?」
「明かりを嫌うクロエイは闇へ闇へと移動して、群れをなす。言うなれば夜の群れといったところでしょうか」
夜の群れ。たしかに的を射ているように思えた。龍の怨念! まさしく怨念と言われるだけある不気味な実体だった。
「あれが攻めてくると思うと、ゾッとしますね」
「明かりがある以上は、大丈夫のはずです」
「ええ」
夜は容赦なく更けていった。
闇はさらに濃度を増して行く。不穏な空気がただよいはじめた。ひときわ大きな闇のうねりを見つけた。
「来た」
と、エムールはつぶやいた。
あれが巨大種と言われるものだとわかった。
真っ直ぐこちらに向かっているように思えた。クロエイは明かりを嫌うが、品質の低い血に誘われる。ここには村人やベルがいる。それに誘われてもオカシクはなかった。
「サーチライトを照らして来ましょう」
と、ロッツェオが塔の上にのぼった。
すぐにサーチライトの明かりが灯った。
闇を貫く明かりが巨大種めがけて差し込まれた。明かりに照らされて、巨大種の姿をハッキリ見て取ることができた。黒々とした人の姿で、頭部は大きな口になっている。姿そのものは、ふつうのクロエイと変わりない。
それにしても――。
「で、でかい……」
山と見まがうほどの大きさだった。
何もかもの呑み込んでしまうかのような黒だ。
「巨大種ですね」
エムールが言った。
「まっすぐこっちに歩いてきますよ」
巨大種はノソリノソリとにじり寄ってきた。
サーチライトの明かりに怯みもしない。周囲のクロエイもそれにつられたかして、一緒に移動していた。闇の津波が押し寄せてきているように見えた。
「明かりだ」「明かりをもっと強くしろ」「血をつなげろ」……村人たちが外灯やカンテラなどに明かりをつけていた。
「エムールさん。ベルのことよろしくお願いします」
エムールにベルをあずけて、龍一郎は村の入口に駆けた。
いま外に出るのは危ないから止せ――と村人たちから止められたが、強引に突破した。オレは大丈夫だと説明している暇はない。
村の入口に立つ。
正面からは、血なまぐさい闇の風が吹きつけてきた。
《血影銃―タイプ0》のチューブをカラダにつないだ。チクリとした痛み。もう慣れたものだ。銃口を正面に向けた。トリガーをひきしぼった。火薬を使った銃ではないので、たいして反動はない。緋色の弾丸が無数に射出される。
闇をかいくぐり、鮮血はクロエイにとどいた。血に触れたクロエイたちが溶けていった。
押し寄せる闇に穴が開いたかのように見えた。
「ふぅ」
安堵の息を吐いた。
ショットガンのようなものだと思っていたから、射程に自信がなかったのだ。マチス侯爵はちゃんと遠距離戦もできるように開発してくれていたようだ。
第二射。
第三射。
撃ちつけた。
減らない血液という龍神族の特殊能力にありがたみをおぼえた。
押し寄せてくるクロエイの数が減っていく。それに応じて村のほうから歓声があがっていた。
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